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ボリビア 全国労働者人民サミットの要綱         かけはし2006.2.20号

米帝国主義・多国籍企の政治介入を排除せよ

「事実調べを行えば私の無実は明らかだ」

搾取のない社会にむけて前進するために左翼の統一を

                           レンベルト・アリアス

 レンベルト・アリアスは、POR│コンバーテ(革命的労働者党│闘争、第四インターナショナル・ボリビア支部)の活動家である。この文章は選挙におけるエボ・モラレスとMAS(社会主義運動)の勝利の前に書かれたものであるが、彼はこの文章の中で、ボリビア左翼の統一の問題を取り扱っている。彼は、まだ生きている「二〇〇五年三月統一協定」を想起している。この協定にはMASを含む全左翼がかかわっており、MASに批判的な勢力を含めた、二〇〇六年一月に開催予定の全国労働者人民サミットの要綱を定めている。(「インターナショナルビューポイント」編集部)

 COB(ボリビア労働者総連合)本部で二〇〇五年三月九日に調印された左翼の統一協定は、長くは続かなかった。しかし、この統一は、新しい協定によっていつでも更新することができる。そうではあるが、将来は、真の永続的なオルタナティブとなるための一連の展望を採用する必要がある。次の全国労働者人民サミットは、参加する社会的運動にとってそのための場となることができる。

最近の政治情勢の概観

 大統領権力は、二〇〇五年十二月十八日に総選挙および知事選挙を行うことを可能にする命令を発することにより、「議席をめぐる戦争」を終わらせた。
 議席をめぐる紛争は、首都のラパス、オルロやポトシで一連の抗議を引き起こしたが、これは少しも変わったことではなかった。住民の大衆的動員はなかったが、追加の収入源を守るためには何でもする政治的エリートからの強硬な反応があった。
 これらの議会主義者たちは、数か月前の炭化水素(天然ガスなど)をめぐる闘いよりも、議席をめぐる闘いに精力的に参加した。コチャバンバは西部の諸県に反対し、潜在的な分離主義の雰囲気をもたらした。
 なぜなら、彼らが追求した目的は、地方的利益と寡頭政治の利益に基づいて国の中央集権制に対する攻撃を開始することであり、できることなら、MASの指導者エボ・モラレスが国の長となることを阻止することだったからである。
 今日のMAS(社会主義運動)は、その名前にもかかわらず、社会主義の防衛を主張せず、むしろ民族主義政党として自己を表現している。エボは、彼の党の民族主義を、民族革命運動(MNR)の民族主義とは非常に異なる「新民族主義」と表現し、先住民の民族主義とも非常に異なる参加の形態を推進することを目指している。
 MAS内部の複数のイデオロギーを組み合わせたこの傾向は、アルバロ・ガルシア・リネラが副大統領候補になったことによって強まった。ガルシア・リネラは自分のことを「グラムシ主義者」であると公言しているが、現実には一種の「アンデス資本主義」支持の立場を取っている(本紙06年1月23日合インタビュー参照)。
 しかし、MASが、たとえば親中国派のボリビア・マルクス・レーニン主義共産党(PCMLB)、ルネ・モラレスの民主社会党、ゲバラ主義者グループなどのいくつかの左翼政党の支持を得るのを妨げているのは、このことではない。これらの党は、エボ支持の公式協定に署名したが、批判的態度を維持しており、留保を公然化するのを躊躇していない。

革命的統一のための協定

 寡頭政治に反対する民衆的社会的運動の統合と統一へのCOBの参加は、二〇〇五年三月九日に調印されたボリビア人民の尊厳と主権に関する協定の文書によって具体的に表現された。
 この協定は、主として、ボリビア民衆運動の二人の大物指導者、ハイメ・ソラレスとエボ・モラレスが、相互に中傷と個人攻撃を始めたことによって破綻した。権力獲得戦略の基本原則にかかわる、国有化および革命過程における兵士の役割をめぐる不一致が、彼らの間のあつれきを正当化している。
 今日、ボリビアの過半数の票がMAS支持に向かうことは疑う余地がない。炭化水素の支配を失うことを恐れる右翼の側による選挙の不正が行われない限り、これは確かである。もしCOBの「政治的機関」が立ち上がれば、疑いもなくMAS支持の票は影響を受け、エボ・モラレスはすべての左翼票を引きつけるだろう。
 多国籍企業、伝統的新自由主義政党、すなわちMNR、MIR(革命的左翼運動)、ADN(民族民主行動)、UCS(市民連帯連合)やNFR(新共和主義勢力)、特にサンタクルスの寡頭制は、「議席をめぐる戦争」によって選挙をサボタージュすることには成功しなかった。
 右翼は、クーデターに訴えない限り、新しい社会勢力の台頭とその背後にあるボリビア社会運動の登場を押しとどめることはできないであろう。クーデターについては、すでに一部の人々が予言しており、その目的は、資本主義と帝国主義の利益に従った新自由主義経済政策を再確立することである。
 一部の議員たちは、選挙の施行、憲法制定議会の召集、二〇〇三年十月の事件(注1)に関するゴンザロ・サンチェス・デ・ロサダと彼の大臣たちの訴追を回避することを望んだ。その理由は、権力の座に留まって国の富を略奪し続け、「ゴーニスト」(注2)の経験を続行するためである。一部の人々が「議席をめぐる戦争」を利用して国を不安定化し分裂させようとした理由も、これである。

協定のプログラムと役割

 尊厳に関する協定の第一点は、これが政治的分裂やイデオロギー的教条主義を超えた政治的社会的協定であることを定めている。この協定に参加する組織は、ブルジョアジーとその追従者の敵対者となるであろう。また、この協定は、エルアルトとチャパレをこの国の貧しい人々および排除されてきた人々の運動の本部とすることを定めている。したがって、この点は、この国が最近経験した社会的危機の間にエルアルトの町が果たした役割を認知するものである。
 第二点は、帝国主義とその新自由主義的経済モデルの干渉に反対する永久的闘争を宣言するものである。この経済モデルは、ボリビア経済の民営化、「資本主義化」、「多国籍企業化」と自由貿易協定およびアメリカ自由貿易圏(ALCA)を通じて、ボリビア人の大多数を過酷な貧困、飢餓、社会的排除と失業の苦しみの中に放置するものである。民衆運動の現在の分裂にもかかわらず、われわれはこの方向で闘い続けようとする。
 第三点は、権力の獲得を、達成すべき戦略的目標とすることである。これは憲法制定から出発し、この協定によって確立される統合された指導部が政府に反対し、金融、鉱業、銀行、農業などの寡頭制に反対する役割を果たすことによって達成される。
 この点が、憲法制定議会の性格をめぐる激しい論争を提起した。一部の急進的潮流は、憲法制定議会は資本主義国家を再組織化する単なる手段に過ぎないように見えるので、社会的解放を求めて闘う大衆的労働者会議を主張した。
 第四点は、ボリビアの国有資源とすべての燃料資源を取り戻すための、ボリビア国家の国民的解放と、特に米兵が享受している免責の拒否による主権の尊重に向けた、統一を確立することである。
 第五点は、外国人に雇われた人種主義的政府によって押しつけられた屈辱的条件に対抗し、多国籍企業の詐欺的運営とわれわれの天然の富の略奪を容易にしている政府の行為に対抗する、局面の分析である。
 最後に、第六点は、ゴンザロ・サンチェス・デ・ロサダと彼の大臣たち、警察および軍の訴追の取り扱いである。彼らはすべて、互いに、二〇〇三年十月の死者たちに関する責任をとることを拒否している。この点は、可能な限りすみやかに裁判を行うために闘うことを署名者たちに委託するものである。労働者の中央組織であり、搾取されている人々を守る中央組織であるCOBは、この任務に強く関与する。
 MASおよびCOBだけでなく、他の政治的および社会的組織(注3)も、「人民の革命的政治的コマンド」と呼ばれる指導部によって上述の歴史的任務を達成する目的で、この協定に署名した。残念ながら、この協定は存続しなかった。改良主義者と革命家は、また、民族主義者と社会主義者は、まず何よりも、プロレタリアートが果たすべき役割について、確立することができる同盟について、権力を獲得し社会主義を建設する戦略について、一緒になって分析し討論することが必要である。ほかの問題はすべて、誤りであるか関係がない。今日、MASおよびCOBの諸勢力は、この文書とこの戦術が提起した目的から、残念ながら遠く離れている。

来るべきサミットに関して

 第一回全国労働者人民サミットに対して、MASは今日傍観しているが、このサミットには、二〇〇三年五月〜六月の危機のときに、ゴニとメサに反対して燃料資源防衛のための英雄的闘争に参加し、上院議長ホルマンド・バカ・ディエスや下院議長マリオ・コッシオが権力につくのを阻止した、社会的部門が含まれる。
 サミットの目的は、飢餓、失業と貧困に反対し、炭化水素と天然資源を防衛するための「革命的政治的機関」を構築することである。この機関を作り上げるために、COB、ボリビア鉱山労働者労働組合連合(FSTMB)、およびエルアルトの地域労働者連合(COR)(注4)は、一般的合意に達し、これによってこれらの部門の政治的社会的指導部の不在がもたらしていた真空を埋めた。統一綱領の主要要求は次のとおりである。
(一)燃料資源およびこの国の天然資源の国有化のための闘争。
(二)総選挙および県選挙の分析、および選挙後に社会的運動が直面する挑戦課題の評価。
(三)権力の機関としての先住民民衆会議(注5)の統合。
(四)成果、憲法制定議会の性格と展望についての評価。
(五)COBおよびボリビアの労働組合と民衆組織の強化に関する挑戦課題の評価。
(六)全国労働者民衆サミットの決議および宣言。
 このサミットは、組織と社会的部門、「生きている勢力」、左翼諸政党を再結集する二〇〇六年一月八日の大デモストレーションによって開始される。このデモは、エルアルトのセジャから、全体集会が開催されるエルアルト公共自治大学(UPEA)に向かって行われる。
 ボリビア人民の尊厳と主権に関する協定の署名からエルアルトで計画されているサミットまでの過程は、社会的運動と搾取されている労働者に革命的指導部を与える目的を持って左翼諸勢力を再編成する過程である。腐敗した国家官僚の手助けを受けて人々を搾取し国の富を略奪している資本と多国籍企業に対して有効に闘うために、これらのすべての運動を統合して社会変革のプロジェクトを構築する能力を持った指導部である。
 当面、選挙に参加する民衆政治勢力は、疑問の余地のない民衆の勝利によって敵を権力から最終的に追い出すために、労働者による政治的権力の行使、社会主義の建設、搾取されるものも搾取者もいない社会の構築の展望に向かって前進するために、統一しなければならない(注6)。

原注
(1)サンチェス・デ・ロサダが人民に対する発砲命令を出し、六十人以上の死をもたらしたことは確証されている。米国にいる難民は、ボリビアに帰国しない限り裁判にかけられない。
(2)サンチェス・デ・ロサダのあだ名「ゴニ」に由来する。
(3)MASとCOB以外の主要な署名組織は次のとおり。フェリペ・クイスペのパチャクチ先住民運動(MIP)、MAS上院議員ロマン・ロアイザが指導するボリビア労働農民統一組合連合(CSUTCB)、オスカー・オリベラの水およびガス防衛協同組織、エルアルトの地域労働者連合(COR)および近隣委員会連合(FEJUVE)。
(4)参加するすべての部門は革命的闘争のプログラムの自立的推敲を誓約しなければならないのであるから、エルアルトのCOR書記長エドゥアルド・ロドリゲス・ベルトゼおよびエドガー・パタナが他のボリビア市民とともに、政府によって憲法制定議会組織委員会に指名されたことは、サミットの組織化に直ちに影響を与える。このことは、同志パタナがこの指名を拒否しなければならないことを意味する。
(5)先住民民衆会議は、二〇〇五年五月〜六月の危機の時期に、エルアルトおよびコチャバンバで設立された。
(6)編集部注:POR│コンバーテ(革命的労働者党│闘争)は、第四インターナショナルの歴史的支部である。この組織は、一九五二年の革命において重要な役割を演じ、その後、国際トロツキスト運動の多くの分裂を潜り抜けた。ウーゴ・ゴンザレス・モスコソの指導の下で、POR│コンバーテは第四インターナショナル・ボリビア支部として留まった。一九八〇年代には地下活動の中で、ボリビアの革命的左翼の再編成に参加し、第四インターナショナル・ボリビア支部の統一PORを誕生させた。この再編成された組織は生き残ることができず、一九九五年の第四インターナショナル第十二回世界大会は、支部の消滅に触れることしかできなかった。現在のPOR│コンバーテは、統一PORの崩壊時に第四インターナショナルに忠実であった活動家グループによって再建された。その活動家は、主としてCOBの中で活動しており、左翼の統一を支持している。


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