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Aさん免状等不実記載弾圧 国賠裁判始まる        かけはし2007.3.26号

「嫌疑」そのものが不存在 勝利判決をかちとろう!



国家権力の犯
罪を許さない

 三月十三日、横浜地裁民事六部(柴田寛之裁判長)五〇三号法廷で免状等不実記載弾圧を許さない!第一回国家賠償請求裁判が行われた。
 〇六年十月二十四日、神奈川県警察公安三課は、Aさんの運転免許証に記載されている住所と現住所が違うということだけで免状等不実記載罪で不当逮捕し、10日間の勾留と人権侵害に満ちた取り調べを行い、さらに組織的な背景があるなどと一方的に決めつけて東京の越境社と関西新時代社に不当な家宅捜索を強行した。Aさん、越境社、関西新時代社は、十二月二十五日、このような国家権力の犯罪を許さないために神奈川県と逮捕令状・家宅捜索令状を発布した国に国家賠償裁判を提訴した。

原告の主張│
三つの核心点

 原告の主張の第一は、「免状等不実記載罪の嫌疑の不存在」である。Aさんが免許の住所として実家の住所を届け出たとしても、道路交通法上の趣旨に全く反することはない。なぜならば道交法において運転免許証には住所を記載することを求めているのは、運転免許を受けている者を特定するために必要であること、運転免許の取消、停止、反則行為等に対する反則金の納付等の手続きを適正、円滑に行う上で必要にすぎない。
 つまり、運転免許証に記載すべき住所としての「生活の本拠」といえるかどうかは、このような住所の記載を求める目的に従って判定すべきなのである。結局、Aさんの実家の住所は、「自己の住所」といいうるものであり、逮捕は違法なのだ。
 第二は、Aさんへの「逮捕の必要性の不存在」だ。免状等不実記載罪は、その法定が「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」(刑法157条2項)というものであり、特殊な事情のない限り、公判請求のなされることのない軽微事案だ。ほとんど、逃亡の必要性がない。争点となりうるとすれば、Aさんの真実の住所がどこであったかという程度のものだ。つまり、Aさんの自宅が主たる住所であり、実家は従な住所でしかない。そもそもこんなことは客観的事実だ。罪証隠滅の恐れが全くないのだから、逮捕そのものの必要性は全くなかったのである。
 第三は、「越境社、関西新時代社各捜索差押えの違法性」。Aさんへの不当弾圧の「関連」と称して権力は、無理やりこじつけて越境社、関西新時代社への家宅捜索を強行した。不当な捜索によって、各社の業務が妨害され、必要もないコンピュータデータのコピー、書類等の押収を行った。各社への不当捜索を強行することによって免状等不実記載を組織的に行っているのだということを印象づけようとした。ところがそんな事実は出てこなかった。不当な捜索令状の請求、発布自体が違法であるほか、執行行為が違法なのだ。

ごう慢に居直る
国側の答弁書

 国の答弁書は、冒頭から「棄却すべきである」と押しだし、「裁判官による令状発布の裁判に国賠法上の違法性がない」と断定してきた。原告の「免状不実記載罪の嫌疑がなく、逮捕又は捜索差押えの必要がない。令状発布は原告の市民運動を破壊する目的で発布された違憲、違法なものだ」という批判に対しては、それらは「裁判官による本件各令状発布の裁判にたいする不服を述べるものにすぎず、『裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情』を述べるものではないから、主張自体失当である」と切り捨てるのである。
 あげくのはてに「根拠のない憶測にすぎず、本件裁判官に、本件各令状発布の裁判に際し、原告らの主張に係る目的など全く存在しなかった」などと居直っている。この言説こそが、裁判所が明らかに公安政治警察が請求する令状を乱発し、不当逮捕、長期拘留に加担し、人権侵害を繰り返していることを擁護する姿なのだ。国・裁判所を徹底的に批判していかなければならない。
 県も同様に、答弁書において「請求を棄却すべきである」と断言してきたが、原告Aさんの不当逮捕、免状等不実記載罪の不成立、不当な家宅捜索に対しては、いずれも「否認ないし争う」などと繰り返し、なんら説得力ある反論を準備することができず、「追って準備書面をもって主張する」とかわしてきた。

治安弾圧の強化
に着実に反撃を

 公判の傍聴には、「10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判に勝利する会」の仲間たちも駆けつけた。会は、勝利判決をかちとるために、二月三日、Aさん救援運動の取り組みを展開してきた仲間たちなどによって結成した。会は、@損害賠償請求の勝利判決をかちとるA国家権力の不当性と犯罪を暴き出すB微罪逮捕の横行を許さず、反弾圧戦線構築の一翼をめざすC事務局を設置し、会のニュース発行(裁判報告、会員のメッセージなど)を行うことなどを確認している。
 公判後の集約で、川村理弁護士は、「県の準備書面は、おそらく過激派に人権なしのトーンで、三里塚・管制塔などを列挙して、Aが過激派だから、正当な処置をしたというところでしょう。こういうのには、ちゃんと反論していきたい」と決意を述べた。
 内田雅敏弁護士は、「裁判官の令状発布、乱発の不当性は、徹底的に批判していきたい」と今後の裁判闘争の方向性を提起した。
 Aさんへの弾圧は、単なるエピソードとしての微罪逮捕を通した弾圧ではない。共謀罪新設法案(テロ等謀議罪)制定を射程にし、その先取りケースとして、敵は位置づけている。グローバル派兵大国化にむけた治安弾圧体制の強化の一環としてあるのだ。すでに公判には、国、県の代理人七人態勢が組まれ、県警関係者が面割り、いやがらせのために複数人数を傍聴席に動員してきた。このように微罪逮捕の積み上げなどによって治安弾圧体制のレベルアップが行われていくのだ。免状等不実記載弾圧を許さない!国家賠償請求裁判に勝利しよう!
〈「10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判に勝利する会」(連絡先は新時代社)〉
 第2回公判、5月29日(火)13時15分 横浜地裁503号室



投書
Aさん国賠訴訟を傍聴
  元小田急労研 結城守保



 免状等不実記載で不当逮捕(06・10・24)されたAさんらの国家賠償請求裁判の第1回公判が3月13日横浜地裁民事第6部で開かれ傍聴しました。10時30分から、たった10分間だったが、冒頭の数秒間、一瞬緊張しました。
 私とAさんとは友人で共に神奈川に住んでいます。三里塚連帯、日の丸・君が代反対、反天皇制など活動しています。私が本件を知ったのは逮捕された日の18時、国会前で教育基本法改悪許すな!の集会でBさんから知らされた。
 早速、10月27日、友人Kさんと2人で小田原署に行った。小田原なんて私にとって庭です、近いです。Aさんが先日、反天皇制集会で公安に写真撮られたと私が聞いていたから、この集会かどうか知らないが右翼からの挑発でデモが混乱し、この時「公務執行妨害」写真でも撮られたのではないか、と思いながら面会しました。ナーンだ!何もないではないか。デッチ上げ事件とすぐに分かった。
 503法廷は新しい建物で明るい感じがした。裁判長に向かって左側、傍聴者に近い順に内田弁護士、Aさん、川村弁護士が座った。年齢と言い、論客と言い3人は光っていた。相手は国と神奈川県で7人です。今後「治安法」や「テロ」が問題になると思うが、彼ら「勉強しているのかな」と私は思った。
 第1回なので書類と日程の確認で終わった。503法廷は、3列あったが最前列はわれらが占めた。裁判終了後、1階で弁護士控室で集約を行った。控室入る前は広い休憩所である。ここは「横浜事件の裁判」の時などは全国から人が来て歩けないほどだった。
 先日、Bさんと私話をしました。「三里塚3・26闘争管制塔占拠」などを出してきて、裁判長は公正な判断をしないのではないかと私が言ったら、彼は「裁判長なんて、左から右へ書類を持っていくだけで公正な判断など無理」と言っていました。これからの法廷は、Aさん逮捕を「テロ対策」の関連と称して証拠書類を権力は高く積み上げてくるでしょう。
 私は言いたい。「活動家Aさんを人質にした国家権力こそテロリストだ」と。 
 次回第2回公判は5月29日です。民事だから又書類のやり取りとなるが、Aさんや弁護士を孤立させないため、着実なる法廷闘争をやって行きましょう。


東京都知事選公開討論会に参加して
立候補予定者4氏がそろいぶみ
石原慎太郎のタカ派ぶりが突出

「日本の存在感」
発揮訴える石原

 三月十五日、なかのZERO大ホールで「東京都知事選挙公開討論会」が東京青年会議所、日本青年会議所関東地区東京ブロック協議会の共催で、都知事選予定候補四氏が参加し行われた。浅野史郎氏、吉田万三氏、黒川紀章氏、石原慎太郎氏の立候補予定者の四人がそろうのは初めてだ。最初に石原都知事が公務を理由に四十五分遅れるとアナウンスがあると、「週一回しか都庁に行っていないというのに、遅れてくるなんて失礼だ」と参加者の不満が聞こえてきた。候補者の入場に対して、一番拍手の多かったのは浅野氏であった。
 テーマは@高齢化社会にどう対処するかA重点政策は何かBオリンピック招致に賛成か反対かなどであった。石原は、重点政策で「治安の問題」と語り、オリンピックで「夢がなければ生きてゆけない。東京オリンピックの感動をもう一度。大型開発のためではない。隣国に物が言えなかったり、アメリカの言いなりではだめだ。日本の存在感を発揚させよ。『三国人』は差別語ではない」と発言した。石原は巨大開発と国威発揚のためのオリンピック招致の目的をはからずも明らかにした。さらに、石原は「(環境問題を考えて)天皇は皇居の中で寒いにもかかわらず、室温二〇度に抑えている。こうした志が大切だ」とまで、天皇主義者ぶりを披瀝した。
 こうした石原に対して、浅野氏はオリンピック招致が費用などで多大なものになるので、立ち止まって考え直すべきだ。もし、オリンピックをやるとしても、広島や長崎で平和のために行うべきだ。石原氏のように国威発揚のためにやるべきではない」と批判した。
 吉田氏は石原の差別発言を批判し、アジア諸国の賛同を得られるようなオリンピックにすべきで、財政負担のかかる招致を白紙に戻すべきだと述べた。さらに、交通渋滞を解消するために、道路整備をしていくとする石原に対して、規制緩和をして高層ビルを次々と建てる無計画な都市計画を抜本的に見直す必要があると批判した。その他のテーマを含めて、石原都政に対してトータルに批判する政策を述べたのは吉田氏であった。

マニフェスト
発表した浅野氏

 浅野氏はこの日に、石原都政批判の次のようなマニフェストを発表した。
1 都政運営の基本姿勢
@東京から新しい風を起こすA人と自然にやさしい東京を創るB透明性のある都政、風通しのよい都政にするC納税者のお金を大切に使うD都民のために、誠心誠意、全力を尽くして働く都政を確立する。
2 「すぐに取り組む三つの緊急課題
@「震災で犠牲者を出さない東京へ〜都民のいのちをまもる」A「快活に働き、心豊かに生活できる東京へ〜都民のくらしを豊にする」B「老いても安心して暮らし続けられる東京へ〜都民の福祉を充実する」。
3 政策宣言
 第1章 震災で犠牲者を出さない東京〜都民のいのちを守る 第2章 みんなが働く東京〜経済政策 第3章 子ども、お年寄り、みんなに優しい東京〜少子高齢化対策 第4章 環境のトップランナーとしての東京〜将来世代のいのちを守る 第5章 のびのびと学べる東京〜教育政策 第6章 男女が思う存分力を発揮できる東京〜男女共同参画 
4 都政に関する懸案事項
@情報公開A2016年東京オリンピック招致の見直しB新銀行東京の解体的見直し
5 お願いから約束〜「誰もが誇りを持てる東京へ」の検証
 教育の項目で最初に、「日の丸」、「君が代」問題についての強制的な対応を改めるとしている。政策提言ではすぐにやります、一年以内にやります、二年以内にやります、四年以内にやります、と検証可能な提言を行っている。
 浅野氏は例えば社民党党首の福島瑞穂氏のように舌鋒鋭く、石原を批判するようなタイプでないようだ。この日の討論会で、マニフェストに基づき石原の弱点をつき、ギリギリと追いつめるような発言をしなかった。物足りなさが残るものであった。しかし、その後の各テレビ局での四人による討論を見ていると、浅野氏も石原を追及する姿勢を鮮明にしていた。公開討論会の司会者の設問の設定や討論形式の問題もあったようだ。石原都政を断ち切るために、がんばらなければならない。    (M)


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