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 「ゆうメイト」労働者とのインタビュー         かけはし2007.5.28号

非正規雇用者の権利保障・待遇
改善かちとり労働運動の再建へ



 郵便局にゆうメイトと呼ばれる非正規雇用の労働者が全体の四割近く、十六万人もいる。ゆうメイトは本務者とほぼ同じ仕事をしているのに賃金は半分以下、一日雇用(六カ月予定雇用)の極めて不安定な条件で働く労働者だ。給料の低さとともに、雇い止めが大きな問題であり、ゆうメイトの雇い止め問題の裁判も全国で行われている。ゆうメイトの実態をAさんに聞いた。(編集部)


ゆうメイトの
仕事の内容

――どんな仕事をしていますか。

 配達です。

――郵便局はどういう働き方がありますか。

 郵便課、集配営業課、貯金課、保険課そして総務課です。

――ゆうメイトはすべての課にありますか。

 すべての課にあるようですが、ほとんどが郵便課と集配課です。郵便課は窓口と中で郵便の区分けをします。集配課は郵便を細かく分けて配達します。局によっても違いますが、郵便小包は民間の業者に委託しています。2ネットが導入されると、本務者が小包なんかもやるようになるので、委託業者が仕事がなくなって困るといっています。

――ゆうメイトのやっていることと本務者がやっていることの違いはありますか。

 私の勤務する局では書留もやりますし、日曜出勤も月一〜二回あるので、やっていることは同じです。後輩に仕事を教えるのもゆうメイトです。去年から2ネットが入りました。今まで同じ仕事だったのを二つに分けて、書留や小包の対面配達を本務者がやり、通常郵便をゆうメイトが中心で行う。ゆうメイトが集まらなかったり、集まってもすぐやめてしまうので、導入は延期状態です。


スキル評価と
ランク分け

――ゆうメイトの@勤務時間A給料B社会保険C有給休暇などの待遇についてお聞かせください。

 私の場合は午前九時から午後一時までで四時間で残業もあります。時給千円です。時給千円はいいほうで、地域・職種によって内務六百六十円、外務七百四十円の局もあります。二〇〇四年からスキル評価が導入され、ゆうメイト同士に賃金の差をつけます。AからCランクまであって、それぞれのランクの中に習熟度ありなしで二段階に分かれています。つまり、六段階に分けられています。一番良いのがAの習熟度ありで千百九十円です。一番下位のランクが千円です。

――基本は千円ですか。

 そうです。これがすごく問題があります。一つの区を配れればCとなり、二つ出来ればB、三つ出来ればAとなります。やる気があっても要員不足で教える人がいないので他の地域を担当できなかったりします。習熟度ありなしは早さと正確さですが、すごく主観的で、地域によっては早さといっても、移動する距離とか郵便受けが小さいと対面配達しなければならず時間がかかる。ランク分けされる基準があいまいです。二〇〇五年以後Cから順に上がるのではなく、飛び級が出来るようになりました。毎年二月と八月に認定があります。本人評価を含めてBランクだったのですが、Cの習熟度とされました。管理職に言ってもちんぷんかんぷんなので支社へ申し立てたら是正し、いまBランクです。

――ゆうメイトで働く人がたくさんがいますが、お互いに自分がどういうランクで働かされているのかは知っていますか。

 あまり、話さないです。先輩のゆうメイトは当然、Aランクと思っていたら、十数人の中で三人しかいませんでした。Aランクの人がずっとAランクということはなく、半年に一度見直しされ、パイを分け合うような形で、割合が決まっているわけではないです。

――そうすると一日四千円ですね。それで週何日働いているのですか。

 週五日です。基本的には月八万円です。実際には残業があるので十万円くらいになります。週二十時間以上なので、雇用保険は入っていますが、週三十時間以上でないので社会保険は入っていません。有給休暇は六カ月以上働くと十日間支給されます。実際には人が足りなくて、有給を取ろうとしたら、休んでいる人に出てきてもらうか、一人で二人分を誰かにやってもらうしか取れない状態です。

賃金は本務者
の半分以下

――ゆうメイトという非正規労働の問題点はなんですか。

 給料が安いことですね。同年代の本務者と比べると半分とか三分の一くらいだと思います。四時間勤務のゆうメイトはみんな家族と同居です。自宅から通勤しているので、なんとか生活が成り立つという具合です。その他には雇い止め問題です。

――働く時間を四時間ではなくて、フルタイムに近く八時間働くことは可能なのですか。

 私の勤務する局では現在募集していません。細切れに雇われています。四時間で配達できるような仕事になっています。

――フルタイムで働くことを望んでいますか。

 家族に介護を必要とする人がいるので、フルタイムで働くことはできません。

――それでは、オランダモデルと言われる短時間労働でもフルタイムでも単に時間の区切りの問題であり、短時間労働でも正規職員としての待遇を受けられる。そうした労働条件をつくり出していかないと、生活ができませんね。

 「郵政短時間職員」という制度はあるのですが、二〇〇三年度を最後に採用試験を実施していません。民営化後も応募は行われないそうです。

――以前は年末年始の郵便を配るためにアルバイトを雇うということだったと思います。ゆうメイトがこんなに増えたのはいつ頃ですか。

 一九八〇年前後から団地配達制度が導入され、女性の非常勤労働者がかなり雇用されました。また郵便内務作業にも採用され始めました。さらに行革などで国家公務員の定員削減、一九九〇年ころからバブル経済にともない都市部での郵便内務、集配で非常勤労働者が大量に雇用されました。このころから「ゆうメイト」と言われるようになりました。

日々雇用と
「雇い止め」

――郵政公社は十月の完全民営化に向かっていますが、職場はどんな様子ですか。ゆうメイトへの影響は。

 職員は新会社への雇用の承継が郵政民営化法一六七条で保障されていますが、ゆうメイトには適用されません。ある支社では「良質とは言い難いゆうメイトの再雇用は行わないよう見極めを」という指示文書が出されたそうです。民営化後は非正規社員区分が、勤務時間七時間未満の「パートタイム」、七時間以上の「契約社員」、七時間以上で「優秀な」非正規社員である「キャリアスタッフ」等に細分化されますが、労働条件に大きな変更はありません。時々業務研究会が開かれて、管理職が資料を配布して説明する程度です。職場ではそんなに話題になっていません。

――本務者は郵便とか保険とか別会社に配属になりますが、ゆうメイトは?

 ゆうメイトは大部分が郵便課か集配営業課なので、郵便局会社か郵便事業会社に配属になります。六月ごろに希望を聴取するようです。

――雇用期間は一年ですか。

 いいえ、一日(日々)雇用で、予定雇用期間が六カ月です。さすがに民営化後は六カ月雇用になります。

――では、いま問題となっているスポット派遣と変わりがなく、ただ働く場所が固定しているということですね。極端なことを言ったら、「あなたは次の日に来なくてもいい」と言われたら、雇いとめ=解雇ということもありうるのですね。こんなひどい雇用を国家がやっている。

 実際にあるようです。私が所属する郵政労働者ユニオンの支部に相談がありました。「昨年の九月三十日まで予定雇用期間があったのですが、四月下旬頃に、来月いっぱいで止めてくれ」という、一応三十日の予告期間はありましたが雇い止めされました。非常に不安定な雇用条件になっています。

郵政ユニオンの
存在を知って

――郵政労働者ユニオンに入ったきっかけは?

 小さい頃から鉄道マニアで、国鉄分割民営化がきっかけで労働運動に興味を持ちました。ゆうメイトを始める時、日教組や自治労のように全逓も連合の中では持ちこたえている組合と思って、インターネットで調べてみると、全逓はすでに労使協調に転換してまともな労働運動をやっていないことが分かりました。もっとまともな組合はないかと調べてみると、郵政労働者ユニオンの存在を知りました。長期のゆうメイトを選んだのも主に労働運動をやりたいという思いがあったからです。就労一週間後、メールで連絡して加盟しました。うちの局では組合員は私一人だけです。いまのところ職場での活動を自粛しています。

――JPU(元の全逓)は職場でどう受け取られていますか。

 全郵政は問題外ですが、JPUも存在感がありません。ほとんど活動をしていません。組合事務所はあるのですが、中は喫煙所みたいになっていて、壁には去年十月の執行委員会の予定表がかかっているというありさまです。JPUは一応、ゆうメイトの組織化は言っているようですが、積極的にゆうメイトの組織化をして待遇改善のために闘うということはまったくありません。局舎の前でビラまきするということもありません。ゆうメイトの人は組合(JPU)とは関係ないと思っています。

「使い捨て」への
怒りが高まる

――ゆうメイトはボーナスや退職金がない。年金も自分でかけるしかない。非正規の人が一番つらいのはボーナスの時、正社員はボーナスが出るのに、自分たちはもらえない時だと聞いたことがあります。ゆうメイトが本務者のことをどう思っていますか。

 職場によっては本務者に対して悪い感情を抱いているゆうメイトもいるようです。わずかですが数万円のボーナスは出ます。しかし、今後の生活設計ができるようなものではありません。厳しい状態です。

――全国でゆうメイトの雇い止め裁判が起こっています。そのことについて、どう思われていますか。

 大阪の豊中郵便局で雇い止めされた松本さんが裁判をやっています。松本さんは郵便受け箱の上に、郵便の束を置き忘れた。それと同じミスを私もしたことあります。通常こうしたミスはよくあることです。人ごとではないと思います。ひとりで裁判を闘うことはなかなか出来ないので、郵政労働者ユニオンのように組合が支援することが重要ですね。ゆうメイトの雇い止めの裁判は十件以上起こされています。しかし、ひどいことに今までのところはすべて敗訴しています。ゆうメイトを使い捨ての労働者として扱っていることに腹が立つし、安定的に雇用を保証させることが重要です。

――郵便局への要望は?

 指サックとか輪ゴムとかがないので、百円ショップに行って自分のおカネで買ってきています。買えるものならまだいいんですが、様式が変わるからと不在通知を増刷してくれないのでなかったりします。これは困ります。就業時間前の着手や休息時間の返上などサービス労働も常態化しています。こうした要求なんか、本来なら組合がちゃんと要求すべきですが組合が機能していないので取り上げられません。

闘う潮流の
飛躍を望む

――郵政労働者ユニオンに言いたいことは?

 上部組織の違いなどがありすぐは無理でしょうが、将来的には郵政労働者ユニオンと郵産労とJPUの残っている左派がいっしょの組合を作り、闘う潮流として飛躍することが必要ではないかと思います。月収が十万円以上のゆうメイトは組合費が月千円(10万円以下は500円)、共済費が七百三十円かかります。ゆうメイトがもっと気軽に入れるように組合費を値下げしてほしいです。
 赤羽郵便局にゆうメイトの分会が出来ました。それは4・28被解雇者の池田実さんがビラを配っていて、それがきっかけでゆうメイトの人が相談にきて組合結成になりました。労働相談などでゆうメイトが組合に入ることがあります。本務者からの働きかけが重要です。さらにゆうメイトの全国交流会を行っていますがそうしたところに参加すると、同じ立場同士なので気持ちも通じて励みになります。ゆうメイト同士のつながりをもっと作っていきたいですね。

――ゆうメイトから本務者への登用の道はあるのですか。

 五月十日、参議院議員会館でゆうメイトと郵政公社・郵政会社の担当者との意見交換会がゆうメイト全国交流会の主催で開催されました。「契約社員」の中から「キャリアスタッフ」に登用し、「キャリアスタッフ」の中から正規社員へ登用することを検討しているそうですが、いずれも選考基準はあいまいです。私のように勤務時間が七時間未満の「パートタイム」から正規社員をめざすには、まず七時間以上の「契約社員」に勤務条件を変更しなければなりません。現在勤務している局が「契約社員」を募集していなければ他局へ転勤してくださいとのことです。地方から参加したゆうメイトは「東京の人の発想だ。地元には郵便局は一つしかない」と指摘していました。

――スポット派遣、ワーキングプアー問題、マクドナルドの店長の残業代未払い問題があります。郵便局も残業代未払い問題で何十億円も支払いをしました。今、社会的に非正規の人たちの働き方があまりにもひどいと問題とされています。非正規雇用の待遇改善をなんとしても勝ちとりたいですね。今後の夢とか希望は?

 職場できちっとした労働運動を作り上げて、ゆうメイトをはじめ本務者の待遇改善をしたいです。さらにできるなら、労働者が政治的社会的課題を積極的に担えるようになりたいですね。民営化して唯一得られるのはスト権です。来年の春闘で、十六万ゆうメイトが立ち上がれば職場は変わります。けっしてゆうメイトがサポート要員でないことを思い知らせてやりたいです。今年の四月から一部の局では、基本給が百円アップして千百円というところが出てきています。闘えば勝てる条件はあります。これからがんばっていきます。

――どうもありがとうございました。(文責編集部)


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