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日米・韓米軍事同盟の「新段階」             かけはし2006.7.3号

韓国・東アジアの人びとと共に戦争国家づくりNO!

「米軍再編」報告とワンセット

岩国・平澤の代表が現地報告
米軍再編反対・東北アジアの平和を闘いとろう

 六月十七日、「沖縄・日本、韓国民衆の連帯で米軍再編にNOを! 米軍再編反対・東北アジアに平和を!6・17集会」が東京・文京区民センターで開催された。午後六時からの集会に先立って、午後三時半から西神田公園で集会の後、後楽園近くの礫川公園までデモ行進が行われた。デモ出発前の集会では、新しい反安保行動をつくる実行委、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、東水労青年女性部、VAWW―NETジャパン、平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動、日韓民衆連帯全国ネットが発言した。

日米ロードマッ
プの本質は何か

 文京区民センターでの集会には百六十人が参加した。最初に日韓民衆連帯全国ネットの渡辺健樹さんが主催者あいさつを行い「五月一日に発表された米軍再編最終報告・日米ロードマップで打ち出された日米同盟の新たな段階とは、日本を『対テロ』戦争での下での武力介入に全面的に踏み込ませるものだ。同時に韓国では、平澤の米軍基地拡張反対運動に一万五千人もの軍隊、警察が動員されて激しい弾圧が加えられた。今こそ私たちは日韓民衆の共同した行動で平和を作りだしていかなければならない」と訴えた。
 次に、世界経済フォーラム(WEF)東アジア地域会議に対抗して、この日行われた「大企業と大国による『アジア統合』異議あり! 人びとのアジアを足元からつくる6・17シンポジウム」を代表して、脱WTO草の根キャンペーンの大野和興さんが、韓国、フィリピン、タイの代表とともに登壇し、連帯のあいさつを行った。
 続いて「日米軍事再編・『最終報告(ロードマップ)を斬る」と題して、東京新聞社会部記者の半田滋さんが講演した。
 「米軍再編最終報告は安全保障政策の大きな変更を意味しており、この問題は六月九日に国会に上程された防衛庁の省昇格法案、海外派兵を本務化する自衛隊法改正案と一体のものだ」。こう切り出した半田さんは、「米軍再編」最終報告に至る経過のなかから浮かび上がってきたその本質をえぐりだした。
 「再編協議においてアメリカが主張したことは、第一にワシントン州フォートルイスの米陸軍第1軍団司令部の座間移転と横田の第5空軍司令部をグアムの第13空軍司令部に統合することだった。横田の第5空軍司令部のグアム移転は、日本本土はもはや航空攻撃の対象とはならないということであり、座間への陸軍第1軍団司令部の移転は、東南アジアから中東に派遣される米軍の司令・攻撃中枢の建設を意味する」。
 「日米両政府は『抑止力の維持』と『基地負担の軽減』の両立と語っているが、すでに日本本土が外国からの攻撃の対象になることは想定されておらず『抑止力の維持』などというのはおとぎ話だ。そして『基地負担の軽減』はまったく事実に反する。それは同盟国にカネも土地も負担させ、人も動員して海外での戦闘への出撃・司令・補給機能を強化しようとするものだ」。
 半田さんは、岩国への米艦載機の移転が同時に佐世保での空母長期滞在計画とセットになっていることをも明らかにした。
 半田さんの講演の後に、神奈川県央共闘、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックから報告が行われた。

鉄条網撤去し
平和を築こう

 ノレの会の韓国民衆歌謡に続いて、田村順玄さん(岩国市議、ピースリンク広島・呉・岩国)が報告した。田村さんは、四月二十三日投票の岩国市長選の中で、自民党が米艦載機の受け入れの代償として市の借金の棒引き、児童給食費の完全無料化、小学六年生までの医療費無料化などの「公約」を乱発し、他方、住民投票の結果を受けて米艦載機の受け入れを拒んだ井原市長の当選後は、北原防衛施設庁長官から補助金打ち切りの攻撃がかかっている現実を明らかにした。さらに山口県知事と岩国市議の圧倒的多数から「受け入れ拒否」を撤回させる圧力が市長にかけられていることを厳しく批判した。
 平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会のチョン・ヨンジンさんは、駐韓米軍は戦略的柔軟性を持った軍隊に再編され、韓米同盟は対中封鎖同盟へのその性格をほ変質させている、と現状を規定した。
 「これは韓米同盟の侵略的再編であり、韓国軍もまた米軍について越境支援に動員されようとしている。四百五十七万坪の平澤米軍基地は新しく三百四十九万坪拡張され、その結果、住宅地区をふくめて平澤市の総面積の一一%を米軍用地が占めることになる。この間の弾圧で、多くの仲間が逮捕、指名手配され、五百四十人が負傷した。いま収用された土地には鉄条網が張りめぐらされているが、鉄条網を撤去し平和を築いていきたい」。
 この発言にはひときわ大きな拍手が巻き起こった。
 最後に、アジア平和連合(APA)ジャパン、韓国良心囚を支援する全国会議、枝川裁判支援連絡会からのアピールを受け、日本語とハングルでシュプレヒコールを上げて、日韓民衆の連帯で東アジアの平和を構築することを確認した。(K)          



国会会期末に大阪で緊急行動
共謀罪・教基法改悪・改憲国民投票案つぶそう

 【大阪】国会会期の終盤を迎え、教育基本法改悪法案、共謀罪新設法案、憲法改悪のための国民投票法案という三法案が危うい局面にあった六月十五日、これらの廃案をめざして緊急行動が取り組まれ、二百五十人が参加した。呼びかけたのは、大阪労働者弁護団、草の根の力をつちかい改憲ストップ! 5・3大阪憲法集会実行委員会、子どもたちに渡すな!危ない教科書大阪の会の三団体。
 永井さん(関西救援センター)の司会で大阪市役所横の女神像前集会が開かれ、最初に長島弁護士(大阪労働者弁護団)がアピールした。長島さんは「今日の日を法律の成立もなく迎えられるとは予想していなかった。四月以降爆発的に盛り上がった大衆運動の力がこの法律を阻止したと思う」と呼びかけた。
 原田さん(5・3大阪憲法集会実行委員会)は、「国民投票法案は改憲のための手続き法案だ。民主党の法案は与党案との違いはあるがやはり危険だ。権力側にあるマスメディアを使い嘘の情報を流すようなやり方を日常的にやりながら、一方で民主的な国民投票にすることなどありえない。この法案をほかのことにも適用するなど政府側は考えていない。この法案を成立させないように断固として闘っていきたい」と述べた。
 今井さん( 子どもたちに渡すな!危ない教科書大阪の会)は、「今日の衆議院の教育基本法問題特別委員会理事懇談会で、与党と民主党提出の法案の継続審議が決まった。与党内の審議経過を明らかにせず、十分な国会審議もせずに一気に成立させようとした政府・与党に強く抗議する。次の臨時国会に向け法案の批判を広めていこう」と訴えた。
 この後、大阪教育合同労組、全日建連帯労組からの発言があった。重藤さん(大阪教育合同)は、「全労協の仲間と文科省交渉などをやってきたが、以前と違い右派勢力が完全に牛耳っていて、子どもたちを権力が思うままにできるように教育をつくり変えようとしている。未来を切り開く若者のために闘っていきたい」と述べ、川村さん(全日建連帯)は「共謀罪を阻止するため五月から四波にわたり、全港湾・生コン三労組の仲間と国会闘争を闘ってきた。この悪法三法をなんとしても阻止したい。そうでないと将来にわたり悪法を残すことになる。戦時中の治安維持法がいい例だ」と、最後まで闘おうと呼びかけた。
 中北さん(5・3大阪憲法集会実行委員会)が、まとめをし、最後に吉本さん(全港湾青年部)の音頭でスローガンをシュプレヒコールして終集会を終え、悪法三法の廃案を訴えながら大阪駅前桜橋交差点までデモ行進を行った。(T・T)


資料
政府開発援助(ODA)による武器供与に対する申し入れ

                            2006年6月13日

 日本政府は6月13日の閣議で「テロ・海賊取りしまり」を名目にインドネシアに対して3隻の新造巡視船をODAで供与することを決定した。あわせてこれが「武器輸出3原則の対象外」とする官房長官談話も発表された。こうしたODAの軍事化に対して、NGOを中心に反対の申し入れが行われた。(編集部)

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿
外務大臣 麻生太郎 殿

 日本政府はインドネシア政府に対して「マラッカ海峡のテロ・海賊対策のため」に巡視船艇3隻を、ODAによって無償供与することを決定する、という報道がありました(読売新聞・北海道新聞 2006年6月2日)。私たちは、以下の理由から、この決定は不適切な政策判断であると考え、計画の即時撤回を求めます。

1.「武器輸出三原則」をふみにじるものである。

 政府自身が、巡視船艇は武器であることを認めているように、今回の決定は明らかに海外への武器輸出です。確かに、政府は、2004年に米国ミサイル防衛に関する技術協力で例外とする旨を新防衛大綱の発表に合わせた官房長官談話で、「テロ・海賊対策への支援」に関して、「今後、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念に照らし、個別の案件ごとに検討の上、結論を得る」という表現を盛り込み例外扱いの可能性を示唆していましたが、今回の件では、「例外」とするに当たってのきちんとした説明がありません。また、「武器輸出三原則」は、「戦力を保持しない」ことを定めた日本国憲法の根幹であり、いわば「日本の良識」であり、武器輸出の例外は歯止めがきかなくなる恐れがあり、基本的にすべきでないものと私たちは考えます。

2.「ODA大綱」の原則を無視する決定である。

 ODA大綱には、ODAを軍事的用途に使わないことが明記されています。また、衆議院外務委員会(1978年)と参議院外務委員会(1981年)でも決議され、その原則が確認されています。日本国憲法が求める「平和共存」のためにODAを使うのであって、「軍事的用途に使わない」という原則は、私たち日本に暮らす者が心から受け入れ、ごく当たり前の考えとなった日本の「平和貢献のあり方」です。2003年に改訂された新・ODA大綱では、「平和構築」や「テロへの対応」などの文言が入りましたが、「テロへの対応」であればどのような支援もODAとして許されるということではありません。ODA大綱の四原則にてらして、文民機関に供与されるものであったとしても、それが実質的に「軍」を助けることになったり、紛争を助長する恐れがないか慎重な判断が求められます。きちんとした説明責任とモニタリング体制の確証がない限り、ODAによる武器供与は「ODA大綱」を無視する決定です。また、当然ですが、社会環境配慮ガイドラインなどをきちんと適用して、巡視船供与がどのような影響をもたらすかしっかりと事前にチェックされなければならないことは言うまでもありません。

3.ODAによる軍事援助・軍事化を加速させる。

 「治安対策」という名目で、また使用目的を限定したとしても、「武器供与」は公権力の強化を明確に意図したものです。しかし、いくつかのドナー国は、「治安対策」のためには、公権力の強化よりも、市民社会の強化を通じたガバナンス、公権力の乱用に対するチェックといった民主主義支援の観点から市民社会の支援を重視しています。また、真の「治安対策」のためには、公的機関への機材供与だけでは意味をなさず、技術協力などを通じた司法分野の改革、市民社会による監視機関の整備などが伴わなければ国家暴力の温床となってしまうことは、多くのドナーが認めていることです。これまで日本のODAは、警察活動支援であっても、人権配慮の観点から、一定の歯止めをかけていました。ODAの供与には、明確な理念と原則がなければなりません。それをなし崩しにするような決定は、適切な政策判断とは思えません。今後、今回の決定を機に、理念が原則もないがしろにして、「テロとの闘い」を名目で、直接的武器援助のためにODAが使われるようになっていくことを強く懸念します。

4.DACのODA定義に反し、貧困問題の解決に寄与しない

 国際的に見ても、今回の決定は「開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たるもの」をODAとするという、開発援助委員会(DAC)の定義に反するものです。ODAは貧困問題の解決などに使われるべきものであるというのが、援助国の共通認識です。ましてや、ますます貧富の格差が開き、温暖化など環境破壊が進み、感染症の防止対策も十分でない現代において、今回のような決定は、日本がこうした問題に対して真剣に取り組もうとしていないという誤ったメッセージを国内外に送ることになります。今、国際社会が協調して、真に貧困問題の解決に取り組むべき時であるにもかかわらず、こうしたODA本来の目的と相容れないものに使う途を開くことは、世界第二位の援助国である日本が取るべきリーダーシップの形ではありません。

 以上の理由から、私たちは、日本が武器援助を行い、ODAをそのために使うことに強く反対し、計画の即時撤回を求めます。

呼びかけ団体:アジア女性資料センター/アジア太平洋資料センター/インドネシア民主化支援ネットワーク/ODA改革ネットワーク/関西NGO協議会/債務と貧困を考えるジュビリー九州/さっぽろ自由学校「遊」/名古屋NGOセンター/日本国際ボランティアセンター/ピースボート/ピープルズ・プラン研究所


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