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エクアドル                        かけはし2007.1.1号

コレアの勝利は寡頭支配と新自由主義に対する人民の勝利

マルガリータ・アギナガ

解 説

米軍基地撤去を訴える
コレア政権登場の意義


 十一月二十六日投票の南米エクアドルの大統領選挙の決戦投票で反米左派のラファエル・コレアが約五八%を獲得し、右派で大富豪のノボアを大差で破り、当選した。二〇〇二年の大統領選では先住民族などに支援された左派軍人のグティエレスがこの時もノボアを破って勝利した。当選したのだが、その後グティエレスは、IMFの緊縮政策を受け入れ、民衆の抗議を受けて辞任していたのである(前回のグティエレスの勝利については本紙03年2月3日号参照)。
 今回、当選したコレアはベネズエラのチャベス左派政権との連帯、新自由主義的経済政策反対、資源主権、太平洋岸のマンタにある米軍基地の撤去などを訴えている。コレア左派政権の登場は、十二月三日のベネズエラ大統領選でのチャベスの圧勝とともに、中南米における左派の流れが、いっそう大きくなっていることを示すものだ。
 マンタの米空軍基地は、二万四千ヘクタールの広大な土地を借り受けてコロンビアでの「麻薬作戦」や中南米全体を見据えた戦略拠点だが、二〇〇九年には貸与協定の期限が切れる。コレアの公約通り、貸与協定が打ち切られれば、アメリカ帝国主義にとって重大な打撃となる。
 なお二〇〇七年三月には、首都キトとマンタで、外国軍基地に反対する世界ネットワークの設立総会が開催され、沖縄をふくむ日本からも代表が参加する予定である。(純)
          

民衆に有利な
扇が開かれた

 「世界の貧しい人びとは決起せよ。飢えたる奴隷は立ち上がれ。われわれは団結して前進する……」。ラファエル・コレアの共和国大統領への選出は、抑圧された人びとの勝利の表現である。この二カ月の間に、社会的意識と左翼の政治の出会いが生み出され、アルバロ・ノボアとこの国の超保守勢力に代表された寡頭制と新自由主義に対する、コレアの勝利として表現された。キリスト教社会党、ロルドシスタ、PRIAN、そして「人民民主主義」の残党どものノボアへの支持は、彼らの仮面を剥がすものとなった。
 数年前、二〇〇三年にルシオ・グティエレス大統領が失脚した後、わが国の政治的代表制度の危機に際しては二つの可能性が存在すると言われた。一つは、最も手に負えない形を取った新自由主義の危機に向かう動きであり、それは強力な右派ブロックと、典型的な抑圧状況を復活させるために民衆に対する最も厳しい措置の採用を意味するだろう。二つ目は、左翼への転換と、新自由主義モデルの最も根本的な側面を逆転させる可能性である。
 今やこの変化は確かなものとなった。それははっきりとした形を取り、同時に新たな諸勢力の相互連関が、エクアドルのプロレタリアートと抑圧された人びとに有利な歴史的瞬間をもたらす可能性を切り開いたのである。右派は、一九九七年のアブダラ・ブカラムの失脚を受けて、二〇〇〇年にジャミル・マウアドの登場と通貨のドル化をもたらした時とは違い、ルシオ・グティエレスの失脚を新自由主義の先触れとなる提案を行う舞台に転化する努力を行わなかった。
 その代わり、この二年間、主として先住民と民衆組織によって闘われてきた、民主主義の内実とTLC(米国との自由貿易協定)に反対する闘争の合流は、ラファエル・コレアを支持する左翼連合として結集した。民衆にとって有利な歴史の流れの最初の扉が開かれた。これは幸運であるだけではなく、反資本主義的プロセスへの刺激となるものである。

闘いが民衆の
合流を実現

 右派と帝国主義が敗北したことは明白である。われわれは反撃が予見できる。だが、われわれはベネズエラ、キューバ、ボリビアに対して起きたこと、そして現在も続いていることから教訓を得ることができる。彼らは静かにしていないだろうし、ブルジョアジーはこの政府と左翼を徐々に腐食させ、民衆が背を向けるようになることを望んで、そのために必要な政治的・軍事的形態の下で政権への支配を取り戻そうとしている。ラファエル・コレアは、弱さと失策の中で、きわめてラディカルな言説と一連の提案を代表する形で勝利を収めたのである。
 さらに、制憲議会を支持すると声明している愛国社会党(PSP)を通じて右翼ポピュリズムに支配されている右派の議会は、PSPがキリスト教社会党、PRIAN、PREとともに自由貿易協定の調印を通じて主権を米国に売り渡す間際にあったという事実を隠している。これはたんなる陰謀にすぎない。なぜならその社会的基盤が弱体化しようとしていたからである。第一回投票でPSPに投票した貧しい人びとは、第二回投票ではその立場を急進化させ、左翼に向かったのである。
 それを強化するために、民衆と左翼との直接的同盟に信頼を置くことが好ましい。それこそ、新政権を維持しようとするにとどまらず、われわれがエクアドルだけでなくラテンアメリカと世界において、闘争のもう一つの状況に向かって進むことができるように、コレアの選挙運動での提案を実行に移すよう圧力をかけるための基盤なのである。
 ラファエル・コレアは第一回投票でも注目すべき票を獲得したが、第二回投票では都市と農村部門で左翼的意識の明確化が進展した。左翼の社会的・政治的勢力間の新たな出会い、二十年以上にわたって公然と新自由主義的グローバリゼーションに反対してきた人びとの間での出会いがあった。


ラテンアメリカ
の闘いの一翼へ

 TLC(自由貿易協定)調印拒否、制憲議会の創出、生活・雇用・医療・教育・住居の諸条件の改善、最も貧しい人びとの状況改善など、最も重要な約束を履行する政府を確立すること。他方、制憲議会に先んじてその能力が試される左翼の統一を打ち固めること。
 新自由主義モデルをその実質において、すなわち民営化や対外債務との関係で、それを変更するだけではなく、押し戻すこと。
 特別の改革措置を急進化させ、新しい社会を建設する展望を持って先住民族、女性、青年などの利益となる、尊厳、人権、集団的権利のための闘いを促すこと。
 ベネズエラ、ブラジル、キューバ、ボリビア、そしてラテンアメリカ、欧州、アフリカ、アジアで抵抗の闘いに立ち上がっている人びととの団結と連合のプロセスを確認すること。
 わが国をどこに向かわせたいのかをめぐる広範な討議を開始するために、新しい組織化のプロセスを促進し、民衆的で集団的な闘争の集まりを強化すること。
 そして失うべきではない革命的イデオロギー的再確認の時でもある。
 今は、新しい左翼についての再考のための回復、前進にとって良い時である。さらに政治的・社会的諸組織の政治的行動は、深い熟考に依存している。私たちが社会主義を建設するためには、歴史の貢献について考えをめぐらし、私たちを取り巻く条件の中からそれを強めて今日的なものにすることが必要であり、私たち自身の歴史的闘争から出発して、私たちが革命的ユートピアを再建するのを助けるだろうマルクス主義、フェミニズムやその他の革命的諸理論を再獲得することが必要だからである。
 より大きな尊敬、尊厳、創造性の時代が到来している。ある人は、革命的プロセスの始まりと述べている。この意味で、エクアドルの歴史で初めて存在した左翼政権(ハイメ・オルドス大統領の時代もあった。しかし、今回の政権は左翼を出自とし、二十一世紀の社会主義を唱導する初の大統領なのである)の影響を最大化するという展望で、すべての人びとが貢献しなければならない。
 もしそれが小さな領域を持つ国の一つにとって偉大なステップとなるならば、キューバ、ベネズエラ、ボリビアに続く、美しく、戦闘的な参照例を持つことになる。CONAIE、FENOCINなどの先住民組織が押し進めたさまざまな運動、女性、労働者、青年の運動、そして歴史におけるもう一つの道や、危機からのもう一つの出口を指摘した批判的思想家の貢献、さらに私たちが経験した敗北から最初の収穫を刈り取り、民衆権力と社会主義にとって優先的な政治的目標を決定する作業の継続という挑戦をする時は今である。
(マルガリータ・アギナガは「社会主義再建」〔第四インターナショナル・エクアドル支部〕のフェミニスト活動家)
(「インターナショナルビューポイント」電子版06年12月号)


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