もどる

 「新規流入防止」を許さない             かけはし2006.8.28号

野宿者追い出しをやめろ! 真の公的就労事業実施を!

東京都庁に申し入れ行動
 テントを排除するな!希望者全員が利用できる事業を

 八月九日、東京都庁に対して全都の野宿労働者による申し入れ行動が闘われ、折からの台風による激しい雨と風の中、都内各地から約百五十人の野宿の仲間が結集した。
 午前十一時をまわる頃より都庁前に集まった仲間たちは申し入れ行動に先立って簡単な集会を行った。
 まず、実行委員会の仲間より基調の提起が行われる。二〇〇四年から始まったテント生活者を対象とした「地域生活移行支援事業」によってアパートに移った仲間が住んでいた場所は「新規流入防止」とされ、新たなテントは建てられなくなった。それだけではなく都内各地の公園などでも野宿者への排除は強められて行った。
 また、アパートに入った仲間たちも約束通りに臨時就労が出ないなど、厳しい現実に叩き込まれ、二年を迎え「事業の終了」を伝える通知が届き始めている。
 そんな中で東京都は新たに「事業」を再開しようとしている。今度ははじめから二年限定をうたい、臨時就労も出さない。というもので、テント排除が目的なのは明らかだ。
 八月三日、前回の「事業」利用者が裁判に立ち上がったが、この日は今回対象とされる渋谷、中野、隅田川、池袋、江東区などのテントの仲間と、はじめからこの事業の対象から外されているテントすらなしに野宿を余儀なくされている仲間たちも新宿や渋谷から多く結集した。
 「事業」にともなった排除に反対し、アパートに入った仲間の追い出しを許さず、新たな「事業」も希望者が誰でも利用でき、生活を立て直していけるようなまともなものにしていかなくてはならない。
 集会では渋谷、中野、三鷹、山谷、と各地の仲間が発言し、各地の支援者で作る「公園の会」の仲間が裁判の状況について報告した。さらに大阪からの仲間の連帯発言を受け、東京都・福祉保健局、建設局の代表に、以下の申し入れ書を手渡した。
(1)事業の利用を強要しないこと。野宿の仲間に対する追い出しをしないこと。「新規流入防止」をやめること。
(2)希望者全員が利用できる事業とすること。
(3)アパートに在住できる期間を限定しないこと。
(4)「臨時就労事業」を継続すること。「誰でも就くことができ、誰もが生活していける」公的就労事業として実施すること。
(5)アパート入居後のフォローを見直すこと。各福祉事務所と連携し、「失業」理由とする生活保護の適用を促進すること、生活が安定する見通しが立つまで廃止しないこと。
(6)野宿の原因に目を向け、「結果対応」にとどまらない対策を根本から講じること。
 参加した仲間たちは二十一日を回答指定日に定め、九日を上回る結集を持って都庁に再度集まることを確認し、この日の行動を終えた。       (板)

解説
東京都「地域生活移行支援事業」とは?


 二〇〇四年から始まったこの事業は新宿中央公園、戸山公園、代々木公園、上野公園、隅田公園(隅田川の両岸)の五公園を対象に行われ、合計で千百九十人がテントからアパートに入った。
 二年の期間で一カ月の家賃は三千円、最初の六カ月は月に六・五日の仕事を東京都が出し、その間に自立を目指す。という建前の事業であった。
 対象が五つの公園に限定されていることからテントの排除が主目的ではないか? という批判が当初からあったが、事業が行われた地域は「新規流入防止」の名目でテントは建てられなくなり、都内全域で野宿者排除の動きは強まった。
 事業の対象となった人たちの懸念は半年で仕事が切れた後どうするのかということと、二年後にどうなるかということ。
 この懸念は残念ながら的中した。六・五日の仕事が保証された人は少なく、一番最後の上野公園の仲間に至っては月に一回しか仕事が出なかったこともある。こんなことでは仕事探しもままならず、かといって公園のようにアルミ缶集めをすることも出来ない。たとえ仕事を見つけても給料日までのお金がない、仕事に通う電車賃がない、という仲間がほとんどだ。
 就労自立出来た人は約二割と少ない。しかもほとんどが不正規雇用である。高齢の仲間や体の具合の悪い仲間を中心に生活保護を取った仲間が約三割。残りの多くはどうしていいか分からずに苦しんでいる。炊き出しを廻っている人も多いし、中にはアパートを出て、路上に戻った人もいる。就労指導などはほとんど満足に行われていない。
 そうした中、一番最初に事業が行われた新宿中央公園の仲間たちが八月で丸二年を迎えた。東京都は期限の二年が過ぎたのだから、これで打ち切りであると主張している。
 月に十三万円以上の収入がある人は大家さんと直接、通常の契約を結べ。生活保護を取った人は住居も生保でまかなえ。それ以外の人は面接の上で一年間限定での更新もあり得る。これが東京都の態度である。
 そして、東京都(の委託したNPO)が仲間たちと結んだ契約が二年間限定の「定期借家契約」であることが判明した。
 事業開始にあたって東京都が行った説明会では「更新あり」としていたし、当日配られたプリントにもそのように記されていた。その後、面接など何段階かを経て最終的に結ばれた契約が「定期借家契約」であったということなのだが、これはだまし討ちというほかない、ほとんどの仲間が当初の東京都の説明を信じていたのだ。
 また、定期借家契約は通常の借家契約と違って契約書と別の書面でも定期借家契約であることを双方で確認することなど法的にはかなり厳格に定められている。しかし、こういった点も不備がある。
 さらに各大家さんと東京都(の委託したNPO)の結んだ契約は「普通借家契約」である。多くの大家さんはこの事業での更新を望んでいる。十三万円以上の収入があるといっても、ほとんどが不安定な雇用形態の仲間が多く、また、更新費用の問題もある。また、一年間の限定では問題を一年間先延ばしにするだけである。
 定期借家契約と通常の借家契約との一番の違いはそれが大家さんの権利を防衛するものだということであるが、この事業では大家さんは全く蚊帳の外である。東京都の一方的な都合に過ぎない。
 そうして、アパートに入った仲間を追い出す算段をしつつも東京都は新たにテントの仲間に対してこの事業をかけようとしている。それと同時に都内各地ではテント排除の動きが激しさを増している。
 隅田公園からアパートに入った仲間にも二年で事業が終了であるという東京都からの通知が配達証明で届き始め、びっくりした仲間の中にはなけなしの金をはたいてテントを買ったという人もいる。
 そこで八月三日、この事業を利用した仲間の内八名の仲間が原告となり「引き続いて入居できるように」求める仮処分を東京地裁に申し立て、同時に東京都を相手取って一人九十万円の損害賠償を提訴した。(板)




レバノン侵略を問う緊急集会
市民への無差別爆撃やめよ 即時停戦と撤兵の実現を

 八月九日、文京区民センターで「市民への無差別爆撃やめよ、即時停戦!撤兵せよ! イスラエルのレバノン侵略を問う8・9緊急集会」が劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワークの主催で行われ、百七十人が参加した。
 主催者を代表して、たんぽぽ舎の柳田真さんが、「広島のNO・DU大会」で緊急行動の一環として集会を準備したこと、今後レバノンへの支援カンパ活動とイスラエル・アメリカ大使館への抗議行動を訴えた。
 次に、田浪亜央江さん(一橋大学院生)、豊田直巳さん(ジャナーリスト)、山崎久隆さん(劣化ウラン研究会)が講演を行った。
 田浪さんは「イスラエル対レバノンという単純な分け方で、いま起こっているイスラエルのノバノン攻撃を見るわけにはいかない。カギを握っているイスラエルの反戦運動が今回は非常に弱いのが気になる。民衆同士のつながりのなかで、支援運動をつくっていこう」と提起した(別掲)。
 豊田さんは「十年前に五回程レバノンに通った。レバノンにはパレスチナ人三十万人以上がイスラエルから追い出されたくさんの難民キャンプに住んでいる。前回のイスラエル軍のレバノン侵攻の時、難民キャンプがねらわれ、大虐殺が起きた。避難民は国連軍の基地の中に逃げ込まざるをえない。そこをミサイル攻撃した。イスラエル軍はレバノンを無差別に破壊することによって、『ヒスボラがいるから攻撃される、ヒズボラは厄病神だ』と思わせたいのだ。しかし、パレスチナ人は、ヨルダンなどに数百万人も難民化している。この問題は武力や軍事的手段によっては解決しない。いま必要なのはイスラエル軍の侵略・空爆を即刻やめさせることだ」と訴えた。
 山崎さんは「イスラエル軍は砲燐弾やクラスター爆弾などの非人道兵器を使っていると伝えられている。確実な立証はできないていないが、カナでの六十人の虐殺の遺体は通常兵器とは違った焼けただれかたをしていた。アメリカ軍がイラク戦争で使った兵器をイスラエル軍も使っているようだ。こうした非人道兵器の使用を許さない」と報告した。
 集会に、レバノン大使館からの連帯のメッセージが伝えられ。イラクやレバノンでNGO活動をしている、パレスチナ(レバノン)子どもの里親運動、ピース・オン、劣化ウラン兵器禁止ネットワーク、そして東京都議の福士敬子さんなどから、イスラエル軍の戦争をやめろ、レバノン・パレスチナの人々を支援しようと訴えがあった。(M)



田浪亜央江さんの報告から
虐げられた民衆どうしのつながりが重要だ


 今回の戦争はイスラエル対レバノンという単純な構図ではとらえきれない。レバノンは非ムスリムで多宗教的なモザイク国家で、欧米と中東を結ぶパイプ役となっている。マロン派のクリスチャンがいる。レバノン人は世界中に移住していて、アメリカの中でアメリカ銀行のトップについているようにかなりの力を持っている。イスラエルは自分にとって都合のよい中東をつくるためのパートナーとしてレバノン国家をつくりかえ、支配権を確立したいと考えている。
 一九八二年のノバノン侵略の時は、イスラエル軍は一週間で一万人を虐殺した。それに対してイスラエル内部の反戦運動が大きく盛り上がった。しかし、今回はそれが見えてこない。イスラエル国内では連日ヒズボラの攻撃によって「ひどい」被害を受けている。イスラエルこそが『被害者だ』と大宣伝が行われている。シオニスト左派は強いられた攻撃に対して、闘わなければならないとなってしまっている。
 ヒズボラをどう考えるか。貧しい人々のために病院を運営するとか福祉的な活動を行うなど住民に支持される活動を行っている。その一方で、政党としては新自由主義政策を推進する立場をとっている。西アフリカのダイヤビジネスで巨額のヤミのカネを資金源にしているとも言われている。イスラム原理主義は個人の自由や民主主義をないがしろにする点があり、そうした人々を追いやってしまっている。
 私たちは国家と国家の関係でものごとをとらえるのではなく、虐げられた民衆同士のつながりをつくりだし、被害を受けている人々を支援することが重要ではないか。イスラエル軍の即時戦争の中止と占領地からの撤退を要求する。(文責編集部、発言要旨)

もどる

Back