もどる

イタリア PRC内の「批判的左翼」議員の上院演説   かけはし2006.9.18号

軍のアフガン駐留継続を承認した政府の決定に反対する



 七月末に、ロマノ・プロディ率いるイタリア政府は議会に対して、アフガンへのイタリア軍派遣継続に関する承認投票を求めた。「インターナショナル・ビューポイント」の読者はご存知のように、「批判的左翼」議員団を中心とする反対派国会議員は、共産主義再建党(PRC)の政府動議支持決定に反対するキャンペーンを展開した。
 連合政府は下院では圧倒的多数派を握っており、「批判的左翼」下院議員サルバトーレ・カナボと他の三人による反対投票は政府にとって問題にはならなかった。しかし、上院においては、政府はわずか二人差の多数派であるにすぎず、「批判的左翼」は二人の上院議員を持っている。したがって政府は、この投票を信任投票とみなすという決定を行った。広範な討論の後、「批判的左翼」は、同派の上院議員はこの際、賛成投票をするという決定を行った(右翼は棄権し、退場した)。ただし、この投票にともなって声明が発表された。この声明文は派遣期限が切れる六カ月後には派遣に賛成投票しないことを述べており、現在十六名の上院議員が署名している。
 この論争の過程で「批判的左翼」上院議員フランコ・トゥリグリアットが行った上院における演説をここに紹介する。(「インターナショナル・ビューポイント」編集部)
NATO要請は
戦争任務の継続

 私は本議会で演説するに際し、悲しみといわないまでも、憂慮を抱いています。討論の対象になっている議案は、遠まわしに国際的使命と述べているが、誰でも分かるように、私たちは戦争について議論しているのです。ほかならぬ中東における戦争、何百人もの女、子ども、男の命を奪い続けている戦争です。昨日のローマにおける会議では、停戦を課すことができなかったし、停戦の要請を行うことすらできませんでした。
 政府はこの議案を信任投票としました。私は、チティ大臣がこの問題にアプローチする際に示した、いわゆる反対意見のそれぞれの立場と不一致点に関する政治的バランスに留意しました。
(1)私はただひとつの理由から、信任投票に賛成投票します。その理由とは、右翼政党を追い出し現政府の形成を可能にした選挙民に対する忠誠心と約束であり、また、最近私たちに対して、私たちの闘いを評価しているが、同時に政府を倒さないでくれ、彼らの今後の行動を評価できるようにしてくれと語った労働者たちに対する忠誠心と約束です。しかし、このことは、議案に対する変わらぬ反対意思を消し去るものではありません。議案は(イラクからの撤退を求める圧倒的な要求を考慮しているとしても)同時に、アフガンにおける戦争任務の継続をもくろむものです。

(2)この任務がまさに戦争であるという事実は、すべての軍事アナリストとNATO自身が認めていることです。NATOが加盟国に対し人員と資源の両面で努力を倍加することを求めていること、そしてNATOがすでに今年二月に交戦規則を改定し、タリバンの攻勢に備えていたことは、偶然の一致ではありません。この戦争任務は、一九九九年のワシントン協定から生まれた新しいNATO戦略プロジェクトの一部であり、「世界の警察官」という大西洋同盟の不自然で不正統な役割を予感させるものです。

(3)現在討論していることは、まさにこの紛争の性格、問題の性格です。この問題の性格からして、政府多数派が行った妥協はまったく不十分であると私は考えます。外国軍事介入プロジェクトは多角主義的哲学の浸透を受け続けており、コソボ紛争を特徴付けたような、「人道主義的戦争」の概念の浸透を受けています。この外国軍事介入プロジェクトに逆傾向を挿入することなどできないからです。
 政府は出口戦略の遂行を意図していないだけではなく、アフガンにおいて、またアフガン紛争に結びついた「永続的自由」の任務において、実施する総合的軍事的権限を強化しようとしています。

(4)さらに、基本的な不一致点は、急進的左翼および平和主義的左翼勢力がとってきた立場、過去五年間に渡って実践してきた立場、すなわち、アフガン派兵に関する投票のときこの議会で約束した立場との不一致です。この行動路線は、平和運動の立場と完全に一貫しており、二〇〇一年十月以来、アフガンにおける米国の戦争に反対し、その後のアフガン戦争の現場へのイタリア兵士の派遣に反対する闘いにおいてとって来た立場です。
 この首尾一貫性を私たちは完全に支持します。またこの一貫性は議会戦術のゲームや政府構成の幾何学の枠内に制約することはできないものです。さらに、いかなる政権プログラムも、誰も選挙公約として主張していない問題に対決することを決定していないからです。
 この数週間の間、私は反乱や反体制を時代錯誤的と思いませんでした。逆に、最近ほど、アフガンからの撤退を望む六二%の人々、連合政府支持者の中では七三%にのぼる人々との共感を感じたことはありませんでした。考えてもみてください。外国軍の存在がその地方の人々の目に干渉、支配、操作と映らずにすますことができないことを、どうして私たちは理解できないのか。どうして私たちは、わが兵士たちが、民間人犠牲者の悲劇的なバランスシート(九七%)をともなう戦争に参加している他の軍隊と同じように占領軍と見られていることを理解できないのか。
 いいえ、政府の代表者のみなさん、議員の皆さん、この道を続けることは正義ではなく、重大な誤りです。私たちは、わが兵士たちを、殺し殺されるためにアフガンに駐留させ続けることはできません。

(5)この議案を信任投票とするという政府の決定は、政府を危機に陥れないために私たちが基本的不同意を犠牲にすることを要求しています。これは、私たちの意識と政治的信念に重くのしかかる、苦渋に満ちた選択です。私たちは、もはや将来受け入れられないという脅迫を受けているように感じています。
 政府はこのことに留意すべきです。なぜなら、戦争に関しては、私たちは将来の信任投票を続けることができないからです。執行部が戦争の任務に関する約束に固執するなら、その選択を支持する者の投票によってそれを行うことになるでしょう。私たちはノーの投票をすることになるでしょう。NATO陣営で吹聴されているレバノン作戦のような、他の軍事作戦に対しても、私たちはノーの投票をするでしょう。
 イタリアが本当に中東における平和に貢献することを望むのであれば、イスラエルの政策に反対する率直な態度をとるはずです。西側諸国の実質的同意を得た、民間人への信じがたい蹂躙を引き起こす、無防備な国への無差別爆撃に反対するはずです。
 イタリアは、真のパレスチナ国家の建設のために闘うはずです。この枠組みの中で、イスラエルとレバノンの関係だけでなく、ガザ地区およびイスラエルとヨルダン川西岸地区の間の一九六七年国境に関する、国連の仲裁任務のために闘うはずです。イスラエル政府に対して、イスラエルが安定を得る資格があるとすれば、イスラエルがパレスチナ人を始めとする中東の他の人々の権利を認めれば安定は可能です。このことが現在は押さえつけられ否定されています。

(6)平和運動は、私たちのこの問題に関する対話の真の相手です。今日、この運動は独自の力学、独自の理想、平和への独自の大望の再建を追及しています。私たちは、明示的な不同意を声明することにより、閉じられたかのように思われている議論の再開に活発に寄与していると考えています。
 イタリアにおいては、種々のイニシアティブが取られています。私たちも貢献しているし、将来他のイニシアティブも生まれるでしょう。受け入れがたい軍事作戦の拡大に反対する可能な最大限の勢力とともに、軍事的任務に次回は反対投票をするために、私たちはこれらのすべてに参加するでしょう。私たちは、これ以上の脅迫や威圧を受けることなく、それを行うでしょう。私たちは運動の一部であるだけでなく、運動の必要な一部であることを自覚するがゆえに、平和と、私たちの約束を特徴付ける政治的一貫性の名においてそれを行うでしょう。
     (IV380号)
▼フランコ・トゥリグリアットは、今年の選挙においてPRC候補者としてピエモンテ州から上院議員として選出された。彼はPRCの「批判的左翼」潮流のメンバーであり、第四インターナショナル・イタリア支部のメンバーである。(関連記事は、本紙7月24日号7面)


フランス

ATTACの内部対立と危機
問われているのは反グローバル化運動と社会運動の未来
                ジェニー・シモン

 以下は六月に開催されたフランスAttac全国会議についての報告記事である。フランスAttacの内部対立と危機を表現するこの全国会議において紛争のもととなった運営評議会選挙について、その後、新しい運営評議会は、対立する双方の代表を含む選挙管理委員会のもとで新たに選挙を行うことを決定した。(「かけはし」編集部)

 Attacは、六月十七、十八日、レンヌで全国会議を開催した。運営評議会の選挙をめぐる問題が規約改正問題に暗い影を投げかけている。選挙結果に対して重大な疑惑がもたれている。
 危機は地方からやって来た。運営評議会(CA)の候補者ははっきりと二つの陣営に分かれていて、一方の候補者は現在の指導部を支持し、もう一方の候補者はそれに反対している。現在の指導部グループによる強権的な組織運営と結びついた実際の問題を超えて、Attacの将来をめぐる二つの考え方が対立しているのである。すなわち、フランスの社会運動やもうひとつのグローバリゼーションをめざす全般的運動から孤立して自身の中に引きこもってしまうAttacか、それともあくまでも多様性をもつ開かれたAttacを堅持するのか、という対立がそれである。
 Attacの特異性を思い起こしてみよう。それは、創設者団体と個人支持者という二つの隊伍によって構成されたアソシエーションである。
 前者の隊伍は、アソシエーション、労働組合、新聞、諸個人を結集しており、Attacの革新的性格を構成している。これによって、ピラミッド風に作られた古典的アソシエーションとは根本的に異なって、フランスの社会運動を構成する異なるさまざまな勢力をともにいっしょに活動させることが可能になっている。ジャック・ニコノフを中心とするわずかの指導的グループが自分たちの計画に反するものだと判断しているのは、まさにこの多様性なのである。
 攻撃は数カ月前に始まった。創設団体、そしてとりわけ労働組合が、Attacの発展を妨げており、Attacよりも自分たちの組織を優先しているという非難が、なされるようになった。最終的に、ニコノフは、創設者団体の候補者リストでは立候補せず、個人支持者の候補者リストから立候補した。彼は、創設者団体の候補者リストに反対するよう訴えたのだった。しかし、この作戦は成功しなかった。
 疑惑が起こったのは創設者団体でない運営評議会員を選出する選挙をめぐってである。開票はアルファベット順になされたので、このような手順では大きな偏差が生じることはあり得ないはずであった。……ところが、急激な偏差が出現した。投票用紙の最初の山はニコノフへの反対者に有利な票数をはっきりと示した。地区で一晩保管された後の二番目と三番目の投票用紙の山の開票は、まったく正反対の傾向を示した。それは、最もあり得ない統計的偏差であった。
 不正行為があったとは誰も主張できないが、その偏差が最大限の慎重さを持ってこの問題に対処する必要があるほど大きいのである。Attacの多くの歴史的なメンバーたちは、外部による公正な審査を組織して、もし疑惑が確認されれば、再選挙を行うという考えを支持した。それでも、ジャック・ニコノフは運営評議員に再選されたが、彼に反対する評議員たちは出席を拒否した。
 この対立で決定的に問題になっているのは、Attacの未来それ自身であり、その結集と大衆動員の能力である。もうひとつのグローバリゼーションを目指すフランスの運動に否定的影響をもたらすAttacの解体の危険がある中で、この情況から脱出しなければならない。
「ルージュ」(2164号、06年6月22日)


もどる

Back