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階級的左派は下半期をどう突破するのか?         かけはし2007.11.5号

組合主義の実践を超え階級
の普遍的権利獲得の闘いを



非正規悪法廃棄に向けて

 周知のように当面のニューコア・イレンド闘争は、資本家らが昨年、国会を通過し非正規悪法に基づいて労働者たちを大量解雇したからだ。そのやり方は外注化であれ、即時の契約解除であれ、本質的に問題は非正規悪法と資本の労働柔軟化戦略の結果だ。そしてこれは単にニューコア・イレンドの労働者たちだけの問題ではない。すでにホテルなどのサービス部門はもちろん、学校の非正規職、区庁などの公共部門でも非正規職の解雇を乱発している。
 さらに問題は、資本の戦略がすべての常時的業務を非正規職化することにある、ということだ。これを見せつける代表的な例が、政府が提出した公共部門の非正規職対策だ。政府案によれば常時・持続業務を担当してる2年以上の勤務者を無期契約に転換する、というものだ。しかし、その条件として業務遂行能力が著しく不足したり、業務怠慢の度合いがひどく、継続勤務が不可能だと判断される場合、あるいは事業の終了や変更、予算の減少など契約の解除が不可避なときなどと解雇事由をつけており、実際には無期契約労働者を解体できるようにしている。そればかりか賃金体系も年俸制や職務給制を導入することによって勤務条件の低下および労働統制を容易に設計している。
 このように資本と、総資本として機能している国家は非正規保護法という悪法を媒介として非正規労働を一般化しては、ずうずうしくも無期契約勤労のようなギマン的な処方を出しているのだ。そのために「非正規保護法再改正!」などの主張は、あらかじめこの悪法を認めることに他ならず、無期契約勤労のような見かけだけの正規職、さらに言えば非正規労働の拡散を手助けすることになるだろう。
 振り返ってみれば、「牛が逃げてから牛小屋の棚を直す」と言うが、昨年の非正規悪法の国会通過を阻止しぬくための威力ある闘争を組織することを放棄した状態で、今年になってその悪法の施行令の通過を目前にして反対闘争を行うと言ったけれども、それは逃れ用の大衆ギマン劇となるほかなかった。また「闘争だけが能ではない、交渉を併行しなければならない」として労使政の対話にしがみつき、いざ闘争を組織する時点では「現場の状態がよくない」としてその責任をこっそりと基層の幹部たちや大衆に押しつけてた、このようなやり方は結局、定足数に達せず代議員大会が成立しない状況へと結びついているのだ。
 だがニューコア・イレンド労働者たちのストが雄弁に物語っているように、新自由主義の労働柔軟化に立ち向かった労働者たちの闘争は決して止むことはないのであり、非正規悪法の弊害を満天下に暴露した。こういった点からニューコア・イレンド闘争は個別資本家との闘争ではなく、総資本と総労働の退くことのできない主要な闘争とならざるをえないのであり、階級的左派陣営が死活をかけてまい進しなければならないだろう。そして同時に一歩、前に踏み出さなければならない。まさにそれは非正規悪法自体の廃棄を要求する闘争戦線を構築することだ。
 9月15日、イレンド労働者たちの第3次占拠闘争に対して資本が速やかに警察力を投入したことで分かるように今、資本はこの闘争の広がりを恐れている。この恐れはイレンド資本だけではなく資本家全体にとっても同様だ。現在、資本家たちは韓米FTAをはじめとした各種のFTA協定を通して、いわゆるFTA体制、つまり新自由主義の労働柔軟化を安定的に再編しようとする。そしてその核心に非正規労働の一般化戦略と労働者に対する攻撃がおかれているのであり、こういった点から、非正規悪法の通過は、それ以降の労働法一般の改悪のための手続きなのだ。ところで万一、当面の非正規職闘争が広がり、労働者たちが非正規保護法自体を問題視する局面に変われば、それこそ資本にとっては悪夢にほかならないだろう。そのために資本は今、死活をかけてこの闘争を枯死させようとして一切の手段を動員しているのだ。
 だが資本主義社会において資本の支配は個別資本家たちの直接的な政治行為ではない、いわゆる政治人たちを媒介としてなされるとともに、これらの政治人たちが形式的にであれ名目的にであれ国民一般の代表者を自任するという点において、法を作り通過させたこれらの政治人たちはいかなるやり方であれ、階級大衆の圧迫にさらされている。そのために労働者階級の闘争の進展の度合いによって、これらの政治人たちは自らの政治的利害に立脚し、ときに局面的な態度の変化をせざるをえない。
 こういった点を考慮すれば、階級的左派陣営は単に現在進行中の非正規職闘争に対する支持・援護する式の連帯を超えて、非正規悪法自体を問題視する広範な大衆行動を組織するための闘争を展開しなければならない。すなわち、当面の非正規職問題は、ほかならぬ非正規悪法にあるのであって、この悪法を政治人たち、さらにはこの法を通じて資本家たちと国家権力が非正規労働を拡散させようとしていることを暴露しなければならない。
 この8月、労働法の改悪撤回と非正規闘争勝利のための時局宣言を、労働者の力をはじめとする各社会団体が共同で進めた経緯がある。これはイレンド闘争共対委が主として不買運動に焦点を合わせたのに比べて、非正規悪法自体を問題提起したという点において、当時の情勢の中で一定の意義を獲得できた、と評価できる。
 だが時局宣言に参加した各隊伍は、それ以降1人デモ方式の1人籠城や討論会のほかには、さしたる活動を展開できないまま、時局籠城団を解散した。その解散の根拠は時局籠城を維持しがたいというものだったが、これは非正規悪法撤廃闘争を持続的に展開する陣営の最小限の論議および実践枠の空白へと結びついている。そのために、いかなる形式であれ下半期の非正規闘争勝利と非正規悪法撤廃を旗じるしとして掲げた階級的左派陣営、そしてその旗じるしに同意するすべての勢力が共に行動することのできる論議と実践の構造が求められている時期だ。
 もちろん韓国社会の運動全体の状況を考慮するとき、階級的左派陣営は決して多数ではない。だがそれをもって無気力な実践の言い訳とすることはできない。非正規職撤廃・非正規悪法の廃棄は、すでに大衆的な名分を獲得している階級大衆の普遍的な要求だ。確かに確実においては非正規労働者たちの闘争を正規職労働者が弾圧するなど、階級意識を失ってしまった抜け殻だけの民主労組運動の限界が現れているものの、ニューコア・イレンド闘争でのように、その殻をうち破って真の階級的連帯を現実化する流れもまた同時に形成されている。
 問題は、この時代的要求である非正規職撤廃闘争を階級大衆の自らの要求と闘争として作る粘り強い実践をどう展開するのか、だ。口では非正規撤廃を叫ぶものの、実際には自らの安易な慰めと政派的利害を優先する官僚主義的傾向とは明確に異なる闘争を、今からであっても再び組織しなければならない。
 先の社会運動フォーラムで確認されたように、韓国の社会運動の状況の中で、いわゆる左派のスペクトルはさまざまであり、それだけに差違も存在する。問題は、差違を狭めるための共同の実践だ。非正規撤廃という普通的旗じるしをかけて、当面の情勢において非正規悪法撤廃戦線を構築する実践を共に展開しよう! まさにこのような実践の中で左派の違いが狭められ、新たな運動の可能性を作ることができるのではないだろうか?

「FTA体制」に反撃する運動を

 9月7日、政府は国会に韓米FTA協定の批准同意案を提出した。1年半余り、韓米FTA阻止汎国民運動本部を中心として労働者民衆運動陣営は反対闘争を展開した。だが結局、協定締結を阻むことぎできず、国会批准のまで至ることになったのだ。汎国本は来る11月末に批准同意案阻止の総決起を予定している。けれども汎国本の主要エネルギーである大衆組織、特に民主労総指導部の性向から見るとき、決定的な情勢変換の契機を作るだろうと壮語するのは難しい。この場合、統合民主党とハンナラ党の両党支配構造下の国会では今年でなくとも、いつであれ批准案の通過は可能となるだろう。
 韓米FTAが韓国社会に及ぼす否定的影響にもかかわらず、なぜ反対闘争は難航しているのか? 単に大衆が韓米FTAについての政府・資本の宣伝に従属し、あるいは自分たちの狭小な利益にとらわれて韓米FTAがもたらす総体的問題点を認識できないからなのか? これまた誤った指摘ではないが、まさに重要な問題点は運動の主体の側にある。それは韓米FTAと情勢についての没階級的な理解に基づいた戦術運用の結果だ。
 周知のように、韓米FTAを米国のけしかけによる親米勢力の反民族的売国行為として理解している勢力が大衆組織の執行部を掌握しているのが現実だ。ところで、その売国行為を行っている政権が南北首脳会談を推進している。それでは行動において、どんな結果がでてくるのだろうか? 
 常識的には韓米FTAを推進している政権に対する非妥協的な闘争を展開するのが当然だろうが、状況は変なことになる。1例として、10月2日からピョンヤンで開かれる第2次南北首脳会談を前にして、これを歓迎する大会が9月19日に開かれた。ところがこの日、イ・ジェジョン統一部長官と民主労働党クォン・ヨンギル大選候補、キム・ウォンウン国会・統一外交委員長が並んで出席した。何が闘争を攪乱しているのかも克明に示す事例と言わざるをえない。
 もちろん、これをめぐっても一部では進歩陣営の戦術的柔軟さを示すものであり、民族的な利害は狭小な階級的利害に優先するからだと主張するかも知れない。だが、はたしてそうか? あるいは韓米FTAによって打撃を被るだろうが、南北首脳会談によって南北経済協力が活性化し、今後の統一国家樹立によって「富国強盛大国」ができれば韓米FTAによる弊害も克服されるだろう式の発想をしているのではないのか? 
 わが民族同士で団結すればFTA程度は身軽に克服できる式の浮ついたところは全くないのか? 極端な闘争は避け、むしろハンナラ党の政略的反対によって年内の国会通過はできないはずだから民主労働党が大選でより多くの票を手にすれば食いとめることもできるのではなかろうか式の悩みは、いったいないのか、ということだ。
 反面、韓米FTA闘争は小ブルジョア勢力が主導している運動だから参加する必要はないだとか、すでに協定の締結によってケリがついたのにどんな闘争ができるのか、という自嘲的な声も存在する。だが簡単に批准案を通せないだろうという一部の予想とは違って9月7日に批准同意案が提出されたように、状況によって国会通過はいくらでも流動的なものと理解しなければならないだろう。
 こういった側面において、汎国本の内部で政権との非妥協的な闘争を頑強に展開することを主張してきた諸勢力がその役割をはたせなければ、最悪の状況はいつでも到来するだろう。そのために階級的左派陣営は批准案の国会通過阻止闘争に死力を尽くさなければならないだろうし、総決起が形式的な集会ではなく、現実の政治圏を揺るがすことのできる政治闘争として位置づくことができるように、今までとは違った新たな実戦を組織しなければならない。そしてここからさらに1歩、踏み出さなければならない。すなわち、階級的左派陣営は韓米FTA交渉がもたらす韓国社会の変化を予見し、これに対処するための中・長期的な対案を模索し、踏み込まなければならない。
 韓米FTAなど各種のFTA協定の締結は必然的に労働者民衆の抵抗をひき起こすであろうし、これを効果的に統制できなければ、それは必ずや体制の危機へと連なるほかはない。これを余りにもよく承知している支配階級は今回の大選を経過しつつ、新自由主義支配連合の創出にクビをかけるであろうし、これはハンナラ党が執権するにせよ、統合民主党が執権するにせよ、同じことになるだろう。そしてその核心は労働者民衆の闘争を効率的に統制するために、抑圧的な国家機構を強化するやり方へと踏み出すほかはない。テロ防止法の制定、集会・デモ法の改悪、労働関係法の改悪など、各種の法改悪をゾロゾロと予告しており、これは大選を前後して条件さえ整えば、いつであれ敢行していくだろう。
 韓国社会が「新自由主義警察国家」に転換するだろうという予測は、すでに新自由主義の先兵である米国の例を見ても充分であり、韓米FTAが米国との協定だという点において決して看過できないだろう。
 さまざまな研究報告によれば、米国は3億の人口のうち、1日7ドルで衣食住をまかなわなければならない人口が6千万人に達する。最上層0・1%にあたる30万人は下位40%の1億2千万人が稼いだものよりも、もっと多くの所得を得ている。ところで、このような社会的不平等についての大衆的な抵抗を効果的に予備することは、さまに下層階級を大挙監禁するやり方だ。実際に2005年に米政府が発表したものだけでも収監者218万3798人、執行猶予410万人、仮釈放は80万人だ。つまり人口の2・36%が監獄制度下にいるのだ。

 韓国の支配階級も似たようなやり方を取っている。ノ・ムヒョン政権下で歴代政権最大の収監者が発生したこと、そしてその大部分が労働関連の収監者だという統計が、これを示している。一向に減らない金融被害者と、これらの大部分が生計型貸出の被害者だったという事実も、これを反証している。
 最近では個別資本が救社隊あるいは雇われゴロツキを動員して労働者たちにテロを加える傾向も増大しており、サムスン経済研究所などの分析によれば今後、有望業種として私設警護業に注目したように、持てる者は警察力も信頼できず、生産手段の私的所有を私的暴力に依存してでも守ろうと必死になっているのだ。
 FTA体制は社会のすべての領域を私有化することによって資本の利潤追求を加速化するものであり、その過程において大衆の普遍的な権利は撤廃して破壊されるだろう。教育を受ける権利、医療恵沢を受ける権利を含めて人間が生きていく上で必要な衣、食、住すべての基本的な権利を資本の論理の中で解体するだろう。そのために、このような普遍的な課題を中心として階級的左派陣営は運動を再構成しつつ、階級大衆の巨大な反撃を加えるための戦略を構成していかなければならない。もはやFTA反対という名目的スローガン、狭小な組合主義的利害にとらわれていてはFTAがもたらす社会の変化に運動陣営が対応していけなくなるだろう。
 この間、いわゆる民族主義陣営は韓米FTA自体が階級的含意よりは、それが民族統一にいかなる影響をもたらすのかという観点からアプローチしてきた。彼らが開城工業団地にあれほどまでに関心を示したのも、そのような脈絡から理解できるだろう。だが、このような観点や方式ではFTA体制がもたらす社会変化に伴った社会変革運動の戦略の組み立ては難しいだろうし、そういった点から階級的左派陣営は抜本的な苦悩と新たな実践とを展開しなければならない。

普遍的権利のための闘い

 階級的左派陣営が下半期に何をするのか、という質問に対しては筆者は、ちゆうちょすることなく非正規職闘争、韓米FTA批准阻止闘争とともに入試廃止・大学平準化国民運動本部運動を挙げるだろう。前述したように、階級的左派陣営は非正規職撤廃という時代的要求を現実において階級大衆の自己の要求へと転換させようとする努力を中断することなく展開しなければならない。そして同時に階級大衆の暮らしの最も重要な領域をなしている普遍的な権利、要するに健康権、住居権、などともに教育権を闘いとるための大衆運動を新たに展開しなければならない。

 階級意識は階級闘争を通じてのみ獲得される。この言葉が現実性を獲得するためには変革的運動陣営は階級大衆の中へ入っていかなければならない。だがそれが組合主義のような実践を繰り返すことであってはならないだろうし、まさに階級大衆の普遍的権利を実現する諸般の闘争を急進化させ、労働者大衆の政治をたえず拡張するものでなければならない。
 新自由主義に反対する闘争と、新たな社会を建設する闘争は段階的に配置されえない。新自由主義によって破壊されている階級大衆の暮らし、そこから反撃を組織し、階級的民衆的対案を作り出していこう! だれもが平等に教育が受けられる世の中は可能であることを、土地は私的所有の対象ではなく万人のものであることを、水、エネルギーなど公共資源もまた万人のものであることを今こそ大衆が堂々と叫ぶことのできる闘争を組織しよう! 新しい世の中は可能だ! 階級大衆の普遍的権利を中心として運動を再構築しよう!(「労働者の力」第134号、07年9月21日付、ク・ナムス/会員)



討論も合意もないまま
韓国進歩連帯が強行発足

 韓国進歩連帯が9月16日午後、汝矣島・文化広場で発足式を開催した。これに先立ち同12日には代表者会議を開催し綱領、規約、事業計画などを議決し、16日の発足を決定した。代表者会議には韓国進歩連帯への参加36団体中21団体の代表者が参加し、キム・ヒョンフン(全貧連)、ムン・ギョンシク(全農)、ムン・ソンヒョン(民主労働党)、オ・ジョンニョル、ユン・グムスン(全国女性連帯)、チョン・グワンフン、ハン・サンニョル共同準備委員長7人を共同代表団として選出し、チョ・ドッキ(全貧連)、ソン・ミヒ(女性連帯)、ハン・チュンモク、キム・ソンドン(民主労働党)、チョン・ギファン(全農)の5人を共同運営委員長に選任した。
 一方、韓国進歩連帯の本組織発足に反対している労働者の力、ターハムケ(オール・トゥギャザー)、社会進歩連帯、民主労働者連帯、平等社会へ前進する活動家連帯(前進)などの左派社会政治諸団体は9月6日、「韓国進歩連帯の発足、このままでいいのか」というテーマで討論会を開催し、韓国進歩連帯は進歩陣営全体を代表する連帯組織とはなりえない、という点を鮮明にした。

今後予想される
混乱とジグザグ

 これらの組織は、韓国進歩連帯は「既存の統一連帯と民衆連帯の事務所レベルの統合以上ではない点」、「民衆連帯も大衆組織が集まっている常設共同闘争体だったのに、改めて韓国進歩連帯を発足させなければならない理由や根拠はあまりにも乏しいという点」、「韓国進歩連帯の発足は大衆組織の決議に基づいているとは言うが、全農を除く他の基層大衆組織では論議や決議がない、という点」、「組織発展の論議の過程で提起されていた、民衆連帯が持っている問題点を克服するための方案などは現実化されたものがなしに韓国進歩連帯の発足が強行されている、という点」、「韓国進歩連帯の発足は全国的な連帯戦線や地域での連帯に大きなジグザグと混乱を引きおこすだろう、という点」などを根拠として韓国進歩連帯の発足に反対した。(「労働者の力」第134号、07年9月21日付、ヒム・ニュースより)


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