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                           かけはし2007.3.19号

「河野談話見直し」を許さない

「慰安婦強制連行はなかった」だって?
日本軍性暴力犯罪の事実を歴史から抹消する安倍政権

 一月末に米下院に提出された日本軍「軍隊慰安婦」問題に関する日本政府の不誠実な対応を批判し、謝罪を求める決議案に対して、日本政府は「強制連行の事実はなかった」として、一カ月六万ドル以上の巨費をかけてロビイストを雇い、決議案の可決を阻止する圧力をかけてきた。また自民党の極右派議員で作る「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、日本官憲の直接関与により強圧的に「慰安婦」が連行された事実があったことを認めた一九九三年八月の河野官房長官談話を見直す提言を出す意向を明らかにした。
 「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、「大東亜戦争肯定論」にたって日本帝国主義の侵略戦争と植民地支配を正当化し、女性国際戦犯法廷を報じるNHK番組の改変圧力の先頭に立ってきた「若手議員の会」の後継組織であり、安倍首相は同会の事務局長を務めていた。
 こうした中で、三月一日、安倍首相は記者団とのやり取りの中で、「軍隊慰安婦」の強制連行に対して「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」と答え、さらに一九九三年八月の河野官房長官談話の「見直し」の必要性があるかという問いに対して、「(強制性の)定義が変わったということを前提に考えなければならないと思う」と語った。この発言は、三月一日の朝鮮独立運動八十八周年にあたって、韓国のノ・ムヒョン大統領が行った恒例の「3・1演説」の数時間後に行われたものであり、その意味でもきわめて挑発的なものだった。
 さらに安倍は、三月五日の参院予算委員会では「狭義の意味で強制性を裏付ける証言はなかった。いわば官憲が家に押し入って連れて行くという強制性はなかったということだ」「米国で決議が問題になっているが、事実誤認があるというのが私どもの立場だ。決議があったからといって、われわれが謝罪するということはない。決議案は客観的事実に基づいておらず、日本政府のこれまての対応も踏まえていない」と一日の発言を確認した。
 安倍とともにNHK番組改変圧力の主役であった中川昭一自民党政調会長は、安倍の国会答弁の後、「河野談話に限らず、不磨の大典はない」として「河野談話見直し」の意向を示した。

アメリカからも
きびしい批判が

 一九九三年八月の河野談話は「今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」とした上で、「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」と述べている。
 安倍は首相就任後から本音を隠して「河野談話継承」の立場を明らかにしてきた。しかし今回の発言は、「河野談話」を事実上否定するものである。河野談話は、「軍隊慰安婦」が日本官憲の直接の関与の下に、本人の意思に反して「募集」「移送」されたとしており、そうした「広義」も「狭義」もない「強制連行」であったがゆえに「心からお詫びと反省」を言わざるをえなかったのである。
 「河野談話」は、きわめて不十分なものだとはいえ、「慰安婦」は民間業者が連れ歩いたもの、とか「商行為」だとか言いふらして、軍と政府の責任を否定してきた歴代の日本政府が、韓国人「軍隊慰安婦」の苦悩の末の勇気あるカミングアウトと、吉見義明教授によって防衛研究所図書館から発見された「慰安婦制度関連資料」の証拠を突きつけられ、軍と政府の直接的関与責任を認めざるをえなかったものだった。安倍は、国会答弁において民主党議員の質問を「ことさら日本の歩みをおとしめようとしている」などと居丈高に非難し、当時においても国際法・条約に違反する犯罪だった日本軍性奴隷制度を歴史から抹消し、「河野談話」を葬り去ろうとしたのである。
 この安倍発言は、韓国政府、中国政府や台湾政府のみならず、アメリカからも強い非難の嵐を巻き起こしている。「ニューヨーク・タイムズ」紙は、三月六日の社説で安倍首相ら日本の政治家に対し「恥ずべき過去を克服する第一歩は、それを事実と認めることだ」と呼びかけ、日本政府の対応を「真実をゆがめる努力によって名誉を汚すだけ」と批判している。しかし外務省は、「ニューヨーク・タイムズ」に対して反論掲載を要求するなど、焦りといらだちをつのらせ、それがさらに米国世論の反発を招いているのである。

3・7に国会前
で抗議の集会

 三月七日、日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークは、「慰安婦」問題解決・世界同時行動in東京を、正午から衆院第二議員会館前で行った。この行動は、韓国の元「軍隊慰安婦」のオモニたちが日本大使館前で行っている水曜行動に連帯するもので、この日、韓国、フィリピン、台湾、オーストラリアでも「河野談話」見直しに反対する行動が行われた。行動には七十人が集まった。
 最初にVAWW―NETジャパンの西野瑠美子さんが発言。西野さんは「安倍首相は、強制性の証拠はない。強制の定義が変わったなどと言っている。しかし強制には狭義も広義もない。安倍首相は被害者の証言を聞いたことがあるのか」と厳しく批判した。日本共産党参院議員の吉川春子さん、民主党参院議員の岡崎トミ子さん、社会民主党参院議員の福島みずほさんも、河野談話見直しと、強制連行の証拠はないという強弁を糾弾した。
 韓国やフィリピンからのメッセージ、台湾からの抗議声明、アメリカでの活動報告も紹介された。最後に国会に向けて「河野談話の見直しを許さない」などのシュプレヒコールを行った。
 三月八日、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、「河野談話修正」の直接要求は見送ったものの「民間業者による強制連行はあっても、軍や政府による強制連行はなかった」「慰安婦問題に対する誤った認識は河野談話が根拠となっている」として、事実上、河野談話を否定する提言を安倍首相に提出している。
 戦争と植民地支配を正当化し、「軍隊慰安婦」を再び貶めようとする安倍極右内閣の動きを絶対に許してはならない。   (K)


朝鮮独立運動88周年
北朝鮮「制裁」と在日コリアンへの人権侵害に抗議


 三月三日、「3・1朝鮮独立運動88周年 許すな!制裁・在日コリアンへの人権侵害 今こそ対話で平和の実現を!3・3集会」が、東京・文京区民センターで開かれ百七十人が参加した。主催は「3・1」集会実行委員会。
 二月十三日に、朝鮮民主主義共和国(北朝鮮)の核問題をめぐる六者協議において朝鮮半島非核化に向けた「初期段階」措置に関する「合意文書」が取り交わされる中で、日本国内においては在日コリアンへの人権侵害や朝鮮総連事務所への不当な強制捜査・弾圧が続いている。
 また同じ三月三日に日比谷野外音楽堂で開かれる朝鮮総連の集会に対して、右翼や一部都議会議員の圧力で「集会参会者と反対者の間で混乱が予想される」という理由により、五日前の二月二十六日になって東京都が会場使用取り消しを決定する不当きわまる弾圧も行われた。この使用取り消し処分は、地裁と高裁で「使用承認取り消し処分効力停止」が決定され、朝鮮総連の集会は行われたとはいえ、石原都政のこうした排外主義的で民主主義を踏みにじる対応は絶対に許されるものではない。

完全に破産した
ネオコンの戦略

 集会は、最初にピープルズプラン研究所の武藤一羊さんの「東北アジア情勢と平和実現への課題」と題した講演で始まった。武藤さんは、安倍政権の性格を一般的な保守政権ではなく極右政権と規定するとともに、ブッシュのアフガン―イラク戦争に代表されるネオコン戦略が完全な破綻と混迷に陥っている現状をビビッドに描きだした。
 そして米国の対北朝鮮政策も、世界的な戦略破綻の中で「話し合いによる解決」という方向に舵を取りつつあるが、なおその内容については攻撃的側面を前面化する可能性もあり、警戒する必要があると指摘した。そして二月十六日に発表された「第二次アーミテージ報告」について「ネオコン路線ではなく、クリントン政権以来の日米が中心になってアジアをアメリカの支配下につなぎとめるという戦略」であり、今ここで民衆の側から連帯に基づく正統性を築き上げていくことが求められていると訴えた。
 次にVAWW―NETジャパン共同代表の東海林路得子さんが女性国際戦犯法廷についてのNHK番組改ざん問題裁判控訴審判決の勝利の意義を報告した。また韓国ノ・ムヒョン大統領の二〇〇四年三・一演説をテーマに「ノ・ムヒョン大統領への手紙」を中学校の授業で紙上討論の教材に使ったことで、昨年三月三十一日に東京都から分限免職処分を受けた増田都子さんが、「ノレの会」とともに免職処分の不当性を訴えるパフォーマンスを行った。

朝鮮総連への
連続的な弾圧

 休憩の後、韓国からのメッセージが紹介され、この間の在日コリアンへの弾圧の実態を映し出すビデオ上映。そして金東鶴さん(NPO法人同胞法律・生活センター)が、この弾圧の不当性を強調する講演を行った。
 「昨年十一月に、日本人医師が高齢の在日朝鮮人女性に対して無許可で薬品を販売したことが薬事法違反にあたるとしてなされた強制捜査で、警視庁は、その売買に何の関係もない朝鮮総連東京本部や支部、またその職員宅にまで家宅捜索を行い、無関係な書類まで多数押収した。その後、総連関係施設への強制捜査が立て続けに行われている」。
 「この薬事法違反事件に対しては、当該の医師や女性までふくめて何らの処分も行われていない。微罪にもかかわらず大規模な捜索や押収が行われており、すべて公安警察・外事課が動いている。マスコミに意図的なリークとキャンペーンがなされており、法を逸脱した重大な人権侵害である」。「漆間巌警察庁長官は、『北朝鮮への圧力を担うのが警察だ。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている』『北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける。そのような捜査に全力を挙げる』と、その政治的な意図を高飛車に公言している」。
 枝川裁判支援連絡会の花村健一さんが、東京都による江東区の枝川朝鮮学校土地取り上げに対する闘いを報告し、在日韓国民主統一連合の宋世一さんが大統領選をめぐる韓国の政治状況について分析した。宋さんは「二〇〇〇年の6・15南北共同宣言に反対する勢力に抗して、6・15宣言を前進させる闘いを」と強調した。
 最後に、「日本政府は制裁を解除し、在日コリアンへの人権侵害・弾圧を直ちに中止すること」「日本政府は圧力一辺倒政策を転換し、ピョンヤン宣言を基礎に対話を通じて日朝国交正常化の実現を速やかに図ること」という共同声明への賛同呼びかけを、日韓民衆連帯全国ネットの渡辺健樹さんが行い、連名で三月中旬に安倍首相に申し入れることが確認された。(K)


三菱重工は軍需生産やめろ!
ミサイル防衛利権に群がる
戦争企業にNOのアピール

強風の中で本社
に抗議デモ敢行

 二月二十四日、東京品川の東八ッ山公園に五十人の仲間が集まり、「三菱重工はミサイル生産をやめろ! 軍需部門から手を引け!」のスローガンのもとに品川駅東口前にある三菱重工本社に抗議行動を行った。
 憲法9条のもとでは本来存在しないはずの軍需産業=死の商人たちが、今や政策決定に露骨に介入し、軍事化と改憲を誘導している。この軍事産業の中心に存在しているのが三菱重工である。三菱重工はミサイル防衛(MD)の利権に深く食い込み利益を貪り、今や迎撃ミサイルPAC3ライセンス生産の権利を手にし、日本版「軍産学複合体」の方向に大きく踏み出している。
 抗議行動に出発する前の集会で、本土で最初にPAC3が配備されることが明らかになった入間基地に対して長く反基地闘争を展開している仲間が「航空自衛隊入間基地に三月末までに地上発射型ミサイルPAC3が初めて配備されることが明らかになっているが、PAC3は射程距離が二十キロメートルほどなので、戦争になるとたとえ迎撃に成功しても周辺地域がかなりの被害に見舞われる。これは基地周辺だけの問題ではない」と発言した。
 次に同じようにPAC3の配備が予定される航空自衛隊浜松基地に対する闘いを続けている仲間から連帯のあいさつがあった。最後にベトナム反戦の時代から三菱重工の一口株主として長い間「もの申してきた」福富節男さんが「闘いは継続が重要だ」と発言した。
 当日は春嵐ともいうべきほど風が強く、さらに三菱重工本社周辺は高層マンション街で、吹き飛ばされそうなほどビル風が強かったが、参加者は抗議デモを貫徹した。
 また三菱重工本社ビルの隣がキャノンの本社ビルであったので、参加者は急きょ「キャノンは偽装請負をやめろ! 新労働契約法を許さないぞ!」のシュプレヒコールを展開した。抗議デモの後再び参加者は三菱重工本社に出向き、「三菱重工はミサイル防衛関連生産をやめ、軍需産業から撤退を」の署名千三百筆を手渡した。

PAC3配備と
宇宙軍拡に反対

 夕方六時から、品川区民館・きゅりあんで、ミサイル防衛を考える2・24集会実行委の主催で「ここが問題!ミサイル防衛=迎撃ミサイルPAC3配備と宇宙軍拡を許すな」集会が開催された。主催者を代表して「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」の池田さんが「政府は北朝鮮危機をあおり、宇宙軍拡、ミサイル軍拡に血道をあげている。これと対決していくことが必要である」と述べた。
 その後「宇宙軍拡とMD――いま、何が起こっているのか」と題し、立命館大学の藤岡惇さんが講演した。
 「湾岸戦争が宇宙ベースの『ネットワーク中心型戦争』の第一段階とすれば、今回のイラク戦争が第二段階、そして先日中国がミサイルで自国の衛星を撃ち落としたが、これが第三段階であり、今後宇宙から攻撃する第四段階が始まる」「私たちはイラク戦争をはじめとして宇宙戦争に反対していく論理と闘いが必要だ」と結んだ。
 その後質疑応答が活発に行われ、全国でPAC3に反対する闘いを展開していくこと、三月十二日には署名を防衛省に届けることを確認し集会を終えた。(D)


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