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 立川・反戦ビラ弾圧から2年              かけはし2006.3.13号

最高裁で無罪判決を!

派兵大国作りと一体となった治安弾圧を許すな

最高裁闘争の
新たな運動方針

 二月二十六日、立川・反戦ビラ弾圧救援会は、多摩社会教育会館で「立川・反戦ビラ弾圧から二年 最高裁は大逆転!集会・デモ」を行い、百十人が参加した。
 〇五年十二月九日、東京高裁は、立川反戦ビラ入れ弾圧の三人の被告に対して一審無罪判決から逆転罰金有罪刑の不当判決を言い渡した。高裁は、小泉政権の派兵大国作りと連動しながら、治安弾圧の強化の一環として、「表現の自由が尊重されるべきものであるとしても、他人の権利を侵害していいことにはならない」などと強調し、反戦ビラ・ポスティング規制を支持した。不当判決に対して被告は、ただちに上告し、最高裁無罪判決をかちとる闘いを開始した。
 立川反戦ビラ弾圧救援会は、最高裁闘争勝利に向けた取り組みの協力を呼びかけている。最高裁の審理は、公判が開かれず、文書のやりとりで進行する。そして、上告趣意書を提出後、判決時期も不明なままの状態が続き、ある日、判決が出るというシステムになっている。一審、二審段階のように公判をポイントにした運動づくりができないため、世論作りと裁判所への働きかけに絞った運動展開をしていくことになった。この三月から@上申書運動A無罪要求署名運動B最高裁情宣行動C弁護人千人運動D上告趣意書づくり││を進めていく。 

朝鮮戦争時の
反戦運動に学ぶ

 この集会は、立川署・警視庁公安2課によるテント村メンバーの三人を不当逮捕した〇四年二月二十七日からまる二年目であり、最高裁闘争の勝利に向けて行われた。
 集会の冒頭は、立川・ビラ弾圧被告の高田幸美さんなどをメインにした日本テレビのNNNドキュメント「ふたりのさっちゃん」を上映。
 開催あいさつを救援会代表の大沢豊さんが行い、「イラクでは、治安の悪化、宗教対立が激しくなっている。米国がしかけた戦争は、混乱と秩序破壊をもたらしただけだ。この戦争を支持し、自衛隊をイラクに派兵している小泉政権の責任を追及していかなければならない。そのためにも反戦ビラに対する弾圧をはねかえしていこう。表現の自由を守り、戦争と『日の丸・君が代』への服従を許さない。ともに最高裁闘争を闘っていこう」と発言。
 次に西村秀樹さん(ジャーナリスト)は、「平和の創造と表現の自由│朝鮮戦争時の反戦運動から学ぶ」というテーマから、自ら執筆した『大阪で闘った朝鮮戦争―吹田枚方事件の青春群像(岩波書店)』を紹介した。さらに、「一九五二年六月二十四日、大阪北部の吹田操車場で朝鮮戦争と戦争協力に反対する労働者・学生・朝鮮人たちの武器搬出阻止行動が闘われた。権力は、『騒擾罪』として大弾圧を強行した。朝鮮戦争下におけるこの事件と、イラク派兵下での立川・反戦ビラ弾圧事件は、多くの点で共通するところがある。比較検証することによって、戦争に反対する表現の自由の問題について迫ることができるのではないか」と強調した。

集会後、基地と
警察に抗議のデモ

 葛飾ビラ配布弾圧事件 ・ビラ配布の自由を守る会、板橋高校卒業式「日の丸・君が代」刑事弾圧被告である藤田勝久さん(元板橋高校教諭)からの連帯アピール。
 救援会からカンパアピールの後、弁護団を代表して虎頭昭夫弁護士が高裁判決に対して@防衛庁官舎の敷地・階段・玄関前は「人の看守する邸宅」ではないA住民の意思ではなく管理権者の意思でビラまきが違法化されているB住民がビラまきに刑罰で対処してほしいと思っていたかは証明できないC多数の住民がビラまき禁止を望んでいても、住居侵入罪は成立しないD本件のビラまき態様においても害を与えていないE「表現の自由」と可罰性(刑罰をもって罰するに値いする程度のものか)についての論議を避けている││ことを批判した。
 次に救援会からの行動提起に続いて、被告の大西章寛さん、大洞俊之さん、高田幸美さんが元気一杯の闘う決意を表明した。
 最後に「集会宣言」を参加者全体で確認し、デモに移った。あいにくの雨だったが、立川一帯にわたって「反戦ビラ弾圧を許さないぞ!自衛隊は、イラクに行くな、戻ってこい!」と響かせた。途中、陸上自衛隊・立川駐屯地への申し入れ、立川警察署に対する怒りのシュプレヒコールをたたきつけた。    (Y)


反弾圧公開シンポV
おかしいぞ! 警察・検察・裁判所

 二月二十八日、東京・文京シビックホールで「〈公開シンポジウム〉おかしいぞ!警察・検察・裁判所V」が行われ、三百三十人が参加した。
 シンポ実行委は、立川・反戦ビラ弾圧事件など一連のビラ配布弾圧、公安警察の暴走など市民の権利や自由を抑圧する動きに抗して、とりわけ衆院法務委員会で与党がいつ共謀罪の強行採決を強行するかという緊迫した状況を前にして、言論界で活躍する魚住昭さん(ジャーナリスト)、大谷昭宏さん(ジャーナリスト)、岡本厚さん(『世界』編集長)、篠田博之さん(『創』編集長)などによって立ち上げられた。
 第一部の「不当逮捕被害者の発言」では、 立川反戦ビラ裁判被告の大洞俊之さん、国公法弾圧事件被告の堀越明男さん、葛飾ビラ事件「ビラ配布の自由を守る会」などから弾圧の事実経過を報告し、公安警察を厳しく糾弾した。
 日本山妙法寺の木津上人は、十月二九日に沖縄・嘉手納基地のゲート前で平和行脚中に不当逮捕(十一月十六日釈放)されたことを報告し、「ゲート前でパトカーが急発進し、私はひかれそうになった。警察は、事故隠しのために逮捕したのではないか。後日、沖縄県議会でこの事件が問題となった時、警察官僚は、私がひかれそうになったことを述べず、逆に二十メートルも逃走したなどと答弁した。真実をこのような形で、平気でねじ曲げるのが警察だ」と厳しく批判した
 第二部は、「元関係者が語る公安の内幕」と題して、北村肇さん(『週刊金曜日』編集長)の司会で 真田左近さん(元静岡県警公安)、野田敬生さん(元公安調査庁職員)が公安活動、捜査、スパイ獲得などについての経験を紹介した。さらに、公安警察、公安調査庁が「左翼、右翼の退潮によって、仕事がなくなり、リストラ防止のための仕事作りを行っている。シフトは、テロ対策として外事部門を増員している。また、ビラ弾圧からわかるように市民生活の細部まで監視することを仕事にしようとしている」と指摘した。
 第三部は、「共謀罪をぶっつぶせ!」をメインにパネルディスカッションが行われた。司会進行が二木啓孝さん(日刊ゲンダイ)。パネリストは、中村順英さん(日本弁護士連合会・副会長)、魚住昭さん(ジャーナリスト)、大谷昭宏さん(ジャーナリスト)、 森達也さん(映画監督)、寺澤有さん(ジャーナリスト)。
 @共謀罪批判A権力の意図B危機管理C日本社会が求める『安全』意識の危険性などを論点にして、各々から発言があった。森さんは、「オウム真理教が警察にやられた時、でっち上げ逮捕、微罪逮捕などあらゆる不法行為を繰り返した。このことを批判した言論は、ほとんどなかった。市民は、『オウムだからしょうがない』という反応だった。危機意識が一人歩きし、権力は、おおいに利用した。共謀罪の先取りだった。そのツケが今ある。だから、共謀罪反対の声が小さい。共謀罪の危険性を知らずに、いつのまにか自分たちを抑圧する法律ができてしまったというのが今の状況だ」と指摘した。
 最後に閉会挨拶を岡本厚さん(『世界』編集長)が行い、「共謀罪ができたら、壇上にいる人たちは、みんな捕まっているかもしれない。だけど、またシンポジウムをやりぬくだろう」と力強く結んだ。   (Y)



コラム
母の「認知症」


 内閣府発表の「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」が発表された。それによると都市住民で「週末は農山漁村で過ごしたい」と希望する人は、「団塊の世代」を含む五十代が最も多くの四五・五%にも上っている。また都市に住む五十代のうち二八・五%は将来田舎への定住を望んでいる。
 また厚生労働省の統計によると都市に住む「団塊の世代」は、退職後「両親の身体が弱ってきているので田舎でいっしょに住む」という人は一二・六%にも達している。単純にいっしょにはできないが、すでに田舎に住むことを決めた、望んでいる定住派と両親の世話派を合計すると四一%にもなる。
 「団塊の世代」の両親は圧倒的に八十歳〜九十歳に集中しており、統計では父親は五〇%以上が亡くなり、残りの三六%はなんらかの病気を患っている。母親の場合では二四%が亡くなり、四九%の人がやはり病気で苦しんでいる。
 「団塊の世代」に属している自分自身と比較してみてもこの統計数字はそのままあてはまる。父親はすでに亡くなり、母親も三年前に病気で倒れ、杖を突いて歩くのが精一杯である。雪国であるため、冬になると一人で家から出られない生活を強制されている。そのせいか冬になると他の季節よりひんぱんに東京に住む私に電話をよこす。大阪に住む弟に対してもそうらしい。
 しかし最近気になるのは、母の「認知症」の進行が電話を通してわかるようになったことである。母の病状は「同じことを何度も繰り返す」という形ではなく、同じ話をしても「時間と時期」が毎日違うという形で現われている。より正確に言うと次のようになる。
 母のまわりで起こった「できごと、事件、物語」のひとつひとつは極めて正確に一冊ごとにファイルされているが、それを頭の中の棚から取り出すと全く同じ「物語」が昨日は一年前で、今日は三年前になってしまうのである。今では三カ月前のことも三年前になってしまう。
 病気で倒れた直後は、向かい合って話している時でないと気づかないくらいであったから、私は認知症だと思わずいちいち訂正したり注意さえした。今は知らないふりをしてうなずくようにしている。病気を知らない人が思わず注意した時でさえ、母は淋しそうに話すのをやめる。ただひたすら走り続けてきた「団塊の世代」が年老いてゆく両親を目にして、ようやく周りのことにも気を使うことのできる年代に入ったということかもしれない。
 マスコミが「これから本や映画の世界で、『おばあちゃん』がブームになるかも」と述べていた。二年前に懐かしさとちょっぴりしんみりしながら読んだお笑い芸人島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん」が映画化されるという。これもブームの反映かもしれない。
 なお「将来、定住したい」田舎は、長野、山梨、岐阜、沖縄、北海道、栃木などが上位にランクされていた。(武)


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