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刑法体系を根本から覆す法案               かけはし2006.5.22号

共謀罪新設法案を廃案へ

日弁連主催「共謀罪反対大集会」に500人


 四月二十六日、日本弁護士連合会は、弁護士会館で「共謀罪に反対する大集会」を行い、五百人が集まった。
 集会は、与党が四月二十八日の衆院法務委員会で「共謀罪」新設法案を採決したいと通告してきことから断固阻止していくための意志一致の場となった。
 司会は、山下幸夫弁護士(日弁連共謀罪等立法対策ワーキンググループ委員)と田鎖麻衣子さん(日弁連嘱託)。
 開会のあいさつが吉岡桂輔・日弁連副会長から行われ、「六百十九の法律を対象に予備以前の共謀段階で既遂にしてしまう危険な法律だ。この法案の問題点をさらに確認し、反対していきたい」と発言した。
 基調報告を行った海渡雄一弁護士(共謀罪等立法対策ワーキンググループ事務局長)は、「四月二十五日、与党は、単独で法務委員会での法案審議入りを強行した。民主党は、修正案を出すと言われているが、与党は修正案の審議をすることもなく二十八日に強行採決をすると予告されている状況だ。このような強引なやり方は、議会制民主主義の根幹に関わる重大な事態だ。共謀罪は、被害がない、犯罪を合意しただけで犯罪が成立してしまう。刑法体系を根本的に変えてしまうものだ。国連の条約だからと理由の一つにしているが、それがおかしければ直せばいい。留保もできるはずだ。これらは警察、法務、外務官僚だけで押し進めようとしている」と厳しく批判した。
 次に国会議員からの発言に移り、菅直人 議員(民主党)、平岡秀夫 議員(民主党)、千葉景子議員(民主党)、福島みずほ議員(社民党)、 保坂展人 議員(社民党)、仁比聡平議員(共産党)たちが駆け付け、法案成立阻止にむけた決意表明を行った。
 ビデオ「共謀罪 その後」上映後、森達也さん(映画監督)、外山雄三さん(指揮者)、星川淳さん(グリーンピース・ジャパン事務局長)、寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル)が次々と発言。
 平山 正剛・日弁連会長は、「共謀罪は、思想を罰する法律だ。今のままでは、日本の法体系を変えてしまうことになってしまう。危険な時代が来てしまう」と力強くアピールした。
 松坂英明弁護士(日弁連副会長)が「ゲートキーパー問題」(マネーロンダリングやテロ資金の疑いがある場合、警察権力に届け出義務を課す法案。二〇〇七年通常国会に提出する予定)の危険性を史的、国会上程を許さないことを訴えた。
 最後に、中村順英弁護士(共謀罪等立法対策ワーキンググループ前座長)が閉会あいさつを行った。(Y)




改めて共謀罪の廃案を訴えます
――民主党修正案に対する疑問
盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会

4月28日、与党の共謀罪採決の動きが激しさをますなかで、民主党修正案が国会に提出されました。
  私達は、この間民主党が共謀罪の採決を急ぐ与党に対して共謀罪の慎重な審議を求め、国会で共謀罪の危険性、問題点を鋭く追及してきたことを高く評価しています。民主党の努力なしに、国会で共謀罪の問題点がここまで明らかにされることはなかったでしょう。
しかし、民主党が修正案という形で共謀罪の審議に臨むことに対して強い危惧を感じています。与党の強行採決の切迫というなかで、対案をださざるをえなかったという側面があることは疑いありませんが、共謀罪は憲法、刑法体系の根幹にかかわる問題だけに原則をふみはずすことのない対応が何よりも求められます。従って、非常に困難な局面であっても、廃案という立場をくずすべきではないと考えます。
第一に、与党修正案では共謀罪の対象団体が市民団体などに適用されかねないと、対象を組織的犯罪集団に限定しようとするものですが、これで市民団体などへの適用はないとはとても思われません。
民主党修正案では、組織的犯罪集団を「団体のうち、死刑若しくは無期若しくは長期五年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪又は別表第一第二号から第五号までに掲げる罪を実行することを主たる目的又は活動とする団体をいう」としています。確かに与党の「その共同の目的がこれらの罪(長期4年以上の刑のこと)又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る」という規定からすれば、民主党の共謀罪修正案は、一歩進んだ規定になっています。
しかし、組織的犯罪集団が自ら違法な行為を「主たる目的又は活動とする団体」
と公言するはずはなく、その判断は捜査当局に委ねられることになるからです。
捜査当局の恣意的判断で市民団体、労働団体などが組織的犯罪集団にされかねません。
民主党修正案は、組織的犯罪集団による「国際的な犯罪」に共謀罪は限定するとし、二重のチェックがかかるとしています。しかし、
多くのNGOや労働団体などが国際的な交流や連携を深めているなかで、民主党案では、むしろこうした国際的に活動している団体が主要な共謀罪の対象となることは十分考えられます。
これでは人権・人道問題で政府とは異なる立場で活動する団体の自由はまったく保障されません。
第二に、共謀罪は話し合うことが罪になる、思想を処罰するのでははないかという危惧に対して、犯罪の「合意」だけでは処罰されないために予備行為を要件とするとしていますが、たとえ予備行為を要件としたとしても共謀罪が思想を処罰するものであることにかわりはありません。
予備行為とは犯罪の準備行為のことです。例えば殺人のために包丁を買うとか、下見をするとかが殺人の予備行為とされています。しかし、例え、殺人の「合意」があり、そのために包丁を買ったとしても、犯罪が実際におこなわれたわけではありません。実行の着手がない以上、そは「合意」を処罰するものであり、思想の処罰と表裏一体の関係にあります。
日本の刑法は犯罪の実現である既遂の処罰を原則とし、例外的に未遂犯を、ごく例外的に予備行為を、更に例外的に陰謀を処罰しています。刑法で予備行為が処罰されるのは殺人、強盗、放火などの重大な犯罪に限られています。
ここに、共謀罪成立の要件として、予備行為を加えるならば、日本の法体系では共謀より予備行為の罪が重いにもかかわらず、なぜ共謀が処罰され、予備行為は処罰されないのかという重大な問題がおこることになります。共謀罪成立の要件として予備行為を加えることは日本の刑法体系に混乱をもたらすもの以外のなにものであもありません。
以上、私たちは、この間の民主党の共謀罪審議に対する取り組みについて高く評価するものですが、民主党修正案では共謀罪の危険性、問題点は解消されないと考えています。
共謀罪という話し合うことが罪になる悪法は修正ではその問題点を解決できるものではなく、廃案しかありません。改めて私達は共謀罪は廃案しかないことを強く訴えます。(5月7日)



「昭和」と天皇制の歴史的責任を問う
天皇制をなくすための討論と行動の持続的発展へ

 四月二十九日、「『昭和』と天皇制の歴史的責任を問う」集会(主催・実行委)が渋谷勤労福祉会館で行われ、百三十人が参加した。
 小泉政権と与党は、派兵大国化にむけて憲法改悪のための国民投票法案、教基法改悪法案、共謀罪新設法案など反動悪法を立て続けに成立させようとスピードを加速させている。さらに、国家再編過程において、天皇制の戦争・戦後責任を放棄し続け、ヒロヒトの誕生日を「みどりの日」などと称して民衆を天皇制と侵略戦争賛美に動員してきた。そして、昨年成立した「改正祝日法」によって、来年から四月二十九日を「昭和の日」として押し出し、天皇制国民統合を強化していこうとしている。
 資本のグローバル化と新自由主義政策の拡大の下で、新たな天皇制とナショナリズムの再編攻撃の性格と本質を真正面からとらえつつ、天皇制廃絶にむけた取り組みの一環としてこの集会とデモが闘いとられた。

新自由主義と保守
主義の関係解明を

 天野恵一さん(反天皇制運動連絡会)から主催者あいさつが行われ、冒頭、天皇主義右翼の妨害に対して抗議するとともに「こういう中で天皇制反対の集会とデモをやり続けていくことが重要な意味を持っている」と確認した。
 さらに、「今、沖縄では、在沖米軍基地の自衛隊との共同使用ということが問題となっている。これは日米同盟全体が再編され、自衛隊が米軍に組み込まれるということだ。つまり、共同使用によって純粋な米軍基地が〇%になるというトリックをたくらんでいることに沖縄の人々は敏感だ。だが、天皇制に対しては賛美してしまうメディア状況がある。女系天皇か、男系維持かというレベルになってしまっている。天皇制の戦争責任・戦後責任を問い続け、なくす運動を続けていこう」と訴えた。
 講演に移り、鈴木裕子さん(女性史研究)は、「昭和天皇の戦争責任と戦後責任」というテーマから@「女性国際戦犯法廷」における天皇有罪の意義A「象徴天皇制」と憲法九条B憲法九条の空洞化と冷戦体制・昭和天皇について検証した。とりわけ、昭和天皇自身がいかに沖縄切り捨て、米軍「駐留」への希望・要請などをしてきたかを明らかにしていった。
 また、鈴木さんは、女性史研究の立場から「わがフェミニズム陣営の大方も、敗戦後一貫して天皇制の問題を回避してきた。女性に子産みを強制し、『家』に閉じ込める性役割を強制する『家制度』の権化として天皇制が存在する一面のみをとってみても、性差別装置以外のなにものでもない。『男女共同参画』のかけ声のもとに、天皇制の延命を画策しようとしている。女性天皇はいらない。天皇制はもっといらいない」と強調した。
 アピールが京都「天皇制を問う」講座実行委員会、「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会、反安保実から行われ、京都の反戦反政府行動のメッセージが紹介された。
 次に、酒井隆史さん(大阪女子大学教員)は、「現在の権力動向と天皇制の位置付け」「ネオリベラリズムと改憲」などを論点にしながら問題提起した。
 酒井さんは、「ネオリベラリズム、新保守主義は分節して考えなければならない。批判的に介入するためにも、同一イデオロギーと考えてはだめだ。この二つの傾向が、どのようにぶつかり、齟齬をきたしているのかという分析は重要だ。そのうえで権力のあり方が大きく変容している。その中で天皇制が、どこで調和し、不調和をきたしているのか。どのように自ら再編しようとしているのかという枠組みを設定する必要もある」と述べ、今後の分析視点、方向性、研究テーマについて問題提起した。
 アピールが沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、日韓民衆ネット、「自由と生存のメーデー 06プレカリアートの企みのための実行委」から行われた。
 最後に集会アピールを参加者全体で採択し、デモに移った。渋谷一帯にわたって「天皇制はいらない!戦争・戦後責任を問い続けるぞ!」とシュプレヒコールを響かせていった。(Y)


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