誰でも期限なく働ける社会を
権利を守る全労働者の闘いへ |
偽装有期規制
法案にNO!
既報(一月一六日号)のように、野放図な有期雇用にお墨付きを与えるような偽装有期規制法案が策定されようとしている。労働者を見下しきったこの動きに、断固とした「ノー」の声を突き付け、その名に値する有期契約規制を実現しなければならない。労働者にすべての犠牲とリスクをかぶせることで自己の利益を図ることを恥じない者たちに、その対価を支払わせる力をもった強力な全社会的な運動を、当事者をその中核に据えてあらためて現場から登場させなければならない。
この課題への当事者による挑戦が、二月八日姿を現した。「有期労働契約規制法を目指すネットワーク」(略称:有期ネット)の発足だ。同日夕刻、東京都しごとセンター講堂で開催された同ネット結成集会で確認された。当事者が具体的な闘いをもって結集する各労働組合、ユニオンの色とりどりの旗が壇上に飾り付けられた同集会には、会場定員を大きく超える一四〇人以上が参加、この発足への期待が示された。
「労政審報告を
斬る!」解説
同結成集会は、労働組合ネットワークユニオン東京の寺尾そのみさんの、終始会場を和ませつつも熱気を逃さない、柔らかなしかし凛とした司会の下に進行した。
まず、全国一般東京東部労組の菅野存さんが歯切れよく主催者あいさつ。有期契約の本質は、大資本のため、労働者間の分断を進めるため、と鋭くえぐり、そこにメスを入れなかった労政審建議に対し、有期契約労働者自身の団結、組織化を基礎に闘いを挑もうと、有期ネットがめざすものを簡潔に提起した。
続いて、日本労働弁護団常任幹事の小川英郎弁護士が、「労政審報告を斬る!」と題して、同建議の不当性を具体的に解説した。その中では、法律実務上の問題点に加えて、当事者の現実に背を向け有期契約を問題のある雇用と認識していない点、入り口規制を回避する理由がデタラメで時に応じて御都合主義である点、フランスやドイツの事例も都合よくつまみ食い的にねじ曲げられている点、雇い止めが「整理解雇法理」の脱法として機能させられていることに追認を与えてしまう点、などが指摘された。結論的に、入り口規制の導入が不可欠との私見が強調された。
当事者4人か
ら切実な訴え
当事者からは四人が発言した。
郵政労働者ユニオンの深尾忠典さんは、六五歳以上の郵政非正規労働者を一万三〇〇〇人も放り出した郵政事業会社に対する闘いを開始したことを報告。非正規なのに「定年だから」などというあり得ない口実をまかり通らせるわけにはいかないと、今回の雇い止めで現場の仕事が回らなくなっている郵政労務のデタラメさへの怒りも交えて、断固とした闘いの決意を述べた。
東芝の子会社で一九年間も有期契約反復更新で働いたあげくに雇い止めされたユニオンヨコスカの稲葉俊之さんは、有期契約は人を不幸にする、だからそれを大量に利用する日本の代表的大企業はそろって日本社会全体を不幸にすると訴え、有期契約の抜本的規制が何としても必要だ、それは勝てる闘いだ、と強調した。
女性ユニオンの鈴木さんも、有期契約の反復更新の中で労働条件が次第に切り下げられるという不公正な仕打ちを受けた経験を明かした。現在女性ユニオンに結集することで、契約更新の度ごとに団交し何とか条件を守っているが、やはり無期で働きたいと痛切に訴えた。
当事者の最後は全国一般東京なんぶのケイン・デイヴィッドソンさん。元々は無期契約で入社したはずだったが、同僚の過労死自殺を契機に労働時間管理、労働安全をめざし労組を結成したところ、詐欺的な手法で有期契約に変えられ、あげく雇い止めされ現在闘争中だ。有期契約が、明らかな労働組合つぶし、職場の権利主張押さえ込みに使われた典型的事例と言える。ケインさんは、有期は悪い契約であり、安心できる働き方を確立できなければ日本は国際化できないと力説した。ことあるごとに「国際化」を吹聴しTPPに熱を上げるエリートたちの足下がもののみごとにえぐられた。
若者から高齢者
まで社会的課題
次いで、全労働省労組の森崎巌さん、神奈川県高教組の金沢信之さんが特別発言に立った。
森崎さんは、雇い止めが大量に行われている現実を指摘しつつ、有期が雇用を確保するかのような建議の空論を、まず厳しく批判した。そして有期の問題点をはっきりさせなければならないとして、不当に劣悪な労働条件、差別待遇をあげ、雇い止めの不安を利用させてはならないと訴えた。また労働基準監督官としての経験を踏まえながら、出口規制による雇い止め増大の懸念をぬぐえないこと、および五年後の無期転換という今回の建議が、従来は絶対に認められなかった試用期間の五年化を生み出しかねないという危惧も指摘した。
一方三〇年以上進路指導に当たってきた金沢さんは、教員にも広がる非正規化の実情以上に、いわゆる「エリート校」ではない高校の卒業生が直面している就職難の、胸がつぶれるような現状をつぶさに明らかにした。職がないからといって進学したとしても、家庭の事情から年利三%の奨学金付き、結局何百万円もの借金を抱えたまま非正規雇用にしか就けないという、光の見えない現状も訴えられた。非正規でも何でも、ともかく子どもたちに「居場所」をつくってほしいというのが正直な胸の内、という金沢さんの訴えには実に重いものがあった。
家族に有期契約で働く労働者がいる方、という寺尾さんの問いかけに、会場の三分の一ほどが手を挙げた。有期の問題が社会を覆う問題であることを会場はあらためて確認し合う。そして、まさに有期契約の抜本規制にも通底するものとして、利益が確保できるという条件でのみ雇用を考える資本の論理を超えた雇用政策の必要性が、切実なものとして浮き彫りにされた。
全労働者の財産
として支えよう
これらの訴えと会場からの質問を受け、小川弁護士が再度登壇、有期契約には労働者の不安心理を利用する不公正が込められていることをはっきり確認し、それを許さない社会的な力を作り上げなければならないとあらめて強調した。
これらの発言をかみしめ、集会は最後に、神奈川シティーユニオンの藤原千織さんからの、実効性ある有期規制を求め連帯を広げながら社会的に声を高めてゆこう、との行動提起を確認、さらによこはまシティーユニオンの加名義泳逸さんの音頭による団結ガンバロウ三唱で、有期ネットの正式発足を全体で確認しあった。
二〇〇六年年末労働ビッグバンを押しとどめた闘い、二〇〇八年末から二〇〇九年初頭派遣法抜本規制を政治の舞台に押しあげた闘い、それらはいずれも、当初は小さいながらも当事者たちの必死の立ち上がりを口火とした闘いだった。労働規制に逆流が強められているとはいえ、そこに大義がまるでないことも今ではかつて以上に明らかとなっている。闘い続けることがまさに必要とされている。
そしてまさに不屈にあきらめることなく、当事者自身による闘いの態勢がつくられた。この数年重ねられてきた努力が実を結んだ成果であるこの有期ネットの出発を、まさに全労働者の財産として全力で支え共に闘おう。
なお予定にはなかったが、集会には民主党の工藤ひとみ衆院議員も駆けつけ、ひどいていたらくだがそれでも国会に圧力をかけ続けてほしい、と発言した。
(神谷) 竪川河川敷公園行政代執行
団体交渉無視し、高齢者
Aさんを暴力的に排除
二月八日、竪川河川敷公園において江東区は野宿の仲間の小屋に対して行政代執行を行った。一月二一日に竪川の仲間たちは行政代執行攻撃のかけられていた五の橋付近より自主的に移動したが、高齢で体の調子の悪かったAさんが一人、五の橋のたもとに残っていた。Aさんは仲間たちの移動したところに自分で移る意思を表明していたし、区もそのことを認識していた。そして九日には土木部水辺と緑の課との団体交渉が行われることになっていた。にもかかわらず江東区は八日にだまし討ちのように代執行を強行し、高齢で病弱のAさんを暴力的に排除した。
翌日、江東区へ抗議に赴いた仲間たちを江東区はその話しを聞くこともなく排除し、その際の混乱で区役所入り口のガラスが割れたことをもって支援者一人が不当逮捕された。
以下は竪川河川敷公園野宿者有志、山谷争議団・反失実、山谷労働者福祉会館活動委員会の三者が連名で出した緊急アピールである。 (板)
アピール
2月8日に強行された竪川河川敷公園での行政代執行を糾弾する! 区長山崎孝明は、暴力と強制排除の責任をとれ!
2月8日(水曜日)、江東区立竪川河川敷公園の一軒の小屋に対し、区による行政代執行が行われました。代執行の対象とされたエリアに一軒だけ残った小屋が、解体・撤去されました。その朝まで小屋で暮らしていたAさんは、江東区水辺と緑の課の職員らによって、野宿の仲間から引き離され、病院へ搬送されました。江東区はAさんを病院に放り込み、あとは何のフォローもせず知らん顔です。自ら病院を出たAさんを探しだし、その夜の屋根と寝床とを準備したのは野宿の仲間でした。私たちは、この行政代執行を糾弾します。人の命をなんとも思わない江東区水辺と緑の課に対し、心の底からの怒りを感じます。また、この行政代執行にお墨付きのハンコを押した江東区長山崎孝明は、この暴挙の責任をしかるべき形でとらなくてはなりません。
行政代執行によって強制排除されたAさんは、60代半ば。若いころから港湾の倉庫作業を20年以上もしてきた人です。食料、衣類、惣菜などの倉庫で、フォークリフトや玉掛けなどの作業をこなしてきましたが、仕事が少なくなって会社がつぶれ、20年前から野宿するようになりました。竪川での暮らしは15年以上になります。60歳を越えるAさんは、体の具合があまりよくありません。Aさんは代執行の期限が迫っていることを気にしながら、毎日移動のため荷物の整理をしてきましたが、作業は体の調子がいい時にすこしずつ。なかなか進みませんでした。
本人に移動の意志があり、引越しの作業も行っているにもかかわらず、江東区は行政代執行を強行。2月8日の朝8:30、竪川河川敷公園に区職員、ガードマン、私服警察官が大挙して突入してきて(本当に突入だった)本人に代執行宣言をしたあと、本人が「自分で片付ける」と言っているのに一切耳を貸さず作業を開始しました。江東区のヘルメットをかぶった作業員により、今朝までAさんが暮らしていた小屋が解体されていきます。ガードマンと区の職員がピケを張り、これまで一緒に暮らしてきた仲間を現場から遠ざけての解体撤去作業。みな、胸がつまる思いで小屋を見つめています。
その時Aさんは、仲間たちから数100mも引き離された場所で、区の職員、ガードマン、警官らに威圧的に取り囲まれて座り込んでいました。水辺と緑の課は、Aさんの小屋を強制的に解体している張本人です。そんな職員に囲まれて本人の意志がまともに伝えられるわけもありません。私たちは、Aさんと話をするため、Aさんを孤立させないため、Aさんを支えるため、近づこうとしますが、区の職員らにより力づくで排除されてしまいます。私たちを、Aさんから引き離し、はがいじめにする、両手足をつかみ宙吊りにする、ひきずるなどして、100m以上も離れた場所に放り出すことを繰り返しました。
こうして一人きりのAさんを囲みつつ、江東区は救急車を呼んで病院へと搬送しようとします。それまで親しくしてきた仲間が、救急車への添乗を何度も求めるも、拒否されました。役人と警察官が乗り込み、Aさんを乗せ病院へと向かう救急車。役人とのやりとりの中で疲弊したAさんは、血圧が200を超え、救急車に乗るときには意識がもうろうとしているようでした。
江東区は、Aさんのことを気にかける素振りはみせますが、彼のことを本当に考えているのか?その答えは、その日の夕方、明らかになりました。役人と警察官の同乗のもと、Aさんが搬送されたのは、竪川から10kmほど離れた港区の病院です。私たちが夕方、病院に面会に行ったところ、衝撃の事実が。
「Aさんは1時間ほど前に退院されましたよ」
聞くと、後から来た江東区福祉事務所の役人や病院職員に生活保護の手続きをすることを勧められ、それならばと言って病院を出たというのです。資本による使い捨てと行政の無策の中、15年以上にわたって竪川でテントをはって自力で暮らしてきたAさん。江東区は、自ら救急車を呼びAさんを連れて行っておきながら、Aさんが病院を出たあと、誰一人、後を追ったり付き添ったりする人はいませんでした。
私たちはすぐさま、寒空の下、行方のわからなくなったAさんを探しました。すると病院から少し離れた路上の影に、うずくまっている男性が。病院で髪やヒゲをそられ、外見は大きく違っていましたが、長年つきあってきた仲間はすぐにそれがAさんだと気づきました。Aさんは無事発見され、仲間たちの元へ帰ってくることができました。Aさんは帰ってくると、大切に世話をしてきた猫たちを心配して声をかけていました。もし、仲間がAさんを見つけていなかったら、彼は今頃、粉雪のふる中、路上で凍えていたかもしれません。
江東区のある職員は昨日、Aさんのことを「判断能力のないひとだ」と言いました。無理やり連れ去って病院に押し込めれば、それで納得して追い出せるとでも思ったのでしょうか。あらかじめ医療従事者をスタンバイさせていたことからもそれを疑えます。しかし、私たちは声を大にして言いたい。今日、江東区がAさんに対してやろうとしたことは人殺しにほかなりません。江東区はAさんの体のこと、生活のこと、その意志や生き方のことも何一つ考えていないではありませんか。ただただ追い出しのためだけに救急車で病院まで運び、小屋から遠ざけたらあとは知らん顔。人を人とも思わないこのような暴挙に対し、私たちは強く抗議します。
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