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    かけはし2013.年6月17日号

警察の暴力が不満の蓄積に火を


ギリシャ SYRIZA内左派の闘いは今

反緊縮貫徹の団結強化に全力

欧州レベルの大衆的連帯めざし

ソチリス・マルタリス

 以下に紹介する発言は、今年三月に行われた第四インターナショナル国際委員会における幅広い政党を主題とした議事の中で、筆者によって行われたもの。深い危機の中で迫られる過渡的闘争について、まさに実践的に対応しているギリシャの活動家の観点から、具体的な論点提起が行われている。(「かけはし」編集部)

社会運動と深く
結びついた歩み

 SYRIZAの一部を構成する国際主義的労働者左翼組織であるDEAを代表し、友愛を込めてあいさつしたい。
 その上で私は、一点を明確にすることから始めたいと思う。それは、以下の発言で私は、いわゆる幅広い政党という問題に関し、いわば「モデル的な回答」を提供しようとは思っていないということだ。短い持ち時間の中で私は、われわれが前にしている諸困難、SYRIZA内部でそれらにわれわれが対応しているやり方を説明してみたいと思う。
 そこで私は六つの点に光を当てたい。
 第一点。SYRIZAには一〇年以上さかのぼる歴史がある。二〇〇一年のその創立は、二つの要素が結合した結果だった。第一の要素は、資本主義的グローバリゼーションの諸作用に対決する運動における、革命派と改良主義者間の統一行動に基づくものだった。第二の要素は、左翼改良主義政党であるシナスピスモスによる、その弱さを理由とした選挙連合の追求に関わっていた。この党は、ギリシャ議会に席を占めるために必要とされた三%という最低得票率に達しないという危険を抱えていた。
 これらの二つの要素がわれわれに、統一戦線戦術を実行するという可能性を与えた。私は統一戦線戦術という用語を使っているが、実際は、改良主義者と急進左翼の間の組織サイズにおける違いのために、この用語の伝統的な意味においては、一九二〇年代と三〇年代に採用された意味においては、統一戦線についてわれわれが語ることはできない。
 過去一〇年SYRIZAは数々の異なった局面を通過してきた。そこには、諸運動内部における統一行動、大学の私有化を可能とさせる憲法改変に向けた動きを阻止することに二〇〇七年に成功を見たような諸運動に対する支援、あるいは二〇〇八年一二月の、一五歳の若い学生、アレクサンドロス・グリゴロポウロスの殺害を伴った再度の青年反乱――それは、腐敗、公的資金の転用、そして社会的危機の始まりといった空気の中で起きた――などがあった。
 この連合はさらに、二〇〇四年のEU議会選や二〇一〇年の総選挙期間中のようないくつかの分裂をも経験することになった。これらの分裂は、改良主義指導部が社会民主主義のPASOK(前政権党である全ギリシャ社会主義運動:訳者)との連携を作り出そうと試みた時に起きた。
 われわれがSYRIZAを考える時、抵抗のための社会的政治的運動という背景から離れて、それを独立した諸勢力(各自の新聞と財政をもつ)の連合と見なすとすれば、この連合は一つのモデルとはなり得ない。その上にギリシャでは、左翼によって勝ち取られてきた政治的空間がある。この左翼――そして私が語っているのは左翼であり、中道左翼ではない――は総投票数のおよそ三三%を代表している(SYRIZA、KKE――共産党――そしてANTARSYA――反資本主義左翼の戦線)。加えて反資本主義の急進的な諸組織は約四五もある。

闘う民衆が求め
た政治的手立て


 第二点。SYRIZAの成功を説明したいと思うならばわれわれは、支配階級の政策を打ち破るために、ギリシャの労働者階級が近年数多くの闘争に取り組んできたということをしっかりと心に刻まなければならない。二九回以上のゼネスト(ないしは一日ストライキ)――その中には四八時間以上のものもあった――、政府庁舎の占拠、さまざまな公園(アテネのシンタグマ広場を始め)を占拠した怒れるギリシャ人の運動、不公正な課税や公共交通機関の料金引き上げ、さらに自動車道路と私有化された道路その他の使用料に反対した「われわれは払わない」運動、などだ。
 二〇一二年暮れと二〇一三年初頭の闘争の後退にもかかわらずわれわれが忘れてならないことは、今年二月二〇日のゼネスト期間中の、街頭における重要な闘いだ。そこには地下鉄労働者、船員、農民たちが含まれていた。同様に、三月初めの教育ストライキに向けて、すでに決定が採択されていることも忘れるべきでない。さらにわれわれは、二つの政権、ゲオルゲス・パパンドレウ・ジュニアのPASOK政権とルーカス・パパデモスの専門家と金融エリートの政権を打倒した運動にも触れなければならない。
 これらにもかかわらず確かに、抵抗の社会運動は支配階級の政策を逆転させることができていない。それゆえにこそ社会的抵抗運動は、二〇一二年の五月と六月にそれ自身をあらわにした情勢の中で、投票箱を通じてその逆転を行おうとした。勤労諸民衆はこの目的に向けSYRIZAを使った。そして、以前にはSYRIZAの二倍の得票実績をもっていたKKEが使われることはなかった。
 その背後には三つの理由がある。
 つまりSYRIZAは運動内部で活動していた(徹底したセクト主義政策を適用したKKEとは異なって)。さらにSYRIZAは、政治的オルタナティブを提供した。左翼政府という自身の要求によってだ。そして最後にこの連合は、左翼の統一を、特にSYRIZA、KKE、ANTARSYA間の、違いを乗り越え、多数の民衆が表明している必要を出発点とした統一を呼びかけた。
 同時にわれわれは、二つの選挙の間の時期〔二〇一二年五月から六月にかけて〕、ブルジョア諸政党との「救国」政権に合流せよ、という圧力すべてに、SYRIZAが確固として抵抗したことも忘れるべきではない。

左翼政府が機能
できる条件とは


 第三点。SYRIZAは、勤労民衆が使うことになる、諸闘争に付け加えられたもう一つの政治的仕掛けと見られている。KKEとANTARSYAの同志たちが犯している出発点的過ちは次の事実にある。つまり彼らは左翼政府を、単に資本主義を管理するにすぎない一つの権力と見ている、ということだ。そのために彼らは、キプロスのAKEL(勤労人民進歩党)という左翼の国家管理とその明確な敗北を事例として使っている。この党は今年二月の選挙で、ニコエ・アナスタシアデスが代表する右翼に対して、ディミトリス・クリストフィアス(AKEL)の大統領選敗北という事実を残した(本紙四月八日号、二二日号参照:訳者)。
 しかしSYRIZAは、AKELや他の中道左翼諸政党とは異なり、メモランダム(トロイカとギリシャ支配階級の一部がでっち上げた三つの緊縮計画)の取り消しに関する綱領的な合意を基礎とする、また支配階級の諸政策の打倒に基づく、左翼政府のまさに過渡的な目標――ギリシャの特定された情勢における――を力説してきた。
 したがって議論は、諸闘争の波の結果として左翼政府の目標の達成に向けわれわれに余地を作る、そのような諸条件に関するものとならなければならない。もちろんそれは、そのような政府が最終目標ということではなく、その政府が勤労民衆とその同盟層の自身に対する自信並びに闘争中の労働者の力を強める過渡的な一歩であるといった事実を、しっかりと心にとどめつつということだ。
 第四点。明白なことだがシナスピスモスの改良主義指導部は、左翼政府の確立を何よりも純粋の選挙戦術の結果として想定する発想法の下にある。その理由からこの指導部は、いわゆる現実主義者の圧力に順応し、社会民主主義の政治層、より正確に言えば社会自由主義の諸政策に源をもつ者たちに接近することで票を得ようと試みている。
 この戦術に対する紛れもなく率直かつ誠実な反対派に水路を与えるという目標の下にわれわれは、SYRIZAの最新評議会において「左翼政綱」を創立した(シナスピスモスの「左派潮流」とRプロジェクトの諸勢力が結集)。そしてSYRIZA内部で二七%の得票をもって支持される左翼反対派をつくり出した。
 Rプロジェクトは、「左翼政綱」の四分の一を代表している。それは、全国的な政治領域のみではなく、SYRIZAの地方組織内部や職場、また労働組合内の闘いを導いている諸組織と活動家からなる「赤い」ネットワークに他ならない。そして労働組合は、現政権と経済危機から来る打撃の下に再編が起きつつある場なのだ。Rプロジェクトは、SYRIZAの改良主義路線をとる指導部の順応と動揺に対する障壁を築くに十分な勢力の合流をつくり出そうと挑んでいる。
 そこにおけるSYRIZAに対するわれわれの基本的な綱領は以下のようなものだ。

?メモランダム並びに借り入れ協定の一方的取り消し、また緊縮法すべての撤回。
?危機の深さを考慮に入れた限界の中での、また公立学校と公立病院を防衛する形における、賃金と年金の引き上げ。
?銀行の国有化、並びにすでに私有化されている大公共企業(たとえば、中国企業のCOSCOの掌握下に入ったピレウス港の戦略的な部門のような)の――民衆統制下での――再国有化。
?資本に対する高率課税。
?国外に逃避した資本をさかのぼって収用する闘い。
?資本の流れの統制。

 事実上これらのことは一種の過渡的綱領に等しい。それはそのようなものとして、労働者階級とその同盟者が決定的多数派を勝ち取り、闘争と討論を通じより正確さを備えて現れることとなる社会主義の展望において、資本主義を克服する方向で実践的に前進する可能性を切り開く。そしてそのような諸闘争と討論は、全国的なレベルと少なくとも欧州規模におけるそれらを、同時並行的に伴わなければならない。

反緊縮・反極右
の戦闘に集中を


 第五点。ANTARSYA(二〇一二年六月に〇・三三%得票した諸グループの連合)の同志たちとの主な違いは、SYRIZAがユーロ圏あるいはEUからの離脱を支持していないという事実に基づいている。
 彼らの主要な論点は、ユーロが支配階級の政治的道具となっている、という点だ。私が考えるに、SYRIZAは、「ユーロのためにはただ一片たりとも犠牲を払わない」との、より正しい立場をとっている。支配階級の少数派が、通貨切り下げを通して労働力の価値をより一層引き下げる可能性が生まれることを期待しつつ、ユーロ圏離脱を支持しているという事実を、問題点として別に残しておきたい。
 その上また、支配階級の手中にある政治的道具ではない通貨という事例を誰か提供できる者はいるのだろうか? 私としては、ユーロ圏離脱にはらまれた、ギリシャ国外にかなりの基金を保有している資本家を利する作用、また労働者階級や小規模農民その他へのさまざまな効果を及ぼす作用、といったものを強調したいとは思わない。
 左翼は反緊縮の困難な戦闘を始めなければならず、自身を支配階級のジレンマ(ユーロかドラクマか)の中に閉じ込めるべきではない。付け加えれば、もしわれわれがユーロから出なければならないとすればそれは、賃金と年金を防衛する強力な運動を通じる場合だけ、ギリシャを超えて拡張し、さまざまな形態とリズムで他のいわゆる周辺諸国と同調する歩みを含む諸政策を通じる場合だけ、また中でもドイツやフランスの労働者階級のもっとも戦闘的な層とのつながりを引き出す場合だけだ。
 最後に光を当てたい点は、ファシストである黄金の夜明けというネオナチとの闘いに関わるものだ。これは闘争の重要な戦線となっている。基本となる点は、ファシストが特定の諸行動を除いて、街頭や公共の場を勝ち得ることに失敗してきた――少なくとも現在までは――ということだ。しかしそれは、以下に見る一つの事実に依存している。すなわち、大衆的主導性が左翼の掌中に確保され続けることが必要だということであり、左翼は現在まで、この分野で行動を統一することで対応することに成功してきた(別個のやり方でセクト主義的に行動するKKEを再度例外として。とはいえその内部での論争は始まっている)ということだ。
 闘争は国際的にまた欧州規模で共通であり、鎖が切れるところでは、もっと信頼される欧州左翼に到達できる諸条件が生み出されるだろう。そしてギリシャが弱い鎖であるとするならば、打ち固められるべき大衆的連帯を獲得する第一段階を勝ち取るために、そこでわれわれが適切に対応することを私は願っている。

▼筆者はギリシャのDEA指導部メンバー。DEAは急進的左翼の連合であるSYRIZAの一構成組織。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年六月号)


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