もどる

憲法・教基法改悪の先取りを許さない           かけはし2006.2.20号

都教委の「日の丸・君が代」攻撃
と処分撤回を求める闘いが広がる

集会実行委に
高校生も参加

 二月五日、「生徒が主人公の卒業式をとりもどそう! 処分撤回! 解雇撤回! 『日の丸・君が代』の強制を許さない2・5総決起集会」が開催された。会場の東京・日本教育会館ホールには、教育労働者・労組など約七百人が集まった。
 まず主催者を代表してあいさつがあった。「今年の実行委には現役の高校生も参加した。都教委の都立高監視は強まっている。支配者がかけてくる弾圧に対し、広く運動の輪を広げ攻撃をはね返していく」。
 「教基法の改悪を止めよう!全国連」の呼びかけ人の三宅晶子さんのメッセージが代読された後、昨年の辺野古ボーリング調査反対闘争のスライドが上映され、辺野古ヘリ基地反対協の安次富(あしとみ)さんからの発言があった。「沖縄でも日の丸・君が代の強制が強まっている。三人の子どもに親としての生きざまを伝えたい。これからも現地でがんばります」。

戦争を支える軍
事産業の実態

 石川島播磨重工での人権裁判を闘っている渡辺さんからは、日本を代表する軍事工場の実態が報告された。「戦争を支える企業が暴走を始めている。MD共同開発とは米軍の武器の修理を日本でやるということだ。このため職場には徹底した防衛機密保全の圧力がかかっている」。「『戦艦大和のふるさと』呉市では百億円をかけて大和ミュージアムが作られ、市教委は『大和の町に誇りを持とう』などと町おこしをしている。連合の組合は機関紙で日韓併合を正当化し、首相の靖国参拝を評価し、中国の脅威を煽っている。こうした現状に屈せず教育現場のみなさんとともにがんばっていきたい」。
 国労の仲間の発言の後、立川テント村の高田さんが登壇。「昨年はここでうれしい無罪判決の報告をしたが、今年は一転して有罪の立場です。立川の街を歩いてビラをまいていると賛同も多い。基地の門番の自衛官に語りかけたら、意見の相違が大切だと同調してくれた。犯罪的なのは戦争を推し進めようとする人たちだ」。
 この後、伊沢けい子都議からのメッセージが代読された。

杉並の報告書
書き換え事件

 杉並教組の長谷川委員長が発言。昨年度の教科書採択の過程で、各学校でつくられる「調査報告書」が不正に書き換えられていた問題を報告した。同教組は、現場教師が作成した扶桑社教科書への批判的評価を、校長らが百八十度転換させて書き換えたり、書き換えを指示していたとして追及した。この事件を昨年七月、教組が記者会見で公表すると校長は「守秘義務違反」を主張。組合員の片山さんに対し事情聴取を繰り返し、あげくには人事異動処分を発令した。片山さんも登壇して「何をやっても許されるという風潮と闘っていきましょう」と呼びかけた。
 高校生保護者の坂本さんは「五年前の長男入学の際、『君が代』は強制されず校長が一人で歌っていた。〇四年の娘の入学では全員が起立した」と式典をめぐる四年間の変貌を語った。荒れる子どもたちと真摯に向き合い、親から深い信頼を得ていた小学校の教師は、再発防止研修で子どもから引き離された。「『日の丸・君が代』について親たちはもっと敏感にならなければならない」と訴えた。
 板橋高校元教員の藤田さんからは「板橋高校卒業式事件」の報告があった。卒業式前に雑誌記事のコピーを配布して「威力業務妨害」に問われたこの裁判は、三月二十三日に結審し翌月にも判決が出る。藤田さんのユーモラスな報告に、会場は笑いに包まれた。高橋哲哉さんのメッセージが代読されて休憩に入る。

都教委の長期研
修攻撃に屈せず

 昨年七月の都教委包囲デモの様子が上映され、第二部に移る。
 学校に自由の風をネット、枝川朝鮮学校校長、高校生反戦行動ネットワーク、被解雇者の会、不採用撤回を求める会、予防訴訟をすすめる会、被処分者の会の発言が続いた。
 石原の腹心右翼都議の歴史ねつ造発言や、つくる会教科書への批判、さらにノ・ムヒョン大統領の記念演説を授業のテーマに使ったベテラン社会科教師は、半年にも及ぶ「研修」という名の重大な人権侵害・隔離攻撃にさらされている。生徒とともに作った「ノ・ムヒョン大統領への手紙」で、現職都議を実名で批判。それを理由に処分を受けた九段中学の増田都子さんは、「私は普通の、当たり前の教師だ。私たちへの処分は勲章だ。ぜひみなさんもこの勲章をもらおう」と力強く訴えた。
 七生養護学校の教員は、卒・入学式での不起立で減給処分の連続だったという。しかし子どもたちにはイエス・ノーがはっきりと言えること、「男らしく、女らしく」ではなく「自分らしく」生きることが大切だと常に教えてきた。私は集会のたびに元気になる、としっとりとした口調で淡々と語った。

現場教師を孤立さ
せてはならない

 卒入学式でのビラまき監視弁護団の弁護士は、都立高二百五十校中五十校に弁護士を派遣し、校門前での情宣活動を警察の弾圧から守っている。弁護士がいなかったビラまきでは不当逮捕もあった。荒川のある都立高では公安十人が「何が卒業式だ、思想信条の自由は関係ない」などと叫びながら襲いかかってきたという。
 集会も終盤。今年の卒業式に向けての行動提起があり、大内裕和さんから締めくくりの発言が行われた。集会決議が全体で確認され、団結ガンバローを唱和して閉会した。
 小泉政権による教育基本法改悪・憲法改悪へのとめどない流れのなか、多くの現場教師はみずからの良心にしたがって闘い続けている。立場や経験は違っていても、同じ苦悩や困難を共有している。思想・信条の自由を守るために、そして教え子を戦場に送らないために、理不尽な処分に不屈の意思を貫きとおしている。そんな人々が一堂に集う本集会は実に感動的で、改めて心が洗われるようだ。そして、なんとしてでも現場教師たちを孤立させてはならない、周辺から支援しなければならないと痛感するばかりだ。 (S)



投稿
横浜事件の再審免訴不当きわまりない判決

                            藤井 保


横浜地裁は有罪、
無罪に一切触れず

 二月九日、横浜事件再審裁判が横浜地裁でありました。
 小田中聡樹・専修大教授(刑事訴訟法)は報道陣に判決の感想を問われ「不当きわまりない判決」と言った(毎日新聞、2月10日)。
 閉廷後の十四時三十分、第一声大勢の前での発言である。
 横浜事件は神奈川県の特高が戦時中に行った大規模な言論弾圧事件である。雑誌編集者ら六十人以上が「共産主義を宣伝」として治安維持法違反容疑で逮捕され、四人が獄死、三十人以上が起訴された。そして不当な有罪判決だった。
 今日の判決はこうである。
 「治安維持法は一九四五年十月十五日に廃止され、また十月十七日に交付・施行された大赦令により被告人らは大赦を受けた」と言う。そして「一九四八年五月二十六日、最高裁大法廷は大赦で公訴権が消滅したことで審理が出来ず、免訴の判決をしなければならない」と言っている。ここから裁判長は結論を導き出すのである。
 「よって横浜事件、有罪か無罪か問わない免訴」。子どもかける答案である。
 弁護側は不当な判決だと言い控訴した。司法は何のためにあるのか。国家の犯罪を裁けないでどうして三権分立などと言えるのか。人権を第一に考え、無罪を出すべきである。

第二回再審公判は
一体何だったのか

 去る十二月十二日、横浜地裁第二回公判は新聞などでも大きく報道されているように、故木村亨さんの獄中での証言は法廷を圧倒した。
 大きなテレビで見ました。約一時間のビデオ上映は特高警察の非人道的行為を明らかにした。丸太の上に裸で正座させられ大勢で殴る、蹴る。これでは死んでしまうと私は思いました。また木村さんはこの続きを次のように証言しています。「きさまらのような共産主義者は殺してもかまわんのだ。さぁ、きさまらが泊でやったことを正直に申しあげろ! きさまらは泊で共産党の再建会議をやったろう!」(「横浜事件」、岩波ブックレット)。
 ここに見るように横浜事件は拷問の強要、これに耐えられず自白した以外に証拠はない。
 去る十二月九日には「立川自衛隊監視テント村」のメンバー三人の控訴審判決が東京高裁であり、逆転有罪がでた。また十二月一日には横浜教科書裁判最高裁高嶋教授執筆者の敗訴が確定した。このように司法の反動化がめだっている。
 横浜事件元被告の遺族たちとともに勝利するまで闘いましょう。(2月12日)


コラム
新しい労使安定帯?

 スーパー最大手のイオンでは、業界最大の「イオン労組」(約3万人)が、今夏までにパート社員約四万四千人を新たに労組に加える方針を明らかにした。これまでに、正社員一万四千人に加え、勤務時間が月百二十時間を超える長時間労働のパート社員一万六千人が組合に加入。さらに、勤務時間が月百二十時間未満のパート社員にまで加入対象を広げることにしたそうだ。しかも、会社側と「ユニオンショップ協定」を結ぶ予定であるという。この結果「イオン労組」の組合員数は約七万四千人になる見通しだ。
 次いで、イトーヨーカ堂もまた、正社員に限っていた労働組合(1万2千人)の加入条件を緩和し、勤務時間が週三十時間以上のパート社員約一万五千人を加入させたことにしたという。結果、組合員は約二万七千人になり、全従業員約五万数千人の過半を超えることになるそうだ。ただ「ユニオンショップ協定」は、「正社員労組」との間に結ばれているので、その点をどうするのかは未だ不明であるが。
 いずれにせよ、このような動きは流通業界で加速しそうだ。その基本的性格は「企業内組合」と「ユニオンショップ協定」にあり、産業横断的ではないという点にある。もちろん経営側の意向に沿うものであることは言うまでもない。
 さて、この背景には何があるのだろうか? 以前に、この欄で書いたことがあるが、大手スーパー十社のパート社員は、二〇〇五年二月末で合計二十一万二千人で、全従業員に占める比率は七七%と過去最高となった。これは決して一時的な現象ではない。次々と正規雇用を非正規雇用に置き換えていく「リストラ」こそ、利潤を生み出す魔法の杖であり、すでに経営にとって必要不可欠のものとなっていることを物語っている。
 さらには、フリーター、ニートに続いて「ワーキン・プア」という日本の格差社会を象徴する「働く貧困層」の拡大が指摘されている。「ワーキン・プア」とは、同一世帯で一人ないし複数のものがフルタイムで働いているにもかかわらず、所得が生活保護世帯の給与水準を下回り、最低限の生活水準を保つことのできない新たな貧困層のことであり、いまや社会問題に転化しつつある。
 経営の側にとって、まさにそうであるからこそ、パート社員との間に安定的な労使関係を形成することが死活の問題になってきたということなのである。しかも、一般労組や合同労組、地域ユニオン等の「闘う組合」の影響や介入を排除するために「ユニオンショップ協定」を要求しているのだ。かつて、ダイエーを始めとして「闘う組合」の萌芽があったことを、経営側は忘れてはいないようである。
 はたして、イオンやイトーヨーカ堂の労組が「新しい労使安定帯」になるであろうか? かつての日本的「労使安定帯」は、終身雇用と年功序列賃金によって裏打ちされていた。だが、イオンやイトーヨーカ堂にはそのようなものは何一つない。あるのは雇用をとりまく厳しい冬の時代である。労働者にとって、今の職を失うわけにはいかないという時期があまりにも長く続いているということなのだ。
 同一労働に従事しながら正規の四割に満たない低賃金、かつ無権利のパート社員にとって、闘う意欲があれば、同一労働同一賃金を要求して闘う基盤を手にしたということもできるだろう。まさに、経営側にとっても両刃の剣である。  (灘)


もどる

Back