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南北頂上会談に対するペク・キワンの講演(下)      かけはし2007.10.1号

「すべての核兵器廃絶・人類の良心韓半島宣言」が必要


実質的な平和協定を

 その次に、ノ・ムヒョン氏が北に行って何をすべきなのか? 平和協定を結んでこなければなりません。ある大学の先生が放送に出演して、韓(朝鮮)半島の平和問題については既にブッシュという米国の大統領が話をした、と言ってます。その大学教授は新聞もよく読み、勉強もかなりやったようです。ブッシュが韓半島の平和を望み、そして平和協定を行おう式のことを言ったのだから、われわれも耳を傾け、平和協定を作る際には共に踏みださなければならない、と言ったそうです。
 ところで、その大学教授は勉強を米国に行ってやったようだ。ブッシュが、いつ韓半島の平和を云々することがあるか? 北に向かって何と言ったのか? 悪の枢軸と言ったぞ。テロ支援国家だとも。テロ支援国家だとばかり思いませんでしたか? 敵性国貿易規制法によって北側をがんじがらめにして、ご飯も食べられないようにしたじゃないですか。洪水の被害で飯が食べられない? 違います。経済的、軍事的封鎖のためです。この話を聞いてペク・キワンは北の味方なのか? 笑わせないで。ブッシュの話をしていて出てきたものだから。
 ブッシュがいつ韓半島のために平和の話をしたことがあったか? ともあれブッシュがそんな言葉を発することがあるとすれば、それはここにおいでの皆さん方が平和運動を猛烈に行った結果ということになります。ノ・ムヒョン氏が北に行ったら、銃声の聞こえない韓半島の戦争状態を、この停戦状態を平和協定へと変えなければなりません。米国や中国の連中の顔色をうかがうことはありません。われわれ同士で平和協定を行うべきなのではないですか?
 皆さん、ところで韓半島の平和協定とは何ですか? 戦争状態を紙1枚で宣言することが韓半島の平和を体制化するものではありません。まず米軍を追い出すようにしなければなりません。米軍の存在様式は、この地の平和をじゅうりんする戦争挑発的なことばかりをしている、ということです。米軍撤退という話を盛り込んで平和協定を実現しなければなりません。
 2番目に韓半島の平和を乱している国際同盟がある。南側では韓米軍事同盟を破棄しなければならないでしょうし、北側もそんなものがあるのならば破棄しなければなりません。それに加え、韓半島の平和を脅かしている法律制度があるのはご存知ですね? 国家保安法です。国家保安法には北側は敵性国家なので叩きつぶそうという前提が横たわっている。北側を緒戦で撲滅しようとするならば、北側もじっとしてはいないでしょう。あちら側にもそのような法律があるのではないでしょうか。南北韓ともに、そんな法律をなくす宣言をしなければならない、という話です。
 皆さん、韓半島の平和体制は、それによってできるものではありません。よくよく心して聞いて下さい。現在、休戦ラインには地雷が300万個以上も埋められています。それがひとつ爆発すれば5人の足首が奪われるでしょう。1500万人の足首がなくなるのです。休戦ラインに行く人とは誰ですか? それは若者たちです。それだけではありません。大砲をバンと撃てば、しかも釜山までも飛んでいけるその大砲に地雷を装着して撃てば地雷が地中に埋められる、と言います。毎日、飛び交う飛行機で地雷を落とせば韓半島全体が地雷原になるということではありませんか?
 若者1500万の足首を狙っている地雷で満ち満ちているというのだから今回、ノ・ムヒョン氏が北に行って休戦ラインにある地雷をすべて除去しよう、との結論を出してくれ、ということです。ノ・ムヒョン氏、今回はシン・ドンヨプ氏の詩を持ってお行きなさい。『脱け殻は去れ』、わが友シン・ジンヨプの詩を吟じてさしあげます。休戦ラインの軍隊、地雷、銃口をまるごと捨てて広い野を、共に交わる広場を作ろう、というものです。全世界の良心を持った人々、米帝国主義者から被害を受けて生きている人々すべてがその土地にやってきて涙を流していくことのできる、そのようなものが平和体制だ、という話です。

韓米自由貿易協定の破棄を

 南北の相互助け合いを、これからやるのです。「相互助け合い」、ところでノ・ムヒョン氏はそれを別の言葉で「南北経済共同体を作ろう」と言いましたね。皆さん、それはサギです。南北経済共同体を作ろうという話はサギだと言うのか? なぜ? すでに南側の経済は米国と一体となりました。韓米自由貿易協定が、それです。ところで、何を今さら北側と経済共同体を作る? いかに権力を握ったからと言って、そんな真っ赤なウソをつくのですか? 私も株主である、ある新聞社のある若い記者が「今こそ北は開放、改革を行う、との態度を示せ、そうしてこそ南北経済共同体を作ることができる」と言いました。その記事を書いた若者は考え違いをしているのです。それはブッシュの主張なのです。ブッシュの言い分を、私が株主である新聞社の記者が翻案してわが読者たちに出したものです。
 先日、ある若者が私のところにやってきて「先生、最近の中国の経済成長に関してどう考えるか」と言いました。こう私は言った。中国は腐れ切った資本主義の腐敗にはまり、まっさかさまに落ちている「壊れた船」だ、と。すると若者は、何ということを言うのか、と言うので私は続けた。君は中国をキチンと分かっていないな。中国の貧富の格差は世界で1等だ。ところで中国の成金の居間の広さは66坪だ。居間の広さがそのぐらいなら前庭、後庭は100万坪を超える。水たまりを掘るのに、その深さが80メートルだ。広さ推して知るべしだ。窓は防弾ガラスをはめこみ、ふんぞりかえって暮らしている。中国は今、帝国主義に向かっている。
 中国の連中が今日、高句麗の歴史は中国内部の歴史だと言っている。中国は階級闘争の歴史を捨て去り、王都史を中国の歴史の核心と考えている。中国の今日の経済的蓄積過程は帝国主義の証拠というものです。高句麗の歴史は750年。唐は300年、宋も300年だ。中国の歴史は王都史に変わっているのだ。帝国主義のルーツを歴史の中から持ってきた、というわけだ。
 皆さん、そうしてはダメなのです。今後、われわれが相互助け合い運動を行おうとするのであれば、どうすべきか? 第1に韓米自由貿易協定を破棄しなければなりません。北にもそのようなものがあるのならば、われわれと同様に破棄すべきです。そして、相互の助け合いをすることは簡単です。南のコメは少し高いって? 関税をなくし、政府が買い入れます。そっくり買い入れ、北ではコメが1年に150万トン程度が不足するというが、われわれが10年間、毎年150万トンをやり、その代わり北の地下資源を同じ金額分を見積もっていけばよいのではないですか。これが相互助け合いです。
 第2には、何を相互に助け合うのか。電気200万キロワットを送ると言うが、その代わりに原子炉1つを作ればよいのです。われわれがちょっと手助けすれば200万キロワットは解決します。
 第3に相互助け合いすることがある。それは肥料だ。そのほかには助けるものはない。コメと電気と肥料があれば、残りは向こうで自給自足するだろう。
 話は大体、終わったのですが。今回の会談で行われなければならないのは、わが民族の相互助け合い、平和協定をマンパン(共に交わる対等の広場、の意)協定として作れ、というものであり、すべての核兵器廃棄・人類の良心・韓半島宣言を行え、というもです。両者が出会えば、語るべき話もあるのではないでしょうか? 形式主義に陥ることはないのだから! ハンカチの1枚でも持って行け!

資本主義が地球を殺している

  資本主義の文明がある限り、貧しさと飢えをなくすことはできないのだ。食べられずに飢え死にする人間は2000年前には1人もいなかった。ところが資本主義の高度文明というその中で毎日毎日、飢えて死んでいく人間が3万人を超える。水がなくて死んでいる、5歳にもならない子どもが1日に5000人だ。なぜなのか。今日、この地球に暮らしている人々が1年で食べるものを作っているが、なぜ飢える人間が出るのか。ところで資本主義では、私のモノは私のモノ、だ。ふざけるな。この資本主義文明のゆえに死ぬ人間が生じているのだ。資本主義文明がこのままである限り、犯罪も数限りなく生じざるをえない。
 女性たちを苦しめる犯罪があるじゃないですか。米国の奴らがわが国に来て性犯罪をしでかしているが、それは年に10万人、多いときは15万人にもなる。10万件以上の性犯罪をしでかしても、ただの1人も捕まらなかった。ところでその犯罪は韓半島でだけをやっているのではない。米国に行けば2秒に1人ずつ死ぬ。これが米国だ。米国では監獄に行ってきた人間が2500万人にもなる。10人中1人が、そうなのだ。これをどうしたらいいのか。資本主義文明がこのままである限り、犯罪は続くのだ。
 地球をタンビョル(大地の星)という。われわれが幼かったころは「母ちゃん、俺、空の星を取るよ」と言ったもんだ。母親は「星も腹が減って光を出しているんだ。腹ペコのお前が腹ペコのお星さまを取って食っていいのかい」と言った。ところで、そこは空の星であり、われわれが生きている所はタンビョルというのだ。
 皆さん、このタンビョルを、資本主義文明にある限り、守ることはできません。3つだけ例を挙げると、第1に今日、毎年、砂漠化している。われわれ南側の大地は10万平方キロメートルだが、これが砂漠化していっているのだ。
 熱帯林は約14%だが、これが今は6%になっている、と。北極や南極の氷が融けて海水の温度がひっくり返っている。グリーンランドの氷が融けたからと、観光客が群がっているという。タンビョルが壊れているのに観光見物とは。人間もこのタンビョルを守れないのだ。
 第2に統一、何が統一なのか。南と北にそれぞれ政府があるが、政府を1つに、国を1つにしようという話。私は南側の国も、北側の国も国ではないと考えている人間だが、南側、北側が1つになろうというのは好きだ。労働者の皆さん そしてちらほらと見える市民の皆さん! われわれの分断は、南側と北側の分断なのでしょうか? わが国の30大財閥が作っている物品は全体の90%を占めている。90%を30大財閥が食っているのだから。国際通貨基金体制をIMFと言うが、あの事態までの株式会社での外国資本の持ち分率は5%にならなかった。今は、いくらかお分かりか? 45%を超えている。約半分は国際資本が持っている。持てる奴らが、しっかり握っている。わが国の上位20%と下位20%所得格差は500対1以上になっている。
 世界最大のカップ・ソロスが手にしているカネは7億5千万ドルだ。アフリカで1年に千ドル稼いでいる者との比は75万対1だ。ところで市民の皆さん。その差違は米国とアフリカの差違だと思いますか? 違います。とんでもないことに酒1瓶が7000万ウォンするのがある、と。それをゴクリと飲んで700万ウォン払う奴とは誰か。江南(ソウルの高級住宅地)なる所では小学校の子どもに百万ウォン、2百万ウォン、千万ウォンずつ与え、証券を買えと言う、とか。失敗しても、証券とは何かが分かれば後に大財閥になる、というのだ。
 皆さん、それに比べて絶対貧困層は、わが国の人々の中で少なくとも30%、多ければ40%になるといいます。ワーキング・プア! 働いている貧乏人が40%! 今、私は南側と北側だけがどうこうするという話ではなく、持てる者と持たざる者の区分をなくそう、というのだ。統一とは何か? まさにそれが統一だ。南側の偉い人と北側の偉い人とが会って、そんな話をしてみたらどうか、ということだ。

ちんまりせずに堂々とあれ

 労働者の皆さん、市民の皆さんに申し上げたい。完ぺきな人間というのはいません。人たる人はいるものではありません。では、誰がそのような人間とならなければならないのか? 誰かがなるなどと信じないで下さい。皆さんが、その人間になろうと必死になって身をふりしぼれ、ということです。第2に、ちょこちょこちんまりとせずに堂々とあれ、ということです。網袋は物を入れると袋は縮まるけれども、そうではなく入れれば入れるほど心も大きくなる、そんな存在になれ! それが本当の人間というものです。
 もうひとつは、誰もあてにしないで下さい。行く道を誰かが与えてくれるなどと信じないで下さい。皆さん、自らの道を求めるが、自分の道だけを求めれば、それは利己主義者であり、個人主義者です。人間の歩む道を求めよ、ということです。
 そのような視野を持った人を「ヌリハジェ(世の中の堤)」と言います。すべての世の中の希望を見通す目を持った人をヌリハジェと言うのです。わが人類の希望があり、その希望を見通す人をヌリハジェと言うので、そのことを忘れずに、ぜひともヌリハジュにおなりなさい、ということです。
 私が幼かったころソウル駅でひとりのハラボジ(おじさいさん)に会ったのだが、その方こそはペクポム(白凡・金九)ハラボジだったのです。私が祖父の名前を口にすると突然、驚かれ、私を先生のひざの上に抱きあげて、こう話された。「お前がペク・テスの孫なのか。私がウェノム(倭奴)を撲り殺して逃げ回っていたとき、お前のおじいさんは実によく私の面倒を見てくれたんだ。最近、私が北のキム・イルソン将軍と統一しようといって足繁く行き来しているものだから、ソ連のお先棒かつぎだのと言っているが、お前らが大きくなれば統一というのは誰が勝った負けたという闘いではなく、良心がひとつとなるものだということを分からなければならない。お前らが大きくなったら私の本意が分かるようになるだろうから、それを伝えてくれ」と話しながら涙ぐまれていたことが思い出されます。その時、白凡日誌という本に西山大師の詩を書いてくれました。その時の詩を吟じますので聞いて下さいますか?
 踏雪夜中去 不須胡乱行 今日我行蹟 遂作後人程
 たとえ雪が白く降り積もった広野を行くとしても歩みを乱してはならない。きょう私の歩む足跡は、後に来る人々の道しるべとなるのだから。(「労働者の力」第132号、07年8月27日付)


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