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開発主義・環境破壊の「石原構想」           かけはし2006.8.14号

えっ! 東京でまたオリンピック?


こんなにある問題点――
市民あとまわしで`独想aする五輪計画をきびしく批判

孫子の代にまで
負担を押しつけ

 七月三十一日、杉並産業商工会館で「えっ!東京でまたオリンピック? 市民あとまわしで`独想aする東京オリンピック計画とは…」が、東京にオリンピックはいらないネットの主催で開かれた。
 二〇〇八年の北京、次のロンドンのさらに次の二〇一六年のオリンピック開催地を決めるレースが始まっている。八月三十日に、東京都か福岡市のどちらかの国内候補都市が決められ、国際的な招致合戦の末に、二〇〇九年に最終的に開催地が決められる。
 ネット代表の早川裕子さんの主催者あいさつの後、東京都議の福士敬子さんが東京都の発表した招致の概要を説明し、その問題点を明らかにした。
 「昨年の九月に、石原都知事が二〇一六年のオリンピック招致をすると突然議会で発言した。大会運営費約三千億円、関連施設整備費五千億円がかかるが、企業の協賛金やIOCからの配当金、民間活用、国庫補助を頼りにするから、都の負担は五百億円程度だと都は答弁している。〇六年に開催準備基金として千億円を積み立てており、最終的に一兆円かかるとも言われ、結局のところいくらかかるか分からない」。
 「臨海開発地を中心に、オリンピック会場候補地を半径十キロ以内に収めたコンパクトなオリンピックを目指すとしている。臨海開発地は臨海開発事業が破綻(負債、債権放棄など総額六千四百四十六億円)し、民事再生手続きが開始される。オリンピック招致は、臨海開発失敗を覆い隠すためのものではないか」。
 「さらに、『オリンピックのためではない』といいつつ、『オリンピックのための』の道路整備を急がねばと計画している。b羽田空港〜築地までの地下道路(1兆円)bオリンピック会場までの地下鉄(2千億円)b外かく環状道路(1兆3千5百億円)、高速道路多摩新宿線(2兆2千億円)など。少子化が進む中で、孫子の代にまで負担がかかるようなオリンピックの招致に反対だ。オリンピックにカネを次ぎ込むぐらいなら、福祉にそれをまわせと言いたい」。

覚悟を決めて
反対の運動を

 続いて、渥美昌純さんがオリンピック精神と石原知事の数々の「差別」発言は相入れないと批判した。大野拓夫さんが道路建設に伴う環境破壊問題を提起した。
 「石原知事は、オリンピック開催に合わせて道路整備などを強力に推進しようとしている。オリンピック自体ではなく、開発行為に目的があるのではないか。とくに、外環(練馬―世田谷間)に、長さ16キロメートル、直径16〜24メートルのトンネルを掘り、上下二階建てで道路を建設しようとしている。この地域は地下水が抱負で水の上に土地が浮いているような状態だ。ここに巨大なトンネルを掘ることは地盤沈下や液状化の恐れ、乾燥化による樹木の枯死、大量の排水をどうするのか。こうした考察がほとんどなされず、地域住民にも知らされていない。こうしたことは開発優先で人間無視ではないか」。
 六月の瑞穂町議会が東京都内で唯一五輪招致決議案を否決した。石原都知事は「頭がどうかしてるんじゃないのか」などと強い調子で不快感を示し、二〇一三年に多摩・島しょ地域で開催予定の国体にも触れ、「吠え面かかないようにした方がいい」とけん制した。(毎日、6月24日付)。近藤浩さん(瑞穂町議)は「議会の全員協議会であえて決議しなくてもいいだろうと決めていたのを自民・公明党が上からの圧力で強硬しようとしたので一票差で否決した。背景には瑞穂町は米軍横田基地の騒音の被害を受けており、石原都知事の進める横田基地の軍民共用に反対してきたことがある」と説明した。
 橋本久雄さん(みどり三多摩)は「立川駅前で二時間、東京五輪に反対か賛成かのシール投票を行ったら、60対191で反対が多かった。来年の都知事選につなげていきたい」と報告した。
 長野オリンピックに反対するネットワークの小山和久さんが「長野冬季五輪では『五輪ファシズム』が出現した。五輪は経済・社会のあり方を問う問題であり、反対運動は相当な覚悟と準備をしてやる必要がある」と提起した(別掲)。福岡で反対運動を進める`いらんばい!福岡オリンピックaの会のアピールが読み上げられた。今後、シール投票やJOCへの申し入れを行っていくと提起があった。オリンピック招致に反対しよう。   (M)

小山和久さんの報告から
長野で作り出された五輪ファシズム状況


 一九九八年に長野オリンピックは開かれた。招致が決定したのは九一年の六月。長野オリンピックに反対するネットワークをつくって反対運動を行ってきた。この時の経験から、この問題は根っこの深い問題だということを話したい。
 いろんなことがあるので、キーワードとして説明したい。
b自然破壊。長野は冬季オリンピックなので、山を開発しないと開発できなかった。JOCの会長であった堤義明は、西武鉄道・コクドの社長でもあった。堤の望むかたちでの開発が行われた。堤がかなりの利権を持っていた志賀高原がメイン会場のひとつになっていた。
b公共事業。公共事業をやりたいという人たちが非常に大きな声でオリンピック招致を叫んだ。オリンピックを招致するということで、全国で計画されているものより優先的に新幹線や高速道路が建設された。いったん動き出した工事は集中的に予算がつけられているので後戻りしない。寄付金を出した企業が五輪関連の受注をした。長野五輪は土木五輪だった。バブル破綻がハッキリした時期で、目玉の開発がほしかった。長野五輪の組織委員長は元経団連の会長だった人物だ。
bマネーロンダリング。無税化の処置を得るために招致委員会を利用した。県からの招致委員会への交付金の八〇%は民間企業からの寄付金をあてた。招致委員会は任意団体なので、直接企業がおカネを出すと税金がかかる。ところが、日本体育協会とか県を通じて出すと税金がかからない。免税された上で、県は寄付した企業に五輪関連の仕事を発注した。これは談合以外のなにものでもない。こうした実態を覆い隠すために会計帳簿を遺棄してしまった。
bメディア・興行。五輪に対してチェック機能を持たなければならないはずのメディアが一番もうけるための興行と化したために、一切五輪批判をしなかった。五輪はプロレスや相撲の興行とまったく同じでカネもうけのためにやられた。
b電通とアディダス。盛岡にしても長野にしても国内候補地として出たとき、これをプロデュースしたのは電通だった。長野は競技期間中温度が高過ぎる、雪がない――とあまり良い開催地ではなかった。電通とアディダスはオリンピックをおカネにする首謀者だった。ISLという会社をスイスに作って、五千億円を采配していた。IOC自体がもうかるということで、自分たちがやるようになった。その結果、ISLは二〇〇二年に倒産した。IOC自体がマネジメントをやっている。それだけ巨額のカネが動くということだ。
b五輪ファシズム。招致活動の時、お上のやっているところに反対できないところだ。長野市長選に五輪はいらないというスローガンだけで立候補した。県内でその候補者のポスターを印刷してくれるところがまったくなかった。五輪反対の意見が載った選挙広報はいくらなんでも配布してくれるだろうと思ったが、配らない町会長などがいた。
 動員のことで言えば、招致団体の役員がやってくると長野駅から県庁に向けて、幼稚園児とかが旗を持たされて歓迎の行動を強制された。そんなことが当たり前のようにやられた。そういったことに、だれもそんなことがおかしいという人たちがいなかった。町会だとか労組、赤十字の会などあらゆる組織を動員して五輪を招致しましょう、という強力な縛りがかかった。
 五輪ファシズムなんて大げさなことを書いたのですが大げさではないし、五輪を呼ぼうとしていた『信濃毎日新聞』自体がそれをやっていたので、まったくこうしたことを問題にしなかった。
bドーピング。当時ドーピングが問題になっていた。IOCも困っていた。IOCにとって、選手はカネをかせぐ道具なので、それがドーピングで五輪のイメージを損なってしまっては五輪のイベントそのものが台無しになってしまう。
b五輪の招致費。五輪関連の施設費予算は一九八八年当時で千三百四十三億円、開催の九八年の時には二千十八億円かかっている。運営費が五億円から二十五億円に、大会運営費は四百億円から二千三十億円に増えた。(発言要旨、文責編集部)

福岡からのメッセージ
福岡でも東京でもいらない


 福岡では、福岡市の市民への対応は無視から敵対に変化しています。合わせて14万筆の署名で反対請願がなされ、私たちの街角投票に85%の市民が反対票を投じました。福岡市長の市予算4900万円が勝手にオリンピック招致費に流用されましたが、賠償請求訴訟を起こし7月24日に第1回口頭弁論が開かれました。24日・25日の評価委員の視察には連日抗議行動が行われましたが、25日市民が「嘆願書」を評価委員に手交しようとしたら市職員が妨害する事態も起こっています。
 福岡の市民は収入が減っているのに負担が増え、福祉予算が削減されることに怒りを覚えています。オリンピックのだんではない!(博多弁)との声があちこちで聞こえてきます。東京も同様ではないでしょうか。福岡でいらないオリンピックは東京でもいらない! 2006年7月31日
`いらんばい!福岡オリンピックaの会 事務局長 脇 義重




山谷夏祭り
韓国山本労組と山谷争議団が闘いの報告


 八月五日、玉姫公園で山谷夏祭りが行われ、多くの労働者が祭りを楽しんだ。
 夏祭りでは毎年会場の一角に祭壇が作られ、亡くなった仲間を偲び線香を手向けているが、今年は横浜の徳恩寺の僧侶が二人お経をあげに来てくれた。
 徳恩寺では千滝の墓地という無縁仏のための墓地を設けており、たくさんの横浜寿町の労働者の遺骨も収められているという。お経が響く中、多くの仲間が祭壇に手を合わせた。
 続いて司会から韓国山本労組の仲間が二人が紹介された。韓国山本は東京・板橋区にある山本製作所の子会社だが、七十二人の労働者全員が突然解雇された。二人は「日本の本社に解雇の理由を質し、撤回させるために来た」と語り、「鉄道労働者」という労働歌を披露して喝采を浴びた。
 続いて山谷争議団の仲間のあいさつが行われた。争議団の仲間は東京都の地域生活移行支援事業を批判し、八月三日、仲間が裁判に立ち上がったことを報告した。当初は「更新あり」と説明していた事業だが都が利用者と結んだ契約が二年間の「定期借家契約」であったことが判明したのだ(詳細次号)。さらに事業にともなった排除を許さず、九日の対都行動への参加をと訴えた。
 会場にはやきそばや、冷や奴の屋台が並び、参加者には炊き出しや枝豆、タオルが配られた。祭りはくじ引きや、玉入れゲーム、カラオケなどで盛り上がる。バンドも二組出演、今年は沖縄から三線を持って駆けつけてくれた出演者も。最後は恒例の盆踊りを踊って締めくくった。  (板)

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