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「不起立」処分をはねかえせ               かけはし2006.6.5号

改憲と一体化した「愛国心」強制の教基法改悪案を通すな

大阪・強制反対ホットラインが集会
教員と子どもたちをむしばむ「日の丸・君が代」強制

 【大阪】五月十四日、「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪のまとめ報告集会が開かれた。会場の大阪国労会館には、教育労働者、市民など八十人が集まった。この集会は、ホットライン活動を締めくくるものとして毎年開催されてきており、今年で七年目を迎えた。今回は、講師に野田正彰さん(関西学院大学教員)を迎え、各地域・団体からの発言、教育基本法改悪反対のアピールなどが行われた。
 集会は、ホットライン事務局の寺本さんの司会で始められ、まず黒田伊彦さん(ホットライン事務局)が開会のあいさつを行った。続いて、同じくホットライン事務局の伊賀さんが7年目を迎えたホットライン活動について、相談内容やそれに対する取り組み、ホームページを通じたアンケートの結果について報告した。
 集会メインである野田さんの講演は「『君が代』強制が教職員と子どもたちをいかにむしばんでいるか」というテーマで、約九十分間にわたって行われた。野田さんは精神科医の立場から、「子どもたちに対する教育の実態」「教員のおかれている状況」「教育基本法の改悪」の三点を実態調査などをふまえて、わかりやすく説明された。(講演要旨は別掲)

拒否された卒業
証書の西暦記載

 休憩の後、各地域・団体からの報告に移り、まず枚方市立小学校での「元号記載」卒業証書に反対するとりくみ、および統廃合された府立高校最後の卒業式での生徒たちの不起立について、松田さんと藤岡さんがそれぞれ保護者と教員の立場から報告を行った。続いて、教育合同労組門真守口支部の高田さん、豊中養護学校・東豊中高校「日の丸・君が代」処分を撤回させる会の田中さん、中野さん、高槻市立中学の元教員である松岡さん、大学教員の藤井さんなどが、それぞれの活動について報告した。
 松田さんは、自分の子どもの卒業証書について、生年月日の「西暦記載」を学校に求めたにもかかわらず校長が頑なに拒否したこと、その背景には枚方市教委が事実上「西暦記載」を認めない「指導」を行っていることを明らかにした。その上で、まだ受け取れないままになっている卒業証書を「西暦記載」で発行させるように引き続き取り組んでいきたいと決意を述べた。また、藤岡さんは、今年で最後の卒業式となる府立高校で、卒業生たちが九割以上「君が代」斉唱時に自発的に不起立したこと、それに対して出席していた教育長が「祝辞」の最後に、「国歌斉唱時には起立、脱帽が常識である」と唐突に発言し、多くの保護者、卒業生から「せっかくの卒業式を台無しにした」と反発の声が寄せられたことなどを報告した。
 集会の最後に、ホットライン事務局の井前さんが教育基本法改悪の切迫した情勢について参加者に訴えた。       (T)

野田正彰さんの講演から
行政が学校にしかける人権侵害の拷問



学校の「異常」な
までの「明るさ」

 大阪でホットラインが七年間にわたって地道な活動を続けていることに敬意を表したい。子どもによる殺傷事件が起きると、「命を大切にする教育」が強調され、教員に対して「『心のノート』の使用状況調査」や「子どもの対人関係を細かに調べる調査」などが押し付けられている(長崎県など)。まさに教員に対するイジメである。その中で先生が自分の担任クラスの教室で自殺するという事件も起きている。
 最近の学校については「異常に明るい」という印象を持っている。学校は過剰照射とも言うべき明るさの中で、子どもたちがホッとできる場がなくなっている。人間は私的空間を奪われ、他者の視線にさらされ続けると、自分の心の中に「幻想のプライバシー空間」を作ろうとする。今の子どもたちは、学校で生きていく術として、自分の心の中に空想の空間を作っている。すべてを照らされた子どもたちにとって、パソコンを通じての交流が唯一の支えになっている状況もある。
 政府の調査によっても、子どもたちには極端に幸福感が少ない。親たちが「社会は良くならない」と感じているのに、子どもたちには「明るい子どもでいなさい」と言うという矛盾した現実の中で子どもたちは生きざるを得ない。こうした現実を自民党文教族や文部官僚たちは知らないか、知っていても直視しようとしない。そして、道徳と心の問題として解決しようとしているが、現実はそんなところにはない。

個人の自立、個の
確立を破壊する

 一方では、教師が学校で働き続けられない現実が作り出されている。教育行政の言う通りになる人間に教育をさせようとしてきたツケが、教員を子どもに向き合わなくさせ、書類作りに追われる状況を作り出している。
 ある中学校では、十五ページ、四百八十項目にわたる通知表がある。とても教員一人では作れないので、生徒に自己評価をさせている。中には、書くと吐き気がする、書けないという生徒もいる。その子どもたちは「うまくうそをつく訓練をさせられている」と感じている。また、広島では定年前退職や精神疾患による休職が急増している。学校が教育のできる場でなくなってきて、先生は加害者としても追いつめられ、子どもたちはうそを強いられながら生きている。
 もう一つ教員を追いつめているものが「日の丸・君が代」である。東京では、不起立を宣言した教員を校長が「学校の名誉」「家族への責任」などをあげて攻撃し、追いつめられて受診した都教委指定の病院では、医師が「君が代に反対するなら、辞めるか、起立するか、薬を増やすか」のいずれかを選ぶよう強制した実態がある。行政権力によって、教員に対して人権侵害の拷問が行われている。そのことをマスコミや社会は無視するだけでなく、権力に扇動されて教師という職業全体に攻撃をかけてきている。
 戦前教育の中では、天皇制のもとで「感じることのできない人間」を作り出した。現在においても、多くの教師が抑圧を感じることができないでいる。だからこそ逆に、「君が代」強制に対して抑圧を感じ、精神的な症状が出てくる人に自立した社会の芽生えを感じることができる。自立した人間として生きようとする、そのことを子どもたちに伝えようとする教員がこういう症状を示すのであり、それは人間として教師として生きていけないという身体的精神的訴えに他ならない。
 教育基本法は、見過ごされがちだったが、徹底して個人の自立、個の確立を要求してきた。「公」の名のもとに個人を抑圧するのを許さない精神で作られた。今日の改定論議はこうした教育基本法に対する攻撃である。(発言要旨、文責編集部)


立川市議会議員選挙(6月18日)
大沢ゆたかさんの3選で「環境・平和・人権」の政治を


 六月十一日公示、六月十八日投票という日程で、東京・立川市議会選挙が行われる。この選挙に大沢ゆたかさん(無所属)が、三選をめざして立候補する。
 大沢ゆたかさんは、二十八年前に障がいを持つ人たちの自立生活の支援介護を始めて以来、立川駅のエレベーター設置運動など障がい者運動に取り組んできた。それとともに、湾岸戦争や基地に反対する活動、ゴミ問題・環境問題にも取り組んできた。
 一九九八年には、長年にわたって反戦市民派議員の草分けとして立川市議会議員を務めてきた島田清作さんの要請を受けて、市議会議員に初当選し、現在まで二期八年間、多くの市民や障がい者の声を議会に届け、多くの実績を積み上げた。ホームレスの人びとへの支援にかかわり、立川自衛隊監視テント村の反戦ビラ弾圧に対しても救援会の代表として被告たちとともに闘っている。
 大沢さんは「格差よりも公平を!」を掲げ、福祉・環境・平和のために活動する貴重な議員である。五月二十一日には、東京HIV訴訟原告で「人権アクティビストの会」代表の川田龍平さんを招いて「いのちと人権を守る」トーク集会を行った。この集会で川田龍平さんは、大沢さんとともに地球的観点に立って「環境・平和・人権」を守る政治を作りだしていこうと訴えた。立川自衛隊監視テント村の加藤克子さん、在宅障害者の福祉を考える会、国立市議の重松朋宏さんたちも大沢さんを激励する発言を行った。
 大沢ゆたかさんの三選をかちとることは、今日の改憲・格差社会の流れにくさびを打ち込み、住民自身の自治によって連帯にもとづく真に平和で公正な社会を作り出していこうとするために必要な挑戦である。
 しかし今回の市議選は、定数が三十二から三十に削減され(大沢さんは前回三十位で再選)、きわめて厳しい闘いが予想される。カンパをふくめぜひ読者の皆さんの支援をお願いします。     (K)

連絡先:大沢ゆたかと共に市政をかえる市民の会(代表 島田清作)/東京都立川市高松町2―19―1(立川駅北口よりバス、高松町2丁目下車すぐ)。TEL042―525―8637 FAX042―525―8733
カンパ送り先
郵便振替口座:00190―8―37150(市政をかえる会)           


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九条は宝「あつぎ・九条の会」結成集会

    結城 守保


 四月七日、元市長や三人の市議を含む百三十二人の呼びかけによって「あつぎ・九条の会」が厚木文化会館で結成されました。参加者は二百九十人でした。
 開演は午後六時からで第一部は歌と語り、ギター奏者でシンガーソングライターの斉藤あきらさんの一人舞台でした。第二部は主催者による明るい経過報告。休憩の後、第三部は九条の会事務局長小森陽一さん、「九条、戦争と平和の分岐点」と題して憲法をめぐる今日の状況をユーモアをまじえ語った。
 第一部の斉藤あきらさんは六十一歳の満州生まれです。戦後同世代のすべての人々が経験した貧困の日々を体験しました。さらに悪いことに大人になって眼を悪くしました。
 だが現在、厚木市視覚障害者協会幹事として頑張っているとのことです。「あなたと歩いた人生」と「今日もどこかで」他、すばらしい演奏してくれました。語りでは「平和が大切」と言っていました。
 第二部の経過報告では@みんな素人ですA事務局会議みんな`戦争の危機aを感じているBカンパが多く集まっているなど元気一杯の報告でした。
 第三部の小森先生の話は講演後、会場のあちこちで`今日の話し良かったaとの声がありました。
 講演のレジュメを書いておきます。
 @自民党「新憲法草案」のねらいと本質A九条二項 改悪はアメリカの押し付けB国連憲章五一条に基ずく「自衛」C二〇世紀の戦争と二一世紀の戦争D二一世紀の世界と日本国憲法第九条、これは一つの論文でした。
 私の感じた点は二点です。一つは、九条一項の平和の希求と二項の交戦権についてです。二つ目は、イラク派兵反対を語ったところでした。前者では一九四五年国際連合憲章第一条と第二条を当日のレジュメを確認しながらわかりやすく説明してくれました。
 イラク派兵反対では元郵政大臣・元防衛政務次官の箕輪登さん(一九二四年生まれ)の違憲訴訟が有名です。箕輪さんが地元北海道で立ち上がった時、道内の弁護士百六人も協力を申し出たと言います。この様子を感動もって話してくれました。
 こうして「あつぎ・九条の会」の記念集会も午後九時近くまでなってしまった。閉会のことばがちょっと長すぎたなど失点もありましたが大成功でした。
 年配者が多かったせいか、小森先生が会場出口で一人一人に握手をしている姿がとても印象的でした。(4月9日)


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