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資本の土塊を追う救社隊                かけはし2007.10.29号

企業の忠実な奴隷となって
非正規職労働者に暴力とテロ



 7月1日から施行された非正規悪法によって法制度的な手続きが完備されるやいなや、まるでこれを待っていたかのように、正当な権利を要求している非正規職の労働者たちに向かって資本による救社隊の暴力や白色テロが乱舞している。

各企業内で跳梁する救社隊

 8月31日、起亜自動車の華城工場内では非正規職支会の組合員らに、そしてその外では全国非正規労働者大会に参加していた連帯の隊伍に対して、救社隊による集団暴力がほしいままになされた。
 救社隊は「非正規職は下請け業者の正規職」、「正規職の生存を脅かす存在だ」などと、資本の言い分と全く変わらない暴言を浴びせた。しかも彼らの中の一部の連中が着ていたチョッキに書かれている〈民主労総〉の文字は、胸が張り裂け引き裂かれるほどにわれわれを悲惨にさせた。
 9月10日、仁川のGM大宇・富平工場では非正規職支会の結成(9月2日)を知らせる宣伝戦を行おうとしていた非正規職支会の組合員と正規職の活動家たちに対して、GM大宇救社隊による暴力のありようは、あまりにも一緒だった。
 救社隊の暴力はイレンド・ニューコアの組合員らに対しても続けられている。民主労総の上京闘争があった9月9日午後、ニューコア江南店前では救社隊が女性労働者たちに水を凍らせた瓶やガラス瓶、石などを投げつけ、「みな殺してやる」と叫びながらハンマーを振り回したりした。いつものように警察部隊は集会場にいたものの、彼らは救社隊の暴力を拱手傍観しつつ、庇護した。
 9月10日未明、蔚山では復職を要求して闘ってきていたサムスンSDIハイビットの労働者たちの野宿籠城の場で出刃包丁をかざしたテロがほしいままになされた。89年、現代重工業の労働者たちに、98年にはチョング聖心病院の組合員らに、2003年には有給休暇を行使しようとしていた現代自動車牙山工場の非正規職の労働者たちに振るわれた出刃包丁によるテロが07年、今ふたたび大手を振るって行われたという事実に驚きを隠すことができない。

手なずけられなければ弾圧

 7月1日から施行された非正規悪法によって労働柔軟化のための法・制度的な手続きは仕上げられた。だが、非正規職の労働者たちはストと闘争によって資本に立ち向かい、これに対して資本は救社隊という直接的な暴力を用いてでも必ずや労働の柔軟化をなし遂げようと悪あがきしている。さらに資本は救社隊を通じて労働者たちを露骨に分裂させようとしている。
 起亜自動車や大宇自動車の場合、「非正規職は正規職の雇用安定のバルブであり、差別されて当然」という資本のイデオロギーを拡大している。ニューコア・イレンドでは売り上げの損失が、まるで労働者たちのストのせいでもあるかのように入居業者や労働者たちに煽動し、「サタンの誘惑に落ちたスト」などと云々して正当な労働者たちのストを歪曲している。蔚山では「蔚山地域の経済を再生する」との美名の下に、現代グループのチョン・モング復活に12万人の蔚山市民を動員し、保守右翼団体やエセ市民団体などを通じた歪んだ、法にも反する煽動によって労働者たちの正当な闘争さえ「無スト」を要求し、「白色テロ症候群」をも助長している。
 もちろん資本家階級の暴力は、きのうきょうに始まったことではない。1989年の現代重工業の128日間のスト当時、「わが目の黒いうちは労組を認めることはできない」と言っていた現代資本は、救社隊を動員して角材や鉄パイプを振りかざし、出刃包丁によるテロの暴挙を尽くした。このような資本の暴力や弾圧に抗して闘ってきたのが民主労組の歴史だった。
 70〜90年代の軍事政権時代にのさばっていた救社隊が、民主労組を結成しようとしていた正規職労組に向けた弾圧であったとするならば、今日の救社隊は民主労組を結成したり、また守ろうとする非正規職労組に向けられている。組織され闘っている労働者に対する資本の卑劣な戦術は、歳月が流れようとも、ただ2つだ。「懐柔・手なずけと暴力を動員した弾圧!」。手なづけることができなければ根こそぎの弾圧という資本の戦術の中で、救社隊の動員ほどに最小費用で最大の効果を得られるものはないようだ。
 自発性を装った資本のイデオロギー強要、暴力を通じた物理的力の優位の誇示、闘う労働者たちの萎縮、労働者の団結を阻害することなど、その効果は到底、推し量れないほどだ。労働者たちの闘争から会社を守る、という「救社隊」という単語自体が、これらの階級的性格について明確に語っている。救社隊は以前には主として非労組員や雇われたゴロつきなどで構成されたけれども、今は労組員が含まれるケースも珍しくない。

救社隊を成立させた背景

 そもそも1人や2人でなく集団的に、しかも組合員までをも包摂して救社隊を活用できる理由は何なのだろうか。救社隊に参加しなければ罰金制度もあり、人事考課に反映されもするので無理やり引き込まれた人もいるだろうし、ストをする連中はアカだというレッド・コンプレックスの発動によって参加した人もいるだろう。会社から憎まれるのが嫌だったり、故郷や軍隊での先輩たちの顔色を見ながら参加している人もいるだろう。だが事業場の問題に立ち入ってみると、救社隊が動員された事業場は雇用不安や生計不安の大きいことが分かる。
 労働者や元請け・下請けの下級管理職らの場合、雇用不安を感じるとき、どちらに立つのか、会社か、あるいは労組か。これらの人々は現場の力関係で自らの身の振り方を決める。大宇自動車や起亜自動車は、いずれも90年末の構造調整や整理解雇の経験がある事業場だ。海外工場の新設や海外売却、外注化などによって自動車工場での構造調整は予見されており、これに立ち向かった各労働組合の闘争は「雇用安定」への確信を植えつけるには不充分だった。さきごろ、起亜自動車が提示した起亜ビジョン2010の実質的内容は構造調整を通した競争力の強化であり、大宇自動車の場合は研究所の移転と15%の人員削減説が出回っている。
 現場は萎縮しており、資本の柔軟化戦略によって作りあげられた「非正規職は正規職の雇用安全弁」という気分もひと役買っており、救社隊が活用される口実となった。ニューコア・イレンドの店主らの場合も、生存への不安が、ストにまで追いやった会社に対する怒りではなく、ストを行っている労働者たちへと歪んだ形で表現されている。これに加えて古参や上司に対する権威的な服従の軍隊文化、柔軟化や構造調整に対する組織保存の論理、労組活動をサタンの仕業と考える企業の宗教文化など、さまざまな新自由主義の企業文化、家父長制の文化が重なりあって、救社隊の暴力は現実となった。

資本を咬みちぎる闘いを

 だがどんなに包装を施し、表に現れた形がさまざまであったとしても、その核心には柔軟化をわめいている資本の本性が隠されている。救社隊を動員した暴力とテロは労働柔軟化を暴力によって貫徹させようとする資本家階級の総攻撃であり、大韓民国は自由民主主義だという外観をひっかぶってはいるものの、その実は労働者民衆に対する暴力に基礎づけられた社会だという事実を、はばかることなくさらけ出しているだけだ。
 これに活用されている救社隊として戦列を整えている以上、資本の忠実な奴隷と言うほかはない。資本に取り込まれ、救社隊の稼業をしてまでも自分だけは雇用の安定を手にしようという救社隊たちの願いとは違って、いつであれ資本は利潤追求のために再び彼らを捨て去るだろう。
 いま救社隊の非正規職労働者たちに向けられた弾圧の刃は早晩、自分たちの心臓をねらう刃とならざるをえない。奴隷たることを拒否し、「労働者も人間だ」として闘っている労働者たちと、依然として奴隷たることが分からない資本の奴隷=救社隊の人々とを見ながら「韓国の犬は土くれを追いかけるが、獅子の子はその土くれを投げる者に咬みつく」という故事が思い浮かぶ。
 救社隊は資本が投げた土塊を追いかけるが、闘う労働者は必ず資本を咬みちぎるであろう。
(「労働者の力」第134号、07年9月21日付、ペク・イルチャ/会員)




国際抗議文を要請します
韓国FTA反対運動に対する弾圧反対
パク・ソグンとチュ・ジェジュンの即時釈放を

1 状況について

 2007年10月9日午後6時40分頃、上記の2人の幹部が逮捕された。2006年12月からFTA反対闘争で手配中だった二人は、地方にオルグ中だった。彼らは今警察署で取調べ中であり、すぐに裁判のため拘置所に移管される予定だ。
 2人の「嫌疑」は2つ。まず2005年11月と12月、コメ市場の開放反対デモの途中に亡くなった二人の農民の死因糾明デモを主導したというもの。チョン・ヨンチョルさん、ホン・ドクピョさんは警察のひどい暴挙によって死亡した。2番目の嫌疑は、昨年11月、韓国と米国のFTA反対集会とデモを組織したという「疑い」だ。
 昨年7月に汎国民運動本部の2人の代表が逮捕され、今度はまた2人が逮捕されるというものは、韓国政府の民衆運動に対する弾圧の表れだ。私たちは、このような逮捕は憲法で保障された民主的権利を踏みにじるものだと判断する。
  2006年3月、運動本部が結成された後、私たちは民衆に深刻な影響を与える不当な韓米FTA反対闘争を平和裏に進めてきた。しかし、ノ・ムヒョン政府は2006年11月以後、運動本部のすべての集会を不法と規定すると宣言した。そして、私たちに対するすべての活動に弾圧を加えてきた。
 私たちはノ・ムヒョン政権が不正な政府の活動に対する抗議として、国民の集会の自由や表現の自由という国民の基本的権利を侵害していると判断する。
 パク・ソグンとチュ・ジェジュンは、韓国の新自由主義反対闘争において、いつも主要な役割を担ってきた。WTO反対闘争においてメキシコ・カンクン闘争、香港、FTA反対(韓FTA、韓EUとのFTA)などを指導してきた。

2 国際抗議文の要請 

 私たちは、国際社会に韓国の状況を深刻に理解してくれるよう要求する。韓国で起きていることは、世界中で起きていることだ。私たちは、個人や組織が下記の抗議文に署名し、独自で韓国政府に送付されることを期待する。
 氏名、組織名、Eメール、電話、国名、都市などを書いてください。そして送付してください。

3 国際抗議文

パク・ソグンとチュ・ジェジュンの逮捕に抗議する

私たちは彼らの即時釈放を要求する!
運動本部への弾圧を即時中断せよ!

2007年10月10日
差出人:民主主義の原則と経済的社会的正義に関心のある国際社会
あて先:ノ・ムヒョン大統領

弾圧と逮捕は憲法の
権利を侵害する行為


 私たちは韓米FTA阻止汎国民運動本部に対する政治的弾圧と、パク・ソグン、チュ・ジェジュンの2人の幹部に対する逮捕について、深い失望感をかくせない。私たちはこの手紙を通じて、次のように要求する。@運動本部のパク・ソグン執行委員長とチュ・ジェジュン状況室長を即時釈放せよ!A運動本部に対する政治的弾圧を即刻中断せよ!
 第1、 パク・ソグンとチュ・ジェジュンの逮捕は、民主主義の原則と憲法の権利を侵害する。政府の政策に意見を表明する集会の自由は正当なものだ。このような権利は、民主主義国家では基本的なものだ。私たちは現在の逮捕が民主主義国家としての韓国の位相を後退させるものだと憂慮している。
 第2、 彼らの逮捕は、政治的、市民的権利に関する国際機構の基準をも違反するものだ。韓国が署名した国連の条約によれば、韓国政府は社会権と人権は促進され保護される義務を負っている。韓国は1980年代以降、目覚しい民主主義を成し遂げた。国際社会は、このような変化を目撃してきた。私たちは、民主主義手段によって選ばれたノ・ムヒョン政府が国際的、民主主義的原則を忘れないことを要請する。また、集会、表現の自由は保護されねばならない。
 第3、 私たちは運動本部に対する政治的弾圧は、即時中止されるべきだと要求する。FTAデモ参加者に対する韓国警察の弾圧をマスコミを通して目撃した私たちは、驚愕を禁じえない。運動本部の活動を不法だと決め付けるのは、韓国憲法に対する明らかな違反であり、国民の組織に対する直接的攻撃だ。私たちはノ・ムヒョン政権による2人の拘束を決して認めない。
 この7月には運動本部の二人の代表(オ・ジョンヨル、チョン・グァンフン)の逮捕と併せ、私たちは運動本部に対する弾圧が韓国の民主主義において、危険な脱線の傾向を象徴していると考える。もし、このような傾向が続くようならば、国際社会は座視しないということを韓国政府に警告する。私たちは、韓国政府がこのような失策を即時是正し、韓国と全世界の民衆に固有の権利を取り戻すことを希望する。

【訂正】本紙前々号(10月15日号)1面福田所信表明批判論文3段見出しから4〜5行目「自民党の対決姿勢」を「自民党との対決姿勢」に、同5面上左「荒川集会」の見出し「『憲法を守る会』設立総会」を、「『平和憲法を守る会』設立総会」に訂正します。


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