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                            かけはし2007.9.10号

9.15PEACE DAYへ

武力で平和はつくれない!
アフガン・イラク占領すぐやめろ

海自の給油はイラク戦争用

 九月一日の早朝に放映されたTV番組「朝まで生テレビ」で、江田憲司衆院議員(元橋本首相秘書、無所属)は、米第5艦隊のホームページに示された資料を紹介しながら、海上自衛隊補給艦がインド洋で行っている多国籍軍への燃料補給について、米英の艦船についてはそれぞれの補給艦を経由するものであり、米補給艦の米国艦船に対する燃料補給の八五%はイラク関連のものであることを明らかにした。つまり米補給艦を通じて海上自衛隊が無料で提供している燃料は、直接イラク戦争に使われているというのである。
 これは重大な事実である。海上自衛隊の給油は、二〇〇一年十二月以後今年七月までに十一カ国に対して延べ七百六十九回行われているが、そのうち三百五十回、すなわち約半数近くが米国向けのものであることは、すでに防衛省の資料で明らかになっている(「朝日」8月23日)。海上自衛隊がインド洋上で行っている燃料補給は、横須賀を母港とする空母キティホークに対してもなされており、キティホークはその後、イラク攻撃に参加していたという情報も明らかにされていた。
 今回、江田憲司代議士が暴露した資料は、キティホークの例が決して個別的・例外的なものではなく、むしろアフガニスタンにおける「テロとの闘い」支援という名目で、実際はその多くがイラク侵略戦争に対する自衛隊の直接支援が行われていることを示すものだ。自衛隊が支援の対象としている多国籍軍、とりわけ米軍の活動に対しては軍事機密を理由に公開されていない。そして燃料支援の対象となっている米海軍艦船の多くが、事実上、イラク軍事作戦に使用されているのではないかという疑いが持たれていたが、その「疑惑」は事実であったという可能性がきわめて高くなった。そして言うまでもなく、イラク侵略戦争のための米艦船への補給活動はテロ特措法にも違反する行為である。

自衛隊はただちに撤兵を

 安倍政権と与党、御用メディアは、イラク戦争には問題があるとしても、アフガニスタンでの「テロとの闘い」は国際社会が一致して取り組んでいる活動であり、自衛隊の活動は国際的にも「高い評価を得ている」と強弁してきた。今回の情報は、そうした主張の前提が完全に崩壊していることを示すものだ。もはや出口のない泥沼となり、米国が擁立したマリキかいらい政権をブッシュ政権自らが見放すに至っているイラク戦争・占領支配と、アフガンにおける「テロとの闘い」の破綻は文字通り一体のものである。
 テロ特措法の期限切れは十一月一日である。米政府や安倍政権と与党は、小沢・民主党の強い反対姿勢の中で、参議院で延長案が否決され、自衛隊の撤退が余儀なくされることを心底から恐れている。そのために米国政府は民主党に「日米同盟強化」派の前原・副代表などを通じて民主党に圧力・恫喝をかけており、自民党もまた民主党との「話し合い」による修正をほのめかし、小沢・民主党執行部への懐柔を試みている。しかし、今や民主党が容易に妥協・修正に応じないことを見て取った安倍政権と自民党は、新たな方策を考えはじめた。
 九月一日夜、中国を訪問していた二階俊博自民党総務会長は、テロ特措法が野党の反対で失効する事態に備え、海上自衛隊の給油活動を継続するための新法の提出を検討する、と同行記者団に語った。「テロ特措法」とは別の新法案なら野党の同意も取りつけやすいという判断に立った窮余の一策である。
 われわれは、追い詰められた安倍政権の苦しまぎれの手段を許さず、自衛隊のイラク・インド洋、そしてクウェート・イラクからの撤退をただちに実現するために全力を上げよう。

いま、アフガニスタンでは

 アフガニスタンはいまどうなっているのか。一九八四年以来、アフガニスタンで医療支援を中心に活動を続けてきた中村哲さん(NGO「ペシャワール会」現地代表)は語る。
 「現地は今、過去最悪の状態にある。治安だけではない。二〇〇〇万人の国民の半分以上が食を満たせずにいる。そもそもアフガン人の八割以上が農民だが、00年夏から始まった旱魃により、農地の砂漠化が止まらずにいるからだ」「00年以前にに94%あった食料自給率は60%を割っている。世界の93%を占めるケシ生産の復活、三〇〇万の難民、治安悪化、タリバン勢力の復活拡大――。その背景には戦乱と旱魃で疲弊した農村の現実がある。農地なき農民は、難民になるか軍閥や米軍の傭兵になるしか道がないのである」。
 「この現実を無視するように、米英軍の軍事行動は拡大の一途をたどり、誤爆によって連日無辜の民が、生命を落としている。被害民衆の反米感情の高まりに呼応するように、タリバン勢力の面(めん)の実行支配が進む。東京の復興支援会議で決められた復興資金45億ドルに対し消費された戦費は三〇〇億ドル。これが『対テロ戦争』の実相である」「『殺しながら助ける』支援というものがありうるのか。干渉せず、生命を尊ぶ協力こそが、対立を和らげ、武力以上の現実的な『安全保障』になることがある」。
 そして中村さんは、次のように結論している。
 「特措法延長で米国同盟軍と見なされれば反日感情に火がつき、アフガンで活動する私たちの安全が脅かされるのは必至である。『国際社会』や『日米同盟』という虚構ではなく、最大の被害者であるアフガン農民の視点にたって、テロ特措法の是非を考えていただきたい」(毎日新聞8月31日、「テロ特措法をどうするか――戦争支援をやめる時」)。
 ブッシュ米大統領は「テロとの闘いには数十年を要する」と公然と語った。アフガニスタンにおける「テロとの闘い」も同様である。しかしこの「テロとの闘い」が民衆の平和で安全な暮らしを破壊し、住む家も土地も奪われた民衆の数を膨れ上がらせ、貧困と飢餓と殺戮を空前の規模で拡大しているのが事実である。
 「国際社会は一致してテロとの闘いを進めている」「日本のインド洋での補給活動は国際社会から高い評価を受けている」と安倍政権、与党、評論家たちは語っている。しかしこの「国際社会」とは誰のことなのか? 石油や天然ガス資源の獲得合戦にうつつをぬかし、民衆の超搾取の上に強権的独裁と肩を組んで利益を追求するグローバル資本の同盟――これこそが彼らの言う「国際社会」である。
 一部の人びとは「テロとの闘い」は米英など西側諸国だけの闘いではなく、イスラム教国であるパキスタンも参加している、と語っている。しかしパキスタンの実権を握っている軍部は、タリバンの背後のスポンサーでもあった。タリバンのアフガニスタンにおける実効支配を保証したものこそ、パキスタン軍統合情報部(ISI)であり、さらにタリバンとアルカイダを育てた張本人こそ、ISIの全面的協力の下に一九八〇年代初めから一九九二年まで「ムジャヒディン」に五十億ドルもの武器と資金を提供してソ連軍や親ソ派政権との「聖戦」を戦わせた米国に他ならなかった。
 パキスタンのムシャラフ軍事独裁政権は、一方で自らの政権基盤を維持するためにブッシュ政権の強い圧力で「テロとの闘い」への参加に転じながら、他方では彼の基盤である軍の一部は、今日もなおパキスタンの宗教的原理主義勢力と気脈を通じてタリバン勢力の復活を陰に陽に支援しているのである。
 そしてこの「テロとの闘い」は、インドネシアのジャマ・イスラミア(JI)、フィリピン・ミンダナオ周辺のアブサヤフなどのテロ活動を浮上させ、テロの戦線を国際的に拡散する役割を果たしているのだ。ブッシュの言う「数十年に及ぶテロとの闘い」がもたらす破壊と悲劇の回路を今こそ断ち切らなければならない。それこそが日本の「国際的責務」である。

世界の人々とつながろう

 九月十五日、WORLD PEACE NOWなどの反戦運動は、NGOや市民団体、人権組織、環境団体、労働組合とともに「武力で平和はつくれない/世界の人々とともに 戦争は最大の環境破壊、人権侵害」を掲げ、「9・15 Peace Day Tokyo2007@東京タワー下」を東京・芝公園4号地で午前11時から開催する。この日の集会は、「一緒に平和や環境、人権、グローバリズム、世界的な格差や貧困のことを考える場」であり、各団体のブースでの展示、スピーチ、音楽などを通して「平和への意思」をアピールし、ピースバレード(午後3時出発)を通して、その意思を表現するアクションでもある。
 六年前の「9・11」を契機に、世界の様相は大きな変化を見せた。ブッシュ政権は「テロとの闘い」を口実に同年十月七日のアフガニスタン攻撃を通して、世界を戦乱にたたき込み、二〇〇三年へのイラク侵略戦争にまで突き進んだ。イラク戦争だけで米兵の死者はすでに三千人に近づこうとしており、イラク市民の死者は今も日に日に拡大している。八月十四日、イラク北部シンジャル近郊で起きた自爆テロは五百人に上る死者を出し、一回の事件としてはイラク戦争開始後最大規模の惨事となった。
 日本政府は、「9・11」直後にアメリカの「テロとの戦争」を全面的に支持し、インド洋・アラビア海に海上自衛隊を派兵するとともに、イラク占領軍の一員として陸・空の自衛隊を送り込んだ。この「対テロ戦争」への自衛隊参戦は、日本国家と社会の急速な軍事化を促した。安倍政権の下で「戦争ができる国家づくり」のための憲法改悪への流れに拍車がかかり、国家主義教育・戦争に動員する「人づくり」のために教育基本法も改悪された。米軍再編による日米のグローバルな軍事同盟が強化され、海外での戦争のために集団的自衛権の行使を容認する政策も現実のものになっている。
 それは、「グローバル化」の名の下に、私たちを分断して競争に駆り立て、労働者・市民の権利を奪い、雇用と生活を破壊し、福祉を切り捨て、生きることさえ困難な絶望的なまでの貧困化・社会的排除と差別に人びとを追いやる新自由主義の嵐と一体のものだ。
 「もうたくさんだ!」の声が、各所から噴出している。平和や人権を求めることと貧困・差別・格差をなくすことが、密接なつながりを持っていることを人びとは気づき始めた。それは七月の参院選でも示された。
 世界の人びととつながりながら、平和で公正な社会を切り開いていくために意思表示し、それを阻もうとする者に異議申し立てを行おう。「9・15 Peace Day」の成功へ、みんなで集まろう! 
    (9月2日 純)


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