沖縄情勢の現段階と展望
広範な新基地NO! 不屈の現地闘争
オスプレイ墜落事故糾弾!
沖縄 N・J
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二〇一六年、沖縄闘争は辺野古新基地闘争で和解に追い込み、参議院選挙で伊波元宜野湾市長を当選させた。それに対して、辺野古埋め立て容認の高裁判決を確定させる最高裁判決。一二月一五日オスプレイが名護市の海岸に墜落。安倍政権の弾圧の強化。今年は辺野古基地建設工事の再開との最大の攻防に入る。沖縄闘争に全力を。(編集部)
1 情勢をとらえる視点
―辺野古二重権力闘争論
沖縄はいま日米両政府との全面対決の闘争局面にある。一九七二年の沖縄の本土復帰・沖縄返還以降最大の規模とエネルギーを持った反基地闘争が継続している。闘争現場の焦点・辺野古では、一九九七年の名護市民投票による新基地建設NO!の表明以来二〇年にわたって、闘争現場のもう一つの焦点・高江では、二〇〇六年の区民総会でのヘリパッド反対決議以来一〇年にわたって闘い続けてきた。
加えて、二〇一四年一月の名護市長選挙を皮切りに、県知事選、衆院選沖縄選挙区、県議選、参院選沖縄選挙区など、過去三年のすべての選挙で、基地反対! の勢力が勝利し、大多数の県民が沖縄基地の現状を打破しようとする意思を明らかにした。沖縄反基地闘争は、新基地NO! の県民の総意を背景に、沖縄県・名護市の行政当局と現場の大衆運動が連携して日米両政府に頑強に抵抗する闘争構造を作り上げ、全国、全世界からの支援と連帯を獲得してきた。日米両政府に対するこの重層的な闘争構造の力関係が二〇一六年三・四和解による辺野古の工事中止をもたらしたのだった。沖縄は日米両政府の軍事政策に反対する抵抗の砦だ。
ところが、現職の沖縄担当大臣・島尻をオール沖縄の伊波洋一候補が一〇万票以上の差で破った二〇一六年七月一〇日の参院選の翌日から、安倍政権の沖縄に対する猛烈な全面攻撃が始まった。辺野古違法確認訴訟での福岡高裁那覇支部の「県敗訴」判決、高江においては、五〇〇人にのぼる本土警察機動隊の長期にわたる投入、七〇人の防衛省職員の県外からの動員という物理的な警察行政力によって抗議行動を排除し、米海兵隊北部訓練場のヘリパッド建設を強行してきた。さらに、高江および辺野古ででっちあげないし微罪を口実とした逮捕・起訴・家宅捜索の攻撃をかけてきた。安倍官邸は牙をむきだして沖縄に襲い掛かってきたのだ。その結果、内実は欠陥工事ではあれ外見上高江の六カ所のヘリパッドがほぼ出来上がり、一二月二二日に返還式典が行われる。また、一二月二〇日には、「県敗訴」の最高裁判決が下ると予想される。まるで「権力の暴風」だ。
しかし沖縄はへこたれない。広範な新基地NO!の民意と不屈の現地闘争と結びついて沖縄県が中央政府に対し立ち向かい抵抗する二重権力状態は継続する。この闘争現場から先に退場するのは安倍や菅になるだろう。
2 3・4和解から10カ月間の攻防
翁長知事を日本政府が裁判に訴えた「代執行訴訟」で、二〇一六年三月四日和解が成立し埋め立て工事が中止された。中央の国家権力と沖縄県の行政権力との対立と拮抗の中で生まれた和解による工事中止は、まさに辺野古新基地建設をめぐる二重権力の均衡を表した。その後一〇カ月間の攻防の特徴は、@六月県議選、七月参院選に見られる沖縄県民の新基地NO!のゆるぎない確固さ、Aまつろわぬ民のくに・沖縄に対する中央権力の警察力・行政機関・司法機関の総動員による暴力的・物理的支配の強行、B自主的参加の人々の大きな流れを中心とした現地における不屈の闘いの県内外への広がりと強化、と言えよう。
A 辺野古現地
和解による工事中止の後、政府防衛局は臨時制限区域に設置したフロート・汚濁防止膜と工事用台船を撤去し、キャンプ・シュワブの陸上工事も中止した。しかし、辺野古・大浦湾海域には、沖縄防衛局が投入したいくつものトンブロックが海底に沈められたままであり、臨時制限区域を表示するブイもそのままになっている。そして、臨時制限区域を維持するために、毎日、数十隻の警戒船とともに、海上警備のゴムボートや船舶を配置し続けている。つまり、防衛局は和解による工事中止中もいつでも海上工事を始められるようにスタンバイ状態でいるわけだ。
加えて、一一月二五日の県と国との作業部会で、キャンプ・シュワブ陸上部分の米軍隊舎二棟の工事再開が認められた。沖縄県は埋め立て工事に関連のあるコンクリートプラントなどは決して容認しないと強調する一方、隊舎工事は「埋め立て工事と直接関係がないと判断した」(安慶田光男副知事)と述べ、工事再開を認めた。一二月九日の県議会でも「隊舎二棟は埋め立て工事区域外から区域外への工事だ。埋め立て区域内から区域外への保管庫の新設工事などは一切認めない」(謝花喜一郎知事公室長)と答弁した。防衛局は一二月一五日午後、陸上工事を始めた。さらに最高裁判決が確定すれば、すぐにでも埋め立て工事に取り掛かろうとするだろう。
辺野古の海のテントとゲート前テントは和解による工事中止中も継続して維持されてきた。各地の島ぐるみを結集しさらに強固なゲート前座り込み、海上行動をもって立ち向かってゆく。
B 高江現地
二〇年前のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意の六カ所のヘリパッド建設は、地元住民をはじめとする頑強な抵抗の前に、既存ヘリパッドのオスプレイ仕様への改築を行なったN4の二カ所以外は手を付けることができないでいた。安倍はこれを七月二二日の高江襲撃以降、大規模警察力の長期投入で強行突破した。辺野古にも二〇一五年末から一〇〇人をこえる警視庁機動隊が投入されたが、高江の場合は六都府県から五〇〇人という大規模投入だった。こうしたまるで戒厳令のような警察支配のただ中で、高江のゲート前の闘いと訓練場内での闘いはかつてない勇気と持続性をいかんなく発揮する歴史的な闘いとなった。屈しない闘いに県内外、全国、全世界から支援と連帯の輪が大きく広がった。
ヘリパッドの工事は遅れている。突貫工事を強行しても一二月二二日の返還式典に間に合わないが、安倍はヘリパッドの完成を演出しSACOの二〇年来の宿題をやり遂げたとアピールしたい。翁長知事は式典に出席しない。県民はオスプレイが使用するヘリパッドの新設を条件とした返還を歓迎していない。低周波を伴う耐え難い騒音、高熱の下降気流による森の破壊、常にある墜落事故の危険、県民の水がめ・やんばるの五つのダム汚染の恐れなど、オスプレイに対する県民の反対はきわめて強い。年内完成をめざして無理な大規模工事を強行したために、ヘリパッド予定地と進入路・工事用道路・訓練ルートで三万本の木々が伐採され、一〇トンダンプ三〇〇〇台分以上の砂利が敷かれ、赤土が谷に流れ込んでいる。森が声を出すことができるのであれば、森は号泣している。「東洋のガラパゴス」生物多様性のやんばるの森の大規模破壊は安倍政権の永久に消すことのできない犯罪だ。
ヘリパッド工事の進行に伴い、一二月に入って、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、北部訓練場でのオスプレイ訓練が目に見えて激しさを増してきた。宜野座村や金武町の民家の上を低空飛行で物資を吊り下げて運ぶ、東村や宜野湾市で夜一〇時過ぎまで飛び回り一〇〇デシベルの騒音をまき散らす、などやりたい放題だった。地元の「夜間飛行をしないでほしい」「住宅の上を飛ばないでほしい」「つりさげ訓練はやめてほしい」などの要請を無視して米軍は訓練を続けた。そして、一二月一三日の夜間訓練の最中、オスプレイ一機が名護市東海岸に墜落し、もう一機も普天間飛行場に胴体着陸した。一晩に二機のオスプレイの重大事故が発生したのだ。
起こるべくして起こった事故だ。沖縄本島、伊江島にはヘリパッドが八九か所、内オスプレイ離着陸帯は六九カ所存在し日夜訓練が行われている。騒音と共に事故の危険を訴え続けてきた県民の怒りは、今や普天間基地に駐屯するオスプレイ二四機の配備を撤回させ、オスプレイを沖縄から追い出すことに向けて燃え上がっている。
C 違法確認訴訟
代執行裁判の三・四和解のあと、国地方係争処理委は、国交相の是正の指示について、「地方自治法の規定に適合するかしないかの判断をしないことを審査の結論」とした。小早川委員長は六月一九日、会議後の記者会見で、「肯定、または否定のいずれかの判断をしたとしても、それが国と地方のあるべき関係を両者間に構築することに資するとは考えられない」として、「国と沖縄県は真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが問題解決に向けての最善の道」と述べた。
この係争委の提言通り、沖縄県は国を相手に提訴しなかった。ところが政府は、高江を襲撃した同じ七月二二日、翁長知事を相手どり違法確認訴訟を提訴した。福岡高裁那覇支部は八月に二回の口頭弁論を行っただけで審理を終え、九月一六日、「沖縄県が国交相の是正の指示にたいし埋め立て承認取り消し処分を取り消さないのは違法であることを確認する」(判決主文)との国の言い分をそのまま認めた判決をだした。県が上告した最高裁の判決が二〇日に下る。
裁判官は法衣を着て権威づけをしているだけの政府の役人だ。戦後裁判所はたいていの場合行政の下僕だった。一九五九年刑特法違憲判決を下した東京地裁の伊達秋雄判事や二〇一四年関西電力大飯原発三・四号機の運転差し止め判決を下した福井地裁の樋口英明判事など、良心に従って憲法と法律に忠実であろうとした少数の勇気ある裁判官を除いて、政府追随で自己保身を図る判事たち。裁判所は政府が強権化するにつれ、独立した司法機関としての見せかけさえ失い行政の法的追認機関になっている。
最高裁判決が「県敗訴」になっても沖縄県の安倍政権に対する抵抗は終焉しない。翁長知事が一二月一三日の県議会定例会で「今後も県の有するあらゆる手法を用いて、辺野古に新基地は造らせないとの公約実現に向けて取り組む」と述べたように、闘いは続く。
D「土人」「シナ人」発言
資材搬入をめぐる攻防が激化していたゲート前で浴びせられられたのが大阪府警の若い機動隊員による「ぼけ、土人が」「黙れ、シナ人」発言だった。大阪府警の機動隊員の一部は街宣の右翼と見まがうほど言動が粗暴だった。
ネット上で暴言の模様が公開され全国的に批判が高まるや、警察庁は批判をかわすため急きょ、当該機動隊員二人を沖縄から配置換えしたうえ遺憾の意を表明し事態の鎮静化を図った。ところが、「一生懸命命令に従い職務を遂行している。出張ご苦労様」(松井大阪知事)、「差別発言かどうかは判断できない」(鶴保沖縄担当相)などと、政府自民党や維新の政治家が「土人」「シナ人」発言を擁護している。そして政府も一一月一九日、最終的に「差別発言ではない」と閣議決定した。「土人」「シナ人」発言の本当の責任者は発言を容認するこれら政府と閣僚・政治家たちだ。
「土人」「シナ人」発言は、直接的には高江で抗議運動を行う人々に向けられた侮蔑の言葉、さげすみののしる言葉であると同時に、まつろわぬ民・沖縄県民に対する嫌悪感をストレートに吐露したものだ。現代社会でほとんど死語になってしまっている言葉に込められた侮蔑と嫌悪の感情はより深い。安倍官邸周辺に蔓延する沖縄敵視、アジア蔑視の排外主義の黒色粒子が警察機構、行政機構、一部メディアに浸透している。政府、議会、メディアが率先して変わらない限り、沖縄に対する侮蔑の意識が温存されていく。
E 県外機動隊
高江のヘリパッド建設の強行は県外機動隊の投入なしには不可能だ。新基地NO!の広範な民意を背景とした非暴力直接行動の力は非常に大きい。沖縄県警の力では抑えることができない。県内の力関係ではヘリパッド建設は阻止できる。過去一〇年近くヘリパッドがつくれなかったのはそのためだ。ところが政府が五〇〇人の警察機動隊を長期投入し続けたことによって、現場の力関係は逆転した。このように国家の警察力を大動員すれば、住民の反対をすべて蹴散らしてどんな国策でも遂行することが可能となる。それはまさに警察国家だ。
県議会は一〇月二八日、「土人」「シナ人」発言が「県民に対する侮辱発言」だとする抗議決議を採択したが、最大の政治焦点である「県外機動隊の撤退」を決議文から削除してしまった。そもそも県外機動隊の派遣を行ったのは誰か。政府だ。警察庁が指示し全国六都府県から派遣させたが、形式的には沖縄県公安委員会が要請したかのような外見をつくった。県公安委は日本政府の手先になってはならない。翁長県知事の行政方針に沿う県の行政組織の一つになるべきだ。そうでなければ沖縄は中央政府に対抗する自治の内実を持つことができない。
県民三八九人は一〇月一七日、@沖縄県が県外機動隊の車両修理費、ガソリン代、高速道路通過料を負担しているのは違法だ。公金支出を止めよ、A県公安委員会は県外警察職員の派遣要請を撤回せよ、との趣旨の住民監査請求を県監査委員会に提出した。意見陳述会を経て、県監査委は一二月一二日付で監査結果を明らかにした。その内容は、監査の経過を述べた後、「監査及び勧告の決定は監査委員の合議によるものとされている」が、四人の監査委員の内一人が「請求に理由がある」としたが、他の三人は「請求に理由がない」としたため、「最終的に意見の一致をみることができず合議が整わなかった」としている。
県議会をはじめ、県警や公安委員会、県監査委員会は日本政府の沖縄支配の道具になってはならない。翁長知事の県政の行政方針の下で、県民の自治と利益を守る組織とならなければならない。新基地建設と基地固定化に反対する闘いの中で、今後、沖縄県の様々な機関を、中央政府に対し沖縄の自己決定権を実際に行使する組織に改造していくことが焦眉の課題として浮上している。
3 現在の闘争局面の一つの問題
〜翁長知事の記者会見をめぐって〜
一一月二八日、翁長知事は就任二周年を前に記者会見を行った。辺野古新基地について「あらゆる手段を用いて取り組む」と述べたが、高江のヘリパッド建設については、「北部訓練場も苦渋の選択の最たるものだと思う」「SACO合意の着実な実施で約四〇〇〇ヘクタールが返ることに異義を唱えることはなかなか難しい。しかし現実には新しいヘリパッドが六カ所もつくられ、環境影響評価もされないままオスプレイが飛び交う状況は私たちからすると大変厳しい状況を目のあたりにしているという風に思っている」と述べた。
翌日の新聞は『沖縄タイムス』『琉球新報』とも一面トップで、「知事ヘリパッド容認」「苦渋の最たるもの」「事実上の公約撤回」などの見出しのもと大きく報道し、「知事の裏切り」を強く非難する識者談話も掲載された。この知事発言の翌日、一〇カ月以上前の辺野古ゲート前でブロックを積み上げた件で山城博治平和運動センター議長など四人が逮捕され、八カ所が家宅捜索されたというタイミングも重なり、知事に対する批判が渦巻いた。新聞の投書欄には「知事のヘリパッド容認、非常に残念」「苦渋の選択という政治家が公約を破る時の決まり文句を翁長知事から聞くことになるとは思いもしなかった」との投書が相次いで掲載された。
あまりの波紋の大きさに、翁長知事は翌二九日、記者団に「ヘリパッド容認報道は不本意だ」「ヘリパッド建設は容認していない」と述べた。さらに一二月二日、「苦渋の選択」をめぐって記者会見を行い、「オスプレイが使用するヘリコプター着陸帯については、一度も容認と発言したことはない」と強調した。そして「私は辺野古新基地は絶対に造らせない、オスプレイは配備撤回させるということを一番の眼目に、政治生命をかけながら実現する」「オスプレイが飛び交うヘリパッドは容認できないと言っている。配備撤回の中で収斂されていく」と語った。
取材記者が「苦渋の選択という言葉は基地負担の受け入れを表明する際に保守系知事や首長が多用してきた言葉だ」と指摘するまでもなく、これまで県民は、基地NOを掲げて当選した県知事や名護市長、宜野湾市長が「苦渋の選択」と言いながら、カネと引き換えに基地を容認する姿を何度も見てきた。「苦渋の選択」という言葉にはこのような「背信」のイメージが張り付いている。一一月二八日の翁長知事の記者会見をよく読めば「ヘリパッド容認」の内容は少しもないが、「苦渋の選択」という言葉だけが知事の意図から離れて独り歩きしていった。それにしてもメディアの影響力は大きい。
私は、翁長知事が「苦渋の選択」との言葉を使ったのは適切ではなかったと思う。そして、メディアが「苦渋の選択」との言葉のみをとらえて「ヘリパッド容認」と報道したことも不適切だったと思う。その後、二度の会見を通じて翁長知事が自身の真意を釈明し疑惑を払拭しようとしたことは適切だった。今回の件で、「県民と知事の反目」をほくそ笑んだのは安倍官邸であり沖縄自民党だ。沖縄に対する中央政府の敵対・弾圧がエスカレートする中で、批判はもちろん悪いことではないが、「裏切者」との言葉に示される、味噌もくそも一緒にするような、彼我を混同する非難は間違いだ。
「苦渋の選択」発言を契機とする県民と知事との分断の危機は、オスプレイ墜落に対する抗議の高まりの中でひとまず後景に退いたように見える。しかし実は、保革を越えた運動として成立したオール沖縄・島ぐるみの運動が初めから抱えている矛盾に他ならない。
翁長知事を生み出したのは、二〇一三年建白書の旗のもとに結集した島ぐるみ・オール沖縄の運動であり、その行動目標は「普天間基地の閉鎖・県内移設反対、辺野古新基地阻止、オスプレイ配備撤回」である。さらにさかのぼれば、一九九五年の少女暴行事件を契機に始まった沖縄反基地闘争の新たな胎動の二〇年にわたる蓄積のうえに、安保、自衛隊、SACOなどに対する立場を不問にし、普天間閉鎖・辺野古阻止・オスプレイ撤回という当面の行動において結束する統一戦線だ。
情勢の新たな進展の中で、安保や自衛隊問題が政治分化を鋭く突き付ける状況が生まれる時オール沖縄・島ぐるみ運動の中に対立が生み出され翁長知事との分岐が生じる可能性があるが、現在の最大の課題はオール沖縄・島ぐるみ運動による普天間・辺野古・オスプレイだ。翁長知事はこの行動目標にどこまでも忠実に動いている。その点では、翁長知事ほど信頼に値する知事がいないことは過去二年間の県政の実績を振り返ればわかる。それゆえわれわれは必要な批判はしながらも政府の攻撃に対しては翁長知事を防衛し、オール沖縄・島ぐるみ運動を発展させるという課題を負っている。
4 沖縄反基地闘争の方向性
A 辺野古阻止
最高裁判決で「県敗訴」が確定するだろうと言われている。菅は記者会見で「沖縄県が確定判決に従うことは和解条項に明記されている」と、最高裁判決以降、辺野古新基地建設に対する沖縄県の行政権力を行使した反対が止むかのような口調で述べた。しかし、沖縄県の抵抗はやまない。翁長知事は早速、県幹部と弁護団とともに、最高裁判決以降の闘いに関する検討会議を開いた。
翁長知事は常々「新基地は造らせないとの公約実現に向け、承認撤回も視野に入れて、岩礁破砕許可や設計変更、文化財問題、サンゴの移植などあらゆる手段を用いて取り組む」と述べている。工事中止というつかの間の休戦期間が終わり、日本政府と沖縄県との全面対決の情勢が再び始まる。一時均衡状態にあった沖縄県と日本政府の攻防は再び互いの権力を全面的に動員する厳しい闘争局面に突入する。この闘いに沖縄の未来が、そして日本の明日がかかっている。
最高裁が沖縄の民意を無視し沖縄県知事を裁くことは許されない。沖縄現地は、広範な新基地NO!の民意と不屈の現地闘争および行政権力を行使する県・名護市の行政当局の三者が結びつき、全国、全世界の支援を獲得して日米両政府に対決する闘争態勢をあらためてつくり上げていく。翁長知事は二月に訪米し、トランプ政府と議会、メディア要人に沖縄の民意を直接伝え、辺野古新基地の断念を訴える。沖縄の闘いは決して後退していない。全県、全国津々浦々から沖縄の闘争現場に全力で結集しよう。辺野古新基地を止め、基地のない沖縄の第一歩を踏み出そう。
B 海兵隊撤退
現在沖縄には全国の〇・六%の面積に在日米軍専用施設の四分の三が集中していることはよく知られている。一九七二年の復帰直後は五〇%台だった。つまり、復帰後日本政府の支配下で沖縄基地の比重の拡大が一層進んだことになる。このような基地の島・沖縄のイメージを和らげようと、一九九六年日米両政府は、嘉手納以南の米軍施設の返還と中北部への移設および北部訓練場の一部返還を内容とする沖縄駐留米軍基地の再編を打ち出した。普天間→辺野古など、返還はすべて「県内移設」が条件だったためにこれまで計画は難航してきたが、計画完了時、沖縄基地の全国に占める割合は約七五%から七〇%程度に減るといわれる。
安倍官邸はこれを「沖縄の負担軽減」だと大々的に宣伝している。しかし内実は、新基地建設と基地機能の集中強化に他ならない。SACOに基づく米軍再編に対する各地の抵抗は頑強に続けられている。@普天間基地を無条件で閉鎖せよ、とのゲート前や爆音訴訟の取り組み、A辺野古新基地建設に反対する二〇年にわたる闘い、B高江はまさに、ゲート前と訓練場内の闘いを通じて、ヘリパッドの新設を許さない闘いの渦中にある、C伊江島は、オスプレイや新型戦闘機F35が訓練する、強襲揚陸艦のデッキに見立てた新訓練施設の建設に反対する取り組みが進んでいる。以上はすべて海兵隊基地だ。
二〇一六年五月に明らかになった女性暴行殺人事件に対する抗議を通して、県議会は「海兵隊撤退」を決議し、六・一九県民大会(六五〇〇〇人参加)も「海兵隊撤退」を掲げた。人員にして二分の一、面積にして三分の二を占める沖縄の海兵隊は、何人もの専門家が述べるように、米軍事戦略上から言っても沖縄に海兵隊の基地を置く必然性はない。亜熱帯の快適な気候と温和な人々という自然・社会環境の整った沖縄に、日本政府が全額金を出すため経済的負担なく、自分たちの望む基地を造り守ってくれるということが、海兵隊が沖縄に居続ける理由だ。沖縄の未来は亜熱帯の森とサンゴ礁の海と共にある。米軍によるこれ以上の森と海の破壊は沖縄の未来を奪うに等しい。
島ぐるみ・オール沖縄の運動が海兵隊撤退・すべての海兵隊基地を閉鎖撤去させることを行動目標の中心に据えることで結束し、翁長知事と沖縄県をその下に獲得して、日米両政府に立ち向かって行かなければならない。
C 自治政府
新基地建設に徹底的に抵抗する沖縄の闘いは今後、日本中央権力の支配のくびきから自らをいかに解き放つのかという課題に直面する。日本の政治的、経済的、法的支配の枠組みの中の現在の沖縄県という在り方からの脱却が多くの人々の意識にのぼっていく。沖縄の民意が一顧だにされない日本という国。普天間、辺野古、高江、オスプレイなど、いわば個別の自己決定権のための闘いからより広範で完全な自己決定権の獲得へと発展していく。中央政府に蹂躙され続ける沖縄はもうごめんだ、と。
中央権力の支配のくびきからの脱却をめぐって、考えられる選択肢は次の四つであろう。@沖縄の独立を実現し、外国軍隊の駐留を認めず、軍隊と戦争のない琉球諸島をつくり出す。沖縄は沖縄であり、日本でない。A日本中央政府に対し対等の自己決定権を持つ沖縄自治政府をつくりあげる。沖縄は沖縄だが、日本であって日本でない。日本は沖縄と沖縄を除く他の日本に分かたれる。B日本の中で特別に広範な自治権を獲得する沖縄は沖縄自治県ないし沖縄自治州と呼ばれる自治体となる。沖縄はかなりの自己決定権を有するが、やはり依然として日本の一部だ。いわば、中国と香港の関係だ。C憲法と地方自治法に基づく本来あるべき民主的な日本の政治の中で沖縄県を他の都道府県と平等な自治体としていく。沖縄は日本の本当の一県になる。
自己決定権の程度と日本との関係を尺度として、基本的には以上四つの政治的立場が考えられる。沖縄県民の意識はひとつにまとまっていないが、傾向としては、日米両政府に対する行動の前面に立つ人々の間では、完全な自己決定権を求める@およびAの傾向が強く、行動的でない県民の間では、日本の中での制限された自己決定権にとどまるBおよびCの傾向が強いと言えるかも知れない。
新基地阻止の全力を振り絞った闘いを通して、今後より広範な自己決定権の実現を運動全体の目標として射程に入れていくことになるだろう。
12.15
オスプレイ墜落事故緊急抗議行動
「パイロットは感謝されるべき」
許されぬ米軍調整官の暴言
【大阪】一二月一五日、沖縄名護市安部の海岸付近にオスプレイが墜落した事故の件で、大阪米国領事館前での緊急抗議集会が開かれた。呼びかけたのは、STOP!辺野古新基地建設反対!大阪アクション。
服部良一さん(元衆議院議員)、大阪全労協、STOP!辺野古新基地建設反対!大阪アクション、しないさせない戦争協力関西ネットワーク、関西共同行動などが次々と発言した。
「オスプレイは不時着ではなく墜落事故だ。米軍側のいうままを国民に伝える日本政府の姿勢は全く奴隷そのもの、いつから日本はこのような国になったのか」。
「日本政府は、住民を守るという意識がない。沖縄の米軍調整官の発言は植民地支配者そのもので許しがたい。民家の上に落ちるのを回避し海に不時着させたパイロットは感謝されるべきだ、とは何という発言。民家の上に墜落しないとどうして言えるのか」。
「二〇一二年一〇月から二四機のオスプレイが沖縄に配備されたが、いつかこういう事故が起きることは予測されていた。二四機のうちの二機が墜落したということは、欠陥機だと言える。
「オスプレイ配備の撤回・米軍は、基地周辺の住民が日常的に抱える不安に注意を払わない基地はいらない、海兵隊は出て行け、米軍は出て行け」。
「領事館警備の警官はそこで何を守っているのか。土人発言の大阪府警機動隊は沖縄から撤収せよ」。
最後に、陣内恒治さん(STOP!辺野古新基地建設反対!大阪アクション共同代表)が、オスプレイ配備の中止・オスプレイの全国での飛行訓練の中止、米軍基地の撤去・沖縄からの海兵隊撤退を求める抗議文を読み上げ、シュプレッヒコールをした。(T・T)
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