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ポルトガル 大統領選で右派が勝利            かけはし2006.3.6号

社会党の新自由主義路線に不信任

左翼ブロックが5・3%の得票を獲得し健闘

                             ホルヘ・コスタ

 一月二十二日、ポルトガルの大統領選挙が行われ、中道右派の候補者で社会民主党のカバコ・シルバが過半数ギリギリの得票で当選した。右派の候補が大統領選で勝利したのは初めてである。今回の右派の勝利は、昨年の総選挙で勝利した社会党のソクラテス政権が遂行している新自由主義路線が、社会的矛盾を深化させながら、経済的な低迷を続けていることへの不信の表現であった。当選した社民党のシルバ新大統領は、社会党内閣との協調を呼びかけている。左翼ブロックは、第四インターナショナル・ポルトガル支部(PSR=革命的社会主義党)の同志フランシスコ・ルカを候補に擁立し、五・三%を獲得した。これは左翼ブロックが共産党、社会党の左に確固たる地歩を獲得していることを示すものである(昨年二月の総選挙で、左翼ブロックは六・三八%の得票で八議席を獲得している。本紙05年3月7日号参照――本紙編集部)

政権与党社会党の
分裂による敗北

 ポルトガルで初めて大統領選で右派が勝利した。一九九六年に社会党のサンパイオに敗北した元首相のカバコ・シルバが、今回は第一回投票で五〇・六%を獲得した。右派のPSD(社民党)/CDS(国民党)連合が選挙で敗北してから一年もたたないうちに、彼らは再び勝利を祝っている。しかしこれはまず何よりも大きな新自由主義的中道派の勝利である。カバコは彼の選挙キャンペーンの焦点を社会党政権との「戦略的協力」においた。
 社会党にとって、これは大敗北であった。社会党指導部は、二人の候補者が出ることを回避できなかった。マニュエル・アレグレが公式の候補者になるはずだった。著名な詩人で、以前は亡命者だったアレグレは、その「ユートピア」的オーラを利点としている(彼に不利な点は、社会党議員としての三十年間に彼がやってきたことは、新自由主義政策への支持投票だったことである)。
 しかし夏が過ぎてから、八十一歳の元首相・元大統領のマリオ・ソアレスが、政界引退を再考すると声明した。ソアレスもアレグレと同様に、カバコに対決する社会党陣営からの何人かの候補者予定者に拒否された後での第五の選択であった。
 社会党は敗者としてスタートし、ソアレスがソクラテス首相の新自由主義政権にしがみついたことによって、すべてはさらに悪化した。その結果は、政府が公式に支持した元大統領(ソアレス)の得票が一四%に終わるという異様な状況となった。党官僚に反対する無党派市民と衣装をまとったアレグレは、社会党公式候補に反対する抗議票を呼びかけた。彼は二〇%を獲得した。
 いずれにせよこの社会党の水域からは、よいニュースは期待できない。七十歳になるアレグレは、議会に戻る用意をしている。彼は議会で同僚からの冷たい視線にさらされることになるだろう。社会党の次期大会でソクラテス首相は「家」をきちんと整えるだろう。
 難しいことではない。綱領的オルタナティブの痕跡はない。アレグレの選挙運動陣営は、彼のキャラクター(半アナーキスト的詩人で、ポルトガル風のダンディ)を支持して結集し、社会党の中で不満を述べた。投票結果は、ソクラテスに対する民衆的な激しい怒りがもたらしたものであった。

新大統領は右
派の結集軸に

 左翼ブロックの候補は、ポルトガル左翼の中にオルタナティブを築き上げるために、この複雑なシナリオに立ち向かった。日曜日の夜、左翼ブロックの活動家は「明日、われわれはここにいるだろう」と叫んだ。
 彼らが祝意を示したのには理由があった。それは長期の忘れがたいキャンペーンであり、一九七四〜七五年の革命以来、最左派としては最大規模の集会を幾つか持ち、フランシスコ・ルカ候補は五・三%の得票で約三十万票を獲得した。それは左翼ブロックの七年間の中で、二番目に良い結果であった。
 ルカは地理的に見て、きわめて均質的な票を獲得した。とりわけ三十年間にわたって権威主義的な右派のボスが統治してきたマデイラ島で良好な成績(七・八%)を収めた。
 共産党の候補(ジェロニモ・デ・ソーサ書記)は八・五%を獲得してやや前進し、共産党指導部の変更が報道機関の気分をも変え、活動家に新たな息吹を与えたことを確認した。リスボンで開催された共産党の全国集会には二万人が参加し、それは彼らの力を見せつけるものとなった。
 何か変わったことが起きないかぎり、向こう三年間ポルトガルでは選挙がない。この選挙は、当面の政治的枠組みを安定化させた。新大統領は今や右派の結集軸となるだろう。社会党のソクラテス首相は、弁解の口実を手に入れるだろう。資本家は現在カバコを支持しているのと同様に、昨年二月には安定を名目にして彼を支持したのである。資本家たちの安定は途上にある。左翼にとっては動員の時である。

選挙結果

カバコ・シルバ 
五〇・五九%(社会民主党、右派)
マニュエル・アレグレ 
二〇・七二%(社会党、無所属)
マリオ・ソアレス 
一四・三四%(社会党)
ジェロニモ・デ・ソーサ 八・五九%(共産党)
フランシスコ・ルカ 
五・三一%(左翼ブロック)
ガルシア・ペレイラ 
〇・四四%

投票率 六二・六一%
白票   一・〇六%
無効票  〇・七九%

(「インターナショナルビューポイント」電子版06年1月号)            


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