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                            かけはし2006.8.28号

小泉首相の8・15靖国参拝を糾弾する!

韓国・台湾・沖縄・日本民衆の画期的な共同運動

「平和の灯を! ヤスクニの闇へ」キャンドル行動が5日間連続闘争


 八月十五日午前七時四十一分、小泉首相はついに「8・15」当日の靖国神社参拝を強行した。日本の植民地支配を正当化し、侵略戦争を「自存自衛」の「聖戦」としてほめたたえ、戦死者を「英霊」として「顕彰」する靖国神社への小泉の参拝を、われわれは厳しく糾弾する。八月十一日から十五日まで五日間にわたって取り組まれた「平和の灯を!ヤスクニの闇へ」キャンドル行動は、戦争への道を拒否し東アジア民衆の連帯で平和をつくり出す運動の新たな地平を切り開いた。この成果をさらに発展させるために全力を!


集会とデモに一千人
侵略賛美の靖国思想と小泉の参拝を鋭く批判

 八月十三日、日本教育会館で「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動8・13集会」が開催され千人が集まった。「小泉首相の靖国参拝を批判し、合祀を取り下げよ」とする韓国や台湾の戦争被害者の訴えとコンサートが開かれた後、靖国神社のある九段下にせまるキャンドルデモを行った。
 内田雅敏さん(弁護士、ヤスクニ・キャンドル行動事務局長)が「欧州の5・8はナチスドイツから解放の時であった。敗戦後、西ドイツはそれなりの賠償と反省をしてきた。アジアの8・15はどうだったのか。天皇制軍国主義からの解放と靖国からの決別であったはずだ。しかし、小泉首相の靖国参拝は侵略戦争と植民地支配を肯定するものである。小泉の首相の参拝を許してはならない」と開会のあいさつを行った。
 続いて、李ソクテさん(民主社会のための弁護士会・元会長)が「日本の侵略戦争に加担させられ、戦死した韓国人が靖国神社に合祀されている。これは韓国人の意志にそむくものだ。ただちに靖国神社は合祀を取り消せ。それが東アジアの平和をもたらすものだ」とあいさつした。
 第一部の講演と証言に入った。最初に韓国から来日した九人の国会議員が紹介され、代表して金希宣さんが「質疑書を持って靖国神社に行き宮司と会い、合祀者名簿から削除するように求めた。しかし外務省などと調整を行うと答えたのみだった。遊就館に行ったが侵略戦争を正当化するものだった。この時、『朝鮮人帰れ』と罵声を浴びせられ右翼が襲ってきた。深刻な問題であり、アジアの未来に憂慮を与えるものだ。合祀されている魂を韓国に持ち帰りたい」と訴えた。
 高橋哲哉さん(東京大学教授)がA級戦犯分祀論を批判し、靖国神社を第二次戦争神社にしてはならないと講演を行った。続いて三人の証言が行われた。最初に八十七歳になる李金珠さん(光州遺族会会長)が、夫が日本の戦争に動員され戦死し靖国に合祀されている経過を報告し、「戦争英雄として祀ることは、夫に対する冒涜である」と厳しく批判した(別掲)。次に金城実さん(沖縄靖国違憲訴訟原告団長)が「八十人が原告になって沖縄靖国違憲訴訟を行っている。沖縄戦で犠牲になった人はお国のために死んだのではない。ウチナーグチ(沖縄語)を使ったからといって日本兵にスパイ容疑で殺され、住民虐殺という辛酸をなめてきた沖縄人、集団強制死に追い込まれたガマに身を潜めていた先輩たち。『お国のために死んで下さった』のでは決してない」と報告した。続いて、台湾立法院議員で、台湾原住民族の高金素梅(チワス・アリ)さんが台湾原住民族がいかに日本軍にから残虐な扱いを受けたのかを証言した(別掲)。
 李煕子さん(合祀取消訴訟韓国人遺族代表)と今村嗣夫さん(弁護士:ヤスクニ・キャンドル行動共同代表)がそれぞれ小泉の靖国参拝と靖国神社を厳しく批判した。会場に韓国から参加している三人の「元軍隊慰安婦」が紹介され、おしみない連帯の拍手が送られた。
 休憩をはさんで、第二部のコンサート。台湾原住民族の「飛魚雲豹音楽工団」、韓国の子どもたち、朴保の歌が披露された。朴さんのアリランなどの歌の時は、韓国のハルモニが壇上に上がり歌い踊り、会場も一体となった。すべてのプログラム終了後、靖国神社に向けて千人がキャンドル・デモを行った。   (M)

高橋哲哉さんの講演から
靖国の第二次国営戦争神社化構想と対決しよう


 小泉首相は過去五年間にわたって、内外の強い批判を無視して、毎年一回靖国神社参拝してきた。今年は8・15に参拝するとしている。参拝の中止を強く求める。そして、仮に首相の参拝がなくても問題は終わらない。旧植民地から狩り出され戦死した兵士たち五万人が合祀されているからだ。合祀の取り下げを行わなければならない。
 A級戦犯の分祀論が言われているが非常に危険である。A級戦犯が靖国神社からはずされても、日本の明治以来の台湾や朝鮮の植民地支配とアジアへの侵略の責任の問題がある。そして、昭和天皇の戦争責任を問わなければならない。富田メモはA級戦犯の分祀論を強めるものだが、それは靖国神社を国営化し、憲法違反の疑いの強い首相や天皇の参拝を合法化への道を開くという意味を持っている。
 靖国神社はもともと天皇の神社であって、天皇の参拝が決定的な意味を持っている。十九世紀の後半に明治政府が戦争神社として靖国神社を創ったように、二十一世紀の戦争神社として、第二次国営神社として靖国神社を創ろうとしているのではないか。そのような事態を、断じて認めるわけにはいかない。この流れを阻止するために、皆さんとともに批判の声をあげていきたい。(発言要旨、文責編集部)

チワス・アリさんの証言から
台湾原住民が日本の「神」になるはずがない


 なぜこの四年間、幾度となく日本を訪れ、裁判を起こし、そして「還我祖霊(祖先の霊を返せ!)」の抗議活動を行っているのか。
 台湾原住民族は日本軍国主義の侵略を受け、五十年間にわたり支配され、苦汁をなめさせられた。消滅させられた民族の歴史を取り返すこと、日本政府に植民地支配の責任を取らせるために、「首相の靖国参拝違憲訴訟」を起こした。二〇〇五年九月三十日、大阪高裁の「小泉首相の靖国参拝は公的性格を有し、日本の憲法にある『政教分離』原則に反する行為であると認定する」判決があった。高裁による首相の参拝違憲認定は、日本の司法史上はじめてのことであった。しかし、小泉首相はこの判決を無視して判決後十七日目に靖国参拝を行った。八月十一日に、「靖国神社に対する高砂義勇隊犠牲者の削除要求」の新たな裁判を大阪地裁に訴えた。
 日本植民地政府は「蕃人蕃地の完全消滅」政策(殺しつくし、焼きつくし、奪いつくす)を掲げて、台湾原住民を一八九六年から一九二〇年の間だけで、百三十八回生蕃討伐を行い、七千八十人を殺害した。原住民の人口の八分の一に及んだ。
 一九四一年の太平洋戦争への突入によって、原住民の子どもたちを「高砂義勇隊」に編成し、戦場に送りこんだ。一九四二年から約一万人が出征させられ、その内半分が殺された。
 高砂義勇隊が靖国神社に合祀されていることを、家族にずっと後になってから通知された。台湾原住民は日本人ではない。当然、日本の神にできるはずもない。古今東西加害者と被害者を合祀する道理がどこにあるのか。靖国神社は高砂義勇隊犠牲者の霊魂が帰着すべき所ではない。日本軍国主義による歴史犯罪はアジア民衆にとって永遠に癒えることのない痛みだ。
 過去四年間、台湾原住民、韓国、琉球、日本本土の平和を愛する友人たちとともに、日本政府と靖国神社に対して闘ってきた。今後も平和・人権の確立にために行動を起こしていこう。(発言要旨、文責編集部)

李金珠さんの証言から
朝鮮人戦没者を侮辱する合祀など許さない!

 私は一九二〇年、植民地統治下の北朝鮮・平壤で生まれました。私は、朝鮮語の禁止・日本語使用、神社参拝、創氏改名、皇国臣民の誓い、目に見えない天皇に対する最敬礼、「日の丸」に対する最敬礼などの皇民化教育を強要された。一九四〇年に夫と結婚し、男子が生まれた。一九四二年十一月に夫に召集状が届いた時、私は天が崩れ、地が落ち込むような恐怖に震え、食事もせず泣くばかりでした。一九四五年四月、戦死公報が届いた時、私は泣いても泣いても声も涙も一滴も出ず、天と地すべての物が黄色みがかかって見えながら倒れてしまった。
 一九七一年に厚生省に問い合わせたところ、一九四三年十一月二十五日、南洋諸島タラワ島で戦死した夫の死亡証明書を持ってきた。軍人・軍属の身上調査表に、私の夫も含めて、「34・7・31靖国神社合祀済」という日付印がはっきりと押されていた。
 日本政府と軍は、朝鮮を奪い、朝鮮人に多くの精神的・肉体的・経済的被害を与えましたが、犠牲者を追悼し、遺族に謝罪・賠償することはしていません。ところが靖国神社には合祀したのです。
 私の夫は天皇のための侵略戦争に、家族と祖国を捨てて進んで命を捧げるような愚かな人では絶対にありませんでした。A級戦犯らによって強制動員され、願わない死を強いられたのです。夫も私も反人類的戦争犯罪に同調しません。侵略戦争を正義の戦争とみなし、戦没者を戦争英雄と崇める靖国神社に祀るのは、夫に対する冒涜です。
 小泉首相が、平和に背き、朝鮮人戦没者を侮辱する靖国神社参拝を、ただちに止めることを強く要求します。(発言要旨、文責編集部)


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