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                            かけはし2007.4.2号

改憲手続き法案を絶対に通すな

中央公聴会に抗議して議面集会
改憲をやりやすくするための法案はいらない!


中央公聴会でも
反対・慎重が多数

 三月二十二日、改憲手続き法案についての中央公聴会が午前と午後合わせて六時間かけて行われた。この日の中央公聴会では、与野党六党が推薦する公述人が、改憲手続き法案についての意見を述べたが、その中では与党の公述人からも安倍政権が主導する形で進められている、強行突破方針への異論が続出した。
 小澤隆一・東京慈恵会医科大教授(共産党推薦)は、改憲案を国民に周知するための「広報協議会」について、その構成員が各党の議席数に比例して配分されることについて批判し、公正な第三者機関にゆだねる方法もあると述べた。高田健さん(社民党推薦)は、修正案の問題点を列挙し、改憲プロセスが急速に進む中での手続き法案強行は、民主党などの言う「静かな環境」とは程遠いと批判。
 しかし改憲をやりやすくするためだけの欠陥だらけの法案に対して、自民党の船田元理事は昨年末での民主党との合意に基づいた修正案を提出し、民主党の動揺をも見越しながら、与党単独で強行採決する方針を明確にしている。三月二十二日に中央公聴会に先立って開催された衆院憲法調査特別委員会では、三月二十八日に新潟と大阪で地方公聴会、四月五日に中央公聴会を行うことを議決した。このように形式だけ整えて、四月十二日に委員会採決、十三日に衆院本会議採決を強行するという方針に沿って、安倍内閣と与党は法案の問題点が世論の批判にさらされないうちに成立させる決意を固めているのだ。

主催者の権利
を侵害する政府
 
 5・3憲法集会実行委員会は、この日、十二時十五分から衆院議員面会所で集会を開催し百三十人が参加した。共産党の笠井亮衆院議員と社民党の辻元清美衆院議員が報告した。
 笠井さんは「改憲手続き法案採択を前提にした公聴会開催に対して、各委員に抗議のファックスなどが殺到している」と紹介し、午前中に発言した三人の公述人(浅野中央選管委員長・自民党推薦、江橋崇法大教授・公明党推薦、小澤隆一・慈恵医大教授・共産党推薦)も、与党案でいいという人はだれもいなかった、と語った。辻元さんは、議員提出法案を審議しているところに内閣がしゃしゃり出ていつまでに法案を通せと強制するのは、権力の暴走による主権者の権利の侵害だ、と安倍首相を批判した。
 その後、憲法を生かす会、憲法会議、許すな!憲法改悪・市民連絡会の仲間と二人の弁護士が発言した。議面集会参加者の一部は、午後の中央公聴会を傍聴した。改憲手続き法案への批判を強め、安倍内閣の改憲スケジュールを止めよう。(K)




平和フォーラム、反安保実が議面集会
世界的米軍再編と対決し国境超えた反基地闘争を


 三月二十二日午後五時半から、衆院議員面会所で「米軍再編関連特措法に反対する緊急議面行動」が行われた。三月十三日に続く二回目の議面行動だ。
 米軍再編関連特措法案の審議は、三月二十三日の衆院本会議で提案趣旨説明が行われ、委員会にまわされて本格審議が始まった。前日に行われたこの日の行動も平和フォーラムと反安保実などによる共同の取り組みとして呼びかけられた。
 最初に民主党の川口博史衆院議員が「米軍再編による基地負担の強化に反対するだけではなく、そもそも米軍が日本に駐留していること自体に反対」と語った。福山真劫・平和フォーラム事務局長が改憲手続き法案もふくめて安倍政権の「改憲・戦争国家体制作り」に反対する運動を強めようと主催者あいさつ。
 反安保実の仲間は、米軍再編法案の問題点を指摘し、グアムの人々とともに米海兵隊のグアム移転と日本政府による七千億円もの支出に反対しようと訴えた。社民党の照屋寛徳衆院議員は、「基地負担の軽減」を名目とした基地の押し付け・強化を糾弾し、サイパン島の捕虜収容所で生まれたため小さいときからチャモロの人びと(グアムやサイパンの先住民族)のことを聞いていたと語った。そして、グアムの州議会すら米海兵隊の移転のことは知らされていない、と日米両政府の住民無視を厳しく批判した。
 その後、衆院第2議員会館前の路上で集会を継続し、APA(アジア平和連合)ジャパン、核とミサイル防衛にNO!キャンペーンのアピール、辺野古新基地建設反対のための事前調査に反対する緊急署名を訴える発言が行われた。
 核とミサイル防衛にNO!キャンペーンからは、三月二十九日に埼玉県の入間基地に配備されるPAC3(ミサイル迎撃ミサイル)が、緊急時には市ヶ谷や練馬の自衛隊基地とともに日比谷公園や皇居前などにも展開される計画があることを紹介し、反対しようと呼びかけた。     (K)


チェルノブイリの一歩手前だった
すべての原発をすぐ閉鎖せよ
原子炉制御棒離脱のあいつぐ発覚
データ改ざん、臨界事故隠しで「安全」を装う政府と資本

志賀原発の臨
界事故隠ぺい

 三月十五日、北陸電力志賀原発1号機で、一九九九年六月十八日の定期検査中に制御棒三本が同時に外れて落下し、原子炉の核分裂が続く臨界状態になっていたことが判明した。当時、点検作業中のため、原子炉格納容器と圧力容器の上ぶたは外されていた。臨界状態は十五分間続いたとされる。まさに放射能漏れ事故寸前ともいえる事態だった。
 しかし北陸電力はこの事故をひた隠しにしていた。発電所長などがこの決定的重大事故を運転日誌に残さず、国にも報告しないことを決めたのだという。
 「原子炉内で部分的に核分裂が置き、臨界状態になっていた。停止状態の原子炉ではあり得ない事態。制御室にいた当直の四人は戸惑った。当直長は現場の作業員を呼び出し、館内電話で作業を指示。ようやく臨界状態は収まった。その後、所長ら幹部が緊急招集され、もみ消しを決めた」(朝日、3月16日)。一九九九年六月といえば、被曝した二人の労働者が亡くなった茨城県東海村の民間ウラン処理施設JCOの臨界事故の三カ月前である。

福島第一原発
でも起きていた

 そればかりではない。一九七八年十一月には東京電力福島第一原発3号機で定期検査中に制御棒5本が脱落し、「臨界事故が起きていた可能性が高い」と三月二十二日に東京電力が発表した。実に約三十年間にわたって事故は明るみに出ず、闇のなかに葬られていたのである。福島第一原発では一九七九年に5号機で、そして一九八〇年には2号機で、いずれも定期検査中に制御棒一本が脱落し、一九九三年には福島第二原発3号機で二本が脱落したことも判明している。
 さらに一九八八年七月には東北電力女川原発1号機で定期検査中に制御棒2本が脱落、一九九一年五月には中部電力浜岡原発3号機で、これも定期検査中に制御棒三本が脱落、二〇〇〇年四月には東京電力柏崎刈羽原発1号機でも制御棒二本が脱落していたこともわかった。まさに同種の事故が隠蔽されたことにより、相互に教訓化されないまま連鎖的に発生したのである。

「安全」偽装は
なぜ起きるのか

 この間、東京電力は福島第一、同第二、柏崎刈羽などで「ポンプの故障隠ぺい」「測定値のバラつき調整」「計器の不正設定」「弁の不正操作」「実在しない警報装置の成績書作成」「中性子検出器の設置場所不正」など約二百件に上るデータ改ざんやトラブル隠しを繰り返してきた。
 そして今回の制御棒脱落や臨界事故の発生である。しかも東京電力は、臨界事故を起こした当の原発(福島第一原発3号機)を今日にいたるも運転し続けているのである。まさに原発は立地調査の段階から、地盤、地質、地震、環境影響調査や工学的安全性、耐震設計などすべてにわたって都合の悪いデータは偽造したり、隠ぺいしたりという違法のカタマリといって良い存在である。
 安倍首相は、三月十五日夜、北陸電力の臨界事故隠しについて「こうした隠ぺいは許すことはできない。原子力は安全が確保されていなければならないし、国民の理解の上に原子力政策を進めていかなければならない」と語った、と報じられている。しかしJCO臨界事故にあたって当時の通産省は「今回の事故は人為的なミスによるもので特殊要因」「原子力発電所において同様の事故が起こるとは考えられません」と「説明」するFAXを原発を抱える各自治体に送りつけた。
 安倍は「原子力は安全が確保されていなければならない」と述べる。しかし国策としての原発は「安全が確保されていなければならない」がゆえに、「安全」を偽装し、そのためにデータ改ざんや隠ぺいを繰り返してきたのが真相ではないか。国家にとって原発は「安全」でならないがゆえに、電力会社はその意に沿って事実を偽造してきたのであり、その責任は政府にあると断言しなければならない。
 原子力委員会(委員長:近藤駿介東大名誉教授)が三月二十日に閣議に報告した「06年版原子力白書」は、志賀原発臨界事故の発覚を受けて「原子力の安全確保に関する透明性と信頼の確保について」と題する緊急声明を添付した。しかし同白書は、原発を地球温暖化問題の解決に貢献する中核的手段の一つとし、原発の利用と建設をさらに促進することを強調し、データ偽装の問題については「国民の信頼を損なう事態が発生した」と抽象的に述べるだけである。
 今こそ、すべての原発の運転停止と閉鎖に向けて闘おう。       (純)

追記:三月二十五日に起こった能登半島地震は志賀原発に近い(約17キロメートル)震源地でマグニチュード6・9を記録した。昨年四月二十二日の志賀原発2号機運転差止判決は耐震設計の不備に関する原告住民側の主張を認め「本件原子炉の直下にマグニチュード6・5を超える地震の震源断層が存在しないと断ずる合理的な根拠があるとは認めがたい」としていた。今回の地震は同判決が想定していた邑知潟(おうちがた)断層帯を震源とするものではなかったが、北陸電力の耐震想定の根本的誤りを別の角度から確認するものである。(同判決については本紙06年5月29日号参照)

【訂正】前号(3月26日号)1面5・3実議面集会記事見出しの日付「3・14」を「3・15」に訂正します。


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