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有事動員の「国民保護」体制               かけはし2007.7.23号

横田周辺での都総合防災訓練反対

地域から戦争協力を拒否しよう

自治体に向けた
申し入れ行動

 七月十四日、早稲田奉仕園フォークトルームで「横田周辺での東京都総合防災訓練反対!『国民保護』を許さない集会」が東京都国民ホゴ条例を問う連絡会が主催で行われた。
 連絡会の山本英夫さんが運動の経過と今後について報告した。
 「連絡会を二〇〇五年三月に結成し、都の交渉や情報公開請求、集会・デモを行ってきた。また各地区でそれぞれの対行政闘争を展開してきた。情報の共有化などを行い問題意識を持続させることができた」と運動の段階を明らかにした。そして、次のような事例の中に、「国民保護体制」がつくられていっている現実を指摘した。@昨年の北朝鮮によるミサイル発射、核実験に対して、日米両軍の配置と全都道府県が「国民保護体制」に準じるそれなりの態勢を敷いたAイラク派兵反対行動を監視し、記録していた防衛省情報保全隊の「国民監視体制」づくりB辺野古への自衛艦艇「ぶんご」の派遣と自治体との関係。

全国で整備される
「国民保護体制」

 「国民保護体制」の現段階。全都道府県に「国民保護計画」と対策本部設置の準備が完了し、ほとんどの市町村も同様な段階に入った。国による「国民保護演習」も始まり、これから地方公共団体ごとの演習も始まろうとしている。
 今後の取り組みについて。「国民保護体制」は実に見えにくく、取り組みづらい。しかし、それが本格稼働する時は、トンデモナイことになっており、手遅れとも言えるだろう。「保護」される前に、戦争体制を拒否しよう。戦争協力拒否! 私たちの立場はこの一点につきる。
 防災訓練は、「国民保護訓練」につながっている。防災から有事・戦時にもっていく手法は、戦前からのものである。「国民保護体制」は「米軍再編」の進行を支え、知らず知らずのうちに兵站の役割を担っていくだろう。
 ジャーナリストの吉田敏浩さんが「戦争と住民 空爆の歴史を現在から問い直す」と題して講演を行った。
 吉田さんはビルマのカチン州で、政府軍によるカチン民族に対する空爆を体験し、その恐ろしさを実感したという。空爆される住民は、圧倒的な航空戦力の前ではあまりにも無力な存在として死を強いられる。世界各地で続く空爆。日本人はかつて空爆の被害者であり、加害者でもあった。
 空爆の問題は過去のことではなく、現在、未来の問題である。米軍厚木基地の航空祭で、イラク戦争に参加したパイロットが空爆をただ「仕事をするだけ」だとして、殺されていく側に立たない意見を紹介しながら、重慶爆撃をはじめ、日本による空爆の加害の歴史と向き合うことが、無関心による戦争協力に動員されていくことへの拒否をつくりだすことができるのではないかと提起した。

各地区からの
取り組み報告

 その後、各地での「国民保護体制」との闘いの報告が行われた。
 練馬区。「昨年十月の自主防災組織の説明会で、『戦争のためではない。災害に備えてのものだ。協力を強制はしない』と答えている。保護計画も中身のないもので、都がつくったもののままだ。自衛隊の基地があることの特殊性を表さないものになっていて、実働訓練の計画はないとしている」。板橋区。「五月議会に、保護計画の撤回と有事訓練の中止などを求める陳情をしたが、不採択になった。大型スーパー『サティ』でテロ対策訓練が行われた」。
 中野区。「来る九月二日、中野区総合防災訓練に自衛隊が本格的に参加する。区は『自衛隊の参加は地域防災会の要請』であり、『自衛隊による救護訓練の見学』だと言っているが来年以降、区と自衛隊の共同訓練へとエスカレートすることは明らか。保護計画の見直しを求める陳情を出したが、区議会運営委員会は、正式な計画になったから検討に値しないと、陳情そのものを門前払いした」。
 三多摩。「国立市など六自治体が保護計画をつくっていないが、特につくれという圧力はないようだ。保護計画に自衛隊が入ってきていないようだ。米軍も参加させてくれという動きはない」。立川市。「市は協議会条例について、まだ検討・研究の段階でもない。基地は攻撃のターゲットになる可能性が高い。戦争ではなく平和解決が重要。戦争に国民をまきこんではならない、と市長が答えている。さらに、防災と国民保護と趣旨が異なる。国が示した有事の類型は具体性にかける、住民の訓練への参加は強要することのないようにと、国へ意見を聞いている。陳情を出したが選挙で終了した」。
 埼玉県。「昨年の北朝鮮の核実験を受けて、県が独自に動いている。二百人の危機管理局をつくって二十四時間情報収集を行っている。入間自衛隊基地へのパトリオットの配備で、五月に県と市町村で共同して訓練をしている」。東京都。「石原都知事は自衛隊が大好きで、防災訓練に自衛隊を使っている。しかし、地域の実情がわからないので、対応できないと自衛隊側は言っている。災害出動に自衛隊を使うことの非効率的なことなどを明らかにしていくことが必要だ。十一月に、大規模テロ災害対処訓練(国民保護訓練。爆弾・化学散布などを想定した実践的にテロ災害対処訓練の実施)が計画されているが、その具体的な中身は明らかにされていない」。
 長野・松本市。「長野は災害の救助で自衛隊が使われ、身近な存在という意識が県民に強い。昨年六月に、化学テロ対応訓練を自衛隊員二百人が参加して、JRや日赤も協力して行われた。松本市では、保護体制は積極的にはつかられていない。自衛隊松本駐屯地祭りに毎年抗議の宣伝活動をしている。今年は宣伝活動の後に、基地に入ろうとしたが拒否された。今後は名前を明らかにした札を基地前に掲げて、入れさせないとまでどう喝するようになっている。あさって松本市で抗議のデモを行う」。
 足立区。「昨年の政府・東京共同での訓練は住民を災害から救うものではなく、戦争戒厳体制をつくるための準備であった」。墨田区。「関東大震災時の朝鮮人などの大虐殺の歴史を忘れるなと、区との交渉、区議会への陳情を行った。保護計画作成にかんして、要支援者リストの作成にあたっては、個人同意方式をとるように求めている」。荒川区。「自衛隊の出向者が計画をつくっている」。

米軍機を防災
訓練に使うな

 次に、九月一日に行われる東京都・昭島市など横田基地周辺の五市町の合同総合防災訓練の報告。
 米軍横田基地との関係については分からない。国民保護体制との関係では五つの自治体は一線を画するとしている。防災訓練が戦争動員体制と一体と見られることについて、誤解されたくないとしている。石原都知事はかねてから、横田基地の軍民共用化を打ち出しているので、二〇〇一年から防災訓練の時、航空自衛隊が北海道などから医者や消防隊員を横田基地に連れてきて、そこから出動する訓練を行っている。米軍機を防災や保護計画に使うなと要求して闘っていく。
 最後に、主催者は東京都国民ホゴ条例を問う連絡会として三年間闘いぬいてきて、連絡会としての主催は最後だろうが、今後市区町村での訓練が課題になってくるので、情報の交換をしながら運動をつくっていこうと訴えた。   (M)




狭山闘争勝利・江東地区集会
事実調べ・全証拠開示実現へ
第3次再審闘争に勝利しよう

 【東京東部】七月十三日、江東区総合区民センターで、狭山差別裁判糾弾! 事実調べ・全証拠の開示を実現し、第三次再審闘争に勝利しよう!7・13狭山江東地区集会」が部落解放共闘会議の主催で開かれた。前田馨さん(ふれあい江東ユニオン)が「相次いでえん罪事件が明らかになっている。狭山事件で、石川さんの無実を勝ち取ろう」と主催者あいさつをした。
 次に飯塚事務局長が基調報告を行った。
 「私たち江東共闘会議は一九八四年の結成以来二十二年にわたり、毎月『23狭山情宣活動』を亀戸駅頭で一度も休むことなく取り組み石川さんの無実を訴えてきた。集会も石川さんの仮出獄以来十二回目の開催になる」
 「二〇〇五年三月十七日、最高裁第一小法廷は証人尋問及び鑑定人尋問などの『事実調べ』を一切行うことなく、第二次再審請求特別抗告申立を棄却するという暴挙を強行した。不当な棄却決定から一年余が経過した五月二十三日に、石川一雄さんと狭山弁護団が第三次再審請求を東京高裁に申し立てた」
 「第三次再審請求では、@筆跡の違い及び筆記能力の違いについてA筆記用具が自白と食い違っていることについてB万年筆は自白の信用性を担保する証拠でないことなどを明らかにする新証拠を提出し『事実調べ』再審開始を求めた」
 「今、日本の社会は格差拡大社会といわれる中で強いものは一層強く、弱いものは切り捨てられて当然という状況にあり、弱者や少数者に対する重層的な差別が一層強まっている。差別を是とし強める社会を変えていくためには、地域から一人一人に差別を許さない訴えを強め、草の根の運動として反差別共同行動を進めていかなければならない。狭山第三次再審闘争勝利にむけて闘いぬく」。

石川一雄さんが
無実を訴える

 石川一雄さんが無実の訴えを行った。
 「自分の無実をまだ晴らすことができていない。今度の三次再審請求で最後にしたい。新百万人署名に協力してもらい、今年五月二十三日に百万人を突破した。皆さんのご協力にお礼を申し上げたい。今年度中に何とか結論が出るのではないかと期待感を持っている。全国各地で狭山事件はおかしいという声があがっている。私も上申書を書こうと思う。事実調べを行い、自分を法廷に立たせてほしい。証言すれば無罪になる」。
 連れ合いの早智子さんは「一雄さんは六十八歳になった。第三次再審請求は最後のチャンスだ。時間には限りがある。再審闘争を続けることはたいへんなことで、一雄さんは疲れたときやつらかったときもあったと思う。しかし、全国の皆さんの支えがあるから、あきらめないという強い思いが石川さんにはある。いま、えん罪事件が大きくクローズアップされている。袴田事件の一審で死刑判決を書いた裁判長が、『判決は間違いで、袴田さんは無実だ』とマスコミに明らかにした。こうしたことが明らかになっても、袴田さんの四十年の人生は取り戻せない、という複雑な思いを持つが、人間としての希望を持つ。袴田事件では書面で無実が明らかにされているが、狭山事件の場合は、実際に捜査に関わった警察官が万年筆はなかったと証言している。ここに強い無罪の真実がある。参議院選挙があるが、石川一雄さんには投票用の入場券が来ていない。基本的な権利が奪われている。ぜひ、無実を晴らしたい」と訴えた。

弁護団による
新証拠の提出

 次に、安田聡さん(部落解放同盟中央狭山闘争本部)が「第三次再審闘争の現状と課題」を明らかにする講演を行った。
 狭山弁護団は新人弁護人十四人を加えて総勢二十五人に増やして万全の体制をつくり、第三次再審にのぞんでいる。再審請求は石川さんを有罪とする確定判決の誤りを明らかにする新証拠を提出しなければならない。とくに、裁判所は認定を変更しながら有罪を維持するという不当なやりかたをしてきている。弁護団は、新証拠を提出し、従来の証拠と総合的に評価して再審を開始すべきだと主張している。
 第一に、脅迫状は石川さんが書いたものではないことを明らかにする新証拠。筆跡の違いを科学的に証明した鑑定書(確率論を使って石川さんと脅迫状の筆跡の相違を証明)。識字という観点から筆記能力の違いを明らかにした鑑定書(石川さんは当時、非識字者であり、脅迫状は書けなかった)。
 第二に、封筒の「少時」は万年筆で書かれた(自白ではボールペンで書いたことに)。元鑑識課員による筆記用具インクの鑑定書、化学者の鑑定書(三人の元鑑識課員が封筒の筆記用具が自白と食い違っていると指摘した)。
 第三に、万年筆は偽造の疑いがある。「万年筆が鴨居の上に置かれていたとしたら二回の家宅捜索で、刑事らが見落とすことは考えられない」と元警察官による家宅捜索についての報告書の提出。
 第四に、自白は真実ではない。自白では被害者が犯行現場で悲鳴をあげたことになっている。犯行現場の隣の畑で農作業をしていたOさんは「悲鳴を聞いていない」という証言を二十メートル前後の距離で悲鳴が聞こえないことはありえないという音響工学者の鑑定の提出。死体を穴に逆さ吊りにして隠したという事実はないという法医学者の実験鑑定(死体の足首に痕跡がない)、血痕はなかったという埼玉県警の元鑑識課員の証言。殺害現場、死体運搬、逆さ吊りなど一連の核心部分のウソを明らかにする。
 今年になってから、えん罪が相次いで明らかになった。これらの事件は、ウソの自白、代用監獄などえん罪の原因は狭山と共通している。えん罪を防止するためには、取調べの可視化や証拠開示の拡大、再審の門を広げることが必要である。
 講演の後、東京水道労組とNPO法人「共に結」が決意表明を行い、集会決議を採択した。石川さんの無実をなんとしても勝ちとろう。       (M)


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