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5・31統一地方選挙をめぐる民衆運動陣営の動向      かけはし2006.5.15号

労働者・民衆が選挙で分断され反新自由主義戦線に結集できず

 韓国では5月31日に統一地方選挙が実施される。以下は、諸勢力の動向について分析し「労働者の力」第99号(3月24日付)と第100号(4月7日付)に上・下で掲載されたもののうち、紙面の都合により「ブルジョア政党の動き」「開かれたウリ党」「ハンナラ党」「民主党と国民中心党」「市民運動」の部分を割愛したものである。(「かけはし」編集部)

 5・31統一地方選挙が近づいてきた。選挙では広域自治体(道およびソウル、釜山などの直轄・広域市)の首長16人、それ以外の自治体首長232人、655の選挙区で広域議員各1人と比例代表78人、1028の選挙区で基礎議員2513人と比例代表375人など、全国で3869人を選出する。
 今回の選挙は07年の大統領選挙を前にした最後の全国選挙だという点で、執権4年目を迎えているノ・ムヒョン政権に対する中間評価的性格を持っており、次期大統領選の行方を占う重要な尺度となる。したがって統一地方選の結果とともに大統領選挙をも見通す政界再編が予想されるとともに、それが民衆運動陣営内部にどんな波長や影響を及ぼすのかについて注目してみる必要がある。
 1995年6月に地方自治制度(以下、自治制)が導入されて以降、10年が過ぎた。制度政治勢力は今回の選挙を通じて基礎自治体の首長や議員候補の公薦権が各政党の市・道支部に移されたことによって「政治の地方分権化」が名実共に始まった、と意味付与している。
 中央政治の下部構造、形式的だったかつての地方自治が実質的責任と権限とを持つ「名実共に兼ね備わった草の根政治」へと一段階高く発展する契機となった、とこれを解釈している。
 だが自治制に対するブルジョアどもの積極的意味付与にもかかわらず、自治制は「草の根民主主義の成長のエネルギー」というよりは地方土豪勢力らの政治的基盤を拡張する機構として作動してきた。
 その中で労働者・民衆は実際に地域政治から徹底して排除されるという結果だけがもたらされた。結局、形式的な選挙や手続き的民主主義の拡張の中で、地域での支配勢力の権力構造が「定着」するところとなった。
 今回の選挙を通じて地方議員の有給化、これまでの一地域区で1人を選ぶ小選挙制から2〜4人を選ぶ中・大選挙区制への転換、政党名簿式比例代表制の導入、19歳へと選挙参加の年齢幅が拡大されるなどの変化があったものの、これだけで自治制の限界を克服するのは難しい。むしろ、地方議員の有給化は地域土豪勢力らの自治体進出の過剰を煽っている。
 民衆運動陣営の5・31統一地方選への対応は、「独占的・排他的政治代弁体」に象徴化されている民主労働党を中心に展開されている。だが民主労働党の議会主義の選挙運動様式は労働者・民衆を政治の「主体」から「客体」へと転落させている。各現場、各部門、各領域で展開されている大衆闘争は反新自由主義の戦線へと結集できておらず、個別対応によって孤立している。
 このような現場闘争のエネルギーと遊離して民主労総や全農などの主要大衆組織を動員して展開しようとしていた「世の中を変えるゼネスト闘争」も変化した政治の地形や情勢の中で行き場を失っている。
 民主労働党に結集している諸勢力は、表面的には民主労働党の選挙に「オール・イン」している。だが民主労働党の戦略的地位についての判断は、それぞれに異なる。したがって選挙後には、その結果と評価に基づいた民主労働党の進路の論議が予想され、それによって民主労働党の右傾化の速度が占われることになるだろう。
 民主労働党は、2月26日の党大会で06年の事業計画および地方選挙計画を審議した。「地方政治を変えて住民に福祉を」、「地方自治を変えて地方自治を住民の手に」という選挙のキャッチ・フレーズを掲げている。選挙の核心的基調は「土豪の既得権・地方権力を変え、住民が主人公となる進歩的地方自治の実現」、「貧困の解決、差別の撤廃、租税改革など社会の二極化解消と福祉の実現」、「非正規職および農民の権益実現、FTA阻止など、大衆闘争のテーマの全面化」だ。
 民主労働党は、5・31選挙を独自的な政治方針の下で執権戦略を模索すべき時期として想定し、最大の中心的戦略として「基礎自治体議員の力強い進出」を目標としており、全国で15%の得票を実現して第3党の位置を強固にする、との立場だ。
 これまでの各選挙で善戦できた核心的要因を「メディア戦略」の成功によると判断しており、これにそって慶尚南道、釜山、ソウルを主要な戦略地域として想定している。
 慶南はムン・ソンヒョン党代表が道知事候補だということを活用する予定であり、釜山は02年に釜山市長候補としてTV討論を通じて16・7%を得票したキム・ソクチュン候補への期待を持っている。
 特に党のスポークス・パースンを経験したキム・ジョンチョル候補を通じてソウル市長選で、地方選挙でのメディア戦術を駆使する計画を立てており、「金持ちのソウルと庶民のソウル」、「ひとつのソウルではなくふたつのソウル」、「民主的社会主義」を主張することで既存の政党との差別性を印象づける予定だ。
 だが民労党の選挙の勝敗が可視的に現れるのは蔚山での選挙戦だが、蔚山地域の北区・東区の区長選挙、蔚山市長選挙のいずれも、当選を豪語するには難しい条件に直面している。
 特に区長を輩出した北区と東区は進歩政党としての区長の実績に対する評価の性格が色濃いというのが現実だ。
 また蔚山市長候補は民主労総蔚山本部の組合員たちの競選方式を採択したものの、組合員たちの関心は高くないというのが現実だ。
 「最も低い所から社会主義の政治が始まる!」を旗じるしとして5・31選挙に備えている。3月20日、「社会党2006年同時地方選挙障害人候補団出馬および障害人の参政権確保」のための記者会見を通じて、全国各地で障害人運動に実践的に連帯してきた成果を引き継いで、社会党ソウル、清州、大邱、光州地域の障害人党員たちが今回の選挙に出馬するとの意志を明らかにしている。これとともに「政府や地方自治体は障害人の参政権実現のために障害人が接近可能な投票所の設置、活動補助人の派遣、電子公報物の発行、選挙放送の手話通訳の義務化を即時施行すべきこと」を要求している。
 社会党は16代国会議員選挙以後、法外政党として活動してきており、最近になって5・31選挙に対応するための創党の要件(党員千人以上、市・道委員会5カ所以上)を整えた。4月16日、天道教水雲会館で「希望社会党」再創党報告会を開く予定だ。
 5・31選挙を民主労働党が「大挑躍の希望を与えるのか、そうでないのか」を分かつ契機と判断している。
 「全国政党化の実現」、「地域組織の強化」を目的としつつ、中・大選挙区制導入に伴った基礎広域議員の進出拡大を楽観しているが、首長選挙の拡大進出の当否が主要な変数になるものと予想している。彼らは進歩政党の運動発展の焦点として韓国労総の加入問題、非正規職労働者の支持問題、市民運動勢力の参加問題を見通している。
 06年の情勢展望で「民衆連帯運動の画期的強化発展」を提起しており、この根拠として「労農連帯に基づいた常設の連帯戦線体建設」と「進歩陣営の社会変革運動の展望と進歩勢力による執権の展望の政治的組織土台の準備」を挙げている。
 4・15総選挙による院内進出によって民主労総の政治活動は大きく拡張されたと診断しており、それにふさわしい「政治活動方式の発展」、「党員の拡大に伴った労働者中心性の問題」を主要な課題として想定している。5月統一地方選に大規模な労働者候補の出馬を通じて積極的に参与し、税額控除事業などによって次期大統領選挙の物的土台の強化を計画している。
 「非正規職の権利保障立法」、「労使関係先進化方案の廃棄および労使関係民主化方案」、「無償医療・無償教育」の3大要求から、時期が早められたFTAの交渉日程によって「韓米FTA交渉阻止」を付け加えた4大要求が正式に決められた。
 当初、4月の「世の中を変えるゼネスト闘争」によって、統一地方選で民主労総の4大要求が争点化されるように、進歩政党の選挙勝利の有利な社会・政治的環境を作りあげる計画を提出した。だが民労党の選挙戦略キャンペーンでイシュー化しようとしていた「無償医療・無償教育」の課題が現場闘争の力では形成できないという限界や、韓米FTA交渉の時期の早まりによる情勢的条件の変化、非正規職法案の国会上程とも相まったゼネストの日程変更によって「世の中を変えるゼネスト」は流失した状態だ。

 韓国大学総学生連合(韓総連)、21世紀韓国大学生連合(韓大連)、政治改革大学生連帯、全国大学生新聞記者連合(全大記連)などが主軸となって「5・31地方選挙全国大学生連帯」を結成した。「腐敗するだけ腐敗している政治圏に対する一針」、「大学生たちの力によって新たな政治」、「進歩政治の端緒」を掲げて結成された。「100大学での不在者投票所設置運動」、「大学生による新しい政治の基準の提示」、「20代が望む政策の提案運動」などを進める予定だ。
 「ハンナラ党と自民連の統合、ニューライト勢力の結集、右翼的な中学・高校歴史の教科書の会、自由共助の発足」などを親米守旧政権再復活のための保守大連合と規定している。
 これに伴い反6・15の逆風を阻止するために進歩改革勢力の反保守大連合の必要性を強調している。開かれたウリ党のチョン・ドンヨン体制の発足と「地方の腐敗権力の審判」のイシューもまた進歩改革勢力の反保守大連合のための準備態勢の一側面として積極的に意味付与をしている。
 地方選挙闘争の目標を「6・15時代を覆そうとする親米守旧勢力の再執権戦略の破綻」、「民主労働党の強化を進歩政治の大衆化の実現」ととらえている。

 開かれたウリ党が「社会的二極化の解消」「地方腐敗権力の審判」などのイシューを先んじて宣伝している状態の中で、民主労働党は新自由主義改革勢力との差別性を大衆的に刻印させる物的・人的財源を準備できていない。したがって民主労働党はメディア戦略に相対的に重点をおいている。
 民主労総や全農を動員する「無償医療・無償教育」「世の中を変えるゼネスト」などの選挙キャンペーンも、韓米FTA交渉の早期妥結の可能性についての情勢の争点化と局面転換によって流失している。このような中で選挙運動は、06年の全方位的新自由主義の攻勢に対決して展開されるFTA交渉阻止闘争や現場、部門、領域で展開される反新自由主義の闘いを撹乱する要因となるだろう。
 民族主義統一運動勢力は表面的には民主労働党の選挙運動に死活をかけることを誓っている。だがノ・ムヒョン政権に対する根本的態度表明については依然として留保している。これは選挙の結果が「ハンナラ党の圧勝」となった場合に、それ以降に進められる政界再編において新自由主義改革勢力との戦略的連帯まで考慮していることを示している。
 韓国社会において資本の新自由主義要求を代理執行しているノ・ムヒョン政権に対する彼らの機会主義的態度は労働者階級の闘争の障害物となるばかりだ。(「労働者の力」第100号、06年4月7日付、ソン・ジヌ/政策局長)


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