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「靖国神社問題資料集」が示したこと           かけはし2007.4.16号

政府が「戦犯合祀」を推進

「政教分離」を踏みにじった厚生省と靖国神社の秘密会合


外部発表せず
「自然推移」で

 三月二十九日の新聞各紙は、国会図書館が公表した資料(新編靖国神社問題資料集)によって、A級戦犯を含む合祀問題について厚生省(当時)と靖国神社側が頻繁に会合し、事実上厚生省側のイニシアティブで、靖国への戦犯合祀問題が進められてきたことを明らかにした。
 少なくとも一九五八年四月から始まったA級をふくむ戦犯合祀についての厚生省と靖国神社のやり取りでは、厚生省援護局側がB級戦犯以下の合祀を「目立たないよう入れては如何」(4月)と提案、さらに「全部同時に合祀することは種々困難」だが「先ず外地刑死者(BC級戦犯)を目立たない範囲で(合祀するよう)諒承してほしい」(同年9月)と要請し、それを受けて靖国神社は翌一九五九年からBC級戦犯の合祀に踏み切った。ただし一九五九年四月の厚生省援護局復員課の「内連絡」には「将来の合祀にも支障を起こす恐れもあるという実情にもありますので……標記戦没者が含まれていることを公表せず、世論と共に極めて自然に推移するよう希望」との指示がなされている。
 A級戦犯合祀については、一九五八年九月の段階では厚生省側も「新聞報道関係の取扱ひ方如何でその国民的反響は甚だ重要な問題」として慎重な対応だったが、一九六六年に厚生省は合祀の前提となる「祭神名票」にA級戦犯も記載して靖国神社に送付、一九六九年の省と神社の検討会で「合祀可」との取り扱い決定を行った。同時にこの検討会で「外部発表」を避けることも決められていた。
 実際に靖国神社側がA級戦犯合祀を密かに行うのは一九七八年になってからであるが、この資料集には一九七〇年までのものしか含まれておらず、それ以後の経過については不明である。
 しかしこの資料集によっても、A級戦犯合祀が主要に厚生省側の主導権によって隠密裏に準備されていたことは明らかであり、この点から言っても政教分離を規定した憲法二十条(「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」)に違反することは明白である。

憲法20条改悪
に反対しよう

 安倍首相は「旧厚生省が一般的に(神社側に)お答えすることはあったが、最終的に(合祀)を判断するのは神社で、国が強制しているようなことではない」ので「問題はない」と語っている。しかしこの資料集で明らかになったことは、世論の動向を推し量りながら、A級戦犯合祀を主導したのは政府・厚生省の側だという事実であって「一般的にお答えした」というレベルに止まらない。
 そもそも厚生省が遺族援護法の適用対象となる「公務死」と認定した人びとの名簿を靖国神社に渡し、それをもとに神社側が「合祀」を行うというあり方自身、憲法二十条の「政教分離」に違反する、「宗教団体のために行う」行為なのである。
 一九七七年の津地鎮祭訴訟最高裁判決は、憲法二十条の「宗教的活動」の定義に関して、「当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になりうるような行為」が憲法が国に禁じている「宗教的活動」なのであって、たんに外形的行為によって「宗教的活動」か否かを決定してはならない、とした。いわゆる「目的効果基準」である。この「目的効果基準」は国の宗教的活動を「習俗」の名において認める可能性に道を開くもので、きわめて不十分なものである。しかしこの「目的効果基準」にそって、一九九一年一月の岩手靖国訴訟・仙台高裁判決、一九九七年四月の愛媛玉串料支出訴訟・最高裁判決、二〇〇四年四月の小泉靖国参拝訴訟・福岡地裁判決、二〇〇五年九月の小泉靖国参拝訴訟・大阪高裁判決は、いずれも違憲判決を出しているのだ。
 今回の厚生省と靖国神社の度重なる合議による「戦犯合祀」の推進が、「目的効果基準」に照らしても「宗教に対する援助、助長」のための、国による違憲の「宗教的活動」であることは、この上なく明らかである。
 二〇〇五年十一月に確認された「自民党新憲法草案」は、憲法二十条の「政教分離」に関して、「宗教教育その他の宗教活動」の前に「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える」という限定を付し、事実上、国家と宗教(神社)の結合を容認し、「政教分離」をないがしろにしている。われわれは憲法改悪阻止の運動の中で、この「二十条改悪」問題をも焦点に据えて闘っていく必要がある。
 また小泉の靖国参拝強行による東アジア外交関係の危機、A級戦犯合祀をめぐる昭和天皇裕仁の発言メモの公表などを通じて広がった「A級戦犯分祀」「靖国の非宗教法人化・国営化」「無宗教の国立戦没者追悼施設建設」などの議論が、今回の問題を契機にさらに具体化していくことも予測される。
 われわれは「海外派兵による新たな戦死者」をも想定したこうした動きに対して、戦死者を国家の名の下に「英霊」化し、その死を正統化・賛美する、国家による「慰霊」行為そのものに反対する立場からのキャンペーンを強めていこう。(純)


やめろ!「昭和の日」
「天皇賛美の日」に反対し4・29集会・デモに結集を


 昭和天皇裕仁の誕生日を「国民の祝日」とする、あってはならない「昭和の日」がやってくる。4月29日を、欺瞞的な天皇賛美の日「みどりの日」からむき出しの天皇賛美の日「昭和の日」に変える改「正」祝日法は、2005年5月、賛成多数で可決された。この国会の暴挙とこの国会を許した日本社会を、私たちは忘れてはなるまい。「昭和の日」制定とは、天皇と天皇制の戦争責任を追及する記念日が増えたというだけであるのだ。
 この暴挙から2年、日本政府は歴史へのさらなる不誠実を重ね、さらなる右傾化に走っている。安倍晋三首相とその人脈による、侵略戦争や「軍隊慰安婦」問題への隠蔽活動は目に余るかたちで進められているし、改憲を就任の際の公約として首相になった安倍は改憲手続き法の成立を急いでいる。すでに教育基本法改悪や防衛庁の省昇格を果たし、アメリカの戦争につき従うための米軍再編を進め、天皇主義的価値を社会の基準とする身分制格差社会、排他的で歴史修正主義に凝り固まった社会を「美しい」と感じさせる「国民」と国づくりをめざしている。一方で、天皇・皇族の「公務」と呼ばれる活動や露骨な政治発言は活発化し、すでに5月の天皇訪欧も発表されている。
 「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」という「昭和の日」に、天皇制の侵略・植民地支配の歴史、「高度成長」という名の経済侵略の歴史、それらの矛盾を抱え持ったまま現在に至る日本社会の現在的な問題を、多くの人たちと確認しあい、声をあげる力に変えていく集まりをもちたい。政府や右翼の暴力的な言論弾圧に抗し、天皇制反対の声を上げつづけていこう。多くの方の参加を!

◆◇やめろ!「昭和の日」4・29集会とデモ◇◆
b日時/4月29日(土・休日)
bデモ/午後4時◇豊島区・南池袋公園(JR池袋駅東口 約3分)
b集会/午後6時開場◇豊島区民センター音楽室(JR池袋駅東口約5分)
bお話/山口正紀さん(ジャーナリスト/元読売新聞記者)「9条を1条に――憲法・天皇制とメディア」b千本秀樹さん(現代史研究)「戦争と昭和天皇―小倉侍従日記をめぐって」
b資料代:500円
b主催:やめろ!「昭和の日」4・29集会実行委員会
b呼びかけ:アジア連帯講座/国連・憲法問題研究会/昭和天皇記念館廃館準備委員会/反天皇制運動連絡会/「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会/労働運動活動者評議会(50音順)
b連絡先:落合ボックス事務局 東京都千代田区三崎町3-1-18 市民のひろば気付電話:090―3438―0263


東電の臨界事故隠し糾弾の申し入れ
制御棒の構造的欠陥は明白だすべてのBWR原発の停止を

 【いわき】三月二十七日、東京電力に対して「臨界事故隠し」に対する申し入れ行動が実施された。申し入れ行動は、脱原発福島ネットワークをはじめとする、県内の脱原発グループ、及び県内外の脱原発グループ十三団体、十人が参加し、福島原発エネルギー館において行われた。
 当日の日程=期日・時間・場所は、前月に双方合意により決定していた。しかし、当日東京電力は、会場を一方的に変更しわれわれには、何等の事前連絡もなかった。
 私たちは冒頭このことに対して、事の子細を明らかにするよう求めた。
 彼らの説明によると「同一建屋において、地元助言団体との会合の開催が重なったため」としている。この返答には彼らの本音=出来るならやりたくない、が現れている。
事故隠し体質
は極まった!

 二〇〇〇年七月に発見した検査データの改ざん問題を、二年後の八月まで発表を遅らせたことが露呈すると、同年九月にはTF―1の格納容器漏洩率検査の不正が発覚し、二カ月後の十一月に同号機が一年間の運転停止処分となった。またこれらの不正発覚を契機に福島原発の他の号機も自主検査に入ったため、〇三年四月には県内原発のすべてが運転を停止せざるを得ない事態となった。
 これ以降、東京電力は「安全優先・情報公開を掲げ全社的に体質改善運動を実施」と立地町商工会への説明行動を展開した。
しかし、昨年末から、放水口温度データ、改竄が発覚に続き、法定検査に関する検査データ―非常用発電機、ECCS、総合負荷検査、安全保護系設定値確認検査、原子炉停止余裕検査などの改ざんも相次いで発覚し、そして臨界状態が七時間も継続した深刻な事故までも隠していたことが発覚した。東京電力の隠蔽体質は耐え難いほどに極まっている。

きっかけは内
部告発だった

 きっかけは内部告発だった。五年前東京電力が不正を発表した八月二十九日から一カ月後、経産省と東電が一体となって事件の幕引きを急ぐ最中の九月二十七日、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会に内部告発のメールが寄せられた。
 「原発で働いたことのある人」から、「東電福島第一原子力発電所1・2号機のスタック(註:排気筒)から、一九八〇年前後、毒性の強い放射性物質α核種を大気へ放出していました」という内容である。その後、この内容を裏付ける資料が美浜の会に郵送されてきた。
 私たちは、美浜の会から情報提供を受け、東京電力に対して、α核種などの放出実態を即刻明らかにすることを要求し、合わせて当該使用済み核燃料の写真を公開することも要求してきた。しかし彼等は事態を否定する一方、写真の公開もしなかった。
 今日明らかになった事態は「美浜の会」に寄せられた情報が事実であったことを示している。さらに3号機では臨界状態が七時間も継続した。
 東京電力広報は事ここにに至っても、当該使用済み燃料写真の公開を拒んでいる。東京電力の隠蔽体質は耐え難い程に極まっている。

国と電力会社の
説明は全くウソ

 この日われわれはBWR(沸騰水型原子炉)原発を全面運転停止にすることを、東京電力に対して要求した。事態は深刻である。制御棒の脱落は、七八年十一月二日に福島第一原発3号機、七九年二月十二日に、同5号機、八〇年九月十日には同2号機と毎年発生し、柏崎刈羽原発を加えると五機の原発で発生していた。
 七八年十一月に発生した1F―3の事故時には臨界になり、コントロール不能時間が七時間にわたり継続した。しかも今回、臨界事故隠しが発覚した福島第一原発3号機は、プルサーマル計画の導入を最初に予定していた原発だった。
 東京電力は今回の制御棒にかかわる事故の原因を作業員の捜査ミスとしている。原発制御の命綱とも言える、制御棒。その駆動機構に構造的な欠陥が存在することは明らかである。
 頻発する制御棒引き抜けと臨界事故はBWR特有の制御棒駆動機構の構造的欠陥を示している。重力に逆らって、炉芯底部から上方向に挿入することの危険性は指摘されてきた。国・電力会社はこれまで、「安全装置が付いている」「故障しても安全側(制御棒が挿入される側)に働く」「制御棒は一本ずつしか動かせない仕組みになっている」「誤って制御棒を引き抜こうとしても引き抜けない仕組みになっている」などと説明してきた。これらのすべてが、全くの虚構であった事が露呈した。BWR型の原発は全号機を直ちに運転を停止し、総点検を実施すべきである。
 保安院は指示せよ。制御棒の構造的欠陥が明らかになったBWR原発の全機を運転停止とすることを。(浜中)


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