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    かけはし2013.年7月1日号

民間・公共の対立を超えゼネスト


ギリシャ

ラジオ・テレビ局の閉鎖に反対

公共放送機構の閉鎖はクーデター

3党連立体制の与党に亀裂

アンドレアス・サルツェキス

 ギリシャが再び政治的緊張の局面に入りつつある。公共放送機関(ERT)の閉鎖という乱暴な決定、サマラス首相による突然の発表がその発端となった。しかもこの決定は、連立多数党である新民主主義党単独の決定だった。ギリシャ民衆はこの暴挙に統一した決起で応えている。以下に紹介する現地からの報告では、その決起がこれまででは考えられないような統一の中にあること、また同時並行的なトルコにおける民衆決起が明確に意識されていることを含め、国際連帯へのこれまでにない意識の高まりが語られている。この中でサマラスによるERT閉鎖は、最高行政裁判所の決定によりひとまず棚上げされているが、三党連立体制は民主的左翼(DIMAR)の離脱により崩壊し、政権を支える議会勢力が半数を僅か三議席超えるだけ、というきわどいものとなった。欧州情勢の不確実性は落ち着くどころかどころか深まる一方にある。(「かけはし」編集部)

労働者を犠牲に
する緊縮政策


 ギリシャ、そして他でもあらゆる人々が怒っている。六月一〇日火曜日の正午に公共ラジオ・テレビ放送サービス企業体のERTを同日夕方から閉鎖することを発表、とのサマラス首相の乱暴極まる決定は驚くべきものであり、もちろんのこととして説明が求められる。
 いろいろ考えた末われわれは、信じがたい真実に帰ってくる。すなわち政府は、緊縮政策の進捗度合いの査察にこの国に来ているトロイカに、二〇〇〇の職を引き渡したのだ。それは、強要されている何万人という公務員の解雇計画の実行に関する、政権の有能性に対する直接的証明として要求された職の切り捨てだった。サマラスは今日二六七〇人の労働者の首を切り、六〇〇人の従業員で運営する公共チャンネルを作ると約束している。それは数字の話に過ぎない。そしてわれわれはこれを、唯一ではないとしてもいずれにしろ、この愚かな力づくの乗っ取りに対する基本的な説明と考えなければならない。結局のところここでは、クーデターが語られている。

クーデターに
対抗する反撃


 このクーデターは丸まるの当座しのぎというわけではなかった。ERTの再編といった脅しについてはすべての人が知っていた。一人の憲法の専門家は、サマラスが実行したかった計画を練り上げていた。しかし今その起案者は、ERTが閉鎖されたままである限りその計画に力を貸すことを拒否する、との姿勢だ! これは、火曜日以後爆発した、そして政府、つまりこの地での呼称である国内のトロイカ内部で危機を広げている多くの政治的矛盾の一つだ。
 まったくのところサマラスは、最反動派と民族主義右翼の産物であり、極右に簡単に服する助言者たちに囲まれている人物として、SYRIZAよりわずか二%上回る得票率を与えた前回選挙が、彼に煩わしい民主的な手続きにこれ以上悩まされることなく支配することを可能にしたと信じ、傲慢な決定を行った。そして結果は次の通りだ。つまり、PASOKとDIMAR(いずれも新民主主義党と共に現政権を構成している与党少数派:訳者)の閣僚たちは、ERT閉鎖の決定に署名しなかった。そして今日、ERTに対する右翼(新民主主義党)の力ずく接収を支持しているただ一つのグループは、黄金の夜明けというナチスだ!
 しかしながら、先の決定が知れ渡るや否や例外的な決起が始まった。火曜日以来、アテネ郊外にあるERTの建物は、何千人という人々、活動家、あるいはそうでない人によって、アーティストやさまざまな諸個人の支援と一体となって囲まれてきた。私企業部門の労組連合である労働総同盟(GSEE)、そしてつい最近教員のストライキ支援を拒否したばかりだった公共部門労組連合(ADEDY)は、木曜日にゼネラルストライキを指示することを余儀なくさせられた。そしてこのゼネストはみごとに成功した。国中で抗議集会が開催された。ERT正面の占拠は、その場所はどちらかと言えばへんぴなところなのだが、それでも大挙して行われている。
 もっとも重要なことはおそらく、同じ場に並ぶさまざまな労組、政治団体、市民団体の旗を見ることができることだ。それらの旗は、一緒にデモしないために全力を挙げることが通例であるさまざまな潮流のものなのだ。いわばまさに真心のこもった環境と結びついた、この事実上の闘いの中の統一がさしあたり、断固とした抵抗の保証となっている。実際KKE(ギリシャ共産党)は自身のTVチャンネルに、ERTのジャーナリストが制作しているニュース番組を喜んで迎え入れた。KOKKINO(SYRIZA)のラジオは、ERT占拠の決起と絶えずつながれている。サマラスは明らかに、彼のケチな策謀に対しこのように広範な反応が起きることを想定してはいなかった。

ERTの闘争
との連帯を!


 まったくの外交辞令とは言えないいくつかの外国政府の声明にまで広がりつつ、国際連帯はきわめて強力となったがそれは、非常に貴重な助けとなっていると感じられている。それは、対抗サミット(訳注)を締めくくる先週日曜日のアテネ欧州デモのスローガン、「トロイカは出ていけ」にこれまでになく実際的な意味を与えている。このようなことを背景に、国際連帯は、この三年間あまりに弱すぎたものを指し示している。つまり、国際連帯がギリシャにおける労働者階級の対応を強化する、ということだ。この連帯は継続されなければならず強化されなければならない。
 木曜日警察は、職場を占拠している労働者を追い出すためにサロニカのERTの建物に入った。現瞬間サマラスは明らかに不安定化されている。とはいえ、彼のただ一つの回答が抑圧となることは衆知のことだ。ERTとすべての職の防衛に向け、最強の連帯がなければならない!
 ERTのある場所で予定されている金曜日の連帯コンサートと共に、闘争は続く。もちろんそこには、トルコのタクシム広場における現在の闘争と共通の感情がある。ギリシャはERTにおける民衆総会に、多くの共通のものをもっているのだ!(六月一四日、アテネ)

▼筆者は、第四インターナショナルギリシャ支部のOKDE―スパルタコスの指導部メンバー。同支部は、反資本主義左翼連合、ANTARSYAを構成する一組織。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年六月号)
訳注)欧州のさまざまな市民団体や労組の結集の下に、六月七日〜九日アテネで、EUの抜本的政策転換を求める「欧州対抗サミット」が開催された。賛同団体は、二一ヵ国、一八〇団体。そこにはATTACや欧州労連(ETUC)も名を連ねている。
 

G8/アイルランド

EU議員団、反G8連帯アピールを送付(6月11日)

超富裕層を救済する緊縮政策

若者の失業は一層増大


 EU議会の左翼議員グループ、GUE―NGL所属の一二人の議員グループが、サミットの二週間前、反G8行動への参加者を支援する共同メッセージに署名した。デンマーク、ギリシャ、ドイツ、ポルトガル、スペイン、スウェーデンから選出されたEU議員が署名したこのメッセージは、アイルランドの社会主義議員、ポール・マーフィーによって呼びかけられた。
 われわれEU議会の左翼議員(GUN/NGL)は、労働組合運動が組織する催しと「G8歓迎ノー」キャンペーンを含んだ、北部アイルランドのフェルマナでのG8に反対するキャンペーンと抗議活動にわれわれの連帯を送りたい。
 G8の指導者は超富裕層の利益を代表し、普通の民衆の生活基準に攻撃を加えている右翼政府から構成されている。彼らは普通の人々に、銀行家や投機屋たちを財政支援で救出する目的で、普通の民衆がつくり出したわけではない危機の対価を払わせようと決意している。彼らの緊縮政策という課題設定は、経済を殺しつつあり、世界中で特に若者たちの中で大量の失業を生みだしてきた。超富裕層がより一層富裕になり続ける一方、この地球上では何十億人もが一日二ドル以下での生活を送っている。
 これらの抗議は、G8の資本主義的課題設定に対決する抗議と抵抗の長い歴史をもっている。二〇万人が街頭を占拠し、カルロ・ジウリアニの警察による殺害を経験したジェノバの二〇〇一年サミット以後のG8は、抗議活動の参加者たちが近づくことのできる地域で会合を開く勇気をもてなかった。しかし会議場を遠ざけることを選択したにもかかわらず、彼らはなおも、緊縮、戦争、環境破壊に反対する抗議の人々に迎えられている。
 世界中から田舎の自治体にやってくるG8の訪問は、これらの自治体には長期の経済的利益を与えることなどまったくなく、普通の人々の生活に巨大な混乱を引き起こしつつ、これらのサミットの準備のために、その田舎の地域を軍事地域に変えてしまった。フェルマナへの彼らの訪問にも、違うものなど何もないように見える。そこには当地に投入された何千人という警官と軍隊が付随している。放水砲がいつでも使える体制にあり、抗議活動参加者のための当座しのぎの監獄や監視用無人航空機の購入も伴われている。そしてそれを、当地の警察局が許可している。
 われわれは、G8に反対する権利を行使しようとする人々を脅しつけ、G8に反対する者たちに暴力集団のラベルを貼り付けることでこの運動を汚そうとする、警察、右翼政治家、メディアの意識的なたくらみに反対する。暴力に関与している者たちはG8サミット内部に存在することになるだろう!
 われわれは、ベルファストとフェルマナ双方での抗議活動が成功を見、緊縮や戦争に反対する闘いをアイルランドと世界双方で強化する役割を果たすことを期待している。
(ポール・マーフィー以下一四人の議員の署名は省略)(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年六月号)

全欧州デモ

100都市で反トロイカ統一行動

債務は貧者に向けた斧だ

人を痛めつける緊縮計画に反対

エステル・ビバス


  反トロイカの国際的統一行動が六月一日、マドリード、リスボンからフランクフルト、パリなど、欧州を貫く一〇〇以上の都市で展開された。以下は、この行動がどのような背景の下に呼びかけられたのかを、この日の行動の呼びかけ国の一つであるスペインから伝えている。(「かけはし」編集部)
 六月一日、欧州中で反トロイカのデモが行われている。この行動は始め、ポルトガルの運動、「リクセ・ア・トロイカ」(普通は「トロイカを締め上げろ」と翻訳されている)による「人民はトロイカ反対で団結する」とのスローガンに基づく呼びかけ、またトロイカが欧州危機を解決するとの偽りの主張を盾に強制している、人を痛めつける緊縮計画に反対するスペインの運動の呼びかけから生まれた。
 トロイカとは何者なのか? 一年前、この疑問への回答を知る者はほんの僅かしかいなかった。ギリシャへのそのいすわりを参考にすることでわれわれはそれを知ることとなったが、それは悪いことではなかった。トロイカは、緊縮、構造調整、削減、困苦、飢餓、さらに失業と一体的にどこにでもいる者だった。
 しかし、多くが拒否した二〇一二年六月の救済のスペイン到着までは、「メン・イン・ブラック」と「トロイカ」が身近な名前となることはなかった。一年後の今日、病み疲れ果てた人々は、「トロイカ・ゴーホーム」と大声ではっきりと声に出すために街頭に出つつある。
 歴史はそれ自身を繰り返す。一九九〇年代と二〇〇〇年代には南の多くの諸国が、IMFと世界銀行に反対する巨大なデモを経験した。人々はそれらの機関を、人々を悲惨に突き落としたとして告発した。それとまさに同じく、今やここの民衆が、トロイカ、すなわちIMF、欧州委員会、欧州中央銀行への反対を誰はばかることなく語っている。銀行は異なっている。しかし論理には何一つ変わるものがない。
 グローバルレベルの中枢――周辺関係が今やEU内部に再現されている。そしてこの大陸の周辺諸国、つまりわれわれは、金融資本の新たな植民地、市場、利益源となった。そこで再度南で、構造調整計画が適用された。その目的は、債務を持続可能とするため、と言われた。あたかも、人々がしたがわせられる悲惨と貧困が持続可能であるかのように。今彼らはわれわれに「援助」、「銀行への資金投入」などなどを語り、そして彼らはわれわれを悲惨に突き落とす。
 債務は依然として貧者に向けられる斧だ。つまり人々の支配と従属をつくり出すための仕掛けだ。世界規模であろうが欧州規模であろうが、南から北へと資金を移転させるための、より正確に言えば略奪のための絶対に確実な道具なのだ。そして、多数の権利を切り下げること、公共サービスを密かに私有化し切り下げつつ資本により多くの利益を生み出すことに向けられた議論がある。われわれに課せられた債務は、そしてそれは偶然にわれわれに向けられているのではないのだが、長く計画されてきたものを実行するためのまさに口実だ。こうして詐欺は危機という名前をもち、盗みは債務という名前をもつ。
 われわれはあっという間にトロイカの意味を学んだが、同時にまた怒り、反乱、不服従のような概念の意味をも学んだのだ。そして今日われわれは、「トロイカと対決し統一した人民」として、欧州中の一〇〇を超える都市で立ち上がっている。なぜならば、それがわれわれには可能だからだ。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年六月号)


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