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2007年 日本共産青年同盟アピール           かけはし2007.1.1号

新自由主義と対決し、憲法改悪を阻止する青年の闘いを

戦争政策を許さ
ない社会運動を

 二〇〇六年九月二十六日、「構造改革」という新自由主義経済政策を推し進めた小泉政権を引き継いで安倍内閣が成立した。安倍内閣は、新自由主義グローバリゼーションのもう一つの車輪である国家主義の強化を最大の目標としている。安倍内閣の最大の目標はいうまでもなく憲法改悪の道筋をつけることである。安倍内閣は反対世論におされながらも教育基本法の改悪を強行した。教育基本法改悪は、与党のみならず、ブルジョアジーの階級的司令塔である経団連の基本方針のひとつでもある。愛国心と忠誠心を押しつける考えはなによりも国家と企業にとって必要なものである。教育基本法案の採決が迫る中、多くの青年・労働者が国会前に駆けつけ抗議の声をあげた。この闘争を通じて全国に広がった様々なネットワークを基礎に、自己責任と愛国心をおしつける改悪教育基本法を教育の現場から押し返す青年の声を強めよう。
 北朝鮮の核実験強行を口実とした日本社会の一層の軍事化と社会的少数者の排除が進行している。複数の自治体で「テロ警備訓練」と称する準軍事演習が行われ、東京の防災訓練では米軍も参加する日米対テロ訓練までおこなわれた。
 防衛庁の省昇格、海外派兵の本来任務化、米軍の再編に伴う再軍事化やミサイル防衛システムの導入など、軍事拡大路線は形骸化しつつも暴力装置への規制として存在し続けている九条の理念を完全に投げ捨てることになるだろう。国内では治安弾圧が強化されている。治安弾圧機関は「戦争のできる美しい国」と不可分の「言論思想弾圧のできる美しい国」の実践者として、市民運動、労働運動、社会運動つぶしを狙っている。
 民主主義を防衛し活気ある大衆運動の再生のために治安弾圧を跳ね返し、国際的な闘争と連帯を通じた反戦、反軍事化の理念を憲法改悪反対闘争のなかで育て上げなければならない。
 自衛隊は破綻しつつある米軍のイラク占領政策に加担し続けている。安倍内閣は十二月八日にイラク復興支援特別措置法の延長を決定した。これにより自衛隊派兵は二〇〇七年七月三十一日まで約半年間延長される。直接米軍の占領政策の役には立たない陸上自衛隊は七月十七日に撤退したが、航空自衛隊は輸送などにおいて米占領軍の「掃討作戦」の支援をおこなうため、その活動範囲をバグダッド空港などに拡大して、イラク駐留を続けている。米占領下におけるイラク民衆の抵抗とつながる自衛隊撤退の世論をつくりだそう。

国境を越える青
年の闘いと団結

 靖国参拝でゆれた日中関係は、安倍の訪中によって回復した。日本の支配階級にとって、新自由主義グローバリゼーションのフロンティアである中国との関係をこれ以上悪化させることに何一つ得なことはない。しかし新自由主義グローバリゼーションを軍事的に保障する国家という暴力装置の必要性を民衆に意識させるために、歴史と国境をめぐるナショナリズムを総動員する必要があったことも支配層ははっきりと理解している。
 日本帝国主義の戦争責任を明らかにし、沖縄をはじめとする米軍再編を通じた軍事的拡張に反対するとともに、いまだ独裁と貧困のなかで抑圧されているアジア各国の民衆の闘いに連帯することは、未来を担う青年運動の任務である。北朝鮮の金正日独裁支配体制を包囲する六カ国協議などを通じた米中関係は、経済関係における緊密さと政治・軍事的な緊張関係の中で東アジア情勢を形作っている。帝国主義と官僚独裁が支配する新自由主義グローバリゼーションの秘密外交・軍事外交を拒否しよう。そして国境を越えた青年労働者の希望と連帯の闘争に飛び込もう。

労働法制改悪
を阻止しよう

 小泉政権以来の新自由主義経済改革は継続している。安部政権は、格差社会の拡大によるごく一部の「勝ち組」と圧倒的大多数の「負け組」という筋道を前提とした「再チャレンジ」しか青年労働者に示すことはできない。安定した雇用の門はますます狭くなり、多くの若者は派遣やアルバイトなど、昇給はほとんどなく、福利厚生や有給休暇などの権利のない、いつでも使い捨てのきく不安定な雇用を強制されている。偽装請負、スポット派遣、労災隠し、残業代不払い、不当解雇など資本の違法行為によりさらに搾取され続けている。労働現場では企業の違法な行為に声をあげることすらできない。
 労働者は雇用形態によって分断され、職場内では抑圧された労働者がさらに不安定な労働者を抑圧している。子ども、青年たちをいじめによる自殺に追い込み、少年らが野宿の仲間を排除し生命をも奪ってしまう構造的な社会的背景はここにある。
 現在、日本のブルジョア支配階級が導入をもくろんでいる労働時間の規制を取り払う労働法制(いわゆる日本版ホワイトカラーエグゼンプション)は、「自律的労働」の名の下にこれまで企業に対して強制されてきた労働時間管理や健康管理などの義務を撤廃し、いっさいの責任を労働者の「自己責任」とする前近代的な労働法の大改悪だ。これにより不払い残業は合法化され長時間労働が加速されることは明らかである。労災や過労死・過労自死は増加し、その責任は労働者個人に押し付けられる。若ければ若いほど労働が強制されるだろう。まさに青年の未来を奪う「絶望のグローバリゼーション」を推し進める悪法だ。
 また政府の規制改革・民間開放推進会議は、少数派労働組合の団体交渉権を奪う制度の導入を求めている。日本の労働組合運動は右傾化して久しい。多くの闘う労働組合が職場内で資本、そして多数派御用組合から差別・弾圧されつつも闘いを継続できたのは、形式的ではあれ多数派組合と同じ権利を少数派組合にも認める労組法があったからだ。また個人加盟の地域ユニオンなどもこのような労組法を活用した多様な闘いを通じて職場内の権利を守ってきた。職場内で労働組合からも抑圧され孤立させられた労働者の最後の駆け込み寺的存在ともなってきたのだ。しかしいま政府・支配階級はこのような権利を一掃するための大攻勢を準備している。
 二〇〇六年春、「新雇用契約」とよばれる理由なき解雇を認めた法律を廃止に追い込んだフランスの青年学生労働者のたたかいはいまだ記憶に新しい。未来をつかむ青年の団結こそが歴史の歯車の逆行を押し止め、労働運動の再生を暁を水平線の彼方から引き寄せることができる。すべての青年はこの労働法制の改悪反対の闘いに立ち上がろう。

三里塚暫定滑走路
北側延伸工事糾弾

 三里塚空港反対闘争は四〇周年を迎えた。国家権力の暴力に抗して立ち上がった日本農民のこの闘いは世界革命に燃えた当時の青年労働者だけでなく、「絶望のグローバリゼーション」と格闘する現在の青年労働者にとっても巨大な経験と教訓、そして希望をつないでいる。
 国家権力による暴力により作られ、多国籍資本の大量浪費社会を支える装置として存在し続ける成田空港を管理する空港公団の民営化は新自由主義グローバリゼーションの典型である。民営化によって設立された成田国際空港株式会社は、新自由主義グローバリゼーションとは違うもう一つ、いや、二つ、三つ、それ以上の価値を継承し、育んできた東峰住民の追い出しをねらって、暫定滑走路の2500m化北側延伸工事着工を強行し、二〇〇九年度中の供用を開始すると宣言している。東峰地区の東側に誘導路を建設するため「東峰の森」を破壊しようとしている。コミュニティと人々の関係をずたずたにし、コンクリートで押しつぶしていく新自由主義グローバリゼーションによる破壊活動はアジアをはじめ世界中で非難を浴び、抵抗を呼び起こしている。
 東峰、横堀、木の根をはじめ、新自由主義グローバリゼーションの価値観を拒否し、もう一つの価値観を育む三里塚現地のさまざまな取り組みに参加し、反動の歴史に対抗する民衆の歴史を青年の未来に引き継いでいこう。

青年の未来と希
望を切り開こう

 青年運動に引き継ぐ民衆の歴史のなかで何よりも強調すべきはフェミニズムの闘いである。抑圧と搾取の歴史を作り変えるために立ち上がった女性たちの多くが、自らの同志たちからの家父長的支配やジェンダー的役割分担を強制され、それに抗い、疲れ、そして去っていった。さまざまな分野や地域で活動し権利をかちとってきた女性たちの取り組みに学び、実践していくことは、未来をつくる青年運動にとって決定的に重要である。
 いまの女性たちの希望を支え育むことなくして未来の希望をつくりだすことはできない。あらゆる分野での闘いにフェミニズムの理論と実践をとりいれる回路は、家父長的国家主義と新自由主義グローバリゼーションが融合しつつあるこの国における青年運動と階級闘争にとって虹色に輝く未来への架け橋となる。
 横堀の団結小屋にたつ横堀の鉄塔からは滑走路を行き来する世界各国の飛行機を見下ろすことができる。「Yokoso Japan」と大きく書かれたJALのジャンボの機体に対峙するこの横堀の鉄塔は、世界の闘う青年に「Another Japan」の姿を示そうとしている。世界では「もうひとつの世界は可能だ」というスローガンを掲げた反グローバリゼーション運動が、伝統的労働運動などと連携しつつ、世界社会フォーラムを媒介にして、あたらしい価値観をもう一度世界的な階級闘争のなかに組み込もうとしている。
 「アメリカの裏庭」といわれ新自由主義の実験場となってきたラテンアメリカでは、「反米グローバリズム」の台頭が民衆の希望をつなぎ、あらたな挑戦課題を突きつけている。アジアではさまざまなネットワークを通じた社会運動の国際ネットワークがWTO反対闘争を牽引したことは記憶に新しい。この闘争を引き継ぎ、アジアにおける「希望と連帯の闘争」を持続拡大させることができるかどうかという巨大な挑戦をわれわれをはじめ日本における広範な左翼青年運動につきつけている。
 新自由主義グローバリゼーションに未来はない。しかしやつらは決してその未来を自ら進んで手放そうとはしないし、自らの未来と引換えに、青年の未来と希望の一切を絶望のふちへと引きずり込もうとするだろう。日本共産青年同盟は、日本をふくむアジアのすべての青年とともに、資本主義による「絶望のグローバリゼーション」を拒否する!
 すべての学生・青年労働者のみなさん、わたしたち日本共産青年同盟とともに希望と連帯の未来を切り開くグローバルな闘いに立ち上がろう!


コラム
父の入院と国民健康保険

 十一月末に、元気と思っていた父(80才)が突然入院した。数カ月前から食が細くなり、一週間くらい飲まず食わずであったという。診察の結果、栄養失調で他はどこも悪くないということで、二週間ほど様子を見ることになった。
 ところが、十日経っても食事が出来ず、点滴だけで過ごした。だがその後、呼吸困難に陥り、酸素マスクをつけ、反応もあまりなく、体も冷たくなっていった。宿直の医師は「腎臓・肝臓などがかなり弱り、黄疸や血尿も出ている。延命治療をするのかどうか決めてほしい。延命治療はいわゆる『植物人間』状態になっても、一度マスクをすれば取り外すことはできない」と説明した。
 翌週担当医は「老人性鬱病ではないか。そちらの専門にかかった方がよい。専門医を紹介してもいい。臓器の状態は命にかかわるほどではない」と言った。あまりの説明の違いに姉は絶句したと言う。
 父が入院している病院は町村合併でようやく市になった田舎の市立病院だ。建物は十年ほど前に建てられた新しいもので、二十四時間の完全看護体制がとられている。
 現在、病院は三カ月で患者を退院させ、治療の必要な場合は他の病院に転移させる。退院させられても家に帰って生活できない患者は老人保健センターという所に入れ、六カ月間リハビリなどをしながら復帰のために準備する。それでも治らなければ、また別の施設を探すしかない。
 義父がこうした病院のたらい回しにあった友人は「何しろ先手、先手で施設を探し予約をとらないといけないのでたいへんだった」と忠告してくれた。
 「国民健康保険さえあれば、だれでも治療が受けられる」、こんなことはとうに昔の話になっている。当初、国保は農業・漁業など主として自営業者を対象にして作られたが、いまや退職したサラリーマン、非正規雇用、アルバイト、学生、そして何よりも高齢者がかなりの比重を占めるようになっている。国保は本人負担が三〇%、国の補助金が三八%、集められた国保の保険料が二五%、そして地方自治体が七%となっている。この七%も一九八四年に国の負担を四五%から三八%に下げた分を地方自治体が一方的に押し付けられた結果である。
 その上、国保は各自治体の独立採算制なので、税収の少ない自治体は大きな赤字を抱え、国保料金の個人負担分を値上げせざるをえなくなっている。国は国保の徴収率にペナルティーを設け、徴収率が下がると、国からの補助金を下げている。赤字自治体はますます、住民に国保料の値上げを強いる。そうすると保険料が払えない人が出てくる。国保が払えなくて、病院に行けない人が全国に三十万人いるという。健康保険の中で、余裕があるのが大企業がやっている健保である。国保を他の健康保険と統合する案が以前から出されているが、大企業から企業負担が増えると猛烈に反対され頓挫している。
 父の入院を機に、命綱の「健康保険」の危機を目の当たりにしている。 (滝)


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