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労働組合結成を認めず委員長を連行            かけはし2006.1.30号

国家人権委員会さえ踏みにじった移住労働者の人権


絶望で重苦し
い籠城解団式

 05年12月21日、国家人権委員会の7階会議室では移住労働者と韓国人の連帯単位の30余人が集まり籠城解団式を行った。前日の国家人権委員長との面会の結果、望ましいものは特にないとの事実を確認していたためか、雰囲気はとても重苦しいものがあった。
 ソウル・京畿・仁川移住労組アンワール委員長に関してひと筋の望みだった国家人権委さえもが無視してしまった現実にあって、移住労働者たちは、もはや手にすることのできる未来などないように思われたからだ。

委員長連行と移
住労働者の試練

 世間の関心の中で05年4月25日、ソウル・京畿・仁川移住労働者労働組合(以下、移住労組)が建設された。だが移住労組は発足とともに厳しい試練に直面することとなる。労働組合設立申告書が受け付けられなかったのが、その始まりだ。その他の細々とした説明はさておくとして、核心的な理由は未登録の移住労働者には労働組合の設立を許可できない、というものだった。
 第2の試練は、発足してからわずか半月も経たずにアンワール委員長が狙い撃ちの取り締まりによって連行された、という点だ。アンワール委員長は労働組合の会議が終わって宿所に戻る途中、標的として狙っていた出入国管理所の職員30余人から無差別の殴打を受けつつ連行されたのであり、現在まで約7カ月を清州保護所に収監されている。

不法を正当化した
国家人権委の判決

 アンワール委員長を連行した出入国管理所の職員らは、警察や検察が被疑者から自白を得る以前に必ず弁護人の選任権や陳述拒否権など被疑者の権利を告知しなければならない「ミランダの原則」を提示さえしなかった。無差別の殴打をしたという日常的不法を超え、ブルジョア国家があれほどまでに重要視する手続き上の適法性さえ明らかに侵すという不法の限りを尽くしている。
 未登録移住労働者を連行するためには出入国管理所の所長以上の身分が署名した緊急保護命令書を提示しなければならず、かつ48時間以後には一般保護命令書を提示しなければならない。だが連行以降に確認されたことによれば、緊急保護命令書は9級身分資格の職員によって署名捺印されたものだったという事実が明らかになった。この場合、法的拘束力を全く持てないがゆえに直ちに釈放されるのが当然かつ適法だということは改めて言うまでもない。まさにこのような事実と根拠とを土台にして移住労組では民主労総のクォン・ヨングク弁護士を代理人として国家人権委に陳情を行った。
 だが陳情に対する国家人権委の決定は、不法移住労働者には不法行為をもって対応してもよいとの判決にほかならなかった。判決内容を見ると、第1に連行過程で明らかに不法性は認められるので、以降は再発しないように勧告するというものであり、第2にアンワール委員長関連の各種の訴訟が終わる時までは強制退去を留保するよう勧告する、というものだった。
 実に自己矛盾と言わざるをえない。明らかに連行過程での不法性が認定されているのに釈放ではなく、訴訟が終わるまでは強制退去を留保することを勧告するだなんて。この判決に対して移住労働者たちが国家人権委を占拠したのは最低限の抗議であり、当然な怒りの表現だったのだ。

不法行為に目をつ
ぶる人権委員会

 筆者は、実に厳酷だと言われていた80年代末に労働者組織の事件で拘束され治安本部の対共分室で、20日間も取り調べを受けた後、さらに検察に送致されて20日間、取り調べを受けたことがある。筆者とともに拘束されていた1人の労働者が検察の失策によって拘束期間延長期限を超えるという事態となり、当事者が釈放されたばかりでなく当時、事件を取り調べていた検事も地方に左遷されるということがあった。
 ましてや人権政府を経て参与政府を唱えているこのご時勢に、単に不法移住労働者だということ1つだけをもって国家人権委さえもが不法行為に目をつぶったという事実は、わが社会が偏狭な民族主義的視角を捨て切れずにいるという点を、そっくり示しているものだと言うほかはないだろう。


17日間の占拠籠
城の持つ意味

 国家人権委員会全員委員会では05年11月14日、アンワール労組委員長の不法拘禁についての陳情に対して、これが適法だとの決定を下し、正式発表もすることなく12月2日に至って労組に決定文を送ってきた。これに対して移住労組も各連帯単位では、このような決定について出入国管理所の不法な強制取り締まりや長期拘禁を正当化する措置だとして糾弾するとともに、12月5日に国家人権委の占拠籠城に突入した。今回の占拠籠城が持っている意義は、大きく3つを挙げることができる。
 第1に、国家人権委の現況と限界をハッキリと確認した、という点だ。
 非正規改悪案反対と権利立法争取を目標として国会前で籠城闘争を展開している労働運動勢力に、国家人権委は政府案に対して派遣制や期間制に関連して最小限の阻止線を形成してくれたことは明らかだ。また特殊雇用労働者の労働3権に関しても相当に友好的なレベルで論議を展開しているとの情報は、明らかに国家人権委の肯定的活動のうちの1つだろう。
 けれども今回のアンワール委員長に対する判決は最近のカルプ陳情事件の却下とともに、その限界をはっきりと見せつけた、という点で。しかも移住労働者たちの国家人権委占拠籠城の過程で公権力の投入を口にして脅迫しつつ、人権委の本質には面と向かい合うことのないまま、国家機関の一部分にすぎないことを如実にさらけ出してしまったのだ。
 第2に、活動家たちのレベルではあるものの、移住労働者たちが一定程度の自信を持てるようになる契機となった、という点だ。
 雇用許可制の定着という美名の下に地域や工場で連日、続けられている強制取り締まりによって、移住労働者たちは合法的な労働組合活動さえ、おいそれとは遂行しがたかったのが現実だ。占拠籠城を通して活動家たちのレベルではあれ集中度、関心度が高まっているという点が、今後の労組活動のための大切な財産となるだろう。
 第3に、移住労働者たちを支持、支援しようとする諸団体の連帯を確認した、という点だ。
 386日間、続けられた明洞聖堂での籠城闘争に比べれば、わずか17日間の籠城にはすぎなかったけれども、およそ100余に及ぶ連帯単位の激励訪問や多大なカンパが寄せられ、移住労働者に対する熱い連帯を改めて確認した。


残された課題と広
範な連帯の構築

 今回の占拠籠城は、まだ依然として移住労働者たちにとっては残された課題があることを確認させるものでもあった。
 第1に、アンワール委員長釈放のための努力を多方面から進めなければならない、という点だ。
 これに関して、可能性は大きくはないけれども国家人権委に対する再陳情と法務部(省)に対する保護の一時解除請求、そして国際連帯レベルでILOに提訴するなど、釈放のための絶えざる努力が継続されなければならない、という点だ。
 第2に、移住労組の組合員たちにまで活動の幅を広げる問題だ。組合員たちのレベルで一般的な取り締まりや労組委員長の連行が持っている差別性を認識していたと言えるとしても、実際に行動に乗り出す実践的決意は依然として高くはないという点を勘案するとき、今後、組合員たちを対象とする教育宣伝や討論が必要なことだ。
 第3に、移住労組を支持、支援する連帯単位の体系化が必要だ。単に一時的な激励訪問を越えて、持続的に連帯を表明する諸団体や民主労総および移住労組間の定例的協議の枠を構築し、より体系的な連帯を構築しなければならない。(「労働者の力」第93号、05年12月30日付、キム・ヒョク/金属産業連盟・政策局長)


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