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米下院外交委が日本軍性奴隷制批判決議         かけはし2007.7.9号

強制連行の責任を認め謝罪を

「慰安婦」問題行動ネット
国際同時記者会見で日本政府の責任を厳しく追及

孤立を深める
極右安倍政権

 六月二十六日午後(日本時間六月二十七日未明)、米下院外交委員会は「従軍慰安婦」問題に関して日本政府が歴史的責任を認め、首相の公式謝罪を求める決議案(議案121)を賛成39・反対2の圧倒的多数で可決した。
 同決議は次のように述べている。「この制度(軍隊慰安婦制度)の残虐性と規模は前例がない。二十世紀最大の人身売買事件の一つである」「日本の教科書の中には、慰安婦の悲劇などを軽視しようとするものがある。最近、日本の官民の要職にある者は、河野洋平官房長官が一九九三年、慰安婦に対し謝罪や後悔の念を表明した談話の内容を、弱めるか撤回してほしいと要望した」「日本政府は、旧日本軍のために慰安婦が性的な奴隷状態にされ、売買されたという事実はなかったという主張に明確に反論すべきだ」「日本政府は、慰安婦に関する国際社会の声を理解し、現在と将来の世代にこの恐ろしい犯罪について教えるべきだ」。
 日本政府は、駐米日本大使館などを通じて、この決議案の可決を阻止するために種々のロビー活動を通じて圧力をかけた。しかし安倍首相が三月初めの国会答弁の中で「軍隊慰安婦」の強制連行を「狭義」と「広義」に恣意的に分類し、「狭義の強制連行はなかった」として官憲による強制連行を否定し、一九九三年の河野洋平官房長官談話を事実上否定したことは、米国の主流派メディアや政治家からも大きな批判の渦を巻き起こした。
 安倍は四月末の訪米で米国政府に「謝罪」し、沈静化を図ったが、六月十四日に米「ワシントンポスト」紙に、安倍の取り巻きの極右「日本会議」系国会議員(自民、民主、無所属)や、右翼知識人らが連名で、決議案は「現実の意図的な歪曲」だとして強制連行を否定する意見広告を出したことにより、米国の議員の中でも安倍首相の「謝罪」の欺瞞性への批判と怒りが沸騰し、ついにこの日の決議採決に至ったのである。七月中に下院本会議で圧倒的多数の賛成で採決が行われることは確実である。
 四月二十七日の記者会見で塩崎官房長官は「慰安婦問題についての政府の立場は、四月の首相訪米を含めて明らかにしており、それ以上、付け加えることはない。他の国の議会が決めることなので、あえてコメントするべきことではない」と動揺を見せながらも居直りつづけている。しかし被害者へではなくブッシュ政権や議会関係者におずおずと頭を下げてもみ消しを図り、その一方であくまでも取り巻き連中の「本音」によって、強制連行された日本軍性奴隷制被害者への悪罵と中傷を続ける安倍政権の態度は、国際的にも厳しい批判の対象となっているのだ。

国会は被害者の
訴えに向き合え

 六月二十七日、日本時間当日未明の下院外交委員会での決議可決を受けて、日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークは、午前十一時から参院議員会館第三会議室で緊急の記者会見を行った。この日の記者会見は、台湾、フィリピン、韓国、日本で同時に準備されたものである。
 主催者の「日本軍『慰安婦』問題行動ネットワーク」は、外交委員会での審議の内容と決議の意義について説明した。一部の共和党議員が日本政府による「謝罪」問題を「過去のこと」「ささいなこと」だと述べたのに対し、外交委員会の議長が「これは基本的人権の問題である。奴隷制の歴史を持つアメリカが、過去の歴史に向き合い、過ちを認めることの重要性を訴えることが大事なのだ」「謝ることは過ちを犯した者を自由にする」と述べたことが紹介された。
 また「米国は、日本を重要な同盟国として捉えているが同時に韓国、オーストラリア、フィリピンも重要な同盟国であり、中国も米国の外交利益にとって大きな位置を占める国である。米国としてはこの問題に決着をつけなければアジアの和解はないと考えている。米下院では莫大な予算と八百人にも上るスタッフを擁して綿密な調査を行っており、多くの関係資料を精査し被害者への聞き取りも進めてきた」「その調査によって、これまでの日本の『謝罪』がおざなりのもので誠意がなく、教科書からの『慰安婦』記述の削除についても大きな問題として捉えられている」と説明された。
 アジア女性基金からの見舞い金は、北朝鮮、中国、東ティモールの被害者に対してはまったく支払われていないこと、中国やフィリピンの被害者は、すべて軍隊による「狭義の強制連行」によるものであることも指摘された。記者会見では、台湾、韓国、中国、フィリピンからのメッセージも紹介された。また出席した韓国MBS、ハンギョレ新聞の記者からも質問が出された。
 今後の行動としては、日本の国会に犠牲者を招いて話を聞くこと、一人一人の犠牲者に個別にあてた謝罪の手紙を送ること、などが提起された。    (K)

声明
米下院外交委員会議案121決議を歓迎する

 本日、六月二十六日、アメリカ下院外交委員会において、議案121が可決された。私たちは深い感謝をもってこれを歓迎する。
 かつて、日本は国策として日本軍「慰安婦」制度を創設し、日本軍が侵略した各地において女性たちに重大な人権侵害を行った。
 その被害は、生存者にとって、被害当時は言うまでもなく、カムアウトできない五十年の沈黙によって、その後の繰り返される被害の否認によって、そして日本政府による多くの国際機関からの勧告等への無視によって、今日まで繰り返されてきた。
 いま、アメリカ下院外交委員会決議を受けて、わたしたち、各国被害女性の聞き取りを行い、現地調査を行い、裁判闘争を支援し、交流し、あるいは二〇〇〇年女性国際戦犯法廷を開催してくるなどしてきた各団体は、各国の被害女性たちとともに喜びの声をあげる。
 そして、さらにこの国際世論の良識を代表する決議が、下院本会議において決議され、これ以上日本政府が、被害女性の人権をネグレクトすることを許さず、重大な人権侵害を受けた生存者の尊厳が回復され、世界の人権確立のために役立てられることを希望する。

 そのために私たちはあらゆる努力を惜しまない。

2007年6月26日
日本軍「慰安婦」問題行動ネットワーク




「怒れ、笑え!この『美しい国』日本」
沖縄と共に闘い続ける服部良一さんを参議院へ


 【大阪】六月二十六日、クレオ大阪東で「怒れ、笑え!この『美しい国』日本」集会が実行委員会主催で開かれ、四百人の会場に聴衆があふれた。
 第一部では、姜尚中さん(東大教授)が講演した。姜さんは最近よく、かつて保守の基盤であった地方から講演依頼をうける。そこで感じたのは、これらの地域の生活基盤が崩れているということだった。
 「網野善彦さん(歴史学者)は、『日本を楕円にたとえると、関東と関西という二つの中心があって、それが均衡を保っていた』と言ったが、今の日本は、東京に一極集中している。地方の村の人は『東京を見ると腹が立つ。この村はどうなっていくのかと心配だ』という。オーストラリアの学者と話していたら、『どうして日本人はそんなにおとなしいのか?』と言われた。『美しい国』の底はあまりにもひどい。安倍首相は、国を愛するには、ふるさとを愛するのが一番だと言ったが、ふるさとを愛することは国を愛することにはつながらない。地方を基盤に国会議員になり、東京生活をしている二世三世議員にはこのことは分からないだろう。これから三つのことを述べたい」。

保守層と若者に
訴える政治家を

 「安倍首相は、戦後レジームからの脱却を言っているが、現憲法を変えると言いたいのだろう。この内閣はあまりにもイデオロギー過剰内閣で、国民の生活の琴線に触れることを政治に活かすという姿勢がなく、国民が何を望んでいるかをとらえることができない。現憲法の柱である平和と安心した生活が担保できなくなった国はどこに行くのだろう?」
「自民党の中でも、今の内閣は仲良しクラブだと揶揄されている。自民党の中でも決して主流ではないが、極右的な彼らが政治の中枢を握るようになってしまった。日本軍の強制による沖縄住民の集団自決という事実すら変えることまでしてしまう。米国下院の委員会は、今日明日にも従軍慰安婦決議をする。安倍政権は世界に恥をさらし国益を損なっている」。
「自民党政権が進めている日米一体化とは、日本が極東の英国になるということだ。その分アジアとの友好は薄くなる。米国は対北朝鮮外交を転換した。ライスはこの秋にも平壌に行くだろう。六カ国協議で外交がほとんどない日本は取り残される。拉致問題は重要だ。しかし核問題はそれ以上だ。日本・東アジアの人々の生存がかかっている。核より拉致が大切というのなら、彼らは広島・長崎でどう言うのだろう?極東を非核化し、米朝・日朝国交を正常化し、それで北朝鮮に問題の解決を迫るべきだ」。
以上の講演の最後に、姜さんは「これまでの保守層に護憲を訴え、浸透させる言葉を持っている政治家、生存権以下の状態で生活している若者に、このままでは生存そのものが危ないということをアピールできる政治家を育てよう」と語った。

憲法をみずから
獲得する闘いを

第二部は、姜尚中さん、服部良一さん(沖縄とともに基地撤去をめざす関西連絡会代表)、辻元清美さん(社民党衆議院議員)のパネルディスカッション。
 服部さんは、東大入試が中止された年に京大に入学したが、二年生の時に中退し西成に移り住んで、機械メーカーに就職し倒産を経験した。その後十六期にわたり労働組合の委員長として活動しながら会社を再建。その後再び倒産するが、また再建した。
 中曽根首相靖国参拝の頃から現在まで首相の靖国違憲訴訟の事務局を担い、一九九五年の沖縄少女暴行事件から、沖縄の闘いに連帯する運動を関西で続けてきた。現在大阪地裁で係争中の大江・岩波沖縄戦裁判の支援連絡会の世話人もしている。
 服部さんは、辻元さんの質問に答える形で、今までやってきた運動を紹介し、「沖縄は米軍にやりたい放題にされているのに、本土の人間は憲法の恩恵を受けている。憲法は与えられるものではなく、獲得するものだと思ってきた。今九条が変えられようとしているが、これは許せない。これからの人生をかけて闘う」と述べた。
 姜さんは、「ひと頃と世の中が少し変わってきた。自分は直接できないがサポートしたいと思っている人が出てきている」と言い、「自衛隊は以前は日陰者扱いだったが、今は日なたになった。国民は軍をコントロールできるのか。絶えず努力を続けて、軍を市民社会が統制するまでになった韓国の経験に学ぶべきだ」と述べた。辻元さんは、「私たちは微力だけれども無力ではない。おかしいと思ったら行動を」と訴えたディスカッションは終わった。

山内徳信さんも
出馬のアピール

 この後、安次富浩さん(ヘリ基地反対協)が沖縄辺野古の状況を報告。
 「米軍再編は沖縄の負担軽減のためだとNHKなどもいうが、我々は平和的生存権のために闘っている。国が何かやろうとするときは、疑問を感じないとダメだ。信用するとしっぺ返しを食らう。粘り強く非暴力抵抗で勝利するまで闘う」と安次富さんは決意表明した。
 パネラーの一人であった沖縄の山内徳信さん(元読谷村村長)は、兵庫県川西市での集会からの道が混んでいて遅れたが、あいさつの中で、「七月の参議院選挙は、子孫たちの生活を救うための闘いだ。政治家はつぶれても民衆はつぶれない。憲法を守る、辺野古沿岸案を撤回させる。与野党逆転させる。そのため、住居を霞ヶ関に移して闘う」と決意を述べた。最後に、再び服部さんが登場、「五十七年生きてきて、このままでは終われない。安倍政権に一撃を加えるため、参議院議員選挙に立候補を決意しました」と表明し満場の拍手につつまれた。(T・T)


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