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    かけはし2013.年4月8日号

銀行の無償国有化から債務の一方的帳消しへ


キプロス

情勢の最近の展開に関する声明

議会での預金課税の否決は
労働者の勝利とは言えない

OKDEスパルタコス
(第四インターナショナル・ギリシャ支部)

 地中海の小国キプロスが国際金融を揺るがしている。タックスヘイブン的施策を通した「金融立国」路線の、アイスランドに続く破綻だ。アイルランドも含んだこの破綻の連鎖は、現在の国際金融システム、その裏面にある新自由主義グローバリゼーションのもろさと持続不可能をあらためて明るみに出した。この破綻が今後どう展開してゆくかは未だ予断を許さない。以下は、この情勢に対するギリシャの同志たちの声明。(「かけはし」編集部)

狙いは銀行救済の価値移転に

 預金の「ヘアカット(強制課税)」に対するキプロス議会の反対投票は、EUとユーログループによる危機管理のための資本家のプランに、重大で複雑な状況をもたらした。
 いずれにせよ、キプロスの労働者にとって危機は消え去っていない。ギリシャ系キプロス人支配階級は、トロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行、IMF)と、この島の資金へのアクセスを求めるロシアの恫喝とのはざまで、責任を取れない袋小路に陥ってきた。ユーロの安定性を名目にするにせよ、ロシアの特権新興資本家(オリガルヒ)の預金を名目にするにせよ、従業員と労働者は、自らの権利、賃金、年金を犠牲にすることで、またカネの貸し手とエネルギー産業の大資本にキプロスの天然・エネルギー資源を抵当に入れることで、キプロスの銀行と「キプロス的発展モデル」の破産のツケを支払わされることになりそうだ。

 われわれは、この事態の展開に遺憾の意を表する理由などない。なぜなら――
1 このプランは反動的で不公正なものだ。大資本と高収入者に請求するのではなく、危機の重圧をすべての階級と社会グループに配分するものだからだ。この法廷に引き出される者すべてが資本家であるわけではなく、すべてが危機の責任を負うものでもない。預金の比較的多くの部分が資本の活動によるわけでもない。むしろ労働の所得、すなわち年金の集積なのだ。
2 このプランは、完全にブルジョア的なものだ。それは社会の貧困層に有利な形での富の再配分をもたらすものではなく、銀行資本に有利になる銀行救済のための価値の直接移転だからだ。実際、金融連合内のユーロ・グループは、労働者への請求によって、そして銀行家に有利になるような債務の増加によって、損失の社会化を実施している。
3 ユーロ圏とEUは、みずからの生来の姿、そしてギリシャの資本との利害のからみあいのために、労働者の利害に敵対している。敵の不安定化はわれわれの利益になる――SYRIZA(ギリシャの急進左派連合)とAKEL(訳注:勤労人民進歩党。「マルクス・レーニン主義」を掲げる。二〇〇八年から今年二月末までキプロス共和国大統領だったディミトリス・フリストフィアスは同党の指導者だった)のユーロへの献身は、完全に愚かな態度である。

労働者の自立的行動で勝利を


 しかし、この預金課税プランのキプロス議会での否決が、キプロスの労働者にとってもギリシャの労働者にとっても勝利である、と信じ込む理由などない。それは「キプロス国民」の「英雄的拒否」などではない。なぜなら――
1 キプロス「国民」には、労働者や抑圧された人びとだけではなく、東地中海を支配しようとしている経営者や教会や銀行家も含まれているのである。アナスタシアディス政権と、このプランに反対投票したブルジョア政党は、「国民」一般を代表するものではなく、ブルジョア階級とその利益を代表している。かれらもまたこの構想に打撃を受け、金融的信用の破綻、したがって銀行システムの崩壊に脅かされているのである。
2 キプロス議会におけるユーログループへの「反帝国主義」的反対には別の側面がある。国内資本、ロシアなどEUと同様に資本主義的であり帝国主義的である諸国、オフショア企業(タックスヘイブン地域に本社を置いて課税を逃れる投資会社など)、国際的投機家などからの圧力である。このプランは大規模なデモで妨げられただけではなく(われわれは、キプロス労働者階級の戦闘性の増大を歓迎するが)、こうした諸利害関係によっても妨げられたのである。
3 キプロス議会は、預金の「ヘアカット」を拒否する以前、AKELのいわゆる「左翼政権」が提出した「三二のメモランダム法案」にためらうことなく賛成投票していた。そして今やAKELは敢えて国民投票を行うよう求めている! もし運動が大衆的抵抗を維持できなかったら、アナスタシアディス政権は新しい措置(さらなる賃金と年金の削減、公共支出と補助金の削減)――それはおそらく「ヘアカット」よりも不公正でブルジョア階級的なものだろう――を速やかに進め、投票に持ち込むことは確実だろう。そして最後に重要なことは、政治的指導層全体が三〇億にのぼる年金基金の蓄えを手に入れようとしていることである。
4 キプロスの銀行システムのいかがわしい役割りは評判が悪い。北部(トルコ系住民の支配地域)であろうと南部(ギリシャ系住民の支配地域)であろうと、この島の労働者は「ブラック」マネーのシステムや「タックスヘイブン」を救済することに何の利害も持たない。それは事実上破産しており、したがって預金の取り戻しは不可能である。労働者の利益になる一つの解決策は、銀行の無償国有化と労働者管理の下での単一の公共金融機関への統合という要求から始まるべきであり、それを債務の一方的帳消し、外国貿易の国有化と結び付けることが必要である。そのことは客観的に言って、EUならびにユーロ圏との決裂を必要とする。

 キプロス政府と議会の民族的尊厳と決意を称賛することは、左翼にとって致命的な誤りである。かれらが知っている唯一の言語は、資本とカネの言語なのである。南北キプロスの労働者は、他国の仲間と同様に、いわゆる反帝国主義的ブルジョア政党やその国際的同盟者から期待するものなどない。かれらは、アナスタシアディス、大口預金者、プーチンとも、EUやサマラス(訳注:ギリシャ首相、保守派の新民主主義党党首)とも共同の闘いを行う必要などない。労働者が勝利するのは、自らの独立した行動によってのみである。
 二〇一三年三月二一日

(「インターナショナル・ビューポイント」二〇一三年三月号)

シリア

民衆は蜂起を継続

ジョセフ・ドーエル/ジャック・バベル

 すさまじい犠牲を払いながらも、人民は独裁的で犯罪的なアサド政権に対する蜂起を継続している。この革命過程は、この国独自の特色を保持しながらも、民主主義と正義が不在のアラブ地域における強力な運動の発展力学の一翼を形成している。


国外からの策謀
が執ように続く
 シリア革命の過程は、差別なき民主的、社会的なシリア社会を樹立するために、不断に宗教的宗派主義を拒否すること、そして現体制を打倒すること、を繰返し明らかにしている。「シリア人民は単一であり、団結する」というスローガンが依然として掲げられ続けている。
 「シリアの友」と自称する諸国が、さまざまな策謀を展開している。一部の国々は、現政権の同盟国、イラン、ロシアなどによって支えられている現体制の構造を維持したままの(イエーメン型の)上からの解決策を押し付けたがっている。もう一方では、サウジアラビアやカタールをはじめとする諸国は、シリアの革命が自分たちの権力や利権を脅かすのではないかという恐れから、革命を宗派戦争に変えたいと考えている。これら諸国は、ジャバト・アル・ヌスラのような宗派的で過激な原理主義派を財政的に支援し、民衆によって形成された委員会の役割を時としては暴力を行使しながら縮小しようとしばしば試みている。アメリカの立場はこの情勢の反映である。一方で、自由シリア軍への武器の提供を拒否しながら、他方では、自由シリア軍とむすびついていない過激なイスラム主義派グループに対する湾岸諸国による軍事援助に同意を与えているのである。

自主的闘い進め
る民衆に連帯を
 このような恫喝の目的は、革命的人民によって自主的に組織化されている急進的な変革の動きを阻止することである。これら人民は、村、地区、町、地域のレベルでの民衆の委員会の結成という経験を発展させてきた。これらの委員会が、デモや人道的援助や難民の受入れの組織から子供や成人の学校の組織化に至る、運動と抵抗の背柱なのである。
 解放された地区では、これらの委員会が住民へのサービス業務を担っている。武装抵抗組織との協力のもとに、委員会は民衆の抵抗の基礎となっている。民衆は、現体制の機構をそのまま維持することになる外部からの策動を拒否している。
 大規模なデモや数多くの宣言は、シリア国民連合のモアーズ・アル・ハティーブ議長と政権との対話という提案を拒否している。二月八日のデモの際のプラカードは「われわれが交渉するのは政権の退陣についてだけだ」と宣言している。人民はまた、いくつかの解放区でジャバト・アル・ヌスラのようなグループが押し付けるあらゆる形の強権的支配をも拒否している。
 革命が真の国際的支援を受けないままにとどまっているという状況を追認しては、悲惨な抑圧と対決して自らの闘いを続けているシリア人民に民主化をもたらすことはできない。しかし、自らの解放のために闘っている人民と連帯することは、いぜんとして緊急な課題となっている。蜂起三周年に三月一五日を出発点に、フランスと世界で連帯のための統一したイニシアチブが取られることとなった。NPA(反資本主義新党)もこの連帯闘争に参加している。NPAはまた、人道的支援のキャンペーンやシリア人民の亡命の権利の防衛のための闘いにも参加している。
『トゥテタヌー』一八六号、二〇一三年三月一四日

 

チュニジア

債務を返済してはならない

政治諸組織の反債務共同戦線誕生

ポーリン・アンバク

 三月二六日から三〇日まで、世界社会フォーラムがチュニスで開催された。フォーラム全体については日本からの参加者へのインタビューを次号以降に掲載予定だが、ここでは、その前段に開催された、初めて地中海規模で組織された反債務会合についての報告を紹介する。この会合の成果は、この地域の政治諸組織による反債務共同戦線の発足に結実した。(「かけはし」編集部)

地中海圏からの
20組織が初会合


 二〇一三年三月二三、二四日、チュニスにおける世界社会フォーラム(WSF)に先立ち、債務、緊縮政策、外国支配に反対し、自由で民主的な、社会的で連帯を基礎としたフェミニスト的かつ環境を尊重する地中海圏を求める、初めての地中海会合が開催された。
 人民戦線(チュニジアの左翼の急進的諸政党、市民団体、また無党派諸個人から構成される連合、その指導者の一人であったショクリ・ベライードは、今年二月六日に暗殺された)の呼びかけの下に組織されたこの会合は、以下の諸組織を含んで、地中海地域からおよそ二〇の政治勢力を結集した。代表的な組織を挙げれば、左翼戦線とNPA(フランス)、スペインからの統一左翼と反資本主義左翼、カタルーニャからはCUP(アルテルナティバ・デスエレス〈人民統一候補、左翼オルタナティブ〉)(訳注一)、ギリシャからはOKDE、ポルトガルからは左翼ブロック、イタリアからは批判的左翼、モロッコからはアル・ムナディールがあり、またエジプト、レバノン、シリア、アルジェリア、パレスチナからも政治諸勢力が参加した。さらに、ベルギー、ハイチ、ベネズエラの組織も参加していた。不正な債務の帳消しを求め闘うために、地中海地域規模でこれらの諸政党と政治組織が会合をもったことは初めてのことだ。
 この集会は、爆発的な熱気を帯び情熱的な空気に包まれた、諸政党代表者の大集会で幕を閉じた。その空気に込められていたものは、債権者の独裁と対決し民衆の解放を求めて債務を軸に力を尽くす、そのような意志に対する各自の確認と一体となった怒りと喜びと集団的な力だった。
 そこには、多くの若者と女性を含んで一〇〇〇人以上の人々がいた。発言の端々で、アラビア語のスローガンが繰り返された(ただし、発言者の中に女性が三人しかいなかったことは不幸なことだった)。会場内の活動家たちは、資本主義システムを一掃するという、また人々に奉仕する新しい世界秩序を見つけ出すという決意を示した。
 さまざまな指導者、革命家、進歩的な活動家に対する敬意が捧げられた。ショクリ・ベライードに捧げられた映像が上映された。ショクリは今も、チュニジア革命の非常に人気ある人物であり、多くの人にとっては熱情の源だ。その後にはもう一つの映像がウーゴ・チャベスに捧げられた。発言者たちは三時間以上の間、チュニジア革命を、またもっと広くベンアリとムバラクを打倒したアラブの春を、喜びをもって歓迎した。
 この歴史的転換点に際しては、国際的な側面を付け加えることが必要だ。チュニジア革命は、数世代もの人々にとっては、革命が言葉の上だけの打開策といったものとはまったく違うことの、民衆は自分たちの運命を手中に握ることが可能だということの、具体的な実演なのだ。この大衆集会は、人民戦線スポークスパーソンのハマ・ハマミによる活力に満ちた発言で幕を閉じた。そして彼は、CADTM(第三世界債務帳消し委員会)の立場に沿った債務に関する立場を発展させた。

抑圧と支配の道具からの解放へ


 この集会宣言序文が強調するように、ベンアリの失墜は、「当該地域の資本主義秩序の、打倒にはいたっていないながらも、武装解除を可能とした。外国支配の、より近年では資本主義の世界的な新自由主義的再編の歴史的産物である社会体制は、依然としてそこにある。しかし反乱が幕を開けた革命的危機は今も作動している。チュニジアで社会革命と民主革命の勝利は今も可能なものとしてとどまっている」。
 このことを背景として、債務を取り除くことが必要となっている。それは、人々の抑圧と支配の道具として今もとどまっているのだ。富の移転と政治支配の道具というこの問題が、論争の中心問題だった。参加者は、債権者と国際金融機関、特にIMFと世界銀行の指令からの解放に向けた行動を確認した。
 何人かの発言者たちは、人々に有利な政策に従うために債権者に服従しないことが可能であることを示そうと、アルゼンチン、エクアドル、アイスランドの事例を強調した。不法で怪しげな債務を識別し帳消しにするための可能な戦略の一つとして、公的債務の監査も提起された。一方で、この問題に関する動員の重要性が強調された。
 一つの共同戦線が出現したことは初めてだ。それは疑いなく、債務と対決する闘いにおける歴史的な前進だ。この会合は、トーマス・サンカラ大統領(訳注二)によって一九八七年にアジスアベバで出された呼びかけをこだまさせた。そしてそれを二六年後、債務反対の共同戦線創出によって具体化した。すなわち、「われわれが返済しないとしても貸し手が死ぬことはないのだから、債務を返済してはならない。このことを確信しよう。逆に、われわれが返済すれば死ぬのはわれわれとなろう。われわれは同じくそのことを確信している」と。チュニスで会合した諸政党は、監視委員会の立ち上げ、並びに二〇一三年、または二〇一四年スペインで再度会合することを決定した。

▼筆者は、CADTMメンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年三月号)

訳注一)昨年一一月二五日のカタルーニャ州議会選挙で、制度圏左翼の左に位置を取る急進的左翼として初めて議席を獲得した。詳細は本紙一月一四日号参照。
訳注二)ブルキナファソの革命的政治活動家。アフリカのチェ・ゲバラと称され、一九八三年八月大統領に就任し社会主義的政策を推し進めたが、一九八七年一〇月一五日、軍事クーデターにより暗殺された。

 


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