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                            かけはし2007.5.28号

辺野古の海に自衛隊が出動した!

掃海母艦「ぶんご」投入は前代未聞の暴挙だ
新基地建設計画の撤回めざし全国から抗議を


反基地運動への
「治安出動」だ

 五月十八日、辺野古岬周辺海域で実施された米軍新基地建設のための環境現況調査(事前調査)において、ついに海上自衛隊が投入された。五月十一日に横須賀を出港した掃海母艦「ぶんご」に搭乗した海上自衛隊の潜水士数十人が、民間調査会社のダイバーと協力してサンゴの産卵を調査するための着床板を海底に設置したのである。機雷除去にあたる「水中処分員」がこの作業にあたったとされている。
 これは前代未聞の暴挙である。辺野古新基地を建設するために住民の反対運動に直接自衛隊が介入することは、沖縄の民衆に対する「治安出動」そのものに他ならない。
 そもそも今回の環境現況調査(事前調査)は、事業内容も「方法書」も明確にせずに強行したものであり、環境アセス法の趣旨にも違反する脱法行為である。まして、いま米日両政府が押し進めている「新沿岸案」は沖縄県知事や名護市長からの最終的同意を得たものではない。それは「普天間代替」施設の建設については「沖縄県及び関係地方公共団体と協議機関を設置して、対応するものとする」という昨年五月三十日の閣議決定をも踏みにじるものである。

米日両政府の
最高意思決定

 米日両政府は、辺野古沖の海上新基地建設計画が、二〇〇四年からのボーリング調査が住民たちの座り込み行動や海上阻止行動によって阻止されたことに重大な打撃を受けて、焦りをつのらせていた。そして五月一日にワシントンで行われ、両国の外務・防衛閣僚が参加した日米安保協議委員会(2プラス2)の共同発表は、あらためて二〇〇六年五月の「米軍再編ロードマップ」を着実に実施し二〇一四年までに辺野古新基地を建設すると述べている。
 今回の掃海母艦「ぶんご」の辺野沖への派遣と、海上自衛隊ダイバーの大量投入による着床板の海底設置は、四月の安倍訪米と五月の「2プラス2」の確認に基づき、日米両政府の最高意思によって行われたものであることは明白である。米ブッシュ政権が、米軍再編の「円滑な実施」に遅れをもたらす辺野古住民の闘いを押しつぶすよう安倍内閣にネジをまき、安倍内閣がその要求を日米同盟のための「至上課題」として、自衛隊派遣を行ったのは確かである。
 呉を母港とする「ぶんご」がわざわざ横須賀にまで出向き、掃海隊群司令(海将補)と複数の幕僚を乗艦させて辺野古沖に向かったという事実は、この任務の重大性を物語るものである。

法的根拠がどこ
にあるのか?

 五月十六日の衆院外務委員会で防衛省の山崎運用企画局長は「ぶんご」の任務について「公表できない」と答弁し、出動の法的根拠を「国家行政組織法上の官庁間協力」と述べた。しかし防衛施設庁による自衛隊の出動要請などは例がない。「その論法が通るのなら、防衛施設庁が建設業者に委託した米軍施設などの建設工事も自衛隊に委託できることになる」と5月17日付「東京新聞」は批判している。
 また久間防衛相は五月十七日の参院外交防衛委員会で「妨害に対する人命救助を含め、どんな場合も対応できる万全の態勢を取っている」「施設庁にまかせるのではなく、防衛省を挙げてこの問題に取り組まなければならない」と答弁した。久間は、海自の活動が「警備活動にあたる」可能性も示唆した。しかし、自衛隊法の「警護出動」(81条の2)、「海上警備行動」(82条)のいずれにも「妨害に対する人命救助」などという規定はない。
 さらに久間は五月十八日の会見で「県から許可された時は調査できるのが当たり前で、妨害すること自体が異例だ」と居直り、安倍首相も同日「行うべき調査を行ったということだ。知識また技術を持っている自衛隊が協力をしたということではないでしょうか」とこれまた超法規的に語っている。「環境現況調査」への参加が自衛隊の任務だというのだろうか。
 安倍や久間の本音は、辺野古住民の基地反対運動に対して「治安出動」「警備出動」「海上警備行動」などの治安課題として自衛隊を差し向けようとするものだ。しかしこれが根本的に自衛隊法すら根本から破壊し、軍隊の力で民衆の非暴力的な運動を弾圧しようとするものであることは間違いない。安倍内閣が進める改憲・「戦争国家」体制構築の路線は必然的にこうした暴走を解き放つものなのだ。現に、十八日には民間業者側のダイバーが反対派にチューブを外されて溺れさせられそうになったと訴え、海上保安庁が事情調査に乗り出す、という弾圧の準備が始まっている。

日本軍、米軍
そして自衛隊

 自民・公明の与党の支持で当選した仲井真弘多・沖縄県知事も五月十八日午前に「銃剣を突きつけているような連想をさせ、強烈な誤解を生む」と批判し、同日午後には文書でコメントを出して「海自が参加する状況とは考えられない」「反自衛隊感情を助長するのは避けるべきだ」と語った。当の自衛隊からも今回の自衛艦派遣に対して疑問を投げかける声が出されている。
 沖縄民衆は沖縄戦で日本軍による虐殺を経験し、米占領下でも米兵の銃剣とブルドーザーで農地を強奪された。いま日本政府は、自衛隊を使って再びみたび沖縄の住民に対してまったく同様の敵対に乗り出している。
 米軍再編と日米の軍事一体化、そして改憲「戦争国家」づくりを通じて、自衛隊が民衆に対して国の内外を問わず直接銃口を向ける動きをもたらすのは必然である。このような暴挙を絶対に許さない運動を作りだそう。 (5月20日 純)


「基地のない沖縄」への意思示す
嘉手納基地包囲めざして4回目の「人間の鎖」行動

沖縄の基地強化
はさらに進む

 五月十三日、十五日の復帰三十五周年を前にして沖縄では嘉手納基地を「人間の鎖」で包囲する行動が取り組まれた。
 復帰三十五年を迎えた米軍の「対テロ」グローバル戦争と日米軍事一体化の最前線基地としての沖縄の現実は、五月十一日に辺野古への米軍基地新設の「事前調査」参加のために掃海母艦「ぶんご」が横須賀基地を出港した事実によって具体的に明らかになった。この報を受けた沖縄の人びとの反応は「銃剣とブルドーザーで土地接収された過去の再来だ」という辺野古の「命を守る住民の会」の怒りの声に示されている(「沖縄タイムス」5月13日)。さらに高校教科書検定で日本軍による住民の「集団自決」強制記述が削除された問題についても豊見城市議会、糸満市議会などはいずれも満場一致で「悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた沖縄県民にとって、到底容認できるものではない」(糸満市議会)とする意見書を採択することになった。
 PAC3の嘉手納配備、米軍と自衛隊の相次ぐ実戦的戦闘訓練、一般道で住民に銃を向ける米兵、そして辺野古への新基地建設のための事前調査や東村高江区への「ヘリパッド建設」計画など、「沖縄の基地負担軽減」という「米軍再編」のうたい文句がまったくの虚偽であり、沖縄への基地負担の強化はいっそう深刻さを増している。五月十三日の紙面に掲載された「沖縄タイムス」の世論調査では、「本土復帰」を八九%の人びとが評価しつつ、基地の縮小を求める意見は八五%、教科書での沖縄戦での日本軍による「集団自決」強制書き換えにも反対意見が八一%の圧倒的多数というに上っているのだ。

家族ぐるみの
参加もめだつ

 五月十三日、梅雨入り直前の暑い陽射しの中で、午後三時から「嘉手納基地包囲行動」が行われた。労働組合や市民団体とともに、家族ぐるみで参加した地域住民の姿も目立っている。
 二〇〇〇年の沖縄G8サミット以来七年ぶり・四回目の嘉手納基地包囲行動は、一万五千二百七十人が全長十七・五キロの基地周囲を四度にわたって手をつないで取り囲んだが、わずかに「鎖」が切れた部分があり、嘉手納の完全包囲はならなかった。しかし、この嘉手納包囲行動は、あらためて「基地のない沖縄」を実現しようという沖縄の人びとの底深い意思を確認するものとなったのである。
 辺野古住民や東村高江区住民の米軍基地建設反対に対する闘いに連帯し、日米軍事一体化と自衛隊の「対テロ」戦争への動員のためについに自衛艦を辺野古沖に派遣した安倍政権に怒りの声を上げよう。 (K)


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