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「国会へ行こう!アクション」第3波           かけはし2007.4.30号

ストップ!改憲手続き法

憲法改悪まっしぐらの安倍政権に抗議の訴え

 四月十三日の衆院本会議で、改憲手続き法案と米軍再編特措法案が通過し、参院に送られた。さらに昨年の臨時国会での改悪教育基本法成立にもとづいた教育四法案の趣旨説明が行われ、「教育再生に関する特別委員会」の設置も決定された。文部科学委員会ではなく毎日でも審議ができる特別委員会で審議を進めることは、超スピード審議によって今国会中に何がなんでも成立させる決意を固めていることを意味する。安倍内閣と与党は、後半国会で矢継ぎ早に悪法を通し、七月参院選に向けて政局の主導権を確保しようとしているのだ。
 しかし四月十六日の参院本会議で、改憲手続き法案の与党案を提出した自民党の保岡興治衆院議員が「参院では衆院での議論を踏まえ、足らざるところが集中的に論議されるものと思慮する」と、あたかも参院での審議が衆院の「足らざるところ」を補充するものに過ぎないかのような答弁をしたことに野党の批判が集中し、参院憲法調査特別委員会での最初の審議は十七日に延期されることとなった。この日、朝日新聞に掲載された世論調査では、今国会での改憲手続き法案賛成の世論が四〇%で、反対の三七%をわずかに上回ったものの、手続き法案に「最低投票率」の規定を盛り込むことには約八割が賛成するなど、与党案には反対の立場が圧倒的であることが示されている。
 四月十七日、冬に逆戻りしたような冷雨が降りしきる中を、午後六時半から三回目となる「ストップ改憲手続き法 国会へ行こうアクション」が行われ、悪条件にもかかわらず五百人が衆議院第二議院会館前に集まった。
 国会ではこの時間にも特別委員会の審議が続いている。最初に、社民党の保坂展人衆院議員と共産党の井上哲士参院議員が、国会情勢を報告した。つづいて改憲手続き法案や少年法の改悪に反対する弁護士、教科書の沖縄戦記述で日本軍による「集団自決強制」書き換えの検定に反対する出版労連の代表、教育三法案に反対する全教の代表、さらに米軍再編特措法案と闘う青年、「テロ・組織犯罪謀議罪」に名前を変えた共謀罪新設に反対している「盗聴法に反対する市民連絡会」の仲間、「日の丸・君が代」強制反対の「予防訴訟の会」の原告などが、次々にアピールを行うとともに、国会に向けたシュプレヒコールを繰り返した。
 四回目の「国会へ行こうアクション」は四月二十六日に行われる。さらに連休明けにも国会前での行動が連続して呼びかけられることが提起されている。(K)


辺野古に新基地をつくるな
「事前調査」の強行許すな
米軍再編特措法を通すな

 四月十八日、辺野古への基地建設を許さない実行委員会(辺野古実)は、衆院第二議員会館前で、午後六時半から辺野古への新基地建設のための「事前調査」と米軍再編特措法案に反対する行動を行った。前日に続く冷雨の中、五十人以上が参加した。
 この日午後には、沖縄現地から「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団」の代表が上京し、防衛省と環境省の係官の説明を受け、環境アセスメントの手続きに入る前の海域現況調査は違法であり、行わないよう要請行動を行った。すでに沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団は、四月十二日に沖縄県環境政策課に対して、那覇防衛施設局が県に提出した公共用財産使用協議書に同意せず、関連文書すべての公開を求めている。
 最初に大田昌秀参院議員の秘書の方から国会情勢報告を受けた後、この日の行動のために沖縄から駆けつけた監視団副団長の土田武信さん(沖縄大学教員)が発言した。土田さんは 違法な「事前調査」についてはすでに沖縄県、防衛省、環境省の間で事実上の合意が出来ているのではないかという危惧を表明し、防衛施設局提出の「公共用財産使用協議書」への同意と現況調査が環境アセスメント法の脱法行為であって、県はそれに同意するな、との声をさらに強めたい、と語った。
 「やんばるの森」にある東村高江の米軍ヘリパッド建設反対闘争を那覇で支援する「なはブロッコリー」の本永貴子さんは、沖縄の水源と他に類のない貴重な生態系を破壊するヘリパッド建設反対の闘いは、辺野古新基地建設反対と一体だと強調した。この日の防衛省、環境省との交渉に同席した反安保実の仲間の報告、平和フォーラムからの連帯発言を受けた後、再度国会に向けて「米軍再編特措法案反対」の意思をシュプレヒコールで表現した。 (K)


関西連絡会が連続学習講演会
在沖米海兵隊のグアム移転と先住民族の闘い

 【大阪】沖縄とともに基地撤去をめざす関西連絡会の連続学習講演会の最後が四月十三日にあった。
 米軍再編計画によれば、普天間基地の代替として辺野古に新たな基地を建設し、嘉手納基地の機能を強化し、嘉手納以南の基地を北部に統合するなどが計画され、それとセットで、沖縄の負担軽減と称して海兵隊八千人のグアム移転が進められようとしている。
 学習講演会では、松島康勝さん(東海大准教授)が示唆に富む講演をした。その要旨のみをまとめてみた。

地元住民の意思
など完全に無視

 グアムは、マリアナ諸島にある人口十七万人の淡路島ぐらいの面積の島で、先住民チャモロ人は人口の37%。一五二一年にマゼランが「発見」し、スペインがマリアナ諸島の領有化を宣言。その後、一八九八年米西戦争で米国が勝利したことによりフィリピンなどと共に米国の保護領になった。一九四一年十二月から四四年八月まで日本軍が占領し、太平洋戦争の激戦地の一つである。戦後は米海軍の統治を経て、管轄権が四九年内務省に移った。
 自治的未編入地域(属領)の扱いを受けており、米国大統領・議会議員選挙の投票権がなく、国防・航空の観点から利用価値があるとされている。一九八七年住民投票でコモンウエルス法案が承認された。この法の下では、連邦政府がグアムに適用する政策を決定する際にグアムの同意が必要となる。グアム側はこの法案の実現を何度も求めているが、米政府は憲法上・軍事上の理由を挙げて拒否してきた。住民の意思に関係なく、グアムを軍事的に利用したいからである。
グアムは米軍基地の島であり、リゾート観光地だ。グアムのチャモロ・ネイションという団体を中心にしたネットワーク「グアムの平和と正義のための連合」は、同島で強化されている基地機能に反対し、沖縄からの海兵隊移設の決定過程でグアムの人間が排除されてきたことに異議を唱えている。また、この基地機能の強化は、グアムの環境・社会・文化・政治経済から見て、島に深刻な影響を与えると主張している。チャモロ人は先住権に基づいて基地反対運動を展開している。沖縄は、グアムにはこのように体を張って抵抗している人々がいることを明確に認識する必要がある。

基地拡張の利権
に群がる資本

グアムの米軍は、沖縄と米本土から九千七百人の海兵隊と陸・空軍合わせて、将来的には現在の三倍以上の二万一千人と大幅に増強される予定だ。米政府は、キャンプ・シュワブ沿岸の基地建設と海兵隊の移転をリンクさせる考えだ。
 グアムに海兵隊を受け入れるために、住宅建設、電力・水道等のインフラ建設が実施される予定だ。このとき、沖縄の労働力や産業にも平等な機会が与えられるとしている。日本政府が支出する莫大な予算でインフラ整備が行われ、沖縄に特需がもたらされるという。
 グアムではまだ基地関連の開発は行われていないが、地価は五〇%も上昇しているという。日米両政府は、辺野古に新基地を建設するための取引材料として、グアムの基地特需を沖縄経済界に提示しているわけだ。沖縄出身の下地幹郎衆議院議員などは、沖縄企業のグアム投資を活発に求めていて、グアムにおけるインフラ整備に沖縄側が大きな役割を果たすことを期待している。

沖縄の基地機能
も飛躍的に強化

太田昌秀元知事もグアムへの海兵隊移設を求めたがかなわなかった。では何故今回は……。それは日本政府が移設関連費用を支払うことに合意したからだ。
 沖縄から海兵隊がいなくなっても、沖縄の基地機能は以前より強化される。グアムに海兵隊の司令部機能を移し、沖縄に実戦部隊を残したということだ。そして、自衛隊との戦闘協力体制を強化したことから考えると、沖縄を戦場としてより使いやすい状態になり、戦略的な基地機能は飛躍的に増大するだろう。
 グアム大学では迷彩服の軍人学生が学び、地元の高校の廊下では生徒が模擬銃で行進の練習をする姿も見られるという。大規模な軍事訓練が実施されとホテルなどに軍人が滞在し、現金を落としてくれると喜ぶ人もいる。日本国憲法下にある沖縄もグアムと同じく、住民がどんなに反対しても、日本政府は自分たちの意志を沖縄に押しつける。グアムへの海兵隊の移設は、チャモロ人の米国への従属を深めるだろう。日本政府は莫大な資金によってそれに加担しようとしている。
 グアムが米国だから海兵隊移設を当然と考えたのでは、世界の人々から沖縄の反基地運動は共感を得られないであろう。グアムは沖縄のきょうだいのような島である。   (T・T)   


伊藤長崎市長射殺を糾弾する
「美しい国」が切り開く極右テロの水路


批判的言論を
封殺する機能

 四月十七日午後七時五十分頃、四選をめざして選挙運動中の伊藤一長・長崎市長が、選挙事務所近くで、山口組系暴力団水心会会長代行の男に背後から至近距離で銃撃され、翌十八日午前二時二十八分に死亡した。
 われわれはこうしたテロによる殺人や暴力による威嚇を厳しく糾弾する。長崎市では一九九〇年一月、「昭和天皇の戦争責任」発言を理由に当時の本島等市長が右翼の銃撃テロで重傷を負わされるという事件が起きた。また昨年八月には、小泉首相(当時)の靖国神社参拝を批判していた自民党の加藤紘一氏の山形県の自宅が右翼天皇主義者によって放火され、全焼するというテロも行われた。
 政治家と政治活動への極右や暴力団によるテロは、あらゆる批判的言論を押しつぶし、民主主義と自由を萎縮させる目的を持っている。小泉―安倍政権、石原都知事などが煽り立てた排外主義的ナショナリズムは、極右と暴力団による批判的言論抹殺のテロ攻撃を活性化させる機運をもたらし、「テロ」を口実にした警察国家体制の強化にはずみをつけている。この警察による監視・弾圧体制が、極右天皇主義の暴力と連動したものであることは、反天皇制運動や憲法改悪反対の運動、反戦・平和運動のデモや集会に対する公安警察の執拗な監視、デモに対する極右の挑発と妨害が野放しにされている実態を見れば明らかである。
 伊藤市長を射殺した暴力団の男の動機は、交通事故の「補償」問題や知人の企業への融資が断られたことによる長崎市政とのトラブルが原因であり、特別の政治的・思想的背景はないように報じられている。しかし、こうした極右や暴力団によるテロが、政治活動や社会運動に向けられることによって、すべての自由な批判的言論が封じ込められることが問題なのだ。テロが、メディアの「自粛」を作りだし、広範な人びとの政治活動を萎縮させる効果を持っていることは、歴史によって証明されている。

民主主義破壊の
治安弾圧体制

 殺された伊藤一長氏は決して左派の政治家ではない。伊藤氏は、一九九五年、保守の支持層をバックに本島等氏を破って長崎市長に初当選した。久間防衛相は今年の七月参院選に出馬するよう伊藤氏に要請していたとも述べている。
 しかし伊藤氏は、被爆地・長崎の市長として二〇〇二年八月の「原爆の日」の「平和宣言」で米ブッシュ政権の核政策を「国際社会の核兵器廃絶への努力に逆行している。こうした一連の独断的な行動を断じて許すことはできない」と名指しで厳しく批判するなど、核兵器廃絶の意思をつねに明らかにしてきた。昨年八月の米国による未臨界核実験に対しても、「自国のことのみを考えている」と怒りを表現した。その意味で、伊藤氏は被爆者の苦痛と悲しみを抱えて、アメリカ帝国主義の核軍事戦略に追随する自民党政府をきっぱりと批判する立場を取ることになったのである。
 われわれは改めて訴える。極右天皇主義者や暴力団のテロ・威嚇行為を培養しているのは、安倍政権の極右排外主義の政治であり、資本の利益のためにあらゆる批判的社会運動、労働運動への監視・弾圧を強めている警察権力そのものであることを。
 石原都知事は、二〇〇三年九月、北朝鮮との外交折衝の窓口になっていた田中均外務審議官が右翼から「売国奴」と攻撃され自宅に時限発火装置を仕掛けられるという事件が発生した時、「田中均というやつ、今度爆弾仕掛けられて、あったり前の話だ」「彼がそういう目にあう当然のいきさつがあるんじゃないですか」「国民が怒って、その怒りが高まってああいう形になる、これはね、私は否めないと思いますよ」とテロを奨励する発言まで行った。
 政府首脳は口々に「テロ対策の強化」を主張している。右翼・暴力団のテロを口実に進められる「テロ対策の強化」は、反政府の運動や外国人を「テロリスト」として見なし、住民を動員した監視と弾圧の体制をさらに強め、民主主義と人権を破壊する強権国家体制への道筋を打ち固めていくことになる。憲法改悪をめぐる政治情勢の煮詰まりの中で、改憲反対の運動に対する極右勢力の暴力と威嚇はさらにエスカレートしていくだろう。こうしたことを絶対に許してはならない。
 今こそ、憲法改悪反対闘争の中で、極右・暴力団によるあらゆるテロを糾弾し、民主主義、言論の自由、人権を守るための運動を広げよう。     (純)


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