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今、私たちに問われている運動の質とは?         かけはし2007.1.15号

米軍再編に反対し東北アジアの平和を作る民衆連帯を

関西共同行動がパネル討論会
北朝鮮核実験をどう捉えるか? 徹底論議を

 【大阪】十二月二十五日、「北朝鮮核実験と米軍再編」というテーマのパネル討論が、関西共同行動の主催で行われた。
 最初のパネラーは山原克二さん(ゼネラルユニオン)。山原さんは、核問題をめぐる古い論争として、中国核実験を熱烈に支持した当時の日本共産党のことや、この問題をめぐって「いかなる核実験にも反対」の「原水禁」と中国核実験を支持した「原水協」に原水禁運動が分裂したこと、部分核停条約の賛否をめぐって日本共産党から「日本のこえ」派が分岐したことに言及して、どうしてそのようになったのかよく分からなかったと述べた。また中国の文革・ソ連軍のアフガニスタン侵攻・中国天安門事件について左翼の間で意見の対立があったことにふれた。
 そして、新しい論争として、北朝鮮核実験をめぐって韓国民主労働党中央委員会が対立のすえに流会になったことを紹介。韓国民主労総の中の論争では、「北の核は、米軍の先制攻撃の抑止に役立ち、朝鮮戦争の危険性を減少させる」という評価から、「北の核は米ネオコンと日本軍国主義者の存立基盤を拡大させる」という意見まで大きな幅があるという。
 ところで、「日本の左翼陣営には、金正日政権の拉致・核実験などについてタブーが多すぎる。以前は北がよくて南は『傀儡政権』だったが、いつの間にか南北の評価が逆転している。」と山原さんはいう。冷戦が終了して、いまや米帝のひとり勝ちの状況の中で、「反戦・反核運動が反米というナショナリズム、つまり階級闘争否定と排外主義になるのではないかと危惧する。それなら右翼と同じだ。核兵器は『超階級的武器』と考えて絶対反対だ。議論と運動表現とは違う。現在の左翼陣営には論争がなくなった。もっと論争を!」と述べた。

問題は米国のダブ
ルスタンダード

 続いて、二番手は山元さん(全港湾大阪支部)。
 「核には反対という基本的な態度については違いがないが、北の核糾弾とまでいえるのか、疑問だ。北は休戦の継続と考えている。核については米国のダブルスタンダードがある。朝鮮戦争の経験があるから、武装解除したら米国は何をするかわからない、という不安が北にあるのは確かだろう。米国はCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准していない。日本は米国の核の傘の中にいる。日本にとって北朝鮮が脅威なのか、北朝鮮にとって日本が脅威なのかと問えば、日本だろう。米軍のパトリオットが嘉手納に配備された。日米軍事同盟は飛躍を遂げつつある」と述べた。

米帝と闘う「北」
という先入観

 最後に、林さん(ヨンデネット大阪)が意見を述べた。
 「今年の一月十五日の集会(北の核実験直後)ですら北の核実験についてふれたのは自分だけだった。みんなの中には、米帝と渡り合っている北、という先入観があるのではないか。北への人道支援として米を送る運動をしてきたが、北の政権を信用できないから韓国のNGOを通して行ってきた」。「ヨンデネットにはいろいろな団体に参加してもらっている。朝鮮総連からは、『六カ国協議の約束を守らないのなら、抑止力としての核は自衛のためにはやむを得ない。日本の仲間も反核運動の総括が必要だ』と問題提起を受けているが、あらゆる核そのものに反対だ。拉致問題には自責の念を持っている。北への幻想があった。いままで横田さんたちは、北朝鮮の政権と北の人々や在日の人々を区別していた。しかし、今は経済制裁に賛成している。経済制裁すれば、一般民衆の生活が打撃を受けると分かっているのに。でも彼らの思想的な弱さをいう前に、われわれの運動の弱さを考えたい」と述べた。

会場発言ふく
め活発な議論

 この後、三人がそれぞれに質問した。「国家単位でものを考えるのはやめよう、という意見は少しユートピア的だ」(山元)、「グローバリゼーションの中での国際連帯や核の問題でも、現在は民族的な対応にとどまっているが、民衆が見えるようになれば、国際連帯ももっとわかりやすくなる」(山原)、「労働運動でも国際連帯はある。米政権に北の核をいう資格はないが、米国人にはある」(林)、「民衆と国家が違うのは前提だ。植民地支配などの問題とあわせ、包括的に考えるべきだ。自国政府に対する闘いの方が近道だ」(山元)、「北の国家の評価と核のことは分けてやるべきだ」(山原)。
 この後、会場から意見が出された。
 「自国帝国主義に対する闘いを!」、「平和運動は経済政策と併せて考えるべきだ。ミサイル防衛に反対というだけではなく、それにはいくらの金がかかるかなど。日本のプルトニウム開発の危険性や核の廃絶をもっと強く発言しよう」、「軍事力がなければ、国は守れないのか」。
 「核抑止論についてどう思うか」、「核で威圧する方も核で守る方も、そこの民衆が人質になるということだ。核兵器についてはきちんとした見解が必要だ」、「核被害にあった人たちの訴えをもっと押し出すべきだ。自分は北は核攻撃しないと思う」、「核攻撃するかしないかはわからない。だだ、それをやった場合のリスクは考えるだろう。すべての問題にきちんと答えがでるまで動けないのか。そうではない」、「なぜ核実験なのか、それは北への圧力の中でやらざるを得なかったからだ。国連決議より先に日本が経済制裁を決めた事は重大だ。経済制裁解除を! 対話により一歩一歩前進して行く道を!」、など。

ともに核のない
世界をめざそう

 そしてあらためて、三人が最後に一言ずつ発言した。
 「最近見た映画『トンマッコルへようこそ』の中で『偉大な指導者とはと質問され、村民をたくさん食わせることができるものだ、と答えたのが印象的だった」(林)、「論議をタブー視するな。このような場をどんどん持ってほしい」(山原)、「敵視政策と孤立の中で北は恐怖を感じただろうが、核では戦争は止められない。でも、核で対抗する考え方もあるのかなと思う」(山元)。
 最後に、中北龍太郎さん(関西共同行動)が、「反核平和にこだわり、運動を広げていこう! 六者協議の成功を! 日本の改憲・米軍再編と闘うことなしには私たちは何も言えない。ともに核のない世界を目指そう」と、まとめのあいさつをした。  (T・T)


高維京さんと山本潤子さんに06年「やより賞」

 二〇〇六年「女性人権活動奨励賞(やより賞)」の贈呈式が十二月十日に行われた。会場は、東京都新宿区の早稲田奉仕園AVACOチャペル。
 〇五年に創設されたこの賞は、〇二年に亡くなった松井やよりさんの遺志により、@社会的弱者とされる人びとともに、草の根で活動するアジア地域の女性(または集団)に授与される「松井やより賞」と、A「松井やより賞」の受賞者を取材し、世界に紹介する作品を制作する女性(または集団)に授与される「松井やよりジャーナリスト賞」の二種類(『女たちの21世紀』43号、05年8月号)。この日、受賞者をたたえるために約四十名の人々が集った。
 まず「やより賞」の選考経過を、委員長の中原道子さんが報告した。受賞候補者は、アジア各地で活動している草の根の活動家の中から、地域の公平性や緊急性を検討し、いかに困難な状況で活動しているかの観点から選出される。第二回目になる今回〇六年の「やより賞」は、韓国の高維京(コ・ユギョン)さんが受賞した。
 「やよりジャーナリスト賞」については、丹羽雅代さんが報告した。受賞者は山本潤子さん。彼女は、日本と東アジアに暮らす人びとの関係性に問題意識を持って活動を続けるライターである。
 「女たちの戦争と平和人権基金」理事長の東海林路得子さんは高さんに賞状を授与し、西野瑠美子さん(「女たちの戦争と平和資料館」館長)がお祝いの言葉を贈った。高さんが受賞のあいさつをした。彼女の話し方は非常に落ち着いていて、そこに彼女や韓国の女性たちの置かれた状況の困難さが伝わってきた。
 「やよりジャーナリスト賞」を受賞した山本さんは、贈呈式には間に合わなかったため、その日の午後に開かれたシンポジウムの直前に賞状を授与された。(日暮テツ)

「米軍基地と女性への暴力」テーマにシンポ


駐韓米軍によ
る犯罪の実態

 十二月十日、「米軍基地と女性への暴力」をテーマにしたシンポジウムが、東京都新宿区の早稲田奉仕園キリスト教会で開かれ、百人を超える人々が参加した。主催はNPO法人「女たちの戦争と平和人権基金」。
 パネリストは、この日「松井やより賞」を受賞した高維京さん(コ・ユギョン・駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長)、高里鈴代さん(沖縄「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表)、ドナ・ベルトランさん(「在日外国人女性支援団体KAFIN埼玉」代表)の三人。
 はじめに、高さんが発言した。
 駐韓米軍の犯罪の七〇%が交通事故であるのに対し、基地周辺に住む女性が被害者となる犯罪の大部分は、殺人や暴力などの凶悪犯罪である。高さんはこれらの犯罪の数々を紹介したが、特に衝撃的だったのは一九九二年十月に起きた「ユングミさん事件」だった。
 被害者のユングミさんは、想像を絶する悲惨な姿で、彼女の部屋で殺されていた。遺体の中には、コーラの瓶、ビール瓶が入っていた。証拠隠滅のために全身には粉洗剤がまかれ、口にはマッチ棒が詰め込まれていたという。この残忍残虐な事件に対し、韓国当局の捜査は遅々として進まなかった。韓米地位協定(SOFA)の厚い壁があったからだ。
 加害者が拘束されないという事実を韓国国民が知り憤慨した。この事件は『米軍犯罪』という新用語を造りだした。事件当時に大きな問題として提起された韓国警察の捜査権、拘束権、裁判権の制限は、現在でも依然として課題となっている。

沖縄・フィリピ
ンからの報告

 次に、高里さんが発言した。米軍駐留の沖縄の六十年間を大きく三つに区切って、米軍による女性への性犯罪を分析した。
 第一期は、アジア太平洋戦争末期、沖縄での地上戦から朝鮮戦争にいたる時期。米兵は沖縄で集団で女性を拉致・強姦。その被害は、あらゆる年齢にわたった。
 第二期は、ベトナム戦争時(一九七五年頃まで)で、基地周辺で働く女性たちは、帰還兵のすさまじい暴力の受け皿となった。
 第三期は、復帰から現在まで。九五年九月に少女強姦事件があった。九八年五月、女性たちは、カデナ基地ゲート前で「沈黙の行進」を行なった。そのゲート前にある警告板が示している米軍基地の存在、暴力の根拠を痛感した。
 そこにはこう書かれている。「此処は嘉手納空軍敷地の境界線です。許可のない立ち入りを禁じます。基地司令官の命による」。しかし、その逆はないのだ。すなわち県民が暮らす民間地域への米軍の立ち入りを制限するゲートは存在しない。高里さんは訴える。「米軍基地がある限り、女性と子どもに安全はない」。
 パネリストの最後は、ドナ・ベルトランさん。フィリピンの状況を語った。9・11以降、アメリカはフィリピンを、「テロ」に対する「第二の前線」と位置づけた。それによりフィリピン人、特にイスラム教徒への人権侵害が増加しているという。アロヨ政権は、フィリピンにおける米軍のプレゼンス拡大に全面的に協力している。ベルトランさんは、最後に訴えた。「すべての被害者に正義を。国境を越えた女性、市民の連帯を」。
 パネリストの話の後に、レイプのサバイバーの発言、岩国基地、横須賀基地、フィリピンのスービック基地からの報告があった。
 会場参加者との質疑応答では二〇〇五年、フィリピンで行なわれた対テロ合同演習に参加した沖縄海兵隊員が、現地の女性をレイプした事件について報告された。主犯格の隊員は禁固四十年の実刑判決を受けたが、共犯者三人は沖縄に逃げ帰った。沖縄を訪れた女性から、この事件を報告した高里さんに事実関係の問いかけがあった。
(日暮テツ)


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