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「集団自決強制」削除検定撤回を!            かけはし2007.10.8号

歴史認識を問う沖縄の闘い

沖縄県民大会プレ集会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援する運動を首都圏から

皇民化教育が
もたらしたもの

 九月二十七日、文京区民センターで「沖縄県民大会プレ集会@首都圏―大江・岩波沖縄戦裁判と教科書検定―」が、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会、大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)、沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)の三者の主催によって行われ、二百六十人が参加した。
 開会のあいさつを、首都圏の会の俵義文さんが行った。
 「『集団自決』への日本軍の関与はなかったとする教科書検定意見に対して、沖縄は撤回を求めて燃え上がっている。しかし、沖縄と本土とでは温度差がある。本土における世論を高めるために以下の行動を要請したい。
 @集会をいろんな地域でやってほしいA「大江・岩波沖縄戦裁判の適正かつ十分な審理と公正な判決を求める要請書」と「高等学校歴史教科書検定における沖縄戦の『集団自決』の記述」において修正指示を撤回し、申請時の文章に戻すことを求める要請書」の二つの署名を取り組んでほしい。後者についてはすでに五十四万筆が集まり、そのうち三分の二は沖縄である。B沖縄の県議会で二回、その他の沖縄の四十一すべての地方議会で決議があがっている。本土ではまだ五市しかあがっていない。議会で決議を」。
 次に、山内徳信さん(参議院議員)が次のように述べた。
 「今回の教科書は沖縄だけで使われるものではなく、四十七都道府県すべての高校生が使うものだ。私は小学校三年生まで、皇民化教育を受けてきた。教科書が歴史の真実を語らなくなった時、戦争の方向に向かっていった。私は軍歌をすべて覚えている。靖国神社の歌も知っている。校舎が兵舎になり、先生は歌だけを教えた。最初、日本軍を親しみを込めて『友軍』と呼んだ。しかし、戦争になると人間が人間でなくなった。友軍が鬼になった。赤ちゃんの泣き声がしたら、タオルで絞め殺さなければならなかった。手榴弾を二個渡された。一個は米軍に、残りは自決用だ」。
 「日本軍の基地があったから、占領した米軍はその基地を使った。日本軍を告発し、読谷飛行場を米軍から取り戻す闘いをやってきた。辺野古へ新基地を作らない闘いは自分の闘いでもある。九月二十九日の県民大会には知事をはじめ教育長も教育関係者に参加することを呼びかけて参加する。ぜひ、県民大会を成功させよう」。

軍隊は住民を
まもらない!

 続いて、大江・岩波沖縄戦裁判の経過報告を小牧薫さん(支援連事務局長)が行った。次に、山口剛史さん(沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会事務局長)が沖縄の闘いの報告を行った。
 「一九九五年以来の保革を超えた大きな盛り上がりだ。去年の十二月に会をつくった。慰霊の日(6月23日)の前日に県議会で全会一致の決議をあげ、安倍首相を迎えたかった。県会議長が文科省に行っても局長が会うのが当然なのに、審議官しか会わない。安倍首相も慰霊の日の発言で一切ふれなかった。こうした政府の無情さが県民に火をつけた。中里県会議長は、『弟が日本軍から自決用の毒入りおにぎりを渡された。しかし、死ぬときは兄弟いっしょだと食べなかった。収容所にたどりついた時、弟は餓死していた』と自らの体験を語った」。
 「こうした戦争体験を消し去ることへの怒りだ。沖縄戦の教訓は軍隊は住民を守らないということだ。九月二十九日は、宜野湾市だけでなく、宮古や石垣島でも集会が行われる」。
 「二十年間意見がつかなった記述を今回の検定で、教科書審議会は議論を行わず、調査官の原案がそのまま通った。このことは政治的恣意的に書き換えたものだ。教科書がどんどん悪くなっていくなかで、どんな教科書をつくっていけるのか、長くねばり強く運動をする必要がある」。
 次に、沖縄戦研究者の林博史さん(関東学院大経済学部教授)が沖縄戦について語った。
 「米軍が上陸した離島で、日本軍がいない所ではほとんど全員が助かった。捕虜になることを認めない日本軍が@日本軍による住民虐殺A米軍の攻撃に対して降伏させないことによる被害B住民の『集団自決』をつくりだした。今回『日本軍が』『日本軍によって』と加害者の主語が明確になっている記述への攻撃である。主語を考えさせないことによって、責任をあいまい化するねらいがある」。
 続いて、練馬区で決議をあげる運動をしている人と沖縄県人会から活動の報告があった。最後にアピールを採択し、今後の行動予定を確認した。   (M)

b今後の予定
10月15日(月)〜16日(火) 沖縄より二百人規模の代表団が上京し、国会、文科省などへの要請行動予定。「沖縄戦首都圏の会」でも国会行動や集会、宣伝行動を予定。
10月25日(木)連続講座第3回 「沖縄戦の真実と歪曲」講師:大城将保さん(岩波セミナールーム、午後7時)
11月9日(金)大阪地裁 口頭弁論
11月14日(水)大阪地裁報告(岩波セミナーホール、午後6時半)




反安保実が講演集会
沖縄・「本土」で突出する軍隊の暴力をはねかえそう

「美しい国」の
内実と軍事化

 九月二十九日、おりしも沖縄で教科書での日本軍による県民への「集団自決」記述書き換え検定に抗議する「県民大会」が文字通りの超党派で開催され、十一万人の圧倒的な結集が実現されたこの日、新しい反安保行動をつくる実行委員会第11期は「米軍再編下の沖縄と『本土(ヤマト)』〜突出する軍隊の暴力」というテーマで集会を行った。文京区民センターで行われた集会には五十人が参加した。
 「美しい国へ」「戦後レジームからの脱却」をキャッチフレーズにした安倍極右国家主義政権はわずか一年で自滅したが、安倍政権の下で教育基本法の改悪、「改憲手続き法」の成立、防衛庁の「省」への昇格と自衛隊の海外作戦の「本務化」、「米軍再編」という世界的な「反テロ」戦争戦略の下での日米の軍事的一体化など、「戦争国家」化への動きが急速に進んだ。それを最も端的に示したのが辺野古の新基地建設反対住民運動に対する自衛艦の出動であり、「集団的自衛権」行使「合憲化」のための「有識者懇」の発足であった。国家・社会の「軍事化」=「戦争国家」化の流れをどう捉え、どうはね返すかという課題が、福田政権の下でも本質的に問われている。

「機密保持」の
ための虐殺行為

 天野恵一さんの主催者あいさつの後、鳥山淳さん(新沖縄フォーラム「けーし風」編集運営委員)と太田昌国さん(民族問題研究)の二人から講演を受けた。
 鳥山さんは次のように語った。
 「言うまでもなく沖縄戦での教科書での『軍強制による住民の集団自決』書き換え問題は今回が初めてではない。一九八二年にもあった。しかしその時は、軍の強制だけではなく住民の『自発性』もあったという形で、軍による『強制』の存在そのものを否定するものでは必ずしもなかった。だが今回の検定は『強制』だけではなく軍による『関与』さえもあいまいにしており、安倍政権の暴走を象徴するものだと言える。これまでの検定方針を覆す材料がないにもかかわらず、突如それが変更されたからだ」。
 「この沖縄戦の記憶の抹消は、政権の側の計画された一貫した方針だったのか。私は必ずしもそうは思わない。むしろ政権中枢からの明示的な指示がなかったにもかかわらず教科書検定の現場のところで政権の意を酌んで動いてしまうことこそ、本当に恐ろしいことなのかもしれない」。
 「日本軍による『集団自決』強制は、日本軍による住民の直接虐殺とセットで考えなければならない。それを貫いて『防諜』という考え方がある。沖縄戦では住民を動員した陣地構築が行われ、そのことにより軍事機密が住民を通じて敵に漏れてしまうことへの対策が徹底して重視されていた。『防諜』の強化が住民の間に徹底され、捕虜になったり、住民が米軍の保護下に入れば、軍事機密が自動的に米軍に伝わるという危機感にとりつかれた。慶良間諸島では、一時期米軍の保護下に入った住民が、その後島の中に潜んでいた日本兵によって『スパイ』として殺されるという事態も起きた。これは隊長が明確に射殺の指示を下している。つまり日本軍の行動は『機密の保持』という点で一貫しており、軍による直接の虐殺も『集団自決』強制もこの観点からなされたものだ」。
 「こうしたことは過去のものではない。たとえば最近、米陸軍の相模総合補給廠で敷地の一部を開放して音楽祭が開かれた時に、敷地内の倉庫を家庭用ビデオで撮影した人が憲兵隊から数時間にわたって拘束されて事情聴取を受けたという報道がある。また沖縄では普天間基地を一般住民に開放する祭り『フライトラインフェスト』の会場に向かっていた中東出身の外国人住民が入場を拒否される事態も起こっている。『機密保持』を絶対的命題にしたこうした事態は、今の戦争でも起こっているのだ」。
 最後に鳥山さんは「集団自決」ではなく「強制的集団死」と規定すべきだという石原正家氏らの主張に関して次のように述べた。「自分としてはむしろ括弧つきで『集団自決』という言葉を使う意味はあると考えている。『自決』は軍人の行為を指す言葉だが、現実に日本兵がその場に立ち会っていない状況で、住民が自ら死に、家族を殺してしまったというこの異常さ、恐ろしさを喚起することが重要だと考えるからだ」。

建国以来絶え間
ない米国の侵略史

 太田昌国さんは、ロシア革命九〇年と一九九一年のソ連邦の崩壊にふれながら「戦争と革命の世紀」と言われた二十世紀の総括に基づいて次のように語った。
 「ソ連の崩壊による東西冷戦の解消にあたって、これで『戦争の危機』は遠のいたという人もいたが、私はそうは思わなかった。それは東西冷戦という世界の対立関係によって覆い隠されてきた南北矛盾が前面化することにならざるをえなかったからだ。そして米国が世界の唯一の超大国となった二十世紀末以後、米国が行ってきた戦争を、建国以来二百三十年の米国の歴史の中で捉えかえす作業が必要だ」として、あらためて「歴史認識」の決定的重要性を強調した。
 「アメリカの独立革命はインディアンへのせん滅戦争を伴っていた。ジョージ・ワシントンによるイロコイ族の撃滅、ベンジャミン・フランクリンの『次の目標はキューバとメキシコ』という言葉、そしてトマス・ジェファーソンの『自由のための帝国』という主張は、十九世紀いっぱいを通じて実現された。『米国にとって戦争は最大の公共事業』だという人がいたが、それとともに海外での戦争につぐ戦争によって人の心のなかに戦争が『内面化』することとなった」。
 「自衛隊の海外派兵の積み重ねは、アメリカの軍事作戦に日本が完全に加担するものだが、第一の経済大国と第二の経済大国が世界的な軍事作戦で完全な同盟を作り上げる悪夢をわれわれは眼前にしている。このことによる日本社会の変容を許してはならない。安倍は倒れたが、洋上給油活動継続が『国際貢献』というメディアの攻勢は続いている。このような動きを私たちの努力によって変えなければならないし、変えることはできる」。
 質疑応答の後、辺野古への新基地建設を許さない実行委員会の小野さん、ピープルズ・プラン研究所の山口響さん、「日の丸・君が代」処分反対を訴える北村小夜さんからのアピールを受けた。
 福田内閣は、臨時国会でアフガニスタンでの多国籍軍による「テロとの闘い」を「支援」するための「洋上給油」新法の制定をねらっている。反安保実は一連の国会行動に参加するとともに十一月四日(日)に「テロ特措法廃止!新法つくるな!〜洋上給油をやめろ〜11・4防衛省抗議行動」を呼びかけている。
 洋上給油新法阻止、自衛隊のインド洋・アラビア海、そしてイラクからの撤退を!      (K)


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