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「君が代」不起立解雇裁判               かけはし2007.7.16号

政府・都教委の意向に沿う支離滅裂な不当判決だ!


 東京地方裁判所民事十一部は、六月二十日、「君が代」不起立解雇裁判で安倍政権の改悪教基法にもとづく教育関連四法(学校教育法、教員免許法、教育公務員特例法、地方教育行政法)の教育現場への貫徹を徹底させるために、その先取りとして国家権力の階級的意思を込めて不当判決を出した。当面する攻防局面を掌握し、改悪教基法と教育関連四法を許さない陣形作りの一環として、この不当判決を批判し、闘いの水路を協同で創出していこう。

不起立で再雇用
取り消しを通告

 都教委は、二〇〇三年十月二十三日、卒業式・入学式等の国歌斉唱時に校長の職務命令として教職員が指定された席で国旗に向かって起立させ、国歌斉唱を強制させる通達を出した。この10・23通達に抗議して、多くの教職員が不服従の意思表示として不起立を行ったが、〇四年には三百十五人の懲戒処分や不当な指導が強行されている。
 さらに十人の都立高校の再雇用の元教員に対しては、卒業式の国歌斉唱時に不起立したことを理由に「勤務成績不良」であるとして、新年度の二日前の三月三十日に再雇用取消しを通告してきた。この不当解雇を違憲違法として、都を相手に地位確認と損害賠償請求訴訟裁判を行ってきたのが本裁判である。〇四年六月十七日提訴以降十五回の公判が行われた。裁判は、国歌斉唱時の起立を命じる校長の職務命令が憲法十九条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」に違反することなどが大きな争点であった。
 職務命令について判決は、最高裁の「ピアノ裁判」不当判決(二月二十七日)を踏襲した。ピアノ裁判とは、一九九九年四月、校長が音楽科教諭に対し同校の入学式において国歌斉唱の際にピアノ伴奏をするよう発した職務命令に対し、ピアノ伴奏を拒否したことを理由に、東京都教育委員会が懲戒処分を強行し、その違憲性が争われた事件である。最高裁は、ピアノ不伴奏教諭の思想・良心に基づくものと認めながらも、ピアノ伴奏強制そのものは憲法十九条違反であると認めなかった。
 判決では、このピアノ裁判最高裁判決を引用し、「職務命令は公務員の職務の公共性に由来する必要かつ合理的な制約として許される」として、都教委の立場を防衛した。そして、10・23通達以前の一九九九年時の職務命令に対する判断をしたピアノ判決を、そのまま強引にあてはめるという乱暴な判断をしているのだ。

9・21東京地裁
判決の転覆ねらう

 つまり地裁は、教基法改悪を受けて、政府の忠実な代弁者として二〇〇六年九月二十一日の東京地裁での「君が代」予防訴訟勝利判決を真っ向から覆すところに獲得目標があった。現在、争われている処分撤回裁判などに、この判決を基準とさせ、定着をねらっているのだ。予防訴訟判決では10・23通達および都教委の指導を教育基本法十条に反し、憲法十九条の自由に対する必要最小限度の制約を越えると判断したが、それを完璧に否定したのである。
 「職務命令」に関して判決は、「生徒の思想・良心の自由の侵害に対しては、同命令は直接的に生徒に対して起立等を求めるものではなく」などと都教委のウソを認め、「教育の実践面において、生徒の内心に対する一定程度の働きかけを伴うことは不可避であり」と居直り、手前勝手に「これを直ちに強制と同一視し得ないことからすると、本件職務命令が生徒の思想・良心の自由を侵害するものとはいえない」などととんでもない矛盾した論理展開をしているのである。
 あげくのはてに「通達にのっとった実施を実現するのに、通達発出後も都立高校を強く指導し、その履行状況を監督・監視することもやむを得ないことであった」と応援するのだ。そして、改悪教基法の現場貫徹を意識して「旧教基法十条一項が禁ずる不当な支配に該当しない」などと都教委の不当な教育支配を描き出しながらも、それが「不当な支配に当たらない」というデタラメな結論を出しているのである。

不起立は儀式
破壊だと断罪

 さらに地裁は、「40秒間の不起立」を「一部の教員が起立しないこと自体が卒業式などの式典における国旗掲揚・国歌斉唱の指導効果を減殺するものである」と高飛車に説教しつつ、改悪教基法の愛国心教育、規律・規範による統制強化を全面賛美し、「不起立行為が国旗・国歌条項の実施についての都教委の関与・介入に対する抗議としての一種の示威行動とも評価し得るものである」と不起立闘争に対する剥き出しの敵対姿勢で批判している。また、「原告の歴史認識や職業的信念を否定するものではなく」などと見え透いた「公正」ポーズを押し出しながら、「式典での歌唱時の起立は当然の儀礼的行為」などと規定し、不起立闘争が儀式破壊であると断定した。「ここまで言うか」というぐらい徹頭徹尾の都教委の立場からの超「偏向」した論理を展開しているのだ。判決の本音は、今後の改悪教基法への敵対を許さないという恫喝でもある。
 文科省は、教育関連四法によって今後、教員に対する統制強化、監視・処分乱発、不当解雇などの排除等をますます強化していくことをねらっている。判決は、そのことを見据えて、「再雇用職員の地位は都教委の任命によって生ずるもの」だとして、不当解雇を全面擁護し、「合格通知が発せられたことにより労働契約が成立するなどとして、再雇用職員たる地位の確認を求める原告らの請求は理由がない」と全くその正当性、法的根拠を提示するのではなく、一方的に教職員の基本的権利を否定するだけなのだ。こんな滅茶苦茶な地裁判決を絶対に許してはならない。労働裁判では、このようなケースの場合、雇用主の解雇権の乱用というのだ。雇用契約が成立しているにもかかわらず、雇用主の身勝手な理由によって就労を拒否、妨害する場合、明らかに不法行為を構成するのだ。

国家主義の注入
をはねかえそう

 ところが都教委は、愛国心教育と統制・管理強化を推し進めていくために「日の丸・君が代」強制を踏みえとし、反対、拒否する教職員を「勤務成績不良」としてでっち上げ、新年度直前に再雇用取消しを通告してきた。一般の労働争議のケースと違って、この不当解雇の場合は、明らかに憲法十九条の侵害をターゲットにしたところからの政治的な不当解雇の強行である。「日の丸・君が代」強制に反対する教職員には、問答無用で同様な攻撃が繰り返される可能性があり、憲法改悪反対闘争における重要な課題としてクローズアップしていかなければならない。 
 なぜならば政府・文科省は、憲法改悪に反対する教職員たちの団結権、組合活動の否定、一掃をねらっているからだ。すでに憲法改悪手続き法としての国民投票法では、公務員の地位利用に対する規制規定を明記しており、とりわけ教職員への憲法改悪反対を教育現場で伝えていくことを事前に弾圧するものとして、この判決がそのバネになる装置として利用してくることは間違いない。
 すでに教員免許法での更新時の講習について伊吹文科相は、講習内容について「日の丸を掲揚し、君が代を斉唱させるというような内容になる可能性はあるのか」という野党質問に対して、「政府としては、学習指導要領に書いてあることはきちっとやっていただく。それは資質だとか技能だとかいうものとは関係のないことです」と強調し、講習開始時に毎回、「日の丸を掲揚し、君が代を斉唱させる」可能性があることを答弁している。つまり、不服従、不起立した場合は不適格として更新合格をさせないという事態も予想される。「君が代」解雇判決を根拠にして、不適格教員排除を正当化してくるだろう。判決は、このようなプロセスをも想定しながらの先制攻撃の意味をもっているのである。
 すでに都教委は、「当然の判決だ」などと豪語し、これまで以上に「日の丸・君が代」強制を徹底化させ、反対、抗議する教職員をあぶり出し、排除していくことを宣言している。「都教委に続け」を合言葉に、都教委型攻撃の全国的波及を政府・文科省は今後強めていくだろう。「君が代」予防訴訟勝利判決の地平を防衛し、「君が代」不起立解雇裁判をはじめ処分撤回裁判などの闘いに連帯していく取り組みを教育現場・地域・市民のスクラムを強めていくと同時に、憲法改悪反対闘争とともに反撃していかなければならない。「君が代」不起立解雇裁判の原告は、ただちに控訴し勝利判決をかちとるための闘いに入っている。政府・司法が一体となった教育の反動化攻撃をはね返していこう。
                                 (遠山裕樹)



自衛隊の市民監視を許すな
抗議行動をビデオで撮影DVD引き渡しかちとる



 【郡山】自衛隊の情報保全隊が反戦運動をはじめさまざまな大衆運動、マスコミ取材・報道、個人の発言を系統的に監視し記録していた実態が明らかとなった。
 郡山でその対象とされていた「平和憲法を守り生かす郡山共同センター」と「戦争への道を許さない郡山のつどい」は、六月二十五日と二十九日に陸上自衛隊郡山駐屯地に対し監視活動への抗議、全容解明、中止と謝罪、情報保全隊の解散などを求める申し入れを三十人の参加で行った。
 六月二十五日、正門守衛棟の小部屋で広報担当が立ったままでやりとりするという礼儀を欠いた態度だったので、申し入れ文の読み上げも手交も行わず、責任ある地位の者が対応する日を設定することを約束させた。その二十九日には、駐屯地指令職務室長が対応したものの「全国的なこの問題に対する対応」であると、参加者を敷地内にいれず、門前で各代表が申し入れ文を読み上げ、文書を手渡す行動となった。
 この行動中、自衛隊側がビデオカメラで参加者の撮影を行っていることに対し、「監視活動の中止を求めているのに何事か」「国家権力側がやってはならない行為だ」「肖像権の侵害だ、個人情報保護に反する」と直ちに中止すること、ビデオを破棄することを求めた。自衛隊担当官は撮影の不当性を認め、録画したDVDを参加者に渡してよこした。軍事警察、憲兵の復活を許さないために、民主主義的な権利を主張し、行使していく活動を重ねていこう。      (N)

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