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棣棠浄さん(郵政労働者ユニオン副委員長)さんに聞く  かけはし2007.11.12号

民営化された郵政の中で労働組合運動をどう作り出すべきか

闘いの歴史を継承し地域と非正規職に開かれた運動へ


 十月一日に、郵政公社が民営化され、持ち株会社の日本郵政の下に、郵便事業会社、郵便局会社、かんぽ生命、ゆうちょ銀行と四つに分割された。民営化のねらい、問題点、今後の闘いについて、郵政労働者ユニオン副委員長の棣棠浄(ていとうきよし)さんに聞いた。(編集部)

――十月一日、郵政公社が分割・民営化された。政府は郵便貯金を財政投融資に使っていた。郵便局は他の銀行より高い金利で庶民から預金を集め、郵便事業の赤字を補填していた。一体的に運用することによって、郵便事業も守られてきた。民営化はアメリカからの市場開放の圧力などとも言われていますが、真のねらいはなんだったのですか。

 誰のための、何のための民営化かと問われた。国民の財産を切り売りする、アメリカをはじめ多国籍企業の要請とかいろいろあった。総裁選で橋本を予想外に打ち破った小泉は自分の構造改革の本丸は郵政だと、ひとつの看板にして、とにかく郵政民営化をやりきるとアドバルーンをあげた。政治に翻弄された郵政民営化だった。いろいろな見方はあるが実質的な新自由主義・構造改革というより、小さな政府、公務員を十何万人減らせる――そういう意味では国民受けする「改革」ということだった。
 小泉は郵政大臣の時から、郵政民営化を言い、俺は言ったことは絶対やるんだと受けをねらってきた。それが「改革」を推進するにあたっての原動力になった。

――なぜ、分割したのでしょうか。メガバンク二つ分の郵貯量が百八十八兆円、いわば庶民の財産を民間に投げ打って、民間開放した。ここで大もうけしようとする人たちがいる。このカネを自由に使いたいというのが、民営化の大きなねらいではないでしょうか。

 官のカネが民に流れるという構造は全然そうなっていない。使い方が規制されていて、七〇%は国債の運用に当てられている。郵貯・簡保資金の旧勘定(民営化になる前)は別の独立法人として管理下に置かれる。それを管理運用する会社の入札があった。マイナス九億七千万円で落札した。西川社長のおひざ元の住友が資本を出している会社だ。
 郵便貯金の主力商品として投資信託なんかはやっているが、まだまだ金額的には市中銀行の方が多い。顧客数は圧倒的に郵便貯金が多い。今後の潜在的な可能性ということは充分持っている。
 同時に感じるのは、日本の株式会社は株式会社と称しながら、株式会社ではなかった。今までは労働分配率といって、資本の取る分と労働者の取る分を労働組合が交渉してきた。今後は株主総会で、株主と企業が攻防になる。労働組合は関係なくなってしまう。株主に利益を還元するのが企業の目的になってしまう。これからはリスクを覚悟の上で、株式を買うという社会に転換していく。労働組合の役割が本当に問われてきている。
 いろいろキャンペーンされたが、郵貯の資金が民間に流れて、経済の活性化につながるということとは違う。社会の転換をつくりだすための材料になった。汗を流すというより、頭を使ってカネをかせぐ格差社会を当然のこととして是認する社会だ。
 民営化の真のねらいは何かといえば、小泉構造改革の推進力にしたいということと、もう一つはムダ使いをなくして、民間に潤沢な資金を還流して日本の経済を活性化させる……という調子のいい建て前。竹中なんかの言い分だったが、実際のところは後半の方はほとんどそういうふうに機能はしていない。

――民営化によって、何が起きているか。@局の統合による地方、過疎地の切り捨て。四千七百局のうち、千四十八局の集配作業が統合されたA消える簡易局 二万四千九十三局のうち簡易局は三千八百九十二局B手数料の値上げCゆうちょ銀行の問題。貯金量百八十八兆円。メガバンク二行分。住宅ローンの参入。投資信託。八月末、九千七百億円。口数四十六万件。リスクの低い安全資産による運用が義務づけられている。そのため七〇%が国債による運用D物流。千局以上の集配拠点の廃止により、ゆうパックの扱い量が頭打ち。日通との提携による新しい会社の立ち上げ。業界第三位の宅配業になる。国際物流への進出は 中国E局舎の再開発 土地・建物 郵政事業会社が一兆四千億円、郵便局会社が一兆円の資産を持つという。
 初めから郵便部門はもうからないと分かっていて、公共サービスを切り捨て、統廃合・合理化をやっている。この部門に一番矛盾が出ているのですか。

 百三十六年間、郵便のネットワークを築きあげてきたのを大胆に切り捨てていくことになる。地方の郵便局、とりわけ特定郵便局は年金支払いなど金融機関としての役割が非常に大きかった。それを切り捨てていくことによって企業として純化していく。いったん崩れたけれど、特定局長の政治部・大樹の会がもう一度体制を立て直している。民営化はやむなし、三事業一体でやらないと持たないと主張して、国民新党中心に、民営化見直し法案を提出する準備を進めている(民主党からの統一会派形成の条件を飲んで、3年間株式を売却しない法案を社民党を含む三党で提出)。分割することによって、地方のネットワークが維持できない。収益の上がる貯金・保険を別会社にすることによって、郵便事業会社および局会社が自立できるかというと長い目で見れば極めて困難だろう。
 その先手を打って、公社の最後の一年間で四千七百局のうち千四十八局の集配業務を統合した。民営化後ほぼ集配局は全国で統括局として千百くらいにする計画がある。公社から引き継がれている効率化計画は生きているが、結果として簡易局の閉鎖が続いている。これは民営化だけの理由でなくて、どんどんIT化が進み、従来の事務作業でないシステムが導入され、それについていけないのも大きな要因だ。簡易局は極端に減ってきている。かつて四千局あったのがそれを割ってしまった。
――ヨーロッパなどで民営化されたところで、郵便料金が近くは安く、遠くは高くとる。あるいはカネもうけのために、全体を値上げするというように改悪されましたが、日本もそうなりますか。

 それぞれの事業会社を拘束する法律があって、そう簡単にできるわけではない。郵便局も全国一律料金というのはユニバーサルサービスとして維持していくことは法律で拘束されている。料金の問題は民営化というよりも、規制緩和の方です。一時、信書についても自由化して、民間の参入を促したが、ハードルが高く参入していない。メール便などが入っているがまだ規制がある。信書便の規制見直しがさらにに進めば競争が出てくる。料金の問題が出てくることは必至でしょう。
 例えば、ニュージーランドは民営化というよりも規制緩和だった。いまだに特殊会社で百パーセント政府持ち株会社です。日本の郵便ネットワーク会社は十年たっても、日本郵政が全株を持って、その日本郵政の株を政府は持っている。貯金・保険については上場すると言っている。ニュージーランドの場合は、規制緩和で民間企業がどんどん参入した。全国参入したのはナショナルメールという一社だ。ニュージーランドポスト社のポストに並べて青いポストを作って全国制覇しようとした。しかし、二年間で競争に負けて破産した。ニュージーランドポストの方が一時的ダンピングをして、参入した新会社を放逐した。ナショナルメールの方も区分センターなどの設備投資を充分にせず、かなりなおざりにやってきた分だけ、サービスもよくなかった。料金体系でポスト社に負けて撤退した。
 有名な話だけど、小泉がニュージーランドに行った時、「青いポストがあり民間がんばっているね」と言ったがもう倒産していた。ただ、いまだに地域、業種別の民間参入は生き延びている。例えば東京都内をやる東京ポストみたいなものを作って、東京の中だけ自分たちでやって、全国配達は郵便事業会社に丸投げする。そうすると、いいとこ取りなんですよ。ユニバーサルサービスはニュージーランドポストが担っている。もし日本がそうなり、地域ごとの配達会社が出来ていけば、ますます事業会社の経営は困難になる。カネのかかるところだけ、参入した会社から回ってくる。
――郵便局会社と日通があたらしい宅配会社を作る。それは宅配便業界の第三位になると報じられました。これからはこうした動きが進むのですか。

 それはどんどん進むでしょう。新規事業としては、今度はKDDIと提携し、新しい年賀はがきを出す。パソコンで年賀メールを出すのは味気ないので、それをKDDIと契約して、郵便事業会社はメールを印刷してはがき化する。年賀はがきは五十円だが、百円前後になるけれどやる。郵便局会社が名古屋や大阪中郵の土地を再開発し、不動産業を営む。大阪ではJRといっしょになって一等地の開発をする。
――国鉄分割・民営化では大規模な国労つぶしと大量解雇が行われた。電電公社では、五十歳定年制を導入し、十一万人リストラを行っている。郵政の場合は今回そうしたことは起きないですか。

 今のところね、軟着陸です。ひとつは、国鉄分割・民営化との1047人の闘いである国鉄闘争や電電公社と闘ってきた電通労組等の闘いの財産です。
 もうひとつは、時代の流れです。ちょうど民営化を前にして、団塊の世代が勧奨退職に応じていった。国営の時は定員法があって、国によって定員が決められていた。それはなくなったが一応、雇用予定人員はある。民営分社化時にそれを一万八千人も下回っている。だから、とりあえずリストラをする余地がなかった。賃金などについても、賃下げの時代を経てきているから、ドラスチックなリストラの必要性はなかった。

――職場で何が起きているのですか。@サービス残業A「自爆営業」B労働安全・衛生問題C要員不足D人権侵害。

 民営化にいたる経過の中で、労働者の意識が変わっていったというのが一番大きい。労働組合が職場に存在しない。労働者一人ひとりが、今までは公共サービスとして丁寧に提供するところから、すべて収益をもたらす相手=顧客というように意識が変わる。昔から、貯金や保険は営業としてやられてきた。貯金にしても安心・安全な財産運用として商品を勧めていたのが、いまはリスクもある投資信託を主要商品にするとか、そういうことになっている。お客との接し方が変わる。郵便でも今年賀はがきをはじめ多様な商品の営業をやっているけど、商品を売る。労働に対する意識が大きく変えられた。
 もう一つは前述のようなことによって職場の連帯感が変えられてしまった。それをベースにこういう施策がどんどん入ってくる。例えば、サービス残業の問題。当局から強いられるという側面と同時に自主的に。営業マンにとって時間はないでしょ、それと同じですよ。局によっては管理者が必死になってサービス残業をやめさせ、時間を守れとやっているところさえある。なぜ、ダメなんだと開き直る労働者もいる。
 「自爆営業」(商品の売り上げノルマを自腹を切って買い取ってしまうこと)にしたって、強制される場合もあるけれど、自分の成績を上げるために積極的にやるという側面が出てくる。労働安全・衛生問題でも同じだ。公務災害についても、ケガしても自分で断る。
 もちろん一つの政策として、JPS(ジャパンポストシステム……トヨタ方式の導入)がかなり全局で展開されて、仕事・仕事と全部時間単位で計って標準化しようとする効率化はあったけれども、施策を通じて労働者の意識が変えられた。それに労働組合が対抗できなかったということが、職場を荒廃させる大きな要因になったのではないだろうか。

――NTTの合理化の問題にしても、国鉄の民営化にしても、結局多数組合がそこにのっかって行ったから、当局も合理化を推進できた。頑強に反対する多数組合があったら、そんなことはできなかっただろう。

 国鉄民営化の時の国労ですよね。最大組合が国労で、強力に反対をしていた。それをターゲットにして国家的不当労働行為で、国労つぶしをやった。それを見ているから、全逓はその二の舞はしまないと、当時から言っていた。
 反マル生越年闘争を闘って以降、労使関係の問題も含めて、事実上の共同宣言を発して、その後の合理化施策、例えば、深夜労働の拡大などに賛成していった。
 先日NHKで「宅急便戦争」という古いドキュメントをやっていた。ヤマトはシェアを広げるために、労働条件なんて関係なく、「お客様のわがまま届けます」となんでもありのことをやった。その時は二十年前の全逓本部の考え方だけれども、宅急便に対抗するために、翌日配達のためには深夜勤の導入もやむをえないという立場をとった。自分たちの雇用と労働条件を守るためには、事業を守るとなっていった。企業主義の組合に転化していた。

全郵政に吸収されたJPU

――全逓がJPUになり、全郵政と合併することになっています。完璧な労使一体型の労働組合が出来上がるということですね。

 十月二十二日に統合します。正規職員二十二万人の日本最大の単一民間組合ができる。この二年間、統合のための準備は進められていて、事実上この一年間は中央での経営協議会にJPU、全郵政が同席してずっとやってきている。
 そうした経過の中で、JPUは全郵政への敵対的・批判的な運動については自己批判して、綱領も含めて、企業主義と彼らのいう民主的労働運動に合流する。つまり全郵政への吸収合併ということでしょう。

――それに対して、二年前の郵政民営化国会での共同行動を行った郵政ユニオンと郵産労(全労連系)が組織統合に向けた話し合いを行っていると聞いていますが、どうなっていますか。

 その時の状況、状況で判断してきています。先ず郵政労働者ユニオンの経過について触れてみます。今年二十八年ぶりに、郵政4・28処分勝利判決という画期的なことがありました。全逓内全国的な左派形成というのは反マル生越年闘争と4・28処分を前後してつくられた。これはなぜかというと、権利の全逓というところに身を置いて、青年層がそういう全逓の労働運動に魅力を感じて、生き方をかけてやってきたからです。全逓が労使共同宣言を発するような路線転換があった。左派はあくまで現場の闘争力・戦闘力に依拠してつくっていこうとした。それぞれ各地方でそういうグループがあって、その後「伝送便」という情報誌が出来た。そして郵政全協が出来てくる。
 郵産労は社会党への選挙カンパを行っていた全逓から、政党支持の自由を要求して政治的分岐をした。労線再編の前ですね。
 われわれは看板背負ったグループもいたけれども、基本的には越年闘争やそういう職場の戦闘力を礎にしながら、郵政全協をつくって全国的な反対派を形成してきた。職場や地域にこだわりながら、政治的にいかに全国運動として形成していくのかということを意識しながらやってきた。労戦再編の二年前に、全逓内反対派としては、今までなかったことですが、一九八九年の岡山大会の時に、中央執行委員に連名で対立候補を出した。その後、全国運動としてピースサイクルを始めた。4・28ネットを立ち上げた。
 韓国の右派労組の韓国逓信労組を全逓が招待した時に、集会会場に駆け上がって抗議した。それが統制問題になって、郵自労という大阪の組合が立ち上がった。それをめぐって郵政全協の中で、いろいろ論議があったけれども、労戦再編の中で、どうするか論議を一年間やって、もう行くしかないということで、連合には組みしない、全労協に参加するということで宮城で郵政合同労組が結成された。続いてどんどん独立していった。私の多摩とか広島の場合は統制処分だった。全国で独立組合をつくって、一九九一年に郵政全労協を結成した。
 それで十年間、郵政省当局と全逓から、二重の組織攻撃を跳ね返しまずは生き延びるということで、自分たちの陣地をきちんと形成し、その後多数派形成へということに挑戦してきた。そういう時に必要なのは全国をつなぐ運動だった。郵政全協から引き継いできたのは4・28反処分闘争でありピースサイクルと、あと職場にこだわって、全国職場交流会を毎年やってきた。
 そして、今度民営化を迎えた。橋本行革の中央省庁再編により、郵政省がなくなって総務省の中に置かれて、郵政事業庁ができた。その後、郵政公社法案で郵政公社が作られた。その時の法案で、民営化しないと明確にうたった。しかし、小泉が総裁選で橋本に勝つことによって、民営化が強行された。こうした状況を受けて、郵政全労協は各地の連合体だったが、民営化に射程を合わせて、全国単一組織をめざして約二年ぐらい協議をして、郵政労働者ユニオンを立ち上げた。
 ゆうメイトさんの権利・雇用を守るためにいくつも裁判をやった。ところが勝てない。でも闘うということで、そういう闘いの積み重ねのなかで、ゆうメイトからの相談や信頼を受けることによって、組織が作られていった。ゆうメイト全国交流会を四回やっています。

郵産労との共同
関係について

 統一組織を作る討論と平行して郵政産業労働組合との出合いが出てきます。直接の交流は二〇〇〇年に熱海で郵産労と全逓内のグループが五百人で大集会をやった。その時、シンポジウムなので出てみようということで、郵政全労協の時に参加した。それがひとつのきっかけになって、ILOに郵産労といっしょに民営化国際監視団として行くとか、その一年後に情報交換のために定期協議を始めた。定期協議を二年間程やって今度は共同闘争に踏み出した。民営化反対闘争を共同してやった。
 民営化され、かつ巨大御用組合ができると、職場は荒廃する。当たり前の労働組合を作っていく受け皿をつくろうということで協議を重ねた。新しい組合にはJPUや全郵政からの組合員も受け入れて、受け皿をともにつくろうと話し合ってきた。その作業を郵政ユニオンと郵産労が責任をもって担おうと協議を進めている。
 双方が案を了解した場合には、全国に新しい組合を立ち上げるための統一準備会を呼びかけて、協議をしながら、しかるべき時に新組合を立ち上げようとしている。郵政ユニオンも郵産労もそうなんだけど、双方五十代の団塊の世代が中心になって組合を運営してきた。もちろん、ゆうメイトの組織化などで若い労働組合員も入ってきている。組織は増えています。出入りも激しいけれど、着実に世代交代も出来てきている。
 ただ、双方が言ってきた郵政労働運動の責任ある組合として立てるかと言えば、当面は統合した連合JP労組の百分の一組織ですので多難です。次の世代に引き継ぐためにも、責任を持って引き継げるような組織を残そうという思いがあります。きちんと勝ちにいける陣形をどう作るのかを考えた場合に、今やっていること、置かれた状況、これはほぼ郵産労、ユニオンは共通すると思います。
 双方のいろいろな今までの思い込みというか、事実もあるんだけれども、そういうこともずっと協議していくことによって、かなり誤解がとけるし理解し信頼できることが出てきた。そういうことをベースにして、本部同士は協議が進んできた。お互いの組合員の中に、異論・反論はもちろんありますが。
 郵政ユニオンは職場にこだわってやってきた。強制配転に対してはほとんどすべて人事院闘争をやってきた。ゆうメイトの裁判をやる。サービス残業に対しても刑事告発を辞さないでやる。双方いいこともあるし欠点もある。それをお互いに批判の道具にするのではなくて、お互いの糧に出来るような信頼関係をつくりだす。一足す一が二ではなくて、三、四というように本当に勝負できる一万人の組織をめざしていきたいものです。

公共サービスの再構築へ

――日本版エグゼンプションを押し返し、労働者のための労働者派遣法の改正をしようと全野党と派遣ユニオンなどが院内集会を行いました。ナショナルセンターにこだわらずに、運動課題で共闘していっている。貧困問題、非正規労働など、全体が押し込められた状況を跳ね返していけるチャンスだ。こうした闘いとのつながりは。

 参院選で自公政権が大敗し、安倍が辞任し潮目が変わった。ターニングポイントを迎えつつある。しかしながら、流れとしてはまだ決着したわけではない。再逆転する要素は充分ある。そのためにはきちんと布陣し戦線をつくらなければならない。
 この前の郵政選挙の流れと今回の参議院選挙の流れは硬貨の表と裏のようなものだ。マスコミの影響力というか、ちょっとしたサジ加減で変わる。圧勝したといえ、票数ではフィフティーフィフティーに近い。どういうふうな運動をつくっていくかと考えなければならない。郵政労働運動の観点から言えば、そういう状況にはきちっと棹をさして、主体的に関われることを考えていく。国民新党が主体となって郵政民営化見直し法案を提出したが、民主党は二の足を踏んでいる。それは株式会社日本郵政からJP労働組合、そして民主党というルートで何がしかの圧力があると思われる(10月23日に、民主党と国民新党は「郵政民営化見直し法案むを共同提案すると共に参院での統一会派形成に正式に調印した)。私たちは、そうした流れとは明確に違う、本当の意味で地域社会に有用な公共サービスとしての郵政事業を築いていくか、そして、ワーキングプアの一翼を担わされている郵政非正規労働者の闘いを前進させることをめざしています。新自由主義に抗する闘いでもあると思います。

――今後の郵政労働運動についてお話してください。

 郵政民営化はひとつの象徴で、公共サービスの市場化による流れをどういうふうに対決しながら、労働運動を展開していくのか。民営分社化の直前の九月二十九日に「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」の第三回総会とシンポジウムを行いました。パネルディスカッションには、郵政はもとよりJR、NTT、水道、清掃、自治体の労働者、保育園や郵便局の利用者の方々に集まっていただき「民営化」と規制緩和など、職場と地域利用者の立場から意見交換をしていただきました。労働運動としては産別組織を展望するのか、それとも公共サービス労連みたいところで展望するのか、今後のことについても協議をしていこうとしている。今後重要なのは地域運動です。職場と結びついた地域の拠点となれるような運動としてもつくっていきたい。    (10月10日)


原発とめよう!東京ネット
揺れる日本列島 原発廃止の声を柏崎から六ヶ所村へ

 十月二十七日、東京都渋谷区の千駄ヶ谷区民会館で原発とめよう!東京ネットワーク主催で反原子力の日の集会が開かれた。「揺れる日本列島、今こそ原発廃止の声を柏崎刈羽から六ヶ所へ」をテーマに、約七十人が参加した。司会は大地を守る会の野口さん。
 集会はストップ・ザ・もんじゅ東京の高木章次さんの主催者挨拶で開会。続いて前日に静岡地裁で不当判決のあった浜岡原発差止裁判の報告が福島老朽原発を考える会(フクロウの会)の代表で原告でもある坂上武さんが行った。坂上さんは「地裁判決は私たちが問題だとしてきた中部電力の主張を書きなぞった内容で、問題にする材料がたくさんあり、一夜明けて高裁で追及する楽しみがわいてきた」と東京高裁に移る裁判への支援を訴えた。
 続いて柏崎市議会議員で柏崎原発反対地元三団体代表委員の矢部忠夫さんが報告を行った。「地震後の地元住民アンケートで、もっとも不安なのは原発についてという結果が出た。柏崎と刈羽の住民は、自分の家が被災し、生活もままならないなか、原発の運転再開への不安がもっとも大きい。泉田新潟県知事は議会答弁で廃炉もありうるとまでの答弁をしている。浜岡判決による現地での影響はない」と報告し、市民中心で開始した運転再開に反対する署名活動への協力を訴えた。
 休憩をはさみ作家の広瀬隆さんが「六ヶ所村再処理工場の危険な断層」と題した講演を行った。広瀬さんは当初から訴えてきた六ヶ所の核燃施設を貫く断層についてOHPの投影で詳細に説明。「このまま再処理工場などの運転が強行されていけば百%日本は終わる。活断層は明日か数千年先かわからないが必ず地震を起こす」とよびかけた。高レベル廃棄物の問題の質問に対して、「ロケットで宇宙に飛ばせと言ったのは石原都知事。これは不可能なこと。私は柏崎刈羽の使用済み燃料などは東京で受け入れるべきとも考えるが、運転再開を取りざたされている段階では議論する時期ではない」と、あくまでも廃炉が先だと主張した。
 アピールが三つ行われた。まず、もんじゅ西村裁判を応援する会からは十一月二十九日にある東京高裁での第二回公判への支援がよびかけられた。続いて、フリーライターの吉岡さんから、十一月十八日に日比谷野音を会場に、「NO NUKES、MO REHEARTS」と題した集会とデモを行い、六ヶ所再処理工場をストップさせるために広く、特に若い人たちに問題を知ってもらいと参加と協力がよびかけられた。さいごに、原水禁の井上年弘さんが十二月八日の「もんじゅを廃炉へ!全国集会」へのよびかけを行い、「来年二〇〇八年は、このもんじゅ運転再開という課題と六ヶ所再処理工場の本格運転の開始という大きな課題があり重要な年」と重要性を訴えた。また、横須賀で原子力空母母港化反対運動を支え、核燃料輸送監視活動を支えてきた広沢努さんが急逝されたことを報告、「今後の運動を強めるためにも翌日のヨコスカ月例デモに集まってほしい」と訴えた。
 十一月十八日は日比谷野音に結集し、六ヶ所再処理工場の本格運転阻止、もんじゅの運転再開阻止、そして柏崎刈羽原発の廃炉をかちとろう!    (MK)



全国集会に3000人
テロ特措法・イラク特措法廃止
在日米軍再編を許さない!


 十月二十五日、日比谷野外音楽堂で「テロ特措法・イラク特措法は廃止を在日米軍再編を許さない10・25全国集会」が同集会実行委員会の主催で開かれ、三千人が参加した。
 福山真劫さん(平和フォーラム事務局長)が「@防衛省による記録の改ざん、守屋前事務次官による業者とのゆ着と米軍再編の推進などシビリアンコントロールが欠如している防衛省問題A新テロ特措法案を阻止し、自衛隊の撤退B在日米軍の再編強化に反対する||が当面する重要な闘いの柱である」と方針提起をした。
 続いて、国会報告を近藤昭一さん(民主党・衆院議員)と福島みずほさん(社民党党首)が行った。 民主党の近藤議員は「日本は二度と戦争を起こさないと誓ったはずだ。テロ特措法でやられている給油活動が何のために行われているのか実態が明らかにされていない。アフガンでイラクで普通の人々が殺されている。平和は平和な手段でしかつくれない。アフガンの人々の声を聞いて武力でなく、援助をすべきだ。給油新法を廃案にしよう」と訴えた。
 福島社民党首は「テロ特措法の下での給油活動などで七百億円が使われた。それなのに実態を隠すために航海日誌をシュレッダーにかけてしまった。守屋前事務次官は辺野古への新基地建設を推進し、全国の在日米軍再編強化を指揮した。その裏で利権をあさり私腹化した。こんな防衛省は業務停止にすべきだ」と決意表明した。
 この集会には以下の国会議員が参加し、一言アピールを行った。民主党国会議員の武内則男、大河原雅子、横光克彦、平岡秀夫(山口県岩国出身)、川内博史、社民党国会議員の又市征治、辻元清美、近藤正道、照屋寛徳、重野安正の各氏。いつになく民主党国会議員の参加が多かった。
 次に、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、WORLD PEACE NOWがアピールを行った。そして、沖縄での歴史教科書問題の取り組み、米軍再編反対の沖縄での闘い、参加した地域の運動の紹介、第44回護憲大会アピールが行われた。最後に団結がんばろうで集会を終えて、国会デモに出発した。    (M)


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