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改憲のための国民投票法はいらない!          かけはし2006.5.29号

終盤国会を包囲する連続行動ですべての悪法をつぶせ

5・3集会実が銀座をデモ
九条破壊のねらいと直結した与党案提出に抗議を

修正案は世論の
圧力の結果か?

 五月十九日、自民、公明両党は与党協議会を開催し、改憲のための国民投票法案を民主党との共同で提案することを断念し、「憲法改正手続法案」(国民投票法案)を五月二十六日にも独自に国会に提出することを決定した。与党は独自案の提出を通して民主党にも対案提出を迫り、その上であらためて修正を積み重ねる意向とされている。
 この間「真っ当な国民投票のルールを作る会」を結成し、市民の側からの「国民投票法案作り」を急げと主張してきた今井一氏は、「与党案は徐々に是正され、いくつかの項目を除けばいまや民主党案、市民案との間に大きな違いはなくなっている」(「週刊金曜日」5月12日号、「これが最新の『国民投票法案』だ」)と主張するまでになっている。このように述べることによって、今国会中に与野党の歩み寄りによる「改憲国民投票法案」を成立させようとする動きにわれれわれは反対である。
 なによりも「過半数」の基準を有権者数とするのか、総投票数とするのか、それとも与党案のように「有効投票総数」としてごく少数の支持でも改憲を成立させるのかという問題がある。自公案では白票は有効投票ではないとして「過半数」の分母には入れず、最低投票率規定も採用しない。つまり有権者の二〇%程度の賛成で、改憲が成立する可能性も出てくる。さらに有権者を二〇歳以上に限ったこと、「定住外国人」の投票権の切り捨て、公務員・教員の「地位利用」を名目とした弾圧、放送・新聞などでの宣伝に「政党等」に限って国費を支出するなどの問題については、民主党案もふくめて多くの異論が出されている。
 国会での発議から投票までの期間を「六〇日から一八〇日」とする期間の短さも指摘されている(長谷部恭男『憲法とはなにか』〔岩波新書〕は、投票が「短慮や情緒ではなく、十分な情報と熟慮に基づいて行われるようにする」ために、発議から投票まで二年以上の期間を置くことを提案している)。
 もちろん「国民投票法案」の早期提出・成立の目論見が、「九条改憲」を軸に、アメリカのグローバルな「対テロ戦争」戦略に自衛隊を実戦的に動員するための思惑と不可分一体であることが根本的な問題である。「国民投票法案」の上程は、決して改憲の是非とは無関係な中立的な立憲的措置として強弁することはできない。九条改悪という権力サイドの政治的意思と切り離して、「手続き法案」としての「国民投票法」の必要性を主張することほど欺瞞的なことはない。それは米軍再編、教育基本法の改悪、共謀罪の制定と一体なのである。

フランスのよう
に闘えば勝てる

 五月十九日、東京の日比谷野外音楽堂で「憲法改悪のための国民投票法はいらない 5・19集会」が開催され、二千二百人が集まった。のむぎ太鼓の演奏の後、キリスト者平和ネットの大津健一さんが主催者あいさつを行い「九条はたんに『日本の九条』ではなく『アジア・世界の九条』だ。改憲の意図に貫かれた国民投票法案反対の声を強めよう」と訴えた。
 政党代表として、社民党の福島みずほ代表と共産党の市田忠義書記局長が発言した。福島・社民党代表は「今日やると言われていた共謀罪法案の衆院での強行採決はできなかった。小泉内閣の暴走を止めさせるために一人ひとりが働きかけよう。小泉首相は『小さな政府』と言いながら『大きな軍隊』を作っている。福祉を切り捨てた上に大きなムダ遣いをしている」と糾弾し、さらに「愛国心」を強調する野党・民主党の教育基本法改悪案についても厳しく批判した。
 市田・共産党書記局長は、「ライブドアも耐震偽装事件もすべて教育のせいだ、として強行される教育基本法の改悪は、戦争をする国、弱肉強食社会を支える人づくりのためだ。国民投票法案を制定しないのは『立法不作為』だなどと言われるが、国民投票法案がなかったことで権利を侵害された国民がいたのか。改憲勢力を包囲する闘いを」と訴えた。
 次に教育基本法改悪、国民投票法、共謀罪に反対する各分野からの発言。小森陽一さん(教基法の改悪をとめよう全国連絡会)は「教育基本法の改悪案は、憲法を否定し、国策教育を押しつけるためのものであり、それは地域と住民への強制を伴っている。いまこそすべての人々が同じ目標を共有し、主権者としての意識を発揮し、フランスの労働者・学生がCPEを撤回させたように、ノーの声を国会に突きつけよう」と熱烈に訴えた。
 内田雅敏さん(日弁連憲法委員会)は、同時刻に弁護士会館で五政党の代表を招いて国民投票法案についてのシンポジウムを開催していると紹介し、「日弁連にはさまざまな立場の人びとがいるが、平和主義と人権の破壊に対しては全体として反対している。憲法から平和的生存権を剥奪する攻撃を許さない」と語った。グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳さんは「政府に文句を言わせない、というのが共謀罪の本質だ」と喝破し、NGO・NPOの百九十二団体が「共謀罪にSAY NO!」キャンペーンを展開していることを報告した。
 集会の後、参加者は銀座を通り、東京駅前を経て常磐橋公園までのデモを行った。       (K)


共謀罪めぐり緊迫した攻防
高まる反対世論に押されて採決強行を断念


 与党は、衆院法務委員会で審議している共謀罪新設法案を四月二十八日に採決すると通告してきたが、反対運動の高揚によって見送った。以降、共謀罪の危険性、人権弾圧などの性格を暴露する各社新聞が特集記事を掲載、テレビでは特別番組が次々と報道された。与党法務委員への抗議FAX、メールが殺到した。そして、五月十六日、十九日も立て続けに採決強行を策動したが、いずれも見送るしかなかった。
 十九日の採決中止は、報道によれば小泉首相が細田国対委員長に密かに採決をするなと指示をし、斡旋を河野衆院議長に依頼したという。河野衆院議長が自民党、公明党、民主党の国対委員長と会談し、「共謀罪は国民の一大関心事となっている。強行採決は好ましくない」として、採決の見送りを求め、与党は議長あっせんを飲むことによって、とりあえず強行採決を見送ったのである。
 五月十九日、衆院議員面会所で報告集会が行われた。発言は、衆院法務委員会で奮闘している保坂展人衆院議員、共産党の塩川鉄也衆院議員、アムネスティ・インターナショナル日本、反差別国際運動から報告と廃案にむけた決意表明が続いた。
 海渡弁護士は、法務委員会の採決強行の阻止が運動の包囲によって実現したことを参加者全体で確認しつつ、「しかし、最後の大逆転の可能性が浮上してきている。与党が、民主党案を丸飲みする可能性があると言うことである。民主党案と与党案の間のハードルは高い。@対象犯罪を600から300に半減する。A犯罪の越境性を要件に盛り込む。B密告奨励の自首減免制度を原則として削除する。これまで、与党は@Aは条約の一部を留保しても不可能と説明してきた。そういう意味では、与党がこの民主党案を丸飲みすることはできないと見られてきたし、いまも普通の見方ではそうなるだろう。そうなると、大幅延長がない限り、今国会の会期中の成立は困難で、継続審議にしても成立のメドはないこととなる」。
 「この展開では、われわれの大勝利となるのだが、そうならない展開も残されている。与党側がこれまでの説明を突然反故にして、民主党案を丸飲みするというウルトラCが示される可能性である。そうなると、一気に国会が正常化され、修正案が成立するという事態もありうる」と危険性を指摘した。
 さらに「あくまでも国民世論の大勢は明らかに共謀罪法案の廃案を求めている。民主党は、将来の禍根を残さないように慎重なうえにも慎重な審議を求め続ける姿勢を貫いて欲しい」と強調した。
 参加者は、海渡弁護士の問題提起を受け止めつつ、来週も強行採決を許さない態勢を維持していくことを確認していった。 (Y)


改悪入管法の成立糾弾!
「テロ対策基本法」へのステップだ


 五月十七日、参院本会議でテロ対策の強化と称して治安弾圧強化の一環である改正入管法が、与党などの賛成多数で可決、成立した。われわれは、入管法改悪を糾弾する。与党は、人権破壊・差別・排外主義に満ちた悪法であるにもかかわらず、三月七日に閣議決定し国会に提出した。さらに四月三十日に衆院本会議で強行採決し、参議院法務委員会に移ってからも、超スピードで委員会採決を強行してしまったのである。
 入管法改悪は、小泉政権が九・一一米同時テロ後、「テロの未然防止に関する行動計画」(二〇〇四年四月)を策定したことの具体化である。法案は、@日本に入国する十六歳以上の外国人に、電磁的方式によって指紋採取や顔写真撮影を行い、個人識別情報を提供させるA指紋情報・顔情報という生体情報をコンピュータに登録し犯罪捜査などに利用するBIC在留カードの取得及び携帯の義務化C勤務先・学校等の受入機関の報告義務D情報の総合管理機能の充実・強化E旅館業者による外国人宿泊客の本人確認の強化F関係省庁の協議により認定されたテロリストの上陸拒否・退去強制││などを骨子としている。
 外国人監視・管理をしながら、その対象範囲を日本市民に対しても広げていくこともねらっている。現在、衆院法務委員会で審議されている共謀罪新設法案とセットで成立させ、後に「テロ対策基本法」(「テロ関連団体」や「テロリスト」と認定した組織と人物に対し、@一定期間の拘束A国外への強制退去B家宅捜索C通信傍受D逮捕令状なしで逮捕ができる)として結実化させようとしているのだ。入管法の改悪糾弾!超監視・管理社会を許さない!        (Y)



採決強行に抗して緊急集会
排外主義に貫かれた人権無視を許さない



予断にもとづく
テロリスト対策

 五月十二日、アムネスティ・インターナショナル日本、移住労働者と連帯する全国ネットワークは、東京・水道橋の在日韓国YMCAで「外国人『オール管理』の入管法改定案にNO! 5・12緊急集会 外国人差別から全市民監視」が行われ、百五十人が参加した。集会は、入管法改悪法案が五月十六日にも参院法務委員会採決が強行予定というなかで、廃案を求めてあらためて改悪法案の問題点を浮き彫りにしていった。
 旗手明さん(自由人権協会)は、「テロ対策の基本的な流れと問題点、国会審議の分析と課題」について報告し、とりわけ生体情報と人権、ブラックリストとの照合、個人識別情報の保有・利用、テロリストの定義・認定・通知などに関する政府答弁を具体的に取り上げ、人権無視と危険な運用などについて厳しく批判した。
 古屋哲さん(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)は、「新しい入管指紋制度││現場でなにが起こるか、起こっているか」というテーマで報告した。とりわけ「『テロ対策』とは予防政策だから、その対象となる『テロリスト』『テロ容疑者』とは、テロ行為を実行した犯人ではなく、武器や爆発物を用意してテロ行為を準備した者でさえもない。将来『テロ行為を行うかもしれない者』のこと。つまり、『疑わしいヒト』。予断なくしてこのような判断はできない。この認定をするのが公安警察・情報機関が行う」と批判した。
 さらに「指紋など個人情報の収集や監視制度は、『なにに使われるかわからないから不安』という側面もあるが、『なにに使われたかわかっているから不安』であることを問題にすべきだ。公安警察・情報機関の公開や司法その他の場における異議申し立てをまったく受け付けない現状はだめで、民主的な統制や法的な適正手続きに服するような制度にあらためるべきだろう」と問題提起した。
 福島みずほ社民党党首は、共謀罪審議について報告し、さし迫る衆院法務委員会での強行採決を許さず、共謀罪・入管法改悪法案に断固反対すると力強くアピールした。

日本社会を告発
する外国人の訴え

 次に、リレートーク「日本社会に言いたい! さまざまな外国人から怒りのアピール!」が始まった。
 イスラム・モハメッド・ヒムさん(バングラデシュ)は、二〇〇四年五月二十六日、神奈川県警察にアルカイダ関係者の支援者だとして不当逮捕され、マスコミにセンセーショナルに報道され被害を受けたことに厳しく抗議した。そして、「なぜ私が捕まったんでしょうか。貧しい国から来た人間だから? もし日本に本当に『人権』があるならば、警察もメディアも私に謝ってほしい」と糾弾し、現在、謝罪要求を無視し続ける日本テレビと共同通信社に対して損害賠償と謝罪広告を求める民事訴訟を行っていることを紹介した。
 発言はフィリピン、セネガル、アメリカ、韓国出身の仲間たちが日本社会の差別・抑圧の実態を告発、さらに関西での反対運動の取り組み報告が行われた。
 最後に、主催者から五月十六日の参議院法務委員会での改悪法案強行採決を許さないために委員会議員に反対の声を届けようとアピールした。     (Y) 


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