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日米同盟が生み出した「防衛庁の天皇」         かけはし2007.11.19号

守屋・軍産疑獄の全容究明を

戦争国家化は金もうけの手段「機密」に守られて勝手放題


一カ月百万円!
守屋への接待費

 十一月八日、東京地検特捜部は軍事専門商社・山田洋行の元専務・宮崎元信らを、同社の米国現地法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」の資金一億円を横領したとの容疑で逮捕した。宮崎らが横領した山田洋行・米国現地法人の裏金は五億円以上に上り、その一部がいま問題の守屋武昌・前防衛事務次官などへの「接待」に回されたとされている。
 幹部自衛官出身の宮崎は、防衛庁の最高実力者、「防衛庁の天皇」として采配をふるってきた守屋武昌・前防衛事務次官をゴルフ接待などで取り込み、防衛庁(当時)の軍事利権に食い込んで山田洋行を急成長させてきた中心人物である。
 この間、八月に四年以上防衛事務次官を務めて退官した守屋が、宮崎・元専務から毎週のように「ゴルフ接待」を受けていたことが明るみになり、大きなスキャンダルとなってきた。十月二十九日に衆院で行われた守屋への証人喚問によれば、宮崎による守屋へのゴルフ・飲食などの接待は一九九五年以来二百回に及ぶ。接待額は多い時で赤坂の高級クラブでの酒食代など一カ月百万円にも達していた。この期間は守屋が防衛政策課長、官房長、防衛局長、次官と出世街道を歩んでいた時期にあたる。そして山田洋行は守屋に取り入り、防衛庁幹部への「贈り物」を繰り返し、また退職した防衛庁幹部の「天下り」先となって、巨額の受注を獲得してきた。
 宮崎の逮捕が、守屋前防衛事務次官の逮捕に行き着くことはおそらく間違いない。しかし言うまでもなく、問題は「接待づけ」と「便宜供与」の汚職体質なるものに集約できるものではない。ここに示されているのは、日米安保のグローバルな強化=「米軍再編」と日本の「改憲・戦争国家」化が、米日の軍産複合体のカネ儲けの手段であり、政治家もその利害を体現して立ち振る舞っているあり方そのものである。
 山田洋行が防衛庁から獲得した受注額はこの五年間だけでも百七十五億円に上る。その焦点は、C1輸送機に代わる航空自衛隊の次期輸送機(CX)エンジン調達をめぐる疑惑である。
 CXのエンジンは三社あった候補のうち二〇〇三年八月の装備審査会議でゼネラル・エレクトリック(GE)社製の採用が決まったが、この会議の議長を務めていたのが次官になったばかりの守屋であり、かつGEの代理店となっていたのは山田洋行だった。将来的に約四十機のCXが導入されるため、部品をふくめたエンジンの受注総額は約一千億円という巨額に上る。こうした受注契約がいったん行われれば、部品の交換・修理などで、長期にわたって商社側に利益がもたらされる。
 昨年九月、山田洋行の内紛で宮崎が部下を引き連れて「日本ミライズ」を設立した後、GEの代理店は今年になって日本ミライズが受け継ぐことになった。日本ミライズが代理店になる以前から、宮崎は守屋の承認の下にあたかもGEの代理店資格を既に得ているかのようにふるまい、守屋もCXエンジンについて日本ミライズとの随意契約を促す発言を会議で行っていた(「読売」11月9日など)。

巨額の利益生む
防衛利権の構造

 山田洋行の「防衛利権」問題は、同社が受注した自衛隊装備品の過大請求にまで及んでいる。すでに明らかになっているのは二〇〇一年三月に受注した「チャフ/フレア・ディスペンサー」という装置にかかわるものである。これは軍用機をミサイルから守るために、おとりの金属片や熱源を発射するシステムで、受注額は二十四セットで八億一千万円。だがその後、一億八千万円の過大請求が発覚して、〇二年五月に減額して契約し直した。通常は、こうした過大請求の場合、業者名が公表され、取引停止処分を受けるが、山田洋行にはペナルティーはなく、逆に問題を指摘した担当者が突然異動になった。宮崎らは当時防衛局長だった守屋に「穏便な措置」を依頼したのだという(「毎日」10月30日)。
 それだけではない。宮崎の下で山田洋行が行った過大請求のリストは、さらに膨れ上がる。〇六年二月に十二億七千八百八十万円で納入された早期警戒機AWACSのエンジンは、国際価格の三倍だとされる。山田洋行が受注した大型輸送艦(強襲揚陸艦)搭載のLCAC(ホバークラフト型揚陸艇)の購入額は一台六十億円である。防衛庁はこれを六台、計三百六十億円かけて米国から購入したが、それも国際価格の三倍。さらに自衛隊イラク派兵の装備品(宿舎のコンテナなど)も山田洋行が調達したものであるが、それは仕入れ額の二十倍というとんでもない高額だったと報じられている(「週刊ポスト」11月16日号)。
 まさに「防衛機密」の影に隠れて巨額の防衛利権が培養され、税金を湯水のように浪費して米日の軍需産業・商社を儲けさせ、自衛隊の増強や米軍と一体となった「戦争国家」体制が築き上げられているのだ。

日米安全保障
戦略会議とは

 守屋は衆院での証人喚問で、宮崎の接待の場に「防衛庁長官経験者の政治家も同席していた」ことを明らかにした。これが利害を共有していた政治家が守屋をスケープゴートに仕立て上げようとすることへの「恫喝」であることは言うまでもない。この防衛庁長官経験者としてすでに名指しされているのは、久間章生や額賀福志郎らである。
 しかしそれは「防衛庁長官経験者」に止まらず、日本最大の軍事企業である三菱重工をはじめ、東芝、日立製作所、石川島播磨重工、富士通といった大企業、そして政界の中枢まで含めた、まさに日本帝国主義の支配構造そのものに行き着かざるをえない。
 この問題を解明していく上で重要なのは、今年も十一月七日から九日まで開催された「日米安全保障戦略会議」である。毎年春と秋の二回開かれ、今回で十回目を迎える日米安全保障戦略会議は、ロッキード、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどの米国の戦争産業が、日本の軍事産業と結託しつつ、五兆円に上る日本の軍事予算に群がって最新兵器を売り込むための場でもある。ミサイル防衛(MD)は、そのための最大の材料であった。
 そしてこの日米安全保障戦略会議には久間、中谷元、額賀、石破などといった防衛庁長官経験者、さらに民主党からも前原誠司(前代表)、長島昭久(「次の内閣」防衛相)といった名うての親米・防衛族が参加してきた。
 今年五月にワシントンで開催された第九回戦略会議には、自民党から額賀、中谷ら、民主党からは前原と末松義視が参加し、ゲーツ国防長官、アーミテージ元国務副長官との食事会、世界最大のミサイルメーカーであるレイセオン社や航空大手のボーイング、ノースロップ・グラマンと会談し、最後にエドワーズ空軍基地を視察した。「政治家と受注企業の幹部が連れ立ってアメリカの兵器メーカーを訪れる光景は異様としか言いようがない」と、この「訪米ツアー」を報じた「週刊文春」(11月8日号)は書いている。
 「防衛族」の言う「国際貢献」とは日米の軍産複合体への税金を使った奉仕にほかならない。

米軍再編で守屋
が果した役割

 さらにわれわれが注視しなければならないのは、「米軍再編」、辺野古への新基地建設、在沖米海兵隊のグアム移転の中で守屋が果たした役割についてである。
 二〇〇四年、外務省の意向を受けた二橋正弘官房副長官に全権を委ねた結果として行き詰まった「米軍再編」協議を軌道に載せなおすために、小泉首相に直訴して「米国の新たな国家戦略のもとに、米軍の全世界的な再配置を進めている今、わが国としても主体的に国家の安全保障戦略を構築し、米軍再配置の問題に積極的に取り組んでいくことが重要である」として「日米間の役割分担のあり方を含め、包括的に検討する」方向へ転換させたのは、守屋防衛事務次官その人であった。守屋は、外務省の影響を排して小泉の政務秘書官・飯島勲との直接的なパイプを作り、二〇〇五年二月の日米安保協議委員会(2+2)での「共通戦略合意」、さらに同年十月の新基地建設の沖合埋め立て案から辺野古沿岸部・V字型滑走路案への変更を伴った米軍再編「中間報告」を防衛庁のイニシアティブでまとめあげる上で中心的役割を果たしたのである(以上の経過は、久江雅彦『米軍再編――日米「秘密交渉」で何があったか』講談社現代新書、に詳述されている)。
 そして守屋は腹心の佐藤勉・前那覇防衛施設局長を使い、米海兵隊のグアム移転、さらに辺野古沿岸部への新基地建設に伴う巨額の土木・建設予算の利権に沖縄の地元業者を参入させるための工作に携わっていたとも報じられている。それは稲嶺―仲井真保守県政の「沿岸V字滑走路案」への抵抗を背景にする、小池百合子と守屋の抗争とも関連があると考えられる。
 つまり守屋問題は、「米軍再編」=米国のグローバル「対テロ戦争」戦略に自衛隊を実戦部隊として参加させていこうとする「戦争国家」戦略全体の構図の中で捉えていく必要がある。この問題を徹底的に追及することを通じてわれわれは、「米軍再編」にともなう米日の軍需産業と政府・官僚の癒着を明らかにし、「軍事機密」を楯とした「疑獄の闇」を明るみに出す必要がある。「疑獄」まみれの米軍再編を廃棄せよ! 「軍事費の秘密」を全面的に公開し、ムダ遣いの軍事予算を大幅に削減せよ! それは、反戦平和運動にとってもきわめて重要な課題である。  (11月12日 平井純一)



新しい反安保実
新法つくるな!給油やめろ
防衛省に向け抗議のデモ


 十一月四日、新しい反安保行動をつくる実行委員会(反安保実11期)は、「テロ特措法廃止、新法つくるな! 洋上給油をやめろ防衛省抗議行動」を行った。午後二時十五分から市ヶ谷外濠公園で行われたデモ出発前の集会では、司会の仲間が次のように述べた。
 「十一月一日についにテロ特措法が期限切れとなり、海上自衛隊はインド洋から戻ってきているところだ。これは反戦運動にとって大きな勝利である。イラク攻撃のための米艦船に給油を行ったことが明らかになり、米軍再編を中心になって進めてきた防衛事務次官の守屋の疑獄がさらけだされるに及んで、福田政府と防衛省は危機に陥っている。しかし洋上給油作戦を継続する新テロ特措法案が上程され、民主党との『大連立』に向けた福田・小沢会談で恒久的派兵法の制定がテーマになっている。こうした動きに反対し、自衛隊のイラク・インド洋からの撤退を求めよう。今が大事な時だ」。
 辺野古への基地建設を許さない実行委員会の平田一郎さんのアピール、自衛官と連帯し習志野基地を解体する会の古沢宜慶さんの、PAC3の配備に反対する訴えを受けて、ただちに三十人で防衛省デモに出発。防衛省前では、主催者の反安保実の他に、神奈川(すべての基地にNO!を ファイト神奈川)、浜松(NO!AWACSの会)、愛知(不戦へのネットワーク)、関西(関西共同行動)、広島(ピースリンク広島・呉・岩国)からの申し入れ書も防衛省の担当者に手渡された。
 デモは終始「新法つくるな!」「自衛隊はイラクから撤退せよ!インド洋での給油を再開するな!」などの訴えを元気良く行いながら、四谷三栄公園まで行進した。 (K)

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