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5・31地方選をめぐる政治勢力の動向          かけはし2006.4.10号

大統領選と総選挙の前哨戦隠ぺい・歪曲された階級対立

ノ政権の3年間に対する審判

 5・31統一地方自治体選挙まで、90日を切った。今回の選挙は迫り来る2007年の大統領選挙と2008年の総選挙へと連なるブルジョアの権力再編の前哨戦的性格を持っている。また、ノ・ムヒョン政権の国政運営の3年についての全般的評価という意味も持っている。
 資本主義社会において進められるすべての選挙は、ブルジョア階級の階級支配を合理化するための仕組みとして作動する。特に今回の選挙は、資本側は新自由主義政策を一層安定的に拡張、制度化させる勢力を選択するように強要している。
 韓国社会全般の政治志向は「新自由主義政治勢力」と「反新自由主義勢力」の階級闘争が基本的対立として明確に勢力化できていないのが現実だ。したがって今回の選挙は議会主義政治勢力間の「改革vs守旧」、「民主vs反民主」、「進歩vs保守」という政治的対立が、階級対立の本質を隠ぺい・歪曲することによって戦線を撹乱するだろう。その中でブルジョア諸勢力は、ぬかるみにはまった犬のように泥試合を展開している。

ウリ党とハンナラ党の葛藤

 2月18日の党大会でチョン・ドンヨン体制へと転換した与党・開かれたウリ党は、5・31地方選での完敗を免れるために全力投球している。3月3日、党内機構を整備することによって本格的な選挙体制を完了した。
 チョン・ドンヨン個人にとっては次期大統領選への走者として「ポスト・ノ・ムヒョン」の立地を固めることのできるチャンスではあるが、選挙の結果次第では大統領選の街道から脱落し、党の存立さえ危うい立場に陥りかねないという2重的意味もかかっている。
 特に、党大会を通じての政党支持度の反転という効果を挙げることができず、またムン・ヒサン人材発掘企画団長が2月22日に「人材発掘企画団による外部人士の迎え入れ作業は事実上、締め切られた」と語ったように、外部からの人士迎え入れにおいてハッキリした成果を挙げることはできなかった。カン・グムシル前法務長官やチン・デジェ情通部長官の京畿道知事出馬、カン・ドンソク前建設交通部長官の仁川市長出馬」を開かれたウリ党は首都圏でのカードとして確実視しているが、これに伴う痛みも容易ならざるものがある状況だ。
 選挙出馬への固辞を明らかにしていたチン・デジェ情通部長官が突然、出馬へと立場を覆し、ソウル市長への出馬を希望している。また、開かれたウリ党内部で、すでにソウル市長への出馬の意思を表明していた議員たちが候補の競選を要求し、指導部に反発しており内部の痛みが予想される。
 これとともに3・1記念日に式典への参加をすっぽかし財界人とゴルフに興じていた「ゴルフ会同」に対して野党ハンナラ党の政治攻勢が展開されており、イ・ヘチャンは辞任の意思を表明した。ハンナラ党がチェ・ヨンヒ事務総長の性的スキャンダルに対する攻勢への対抗措置として、この事案を核心的に扱っており、今後、5・31統一地方選をめぐる開かれたウリ党とハンナラ党との葛藤は、さらに増幅されるだろう。

道徳性が問われるハンナラ党


 自民連との統合によって支持率上昇街道を駆けていたハンナラ党は、チェ・ヨンヒ前事務総長の女性記者への性的スキャンダルによって道徳性が問われている。アン・ギョンニュル院内首席副代表が3月3日に行われた主要党職者会議で「党の雰囲気刷新のために海兵隊キャンプへの入所を考慮する」との意見を明らかにした後、世論の激しい反発にあって撤回するというハプニングを演出したりもした。
 ハンナラ党付設の「汝矣島研究所」の世論調査で女性たちの支持率離脱現象が5%に達していると発表して以降、中央党公薦審査委員会は3月2日、「女性最優先に配慮」を内容とする公薦指針を発表した。「勧告」事項だった女性公薦の割り当て比率を「義務化」した状態だ。また女性委員会は飲酒文化、性文化を正す浄化運動を推進しよう、と提案をしている。
 いずれにせよハンナラ党は5・31選挙での悪影響を憂慮してチェ・ヨンヒ前事務総長の脱党措置を施行したが、江原地域での支持基盤を失う状態となった。
 イ・ジェホ院内代表は「汎自由民主主義勢力の大統合」を提起するとともに「反ノ・ムヒョン政権共同戦線」を広げようとの論理を通じて嶺南(釜山を中心とする南東部)を中心に湖南(光州を中心とする南西部)、忠清(中西部)地域を結合するために国民中心党、民主党との選挙連合を提起した。けれども自民連との統合によって「忠清地域を土台にして、成長しようとする国民中心党をつぶそうとする行為」だとの非難を受けるほどに国民中心党との関係が悪化し、民主党は「湖南でのハンナラ党との連合は投石を浴びるような行為」だと規定しているので、選挙連合の現実性は極めて乏しい。
 ともあれハンナラ党は執権の勢力基盤を固めるための事前作業として今回も5・31地方選を構えている。パク・クネ代表は昨年の私学法闘争を陣頭指揮しつつ、対外活動を自粛してきたが、3月7日の日本訪問を皮切りに、湖南や忠清圏への訪問など対外活動を計画しているのが実情だ。これを通じて大統領選への有力な走者として支持率を高めることと、大統領選への候補競争での有利な高地先制占拠を目的としている。
 だが党内の代表的な反パク・クネのグループである国家発展戦略研究会や水曜の会は3月1日に北漢山に登る会を行うなど、本格的な連帯を通じて勢力化を図っており、これまた並々ならぬものが見てとれる。また党への高い支持率に伴い、当選の可能性が高いことから、内部での候補者公薦をめぐるいさかいは止むことがないものと見通される。

群小野党、存立のためのあがき


 地域の基盤を中心として存在している湖南の民主党と忠清圏の国民中心党もまた、5・31地方選に死活をかけているのは同様だ。開かれたウリ党とハンナラ党が互いに自己の勢力として彼らを吸収しようとするけれども、利害関係が異なるために、彼らを含むブルジョア政治地形の再編は5・31選挙以降になるものとみられる。一応は両党ともに湖南と忠清という地域中心の構造を脱け出るために相互の連帯を1次的対象と想定している状態だ。
 民主党は地方選挙の選対委員長としてチャン・サン前総理代理を迎え入れることによって地方選挙の体制を整え、チャン・サンはコ・ゴンの核心人物なのでコ・ゴンとの連帯を推進する架け橋の役割を担うものと思われる。これとともにチン・ニョン前経済副総理の迎え入れを積極的に推進しているところだ。
 国民中心党は忠南知事としてイ・インジェ議員を押し出しているが、本人は「YS(泳三)やDJ(大中)に出馬せよと言っているのとどう違うのか」として反発している。これとともにシム・デピョン忠南知事の大田市長への出馬が取りざたされている。
 だが彼らが勢力基盤としている湖南や忠清地域は開かれたウリ党やハンナラ党にとっても要衝の地なので、彼らの牙城死守はそうたやすくない条件だ。したがって彼らが存立できるかどうは5・31の選挙以降に勝負が分かるだろう。

右傾化を加速させている民労党


 民主労働党は2月26日、定期全党大会を開き、地方選挙勝利と社会の2極化の解消、韓(朝鮮)半島の平和定着など今年の事業方向や5大目標などを審議・確定した。
 「進歩政党の課題を押しだして政治情勢を主導的に突破し、授権政党としての面貌を整えよう」というムン・ソンヒョン代表の発言を通じて表れているように、彼らは今回の選挙を「民主労働党の成長か、足踏みか」を判断する実験台とみなし、選挙に総力まい進するものと見られる。したがって議会主義授権プロジェクトに立脚したスケジュールを一層、加速化するだろうし、これによって大衆闘争を選挙の道具に転落させる破廉恥な行為が階級闘争戦線を撹乱することは自明だ。

 5・31統一地方選はハンナラ党の全国席巻に対して、開かれたウリ党や群小諸政党が惜敗を免れ、存立基盤を作れるのかとして展開されている。だが、このような地形の中で労働者民衆の生存権や階級的要求を代弁する政治勢力を求めることは難しい。階級対立が隠ぺい・歪曲されている政治地形の中で、闘う労働者・民衆だけが希望へと生まれ変わることができる。(「労働者の力」第98号、06年3月10日付、ソン・ジヌ/政策局長)


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共産党の「号外ビラ」逮捕事件に思う

                        藤井 保

 三月二十四日に東京地裁で共産党のビラまき逮捕事件の初公判が開かれた。この「事件」は、実際はどうだったのかを図書館で調べてみた。
 事件は約六カ月前の昨年九月十日に起こった。「赤旗」九月十一日の記事は「男性号外を配布して不当逮捕・東京世田谷」わずか十七行である。「赤旗」の号外を警察職員宿舎に配布しただけです。住所侵入の疑いで逮捕したがこれは不当逮捕である、と記されていた。
 私は同十一日「赤旗」一面を見てすぐに事件の本質がわかりました。九月十一日は第四十四回総選挙ではないか。その前日に共産党員がビラを配布することは当然のこと、「聖地」警察職員宿舎がいけなかったのだ。
 東京地裁は九月十三日に、拘留請求を却下する。警察の負けである。警察は反撃に出る。釈放から十六日目の九月二十九日に国家公務員法違反で不当起訴する。そして本日の初公判を迎えたのである。
 被告は言う。「言論、表現の自由の一行為として配布した」。弁護士は言う。「逮捕理由となった住居侵入では起訴されていない。違法逮捕であり公訴棄却をもとめる」と。

警察のやるこ
とに道理なし

 共産党には同種の事件がある。立川反戦ビラ事件の頃、「赤旗」号外を配布して起訴された社会保険庁職員堀越さんの事件が今、東京地裁で公判中である。私は本件をビデオで何回も見ています。これも公職選挙法違反容疑から国家公務員法違反容疑に変えたのです。本件では国家公務員であることをあぶりだすのに警察は長期間にわたって尾行したのである。
 さて三月二十五日の「赤旗」は世田谷事件をこう報じている。宇治橋さんは「住民から注意を受け即退去しようとしたがその人が前に立ちふさがり阻まれた」と。
 弁護士は「宇治橋さんを逮捕した警察の行為は、職権乱用にも相当し、明白な違法行為である」と言っている。
 二件ともやりたい放題である。
 ずっと前、私が勤務していた東京・玉川学園前駅の近くで共産党緒方国際部長宅盗聴事件というのがありました。警察の完敗でした。警察はこのカタキをとろうとしているのではないか、私にはそう思えてならない。    (3月27日)


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