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                            かけはし2007.3.5号

改憲手続き法案はいらない!

許すな!憲法改悪・市民運動全国交流会
政府・与党のもくろみを打ち砕く改憲阻止のうねりを作りだそう

 【大阪】第10回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会が、二月十七〜十八日の日程で大阪で開かれた。任期中の改憲を表明する安倍内閣のもとで現在開かれている第166通常国会で、改憲派は五月三日までに「改憲手続き法案」の成立をはかると公言している。集会は、同法案を廃案にすべく全国で連携した闘いを展開していくことを中心にした論議がなされた。
十七日には、大阪市すまい情報センターで、交流会に先だって「戦争のできる国づくりをとめよう!許すな憲法改悪・全国草の根市民集会」が開かれ、主催者を代表して中北龍太郎さん(とめよう改憲!おおさかネットワーク共同代表)があいさつし、山内敏弘さん(龍谷大教授)が記念講演を行った。

海外派兵の恒
常化と憲法改悪

 山内さんは次のように語った。
 「昨年末の防衛『省』設置法と同時に行われた防衛二法の改悪により、『周辺事態に対応し平和と安全に資する活動・国際社会の平和と安全に資する活動』が本来任務となった。これは、専守防衛の放棄・海外派兵禁止の放棄であり、『恒久法』制定への布石だ。防衛省は、防衛政策は変わらないというが、防衛参事官制度(官房長・局長が大臣を補佐)を見直し、制服組が大臣を補佐する体制に変え、シビリアンコントロールの形骸化が図られようとしている。武力攻撃事態法制定時の制服組の発言『我々の任務は国家を守ることだ。自衛隊は国民を守るためにあると考えるのは間違っている』は重大だ」。
 「新教育基本法は防衛二法の改悪と同じ日に成立したが、同法案は自民党の作っている新憲法草案との整合性もチェックして提出したと伊吹文科相が発言している。同法の成立にあわせ、関係法を『改正』・整備し、戦争のできる機械(兵隊)を生む機械(学校)を作ることが目指されている」。
「憲法改正手続きを本当に公正中立なものにしたいなら、もっと時間をかけて検討すべきだ。改憲手続法案では、投票権者の範囲は十八歳以上となっているが、公選法のみならず、民法や少年法・子どもの権利条約などとの関連も含めて慎重に検討すべきだ。韓国憲法では最低投票率は有権者の過半数となっているが、同法案にはない。『内容的に関連する事項ごと』の投票ではなく、各条ごとにすべきだ。自民党の新憲法草案の9条と9条の2は、内容的に関連するといえない。また、憲法改正条項を改定し衆参両院の過半数で発議できるようになると、国会の時々の多数派がいつでも改憲発議のフリーハンドを握れる。三分の二の多数による発議が絶対に必要だ。同法案にはその他いろいろの問題点がある」。
山内さんは、「『戦争国家』への道の障壁は9条だけではない。国家統治機構、人権・民主主義・自由、9条の三つが柱だ。戦後六十年間日本の平和を支えてきた9条はこれからも日本の平和を支えていく。9条は『アジアに対する不戦の誓い』だ。国民の多数が9条の改憲には反対していることを踏まえれば、9条の改憲を阻止するのは決して不可能ではない」と述べて、講演を終えた。

国会包囲のヒュ
ーマンチェーン

この後、教育基本法改悪反対国会前行動と一月二十五日院内集会の様子のDVDが上映された。韓国・平和ネットワークと辻元清美衆議院議員からのメッセージ紹介に続いて、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、高良鉄実さん(琉球大学)が発言した。
 高田さんは、改憲手続法案阻止のために準備されている当面の行動として、国会包囲のヒューマンチェーン、5・3全国キャンペーンなどの提起と、来年の開催に準備されている9条世界会議の取り組みを報告。高良さんは、「沖縄の人は日本国憲法に幻想があったと言われるが、幻想があったのは日本政府に対してだ」と述べ、今年になってから特に激しくなっている米軍の演習、米軍の機能が強化されていること、米軍が国道の車両に銃を向けること、パラシュートが民間地に落ちるなど、最近の沖縄の状況を報告し、「日本政府はこれらの事実を知っていながら何も言わない。文句を言うと経済支援をしない。高等弁務官時代と何ら変わらない。若い人がちゃんと現実を見ることが大切だ」と述べた。
 最後に、広島(九条の会・はつかいち)、京都(憲法を生かす会・京都)、大分(赤とんぼの会)からの報告と集会決議で、集会を終えた。

生存権をまもる
ためのたたかい

 ここで、いったん解散し、改めて、憲法改悪・市民運動全国交流会が開かれた。実行委員会を代表し開会あいさつをした高田さんは、「十一年前と比べ隔世の感がある。9条の問題では共産党・社民党が一緒に行動するのは当たり前になっている。私たちは接着剤の役割をしてきたといえる。法案の名称を『改憲手続き法案』とはっきりさせたい」と述べ、当面これを阻止するため、前段の集会で述べたことを詳しく提案し、特に民主党対策としてのロビーイングの重要性を付け加え、民主党や地元の民主党関係者に対する働きかけ・ファックスの集中を呼びかけた。
連帯のあいさつをした上原省吾さん(大阪憲法会議事務局次長)は、5・3集会実行委員会の署名と多くの人が9条の会に参加できるようにという二つを柱に活動していると述べた。
 続いて「脅かされる生活権」のテーマで、特別スピーチを津村明子さん(おおさか9条の会呼びかけ人)と中野冬美さん(シングルマザー・ふぉーらむ)が行った。津村さんは、憲法25条とあまりにもかけ離れた非正規雇用・パート・派遣労働等日本社会の実態を述べ、中野さんが母子家庭の実態を報告した。
 中野さんは、「貧乏の左側がホームレスなら右は母子家庭だ。母子家庭の就労収入は年間百六十二万円。多くは非正規雇用。就労率は八三%で先進国中第一位。第一子には月四万千七百二十円(第2子は5000円、第3子は3000円)の児童扶養手当が出るが、二〇〇二年の母子寡婦福祉法の改悪により、〇八年から半額になる。就労支援で資格を取る場合でも、母子家庭の母親は不利。子どもを教育費のかかる学校には行かせられない。そのため子どもも貧困になっていく。生きる希望がもてる支援がほしい」と訴えた。
 休憩をはさんで、各分野からの報告が続いた。報告をしたのは、松浦悟郎さん(日本カトリック正義と平和協議会会長)、松本七哉さん(大阪弁護士9条の会)、古川佳子さん(靖国合祀取消訴訟原告)、赤石千衣子さん(ふぇみん婦人民主クラブ)。
 この後、二日目にかけて、九州、大阪、東京、関東、伊勢、愛知、長野、北海道の各地からの報告、ピースボートから9条世界会議の準備報告があった。そして、報告にもとづいて、改憲手続き法案反対の全国運動を巻き起こすための討論が深められた。(T・T)


立川・反戦ビラ弾圧救援会
あれから3年、最後は勝つぞ 治安弾圧を吹き飛ばそう!


署名・上申書
運動の広がり

 二月十八日、立川・反戦ビラ弾圧救援会は、東京・国分寺労政会館で「立川反戦ビラ弾圧から3年 最後は勝つぞ最高裁!2・18集会」を行い、百人が参加した。
 立川自衛隊監視テント村の仲間三人が立川市内の自衛隊官舎へのイラク反戦ビラ入れを「住居侵入罪」だとして立川署・警視庁公安二課に不当逮捕されたのが二〇〇四年二月二十七日。この二月で三年目だ。
 一審は無罪判決(04年12月16日)をかちとり、二審の高裁は、「表現の自由が尊重されるべきものであるとしても、他人の権利を侵害していいことにはならない」などと主張し、罰金有罪刑の不当判決を言い渡してきた(05年12月9日)。
 三人の被告と弁護団は、高裁判決に対して@防衛庁官舎の敷地・階段・玄関前は「人の監守する邸宅」ではないA住民の意思ではなく管理権者の意思でビラまきが違法化されているB住民がビラまきに刑罰で対処してほしいと思っていたかは証明できないC多数の住民がビラまき禁止を望んでいても、住居侵入罪は成立しないD本件のビラまき態様においても害を与えていないE「表現の自由」と可罰性(刑罰をもって罰するに値いする程度のものか)についての論議を避けている││などを批判した弁護団上告趣意書を最高裁に提出した(06年5月31日)。
 最高裁の審理は、公判が開かれず、文書のやりとりで進行し、ある日、判決が出るというシステムだ。
 被告と救援会は、最高裁での無罪判決を実現するために@上申書運動A無罪要求署名運動B最高裁情宣行動を軸に取り組んできた。一月三十一日には、最高裁情宣と同時に、第五次の署名(提出計1万4204筆)・上申書(計276通)提出行動が行われている。

最高裁ってど
んなところ?

 集会は、救援会代表の大沢ゆたかさん(立川市議)の開会あいさつで始まり、「ビラ配布弾圧事件では、立川の一審無罪判決、板橋高校元教諭『君が代』強制反対への弾圧に有罪判決、国公法ビラ配布裁判が不当有罪判決(06年6月29日)、葛飾マンションビラ裁判が無罪判決(06年8月28日)。立川の二審が有罪判決という状況になっている。二勝三敗だが、三件の事件の高裁判決が出てから立川の最高裁判決が出るのではないか。いずれにしてもすべて勝たなければならない」と強調した。
 次に講演に入り、西川伸一さん(明治大学助教授)が「最高裁ってどんなところ?」と題して、最高裁の裁判官・機構・システムなどを紹介し、@最高裁裁判官は「最高」の裁判官ではないA司法行政と司法官僚の役割B「充て判」の存在理由(裁判官の一部は、最高裁調査官、事務総局局課長、局付、研修所教官などに充てられている)C最高裁と政治の関係について焦点をあてて解説した。
 さらに司法権力内の派閥争い、青年法律家協会を排除する「ブルーパージ」、裁判経験が少ない裁判官が司法官僚となっていく実態を暴き出し、最高裁事務総局の「裁判しない裁判官たち」を批判した。

獄中の闘争経験を
共有する座談会

 第二部では、国公法被弾圧者の堀越さん、葛飾マンションビラ配布被弾圧者の荒川さん、板橋高校「君が代」強制反対被弾圧者の藤田さんから裁判闘争の報告と連帯アピールが行われた。
 座談会「獄中こうして闘った」というテーマで立川テント村の高田さん、「自由と生存のメーデー」被弾圧者の山口さん、教育社労働組合の江藤さんが自身の弾圧事件、取り調べ、人間性を否定した留置場での生活状況、反弾圧・救援運動の取り組み指針などについて提起した。
 さらに弁護団を代表して、虎頭弁護士が、最高裁段階での運動の取り組みの難しさや判決が出るのが長期間にわたっている事例を紹介し、「勝利判決をかちとるためにマスコミをも使った世論の拡大も考えていこう」と発言した。
 最後に三被告の決意表明、救援会行動提起、集会宣言が行われた。  (Y)


5.3憲法集会実行委員会
改憲手続き法案に反対し議面行動


 二月二十二日、07年5・3憲法集会実行委員会は、衆院議員面会所で改憲手続き法案に反対する今年二度目の昼休み集会を二月八日に続いて行った。前日の二十一日には、憲法調査特別委員会の審議が今年になってまだ一度も行われていないにもかかわらず、同特別委員会理事会が行われ、自民党は「公聴会」の開催を打診してきた。
 「公聴会」を開催すれば、採決がいつでも可能になることを意味する。改憲手続き法案については与党案と民主党案の二つが国会に上程されており、昨年十二月には両案のすり合わせがなされて双方の案が接近したものになったとされているが、まだ最終的な合意には至っていない。それにもかかわらず自民党が「公聴会」の開催を主張しているのは、五月三日の憲法施行六十年の日までに何としても改憲手続き法案を、与党単独でも成立させたいという自民党の決意を示し、民主党をゆさぶろうとするものだ。
 この緊迫した状況の中で、衆院議員面会所には百二十人が集まった。社民党の保坂展人衆院議員、共産党の笠井亮衆院議員が国会情勢を報告し、「改憲手続き法案」を絶対に成立させない決意を語った。憲法会議、許すな!憲法改悪・市民連絡会などがそれぞれの取り組みについて訴えた。
 続いて午後二時から、参議院議員会館で、許すな!憲法改悪・市民連絡会、キリスト者平和ネット、宗教者平和ネットの呼びかけで「改憲手続き法案はいらない!市民と国会議員の院内集会」が開催され、百二十人が参加した。
 社民党の福島みずほ党首、共産党の仁比聡平参院議員、民主党の下田敦子参院議員が発言し、婚外子差別と闘う土橋博子さん、VAWW―NETジャパンなどが報告を行った。
 改憲手続き法案の成立を阻止する闘いは正念場を迎えている。改憲手続き法案はまさしく自民党がねらう憲法改悪のための法案なのであり、「いらない」法案なのだ。5・3憲法集会実行委員会は三月二日の日比谷野音での集会に続き、三月八日には十二時十五分から三度目の衆院議面集会を行う。また三月十二日には「STOP改憲手続き法 国会へ行こうアクション」が午後六時半から衆院第二議員会館前で開催され、キャンドルを灯して成立阻止の意思表示をする。国会に向かう労働者・市民のうねりを! (K)


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