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                            かけはし2006.6.26号

どこが「自立支援」なのか!

障がい者自立支援法がもたらしたもの

重度であるほど増える負担額はたらく場で施設利用料徴収

手元に残るの
は一日八百円

 障がい者の猛反対を押し切り、昨年十月に国会で可決成立した障がい者自立支援法(以下支援法と略す)が四月に施行された。ただし、今回始まったのは、自己負担の徴収であり、新サービスは十月より開始という二段階スタートになっている。
 では四月から九月までは、どんなサービス体系なのかというと、三月まで行われていた支援費制度が半年間延長されることになる。そして、その間に新しい障がい程度区分の認定作業(介護保険で言えば要介護認定)が行われる仕組みとなっている。
 まずこの自己負担(サービス利用の1割負担)が障がい者の生活に襲いかかった。施設で暮らしている障がい者は、七〜八万円の障がい基礎年金から一割負担(食費・光熱費は別途かかる)を支払うと、平均二万五千円しか手元に残らない。自由に使えるのは、一日八百円に過ぎない。これでは、将来の自立に向けた貯金などできるはずがない。
 地域で生活している障がい者は、もっと大変だ。日常生活に常時介助が必要な重度障がい者は、たくさんの介助サービスを利用しなければならない。
 使えば使うほど自己負担が増えるわけであるから、重度障がい者ほど打撃は大きくなる。一応三万七千六百円という負担の上額が設定されてはいるが、介助を受けながらトイレに行く、着替えをするということに、なぜこれほどの負担をしなければならないのか、という怒りの声が沸き起こっている。

給与五千円、
利用料二万円


 支援法は、通所授産施設と呼ばれる障がい者が「福祉的就労」(注)する場にも「利用料をとれ」としている。
 会社の設備を使わせてもらって働いているからと、労働者が会社に利用料を払う、などということがあるだろうか? しかも給与五千円、利用料二万円という世界なのだ。
 このような暴挙に、愛知県にある社会福祉法人AJU自立の家が経営するわだちコンピュータハウスの利用者が、自己負担の拒否に立ち上がった。
 厚労省大臣へ送った要望書は言う。「今回の制度改革は、利用者負担に耐えられる、お金持ちの人たちのための授産施設への転向と判断せざるをえません。こんなことはあってはならないし、本末転倒と考えます。負担増の前に退所せざるを得ない仲間が増えてしまってよいのでしようか。彼らが家庭に引きこもってしまってよいということですか。こうした事態を厚労省は放置するのですか」。

無理心中に追い
込まれた悲劇


 支援法施行を前にした三月十一日、福岡市で母親が重度身体障がい者の娘の首を絞め殺害、自分も腹を刺し無理心中をはかるという事件が起きた。
 母親は一命をとりとめたが、周囲には「自己負担を払っていけない」と話しており、前途を悲観した発作的な行為であると思われる。
 自己負担に耐えられない家庭では、介助サービスの利用を断るケースも出始めている。その結果心身とも疲れ果てた、膨大な無理心中予備軍が全国各地で生まれつつあるのだ。

介護保険見直し
と「介護難民」


 支援法と同じく四月に行われた介護保険の見直しは、「介護難民」という新語を生み出した。
 国は増大する介護保険費用を何とか抑制しようと、次のような「仮説」をひねりだした。
 @利用急増の大半は、事業所が軽度の要介護者に過剰なサービスを提供したり、利用者を掘り起こして発生したのだ。
 A家事援助をたくさん入れたケースほど、要介護状態が悪化している。これは、本人の自立支援になっていない。費用対効果の点で大問題だ。
 Bケアマネと訪問介護事業所を併設する所が、ケアマネを営業社員化し、自らの訪問介護事業にどんどん仕事を流しこんでいる。
 確かにこのような事業所は存在する。しかし、介護を市場化すれば、このような事態はある程度予想されたことだ。国は、上記のような営利至上主義の事業所の極端な例を利用しながら、抜本的見直しが必要というキャンペーンを張った。今回の見直しの特徴は、介護の市場化の修正ということにある。
 話をもとにもどそう。主要な変更点は、第一に軽度者(要支援1、2)の方には、利用上限額を大幅にカットしたうえで、訪問介護の利用を制限、通所リハビリを主なサービスとした(先の@Aへの対抗手段として)。
 第二に、ケアマネが作成できるケアプラン作成に三十九件という上限を設定し、それを上回ると、ケアプラン作成料は四割カットされるという仕組みを導入。また要介護2までは一件一万円、要介護3以上は一万三千円という差額を設定した。第三に、同一事業所に全体の九〇%以上サービス提供をふった場合は、ケアプラン作成料を二割カットすることとした(先のBへの対抗手段として)。
 この結果、訪問介護事業所にとって要支援の方は「収益の上がらない」ことになり敬遠されてしまう。またケアマネも、どうせ三十九件までしか受けられないのなら、作成料のいい要介護3以上の方しか受けないということになってきている。このようなケアプランを引き受けてくれるケアマネが見つからない、ヘルパー派遣してくれる訪問介護事業所が見つからないことを指して「介護難民」というのである。
 厚労省官僚の本音は「軽度者(要支援)を介護保険に組み込んだのは間違いだった」ということに他ならない。そして、今回の見直しによって、介護保険利用者の四割を占める要支援者の制度からの追い出しをはかっているのだ。

生存権脅かす社
会保障切り下げ


 社会保障の切り下げは、とどまることを知らない。自民党歳出改革プロジェクトチームは、介護保険料を二割に引き上げることの検討に入った。
 また、医療保険適用の療養病床を二十五万床から十五万床に削減し、介護保険適用の療養病床十三万床を廃止することを盛り込んだ医療制度改革法案が今国会で成立した。
 国民の生存権を保障する憲法二十五条は、ますます空洞化の危機に瀕している。     (赤井岳夫)

 注 福祉的就労:障がいが重く、生産性が低いため、最低賃金制度を大きく下回る賃金しか払えないので、一般就労と区別してこのような表現が生み出された。給与(工賃とよばれる)は平均月五千円程度である。


今こそ共同の力で争議解決を
国鉄労働者一〇四七人の解雇撤回を求め連続行動を実現

日比谷集会に3000人
未提訴の仲間は地位保全訴訟へ決断を


 六月十六日、日比谷野外音楽堂で「今こそ解決を!共同の力で!1047名の争議解決を求める6・16集会」が国鉄労働組合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争に勝利する共闘会議、国鉄闘争支援中央共闘会議の四者の主催で開催され、三千人が集まった。
 最初に主催者を代表して国労佐藤勝雄委員長があいさつを行った。
 「六月十八日に、ILOの六度目の『人道的解決、早期解決を求める』という勧告が出された。9・15鉄建公団判決以後、2・16集会によって争議団の団結ができ、総決起体制が確立できた。政府に話し合いによる解決を求めことと裁判闘争の前進を確認したい。国労としては早急に訴訟準備をしていき、七月全国大会で決めたい」。
 次に、三つの団体が決意表明した。建交労佐藤陵一委員長。「この間、二つの闘いが前進した。それは、関係当事者の団結であり、広範な共同である。公正で納得のいく解決を求める」。
 国鉄闘争に勝利する共闘会議の二瓶久勝さん。「不当労働行為を認めた9・15判決は共闘会議をはじめとする闘いによって勝ち取ったものだ。そして、この結果総団結で解決する動きが広がった。六月十二日から十六日まで主催四団体で国交省や鉄建公団本部への行動を行った。年内解決に向けて闘うが、すぐに解決できるわけではない。大衆運動をさらにいっそう強固にして闘わなければならない。『裁判については早急に準備し、大会で決める』という国労佐藤委員長の発言を信用したい。一〇四七人の当事者が中心になって解決していく」。国鉄支援中央共闘の中里忠仁さんも、支援を強化すると決意を述べた。
 続いて、現地からの報告を北海道と九州の仲間が行った。
 小林雪夫さん(北海道平和フォーラム)は「北海道には、一〇四七人のうち四百五十三人の被解雇者がいる。そのうちすでに十七人が亡くなった。五月八日函館を出発して北見までキャラバンを行い、六月四日には千人の集会を行った。教育基本法改悪反対運動と連携しながら、自治体での意見書採択を行っていきたい」と報告した。山崎博さん(鹿児島県平和運動センター)も九州各県でのキャラバン・集会を行い、地方から自治体決議をあげて、解決に向けてがんばると報告した。
 次に、酒井直昭さん(鉄建公団訴訟原告団長)は「いまだ、裁判に踏み切っていない人たちは地位保全の裁判をやってほしい。そうすれば、いま行っている三つの裁判が前進する。失った二十年を取り戻すためにも勝利にむけてがんばりたい」と訴えた。
 建交労鉄道本部福岡孝洋委員長が閉会のあいさつ、神宮義秋さん(国労闘争団全国連絡会議議長)が団結がんばろうを行い、銀座を通るデモに出発した。2・16で成立した1047人の団結が今後、国労中央が損害賠償ではなく、地位保全の訴訟に踏み切るかどうかが、運動のさらなる前進のカギを握っている。政府・鉄建公団は解雇を撤回せよ。争議の全面解決をはかれ!       (M)


請願受け取り拒否糾弾
話し合いを求め鉄道運輸機構に座り込み

 六月十二日から十六日にかけて、国鉄労働組合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争に勝利する共闘会議、国鉄闘争支援中央共闘会議の四者が、一〇四七人の旧国鉄による不採用事件の「解決交渉テーブルの設置」を求め、政府、国土交通省、鉄道運輸機構、清算事業本部に対する波状的な行動を行った。
 六月十二日、鉄道運輸機構本部(横浜市馬車道通り)に対して座り込み、請願行動を二百十人で行った。午後一時より国鉄共闘会議の二瓶議長が主催者のあいさつをし、国労本部吉田書記長、建交労鉄道・高橋書記長もあいさつをした。
 鉄建公団原告団酒井団長は「9・15の判決以後も鉄道運輸機構に対して解決のテーブルにつくように申し入れを行ってきたが、一切取り合わない姿勢を示してきた。1047名は訴訟の当事者だ。われわれを無視することはできないはずだ。今後、より強力に運動を進めるためにも未提訴の人たちは裁判に取り組んでほしい」と訴えた。全動労争議団、国労闘争団全国連絡会議から決意表明があった。
 午後三時から、請願法に基づき五十人の仲間が請願要請のために、全員が受付のある二十四階に上がり約一時間半にわたって「請願を受けろ」と要請した。税金が投入されている鉄道運輸機構には、請願を受ける義務があるにもかかわらず、受取りを拒否し「関係ないから新橋に行ってくれ、業務に支障が出る。何時何分」と警告・威嚇するような態度に終始した。
 全員が請願用紙を提出して請願要請を終了した。あきれたことに、その後、総括集会時に請願用紙を返しに来る不当な態度をとったが、参加者の抗議で鉄道運輸機構側は請願を持ち帰った。星野共闘会議副議長の団結ガンバローで約三時間半の行動を終了した。こうした当然の争議行動にも警察が何かと弾圧する機会をうかがった。全員のシュプレヒコールで抗議した。

 六月十三日、約百人の闘争団、原告団、弁護団、支援者が、国土交通省に宣伝座り込みと請願要請行動を国交省六階の鉄道局に入室して「請願法に基づく要請」を行った。鉄道局の担当者は、当初「受け取れない」といっていたが、フロアーの中で要請書を受け取る約束をした。闘争団が一人一人、請願を読み上げて訴えた。六月十六日、清算事業本部前に座り込み行動を行った。6・16日比谷野音全国集会に向けて大きなはずみになる連続行動であった。       (M)


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