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「もんじゅを廃炉へ!全国集会」           かけはし2010.12.20号

ずさんな品質管理と頻発に発生する事故

850人が全国から現地に結集
3・3トンの炉内中継装置が原子炉内に落下する大事故

  十二月四日(土曜日)福井県敦賀市で、「10もんじゅを廃炉へ!全国集会」が午前、もんじゅ原発の近くの白木が浜と、午後には敦賀市プラザ万象大ホールで行われ、原発周辺と敦賀市内を縦断するデモ行進が闘われた。
 もんじゅは、一九九五年十二月八日ナトリウム火災事故をおこし十四年五カ月という世界に例のない長期の停止に追い込まれ、多くの市民や学者の反対の声を押し切って、本年五月六日、運転を再開した。しかし、再開されるやナトリウム漏えい検知器の誤警報などが連日鳴り、その件数は報道発表されただけでも九百件にも及ぶ。さらに八月二十六日には制御棒操作のミスで重さ三・三トンの炉内中継装置を原子炉内に落下させるという事故を起こしている。
 この集会は、このようなずさんな管理能力と無駄な税金をつぎ込もうとすることへの怒りと、とりかえしのつかない大参事を引き起こしかねないもんじゅを絶対に止めようと決意をみなぎらせ、地元の福井県と敦賀市を中心に全国から八百五十人の大結集で大きな成功をかちとった。
 主催は、10もんじゅを廃炉へ!全国集会実行委員会、原子力発電に反対する福井県民会議、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、ストップ・ザ・もんじゅ、反原発運動全国連絡会の六団体。

現地・白木が浜で
抗議集会とデモ

 この日は前日から低気圧の影響で強い風と雨が吹き荒れ、海は激しく荒れ、今にも集会を行う場所にまで波が流れ込みそうな状況であったが、始まる十一時ごろには晴れ間も見え落ち着いた天候の中、白木が浜現地集会は始まった。
 最初に司会者があいさつを行い、日本原水禁の藤岡事務局次長が発言した。「八月の炉内中継装置落下事故は、あるはずのない事故と思われていますが、九百回にも及ぶ警報が鳴る中では起こるべくして起こった事故だったかもしれません。施設の不備、不透明な組織体質など十五年前のナトリウム漏れ事故のときとなんら変わっていない。原子力機構は点検方法や作業の行いかたなどを明らかにするべきだ。またプルサーマル計画の中止も強く求めていかなくてはなりません。地球環境を守るため原発の中止と核兵器廃絶にむけてプルサーマル計画の転換は世界の流れになっています。しかし日本はこれに逆行している。これに対し原水禁は全力で闘います」。
 続いて福井県平和センターが「もんじゅは再開したが、とんでもない事故を起こした。私たちは、大きな世論を作っていかなくてはならない。そうすればかならず廃炉にできる。今、もんじゅを止めなければ重大な事故を起こしてしまう。今が最大のチャンスだ。全国の皆さんと共にもんじゅを止めたい」と、決意を述べた。
 最後に司会者が日本原子力開発機構への抗議文を読み上げ、全員で力強いシュプレヒコールをあげて集会を終了し、もんじゅに向かってデモ行進を開始した。ゲート前で抗議文を渡すとき、参加者二人が体調を崩して倒れるという事態が起き、一時行動が中断したが無事救急車で搬送し再開した(2人は病院で回復)。抗議文を渡し、再度シュプレヒコールをあげて、午前の現地行動を終えて、午後の全国集会会場へ移動した。


実態と危険性が
明らかにされる

 午後一時三十分、敦賀市プラザ万象大ホールで「許すな運転!10もんじゅを廃炉へ!全国集会」が行われた。午前の現地行動を終えた参加者が続々と会場に結集し熱気溢れる中で集会がはじまった。まず司会者が開会のあいさつを行い、原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の小木曽美和子さんが「もんじゅの現状とこれから」と題して報告した。

設計ミスと
度重なる事故

 「もんじゅは再開したが三・三トンもの炉内中継装置を原子炉内に落下させる事故を起こし、身動きができない状態です。再開直前から異常の前兆がありました。福井県と国が再開に合意した翌日の四月二十七日、再検査したはずのガスサンプリング型ナトリウム検知器が故障。再開初日深夜から燃料漏れ検知器一台から翌日にかけ警報発報が四回ありました。五月十日深夜には制御棒挿入ミスがありましたが運転員は操作方法を知らず、手順書も記載なしです。二カ月で不具合が三十二件、誤警報を含む警報発報は九百三十六回にもなります。そして八月二十六日、炉内中継装置落下事故がおこります。落下の衝撃で長さ十二メートルの中継装置は継ぎ目が変形し、引き抜きが不可能になっています」。
 「九五年の事故、〇八年の警報発報、一〇年五月の事故の時と、いずれも県や敦賀市への連絡は一時間から三時間遅れている。品質管理では設計ミスや排気ダクトの腐食などがあり、落下事故を起こした原因のグリッパの分解点検は〇三年からやっていません。背景には製造、施工をメーカーに丸投げし、あるはずのチェックは機能していなかったのです」。
 「大規模な中継装置回収作業をどのようにすすめるのか監視を強めなければなりません。中断している、もんじゅ監視委員会と原子力機構との討論会を再開させ『ダメもんじゅ』を浮き彫りにし原子力政策大綱見直し作業に向け『もんじゅ無用』世論の喚起しましょう。『もんじゅ』『六ヶ所再処理』『プルサーマル』を一体としてとらえ、プルトニウム利用政策の転換をめざし、再生可能なエネルギー社会と原子力に依存しなくてもよい地域の再生をめざしましょう」。


廃炉に向けて
共にがんばろう

 続いて小林圭二さんが「もんじゅ最終章」と題して報告。今回の事故はもんじゅに引導を渡すものだと指摘し事故で浮き彫りになった高速増殖炉の難しさについて説明した。高速増殖炉でのナトリウム漏えい事故は一九九五年までに世界の高速増殖炉十五基で百三十九件も起きている。このような性質のものが人々に安定して電気を供給しつづけなければならない商業炉として成立するとは思えないと報告した。また、もんじゅには一兆三千億円もの費用がかかっていることを明らかにした。
 最後に小林さんは、「日本に先行していた国はすべて高速増殖炉から撤退した。世界でただ一国開発を続ける日本も終焉は近い。しかし黙っていてはずるずる破局へ向かいます。廃炉に向けともに頑張りましょう」と締めくくった。環境ジャーナリストの鈴木真奈美さんは世界のプルトニウム事情について、いかに世界が高速増殖炉から撤退しているかを説明した。
 すべての発言を終え、最後に司会者がまとめとして三つの確認を提起した。
 一つは、もんじゅが止まればかならず六ケ所再処理も止まる。二つに、世界はプルサーマルから撤退している。三つに、もんじゅの役割は終わっている。このことを確認し徹底的に廃止にむけて、全国の皆さんと共に頑張ろう!と閉会のあいさつをして集会を終え、直ちに敦賀市中心部を縦断するデモ行進を多くの福井県民が注目する中、JR敦賀駅まで元気よく行い、もんじゅ廃炉を訴えた。(A)


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