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                            かけはし2006.4.17号

小沢・民主党はどこへ行く

今こそ国会を包囲し、反動諸法案阻止へ

 三月三十一日、民主党の前原誠司代表は、永田寿康衆院議員の「ニセメール」問題による混乱の責任を取り、執行部が総退陣することを決めた。昨年九月の総選挙敗北の責任をとって岡田代表が辞任した後、菅直人元代表との間で争った代表選挙をわずか二票差で制して党代表に就任した前原は、わずか半年で退陣することになった。
 四月七日に行われた民主党両院議員総会では、小沢一郎前副代表が菅元代表を百十九対七十二という大差で破って代表に選出された。小沢新執行部は、代表選の対抗馬となった菅を副代表に登用した以外、鳩山幹事長をふくめ前執行部をほとんど留任させる「挙党体制」の体裁を整えている。

 四十二歳という若さで党代表に登り詰めた前原は、松下政経塾出身の政治家として、新自由主義的な規制緩和・市場競争原理、「官から民へ」の民営化路線を信奉し、政府・与党に対する「反対」野党ではない「対案」路線を打ち出した。また安保・憲法問題については自民党の一部政治家以上のタカ派路線できわだっていた。前原は憲法九条の改悪による「集団的自衛権」の発動を積極的に推進し、「中国の軍事的脅威」を指摘して「米軍再編」を支持し、かつ教育基本法問題についても「愛国心」を盛り込むことを当然とする立場をとっていた。
 その意味で前原は小泉「構造改革」・改憲路線の野党の側からの申し子であり、来るべき時期には保守「大連立」に向けた政党再編の一方の極となりうる存在であった。こうした前原執行部が次々に打ち出してきた改憲タカ派路線に対しては、横路・元副代表らの旧社会党出身議員だけではなく、若手官僚やジャーナリスト出身の「リベラルの会」に結集する議員からも厳しい批判が寄せられていた。
 こうした前原執行部体制の「ニセメール問題」での自滅は、直接的には今国会で政府・与党がねらっている改憲国民投票法案、教育基本法改悪案、さらには共謀罪新設法案などの上程あるいは成立にとって、どのような影響をもたらすのだろうか。

 この間の民主党執行部の混乱は、「自・公・民」の三党合意による改憲国民投票法案の「取りまとめ」のスケジュールを遅らせる一つの要因となっていた。
 小沢新代表のこの間の安保・防衛路線は、国連「集団的安全保障」の枠組みへの自衛隊の参加を軸にしたものであり、米「多国籍軍」=「有志連合」が主導する戦争への自衛隊の参加についてはより慎重な態度を取っていた。旧社会党系が今回の代表選で小沢支持にまわったのは、そのことが大きな理由であった。小沢執行部は、当面する164国会の後半会期において、「ニセメール」事件での混乱を取り戻すためにも、政府・与党に対する最大野党としての存在意義を強調するだろう。
 それでは、今国会での改憲国民投票法案や教育基本法改悪案の上程・成立に対して、民主党小沢執行部は抵抗することになるだろうか。その点は民主党内の動向、そしてなによりも大衆運動と世論の動向に決定的に左右される。
 小沢一郎は、自民党幹事長として自衛隊のPKO海外派兵を主導した。さらには自民党離党後は細川連立政権の立役者として反民主主義的な小選挙区制度実現の旗をふり、橋本内閣の下では、自由党党首として自・自・公連立政権を成立させた。また一九九九年には自らの名前で「日本国憲法改正試案」(『文芸春秋』99年9月号)を発表している。彼が根っからの「改憲派」保守政治家であることに変わりはないことは言うまでもない。しかし「国際協調」と「国連中心主義」を建前とする彼の改憲・海外派兵路線と、ブッシュ戦略に無条件に一体化した小泉や前原の立場との小さくないズレも存在することは明らかである。
 政府・与党は、小泉の首相としての最後の国会において「最重要法案」として位置づけた行革推進法案とともに、改憲国民投票法案や教育基本法案の成立をねらっている。したがっていまだ流動的な小沢民主党の今国会での諸法案に対する対応も、憲法改悪・米軍再編、教育基本法改悪に反対する大衆的闘いの発展によって規定されるのである。
 われわれは残された会期に、改憲国民投票法案、教育基本法改悪案の上程を阻止し、共謀罪などの治安法の成立阻止のためのキャンペーンに全力を上げる必要がある。各地の「5・3憲法集会」など連続した行動に立ち上がろう。 (4月9日 純)


国鉄労働者1047人の総団結で
JR採用差別事件の勝利解決を

不当解雇撤回へ新たな闘いを
全国の労働者・市民の力で支えぬく陣形を築こう

団結権の裾野を
拡大するために

 四月四日、「国鉄労働者1047名の総団結で不当解雇撤回!! JR採用差別事件の勝利解決をめざす!! 4・4全国集会」が、東京・日比谷野外音楽堂をいっぱいにする四千六百人の結集で大きな成功をおさめた。この日の集会は、国鉄の不当労働行為の責任を明らかにした昨年九月十五日の鉄建公団訴訟・東京地裁判決を契機に、一〇四七人の被解雇者の団結が進展し、今年二月十六日の集会で「1047連絡会」を発足させた成果を打ち固め、JR採用差別事件の勝利解決を勝ち取るために設定されたものである。
 短期間の準備にもかかわらず学者・知識人をはじめとした三十六人の呼びかけ人と「1047連絡会」の努力によって、各闘争団、争議団、原告団を先頭にしたJRで闘う労働者や支援の労働者・市民が全国から駆けつけた。
 オープニングの「国鉄合唱団」の歌の後、開会のあいさつを芹澤寿良さん(高知短大名誉教授)が行った。
 「苦節二十年におよんだ闘いの中で、鉄建公団訴訟を契機に三つの労働組合に属する五つの闘争団、争議団、原告団の団結が発展し、二月十六日には1047連絡会が結成されるという画期的な事態を迎えた。われわれはこの大同団結を歓迎する。これは早期解決に向けた闘いの新しいスタートだ。今日の集会には千二百の団体・個人の賛同によって実現されている。これをステップに勝利しよう」。
 呼びかけ人を代表して、ILO問題の権威である中山和久さん(早大名誉教授)が発言した。
 「国鉄民営化は社会党と総評をつぶすための政府・支配階級の攻撃だった。敗戦直後の一九四五年十二月に制定された労働組合法は、組合に加入していることを理由にした解雇を禁止した。一九四六年十一月に公布された憲法は、国家も使用者も労働者の団結権を尊重しなければならないことを明記した。労働委員会は一つ残らず、一〇四七人の解雇を不当労働行為だと認定した。ILOでも取り上げられ、早急な解決が勧告されている」。
 「この不当行為労働認定やILOからの勧告は二十年間も放置された。裁判では負けつづけてきた。二〇〇三年の最高裁判決は、労組法を完全に無視するものだった。しかしその後もILOは六度目の勧告を出し、日本政府がその責任において早急な解決をはかることを要請している。改憲・反動化の中で、ビラ入れ弾圧など思想・信条の自由の侵害は深刻な段階になっているが、団結権の裾野をこの闘いの中で拡大し、早急な政治解決を求めよう」。

改憲攻撃阻止と
一体のたたかい

 次に呼びかけ人からの発言として、憲法九条改悪反対の立場から小森陽一さん(東大大学院教授)、「日の丸・君が代」強制と教育基本法改悪に反対する立場から大内裕和さん(松山大助教授)が登壇した。
 小森さんは「正面から大義を掲げ、憲法二十八条(勤労者の団結権・団体行動権)を守りぬこう。九条の会と一つのものとして闘いを発展させよう」と訴えた。大内さんは「国労解体の攻撃と同質の攻撃として『日の丸・君が代』強制の都教委10・23通達が出され、三百四十四人の教育労働者が処分された。さらに今年の3・13通達では、生徒に対して歌えと指導することを教員に強制している。この中で新たに三十三人が処分された。今こそ分割・民営化反対の原点に立ち返った闘いが必要だ。一〇四七人の闘いは三カ月の停職処分を受けた根津さんや、分限免職処分を受けた増田さんの闘いと一つのものだ」と熱烈にアピールした。
 社民党衆院議員の阿部知子さんのメッセージが紹介された後、国労の佐藤勝雄委員長が発言した。佐藤委員長は支援共闘の中里議長とともに登壇し、中里さんがあいさつした後で次のように語った。
 「九・一五判決は、大同団結なくして勝利はないことをわれわれに突きつけた。国労は組織の混乱を克服して一つになった。一〇四七人の被解雇者のうち三十九人はすでに亡くなり、残された人びとの生活苦は深刻だ。ILOは人道的見地に立った話し合いを日本政府に求めている。われわれは政治の場における早期の話し合い解決を要求していく」。
 「一日も早い解決にとって何が必要かを議論し、行動に立ち上がろう。世論を喚起する街頭宣伝行動、意見広告運動、北海道と九州からの全国キャラバンに取り組もう。六月には全国規模の総決起集会を準備している。今こそ解決の時だ。具体的な要求と統一交渉団を作り上げ、解決のための舞台を形成しよう」。
 続いて国鉄闘争に勝利する共闘会議の二瓶久勝議長が訴える。
 二瓶さんは「当事者・支援者が総団結して解決に向かって取り組もうという、佐藤委員長の発言に大賛成だ」と切り出した上で、次のように呼びかけた。
 「しかし、明確にしなければならないことは、不当労働行為を認定し、八百六十六万円の支払いを命じた九・一五判決の成果は、鉄建公団訴訟四年間の運動が引き出したものだということだ。高裁では全面対決になる。向こう側は交渉のテーブルに乗ろうとはしていない。地裁段階を数倍上回る闘争が必要だ。そしてぜひ言わなければならないことは、まだ裁判を起こしていない人はただちに起こしていただきたい。裁判をやってはじめて一〇四七人の団結が本物になる」。

闘争団、争議団、
原告団の決意表明

 闘争団、争議団、原告団がステージに上がり、1047連絡会代表の決意表明が行われた。国労闘争団全国連絡会議議長の神宮義秋さん、動労千葉鉄道運輸機構訴訟原告団代表の高石正博さん、全動労争議団事務局次長の森哲雄さん、鉄建公団訴訟原告団団長の酒井直昭さんがそれぞれの闘いを訴えると、会場全体が熱い連帯の拍手で呼応した。
 アピール案を宮田和保さん(北海道教育大教授)が提案して採択された後、山口孝さん(明大名誉教授)が閉会のあいさつ。団結ガンバローで集会をしめくくって、ただちに銀座を通るデモ行進で道行く人びとに「解雇撤回」を訴えた。
 「1047連絡会」に結実した新たな団結を「不当解雇撤回」の実現まで発展させるためには、まだまだ大きな努力が必要だ。鉄建公団訴訟の高裁闘争を支えるとともに、さらに連帯の広がりを追求していこう。小泉内閣の新自由主義「構造改革」路線との先端の攻防を切り開き、切り捨てられる多くの労働者・民衆に闘いの道を提示しよう。若者を自由に解雇することのできる新規採用契約(CPE)撤回を掲げゼネスト、大学占拠で闘っているフランスをはじめ全世界で新自由主義グローバリゼーションと対決している仲間とともに!       (K) 


韓国ドキュメント映画
「ノガダ/土方」東京上映会が成功

 三月二十五日、文京シビックセンター・シルバーホール、で「ノガダ/土方」の東京上映会が行われ、約九十人が参加した。
 「ノガダ」は韓国で「土方」のことである。日本の植民地時代に持ち込まれた建設労働における重層的な下請け制度が今も「オヤジ」(親方のこと)、「飯 場」などという言葉と共に残っている。
 監督のキム・ミレさんの父親は日雇労働者で、一九九七年のIMF統制下の中で生活危機に直面し、家を出て野宿者になると言い出す。このことにショックを受 けたキム監督は家で、そして父親の仕事場である建設現場でカメラを回しだす。
 この映画では外為危機による大失業の中で組織され始めたという韓国の建設労働者の闘いの場面と共に日本の釜ヶ崎の労働者の映像も収められている。特に朝日建設で三人の労働者が殺され、キャンプ場に埋められた事件で、朝日建設で働いていた労働者たちが未払い賃金を求めて元請け責任を追及する朝日建設争議 団の闘いは印象深い。
 上映の後はキム・ミレ監督のトーク、会場からの「韓国と日本の労働者の闘いはの違いは?」という質問に、「違いはない、労働者の抱える課題は同じだ」と答えた。
 なお、この日はシビックセンターでの上映に先立って山谷でも上映が行われ、山谷の労働者、隅田川の野宿労働者など約五十人が参加し、キム監督とも交流した。 (板)


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