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 静岡空港土地収用委第2回公開審理           かけはし2006.7.17号

約束破りの強行審理に抗議

ガードマンによる威圧と県警の盗撮

「公正・中立」の
かけらもない

 七月四日、静岡空港建設に反対する地権者の土地強奪に向けた静岡県土地収用委員会主催の第二回公開審理が静岡市グランシップで開催された。
 公開審理を前に土地収用裁決申請却下を実現する会は、百二十人が参加した前段集会を行った。交渉役員の増田勝さんは、「収用委は、第一回審理において事前協議を行うと約束したが、それが守られないままだ。第一回審理で起業者(県)の空港計画の経過、任意交渉などについてずさんな説明だっため、私たちは釈明を要求してきた。しかし、具体的な回答がないまま現在に至っている。収用委員会は、求釈明を拒否し、事前協議の約束を破ったままで審理を強行しようとしている。どこに『公正・中立』な収用委の姿勢があるのか。申請却下をめざそう」と訴えた。
 地権者を代表して檜林耕作さんは、「公開審理に駆け付け、ご苦労様です。収用委員会が『公明正大』の態度であることを願っています。皆様とともに頑張りぬきたいと思います」とアピールした。
 阿部浩基弁護士は、「前回の起業者説明に対して求釈明を求めていますが、収用委は拒否しています。事前協議を再度行いますが、かなり流動的な状況です。さらに申し入れをしていきたい」と発言した。
 松谷清県議は、「収用委は、審議を迅速に進めるために、警備のガードマンを導入するということを通告してきた。このこと自身が強圧的に審理を強行しようという収用委の姿勢の現れだ。事前協議を行うという約束を破り、会が要求している起業者(県)の求釈明も拒否という収用委の不誠実な対応を許さず、断固として闘っていこう」と強調した。(なお、グランシップ駐車場に早朝から静岡県警機動隊車2台が駐車していた)
 集会終了後、全体で「静岡空港反対!土地収用裁決申請却下をかちとるぞ!」とシュプレヒコールを行い、会場に移動していった。

不誠実でずさ
んな県の説明

 以下、ドキュメントで報告する。
 9時45分 会は、会場に入場。なんとガードマン20人が収用委席左右に並んでいた。ガードマンを導入した威圧的審理に対して、抗議行動を開始。委員席に詰め寄り、糾弾、糾弾の嵐!
 会代表と収用委との協議が行われるが、決裂。
 10時30分 収用委員長は、審理開催の宣言を強行。同時に、会の仲間たちは、委員席を包囲し、糾弾行動を果敢に展開。
 委員長は、反対派に対して「審理妨害をやめろ!」と「注意」を通告。県職員、ガードマンがスクラムを組んで、対応してきた。
 会の抗議によって、収用委は会が要求していた「求釈明」(任意交渉の実態、調査の実態、土地物件調書の実態、事業計画について)を認めた。そのための会の代表よる質問が行われた。ところが、収用委員長は、地権者の土地の範囲、境界についての説明などについて、「時間がないから、後は書面を提出せよ」と通告し、打ち切りだ。会は、「なにが公開審理だ!ふざけるな」と抗議。
 12時5分 収用委員長は、一方的に「休憩通告」。
 午後1時 審理再開。県は、任意交渉の経過、実態について発言するが、なんと第一回と同様の経過説明を繰り返すというズサンさであった。
 会は、ただちに「前回と同じ内容の説明だ。答えになっていない」と抗議。起業者席に詰め寄る。
 ついに委員長は、「審理妨害」だとして「警告」通告。
 さらに会場の左右2階席に静岡県警によるビデオ盗撮班がいることを摘発。会は、断固たる抗議を開始。さらに収用委に盗撮中止、退席要求、盗撮を認めたことを糾弾していった。
 1時45分 収用委員長は、「休憩」通告。
 2時 審議再開。発言は、会から始まった。阿部弁護士は、@警盗撮中止要求A県の釈明は、前回と同じで不誠実B任意交渉の具体的日時・場所・内容││などについて質問したが、全く答えなかった。
 県は、詳細について書面提出するということで、公開審理を「書面審理」にすりかえていった。収用委も、このような県の不誠実対応を容認した。
 このような収用委の態度に、会の仲間たちは総立ちとなり、「なにが公開審理だ」と、収用委席へ詰め寄って、直接抗議が続く。
 2時30分 収用委員長は、マイクの電源を切っておきながら、アリバイ的に「発言はありませんか」と繰り返す。一方的に、地権者の発言要求なしと判断し、「審理を終了」を通告した。 

「任意交渉」の
検証が必要だ

 収用委員会は、地権者との事前協議を途中で打ちきり、「中立・公正」などの「看板」さえも投げ出してしまった。
 勝手に審理開始を強行し、終了した第二回公開審理の問題点を浮き彫りにしておこう。土地収用法第四七条では、起業者が適切な任意交渉をしなかった事情は却下事由に該当すると定めている。ところが第一回審理において県は、「起業者説明」で、「@共有地権者に対し、事業への理解、協力を得るため、文書による協力依頼や戸別訪問、説明会の開催等を行ってきたが、理解を得られなかった。A立木所有者は、二〇〇五年10月から個別に訪問し、全員との面談交渉に努めた。不在の場合は、協力要請文の差置き、電話などにより本事業への協力要請を行ったところだ」と発言しただけだった。つまり、この説明では、具体性に欠けている。当然、会は、あまりにも大雑把すぎるため、「任意交渉の実態、土地収用法三十五条調査の実態、土地物件調書の実態、事業計画など」について求釈明を要求したのである。
 しかし、収用委は、自ら勝手に決めた審理スケジュールのもとに早く終了したいがために、会の事前要求を無視し、求釈明の回答をさせないまま第二回審理を強行したのである。しかも二十人のガードマン、静岡県警の盗撮班立ち入りを容認し、力ずくで審理を行っていこうとする姿勢をもって、恫喝的に対応したのである。不当な審理運営に対して、抗議する会の仲間たちへの「注意」「警告」「退場」の繰り返しも、その現れだ。
 会の強い要求で県は、任意交渉の実態について説明をせざるをえなかったが、ところが第一回の具体性に欠ける説明と全く同じ内容であった。なぜこの点が重要なのか。
 石川知事は、一九九六年七月二十二日、当時の運輸大臣 に「確約書」を提出していた。「確約書」は、「昨年十二月十九日の設置許可申請以降も、残された未同意地権者全員の同意を得るべく最大限の努力を重ねて参りましたが、誠に遺憾ながら六世帯の地権者及び共有地権者につきましては、現時点において同意を得るには至っておりません。しかしながら、これらの地権者につきましては、これまでにもご報告申し上げましたとおり、必ずしも全員が頑なな態度を取り続けているのではなく、設置許可が得られることにより話し合いの進展が期待されるものであり、また、空港建設に向けて静岡県、地元市町村及び地域が一体となって取り組むことにより、同意取得が可能となるものと確信しております。設置許可を得た後も、貴重な土地を提供していただく未同意地権者に十分配慮しつつ、引き続き諸対策を進める中で誠心誠意交渉に当たること等により、県の責任において最終的には全ての用地を取得してまいることを確約いたします」という内容だ。
 この「確約書」の提出を担保にして、運輸省は、七月二十七日、設置許可処分を出したのである。この任意交渉が本当に「誠心誠意交渉に当たる」形で行われたのかの検証は、重要な論点である。だが、収用委は、地権者の意向を排除し、県と一体となったシナリオ通りのズサン審理、書面審理によってスケジュール消化を押し進めたのである。不当な審理運営を許さず、この事態を全国的に暴露し、厳しく批判していこう。静岡空港反対闘争に全国の力で連帯していこう。第三回公開審理(8月1日)に駆けつけよう。(遠山裕樹)


ごみ政策の大転換に反対
住民の健康と環境を破壊する暴挙を止めよう

 【東京東部】六月二十八日、江東区総合区民センターで「燃やさないで!廃プラスティック―ごみ政策の大転換に反対―」学習会が「市民の声・江東」の主催で行われた。東京二十三区長会が廃プラの焼却を決め、七月一日から四区(品川、大田、杉並、足立)でモデル収集を始めると発表されたため、これに反対するために学習会が行われた。
 中村正子さん(環境ジャーナリスト)が「発生抑制に逆行する『廃プラ焼却』」と題して講演を行った。
 「東京都も区長会もこの大転換の理由は『埋め立て処分場の延命のため』だが、廃プラによる埋め立て量は重量比で約六%、容量比で約八%である。減らすべきは約六割を占める土砂系埋め立て物である」。
 「まず行うべきは、プラスチックのリサイクルシステムづくりであって、廃プラ焼却ではない。廃プラ焼却によって、環境(大気、水、土壌)を汚染する。その結果、ぜんそくなど呼吸器疾患、アトピー、不妊、子宮内膜症など生殖器疾患、がんの発生など健康への影響が心配される」。
 「廃プラ焼却の問題はそれに留まらず、焼却することで、大量生産・大量消費システムを持続可能な社会へと転換するために不可欠な企業のプラスチック製品の発生抑制がまったく働かなくなることだ」。
 この学習会には多くの清掃労組員が参加した。収集部門の組合員は「三十年前からごみ分別を行ってきた。小学校でリサイクルの推進教育を行ってきている。廃プラの焼却は、次世代に伝えることを否定するものであり、燃やせないものを燃やすことによって環境破壊になる。私たちの働く現場にも何の説明もなく決められた」と今回の決定を批判した。さらに、清掃工場で働く組合員は「生ごみの中にも廃プラも混じっているが焼却している。八百五十度の高温で二秒間燃やし、その後フィルターなどを使いダイオキシンなどが出ないように万全の対応をしている。しかし、再利用できるものを燃やすのはおかしい」と指摘した。
 二十三区の区議会議員有志らでつくる「23区民自治の会」で焼却処分の中止を求める申入書を区長会などに提出する活動をしてきた江東区議の中村まさ子さんは「二十三区のごみは減少しており、三年前に三つの区での清掃工場建設をやめた。江東区は二十三区全体の可燃ごみの約二一%を焼却している。廃プラを焼却することになると、江東区で環境被害が広がるのが心配だ。この問題を訴えるチラシまきをスーパーの前でやったら『今までごみを減らし、リサイクルのために努力してきたのに、焼却なんていやだ。焼却よる健康被害がこわい』という女性たちの大きな反応が返ってきた。区長会は議決権はなく、区議会でもなんの相談もなく決めた。さらに、廃プラ焼却推進の背後に、@清掃一部事務組合と東京ガスが出資して合弁会社を設立する。そこで、燃やす燃料として廃プラが必要となっているのではないかA廃プラのリサイクルが進むとプラスチック工業界が生産をおとさざるをえなくなる――という理由があるのではないか」と指摘した。
 参加者との意見交換で、@横浜市で今まですべて燃やしていたごみを分別収集することによって、七つあった清掃工場の炉を二つ止めた。その結果周りの住民のぜんそくがものすごく減ったA江東区が七月一日に説明会を開くので、ここに参加して意見を出していこうB焼却しても大丈夫だという意見があるが、チェックの物質が限られている、高温で安定している時のデータしか計られていない。止めて立ち上げる低温の時が、危険物質が放出されるのではないかC五月二十三日の衆議院での質疑で、東京二十三区の廃プラ焼却について、環境省は廃プラはリサイクルをやっており、燃やすのは最後である。東京都の焼却は問題があると答弁したD目黒では反対の署名運動を行っている。八月十八〜十九日に目黒清掃工場のすぐ近くの区民センターで反対の集会を開く、など反対運動をつくっていこうとする意見が多数出された。廃プラの焼却を止めていこう。     (M)

解説
廃プラスチック類の焼却処分
すべては産業界の利益と焼却炉ビジネスのため

 四月十七日、東京二十三区清掃一部事務組合は二十三区内で発生する廃プラスチック類を焼却処分する「サーマルリサイクル」の実施スケジュールを発表した。
 〇六年度に品川、大田、杉並、足立の四区でモデル収集を行い、〇七年度から区域を拡大、〇八年度に全区で本格実施する方針。対象は廃プラスチックのほか、ゴムや皮革類。東京二十三区が、プラスチックゴミを焼却することに方針転換した。しかも、こっそりと決めた。また焼却熱で発電するので「お得」というイメージでごまかそうとしている。「同組合の試算によれば、サーマルリサイクルが実施された場合、一般廃棄物の年間埋め立て量は約六割削減でき、焼却熱を用いて発電した電力を売り、五億円以上の利益が見込めるという」(毎日、4月18日朝刊)。
 東京では、プラスチックを「燃やせないゴミ」として三十年以上分別してきた。こうした住民の日々の努力を踏みにじる方針だ。
 東京二十三区では不燃ゴミは、東京湾に埋め立てている。埋め立て地の寿命を伸ばすためとされている。
 しかし、本当のねらいはプラスチック産業の維持拡大と焼却炉ビジネスのためだ。都内の清掃工場は今、ゴミ不足で困っている。巨大な焼却炉は、常にゴミを燃やし続けなければならない。しかし、景気後退やリサイクルの徹底で、燃やすべきゴミが足りず、休んでいる工場が少なくない。
 ゴミの自区内処理のため、二十三区のほとんどの区に巨大な清掃工場が建てられた。建設には、一基数百億かかる(日本最大規模の新江東清掃工場の建設費は八百九十七億円、江東区の一般会計予算は千三百億円。江東区民の税金だけでは建設できない!)。
 また巨大焼却炉メーカーは数社の寡占状態で、談合事件も起きるほど。自治体最大の公共事業だ。重金属やダイオキシンを撒き散らす、廃プラ焼却を阻止しよう。        (T)


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