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自衛隊イラク第9次派兵に抗議を!             かけはし2006.1.23号

「米軍再編」と連動した自衛隊の「対テロ」戦争を止めろ


米海兵隊と自
衛隊の上陸作戦

 一月九日から、米カリフォルニア州サンディエゴ近郊の海岸で、陸上自衛隊員百二十五人(西部方面隊西方普通科連隊)と米海兵隊が共同の上陸演習を開始した。三週間にわたって行われるこの軍事演習は、他国の武装勢力が侵攻した南西諸島の離島を「奪還」するという「島しょ防衛作戦」を名目としたものである。米海兵隊と共同した「上陸演習」は初めてである。
 言うまでもなく「侵略された日本の離島の奪還」という想定は口実である。「鉄拳」というコードネームを持つ同作戦は、自衛隊が米軍と一体化して、海外での「対テロ戦争」に参戦するために他国への上陸作戦を行う訓練そのものだ。少なくともそうしたグローバル戦争における先制的侵略行動に転用されるものである。今年三月に最終的にまとめられる予定の「米軍再編」に関する報告は、日米間の世界的な「戦略目標の共有」にもとづいて米軍と自衛隊の作戦上での指揮・情報の統合、戦術上の分担をうたいあげており、今回の自衛隊と米海兵隊の共同「上陸演習」が、自衛隊が米軍と一体化して全世界で侵略的実戦配備につくことの具体的あらわれなのである。

秘密保全協定と
テロ対策基本法


 こうした「米軍再編」=「対テロ」グローバル戦争における米軍と自衛隊の軍事的一体化訓練は、自衛隊と米軍など防衛当局間の情報共有にともなう秘密漏洩を防ぐために電子化した防衛情報を対象に秘密保全協定を締結することや、「テロ対策基本法」を制定する動きと連動している。
 二月にも締結すると報道されているこの秘密保全協定では、情報漏洩が起きた場合、日米それぞれが関係者を処罰することを明記するとされている。さらにこの協定締結をきっかけに、今後、保全対象を「ミサイル防衛関連情報」や「軍事情報一般」へと拡大することが検討され、将来的にはアメリカがイギリスなど六十カ国と結んでいる「軍事情報に関する一般的保全協定」(GSOMIA)を日米間で締結することも視野に入れているとされる(1月13日共同)。すなわち、「対テロ」戦争に自衛隊が参画するにあたって必要とされる「軍事秘密保持」の強制を意味する。「軍事秘密」の聖域化と「知る権利」の剥奪が戦争国家体制の構築にとって不可欠とされるからである。
 「テロ対策基本法」については、「テロの未然防止」を口実に、「テロ組織」や「テロリスト」と認定しただけで@一定期間の拘束A国外への強制退去B家宅捜索C通信傍受などの強制捜査権を行使することを想定したものとされる(1月7日、毎日)。すなわち「テロ組織」の一員であることを「犯罪」と見なすものであり、英米と同様にきわめて恣意的な人権侵害が横行することになることは明らかである。政府はこうした法案を来年にも作成する準備を進めているのだ。
 こうして米軍と一体となったグローバル戦争への自衛隊の実戦的組み込みの体制が、まさに憲法改悪と平行し、それを促進するものとして整えられようとしている。

イラク占領は
今後もつづく


 一月二十日から始まる通常国会でも、こうした一連の「戦争国家体制」のための法案整備がくわだてられている。防衛庁の「防衛省」への格上げ、海外派兵を自衛隊の基本任務とするための自衛隊法改悪などがそれである。さらにグローバル戦争への参戦は、従来の「特措法」ではない恒久的派兵法の制定を支配階級にとって不可欠のものとするのであり、そのための調整も加速することになるだろう。われわれはすでに開始した自衛隊東部方面隊の第9次イラク派兵に反対し、三月に迫った「米軍再編」最終報告の期限に合わせた横田、座間、岩国、鹿屋、沖縄・名護などの基地受け入れを地元自治体に強制するための攻撃をはねかえす闘いと結びつけて、戦争法案を阻止する世論と運動を拡大していかなければならない。
 イラク情勢が、十二月の総選挙を経てもさらに不確実さと混迷の度を増す中で、多国籍軍の占領支配の破綻がますます明白になり、ブルガリア、ウクライナなどイラクから軍隊を撤退させる諸国がさらに増加している。アメリカの忠実なパートナーだったイギリスやオーストラリアもすでに撤退の準備に入っている。
 陸上自衛隊も五月をメドにサマワから撤退するとの観測もしきりに流されている。しかし航空自衛隊はクウェートからイラクへの軍事輸送のために派兵され続けるのであり、昨年十二月のイラク派兵「基本計画」改定では、航空自衛隊が活動できるイラク国内の空港が従来の十三カ所からイラク全土に広がる二十四カ所に拡大した。米軍は自衛隊の新たな輸送先としてバグダッドやバクダッド近郊のバラドなどを挙げており、まさに空自のC130輸送機の活動範囲は、米占領軍のイラク占領支配の中枢地域に広がろうとしているのだ。さらに陸自についてもかりに本隊が撤退した後でも、米軍が主導する「地方復興チーム(PRT)」に陸自中堅幹部を参加させるよう米政府が要求している、と報じられている(1月14日、産経)。
 ブッシュ米政権は、国内からの米軍撤退世論の広がりに追い詰められながら、あくまでも十数万の大軍をイラクに駐留させ続けようとしており、日本政府・自衛隊を数少ない強力者としてつなぎ止めるために躍起となっている。そして日本政府もまた、「グローバルな日米軍事同盟」の形成のために、自衛隊イラク派兵の継続を形を変えても継続する意思を固めている。
 すでに一月から東部方面隊のイラク派兵に抗議する闘いが連続して繰り広げられており、二月十二日には「自衛隊はイラクへ送るな!もどせ!練馬集会」が広範な人びとによって準備されている。WORLD PEACE NOWはイラク開戦三年目にあたる三月十八日に、全世界の反戦運動と連携して日比谷野外音楽堂での集会とピースパレードを呼びかけている。こうした行動を成功させよう。

米軍再編と憲
法改悪に反対


 「米軍再編」に反対する闘いは、沖縄、岩国、神奈川(座間、相模原)、横田など、自治体ぐるみの反対運動が発展し、政府を苦境に追い込んでいる。小泉政権は、自治体の首長に対して「日米協力という国益」をふりかざし、都道府県知事の公有水面埋め立て許可、建築確認、道路使用などにかかわる権限を剥奪する「特措法」の制定をも想定した攻撃を強めている。沖縄では三月五日に「県民総決起大会」が予定されているほか、神奈川県でも横浜、座間、横須賀などで二月から四月にかけた抗議集会が準備されている。
 昨年十二月の八王子での米兵によるひき逃げ事件、一月に横須賀で起こった空母キティーホーク乗務の水兵による女性殺害事件など相次ぐ米軍犯罪は、「米軍再編」に伴う基地の再編・強化が、いかに住民の暮らしを破壊することになるかを端的に示すものであった。横須賀での米水兵による強盗殺人事件に際して、横須賀を選挙区とする小泉首相は「日米地位協定の改定を要求するつもりはない」と冷たく言い放った。
 イラク反戦、「米軍再編」、自衛隊の海外派兵と新たな戦争法案に反対する運動をねばり強く拡大し、憲法改悪反対を正面から訴えていこう。「米軍再編」問題こそ、9条改悪、「自衛軍」創設、海外派兵・「集団的自衛権」の発動容認を基軸とした憲法改悪の根本に迫る核心的課題なのだから。(1月15日 純)


米兵の女性虐殺事件糾弾!
軍隊の存在こそ住民の生活をおびやかす元凶なのだ!

 【神奈川】一月三日に横須賀市で通勤途中の女性が殺害された事件は、五日キティーホーク上等水兵が容疑者であることが米軍によって発表され、横須賀米軍基地での取調べを経て、七日神奈川県警がこの水兵を逮捕した。
 この殺害は酒に酔った上で行われた。被害にあった女性は内臓破裂、肋骨を六本も骨折するなどという殺され方で発見された。水兵の供述は明らかにされていないが、財布から一万円余がなくなっていたことを考えると金銭目的の面もあったようだ。
 事件から数日たち、殺された現場近くの通りは米兵とその家族も歩いており、それまでと変わらない光景のようにも見える。しかしこの事件を忘れてはならない。
 キティーホークの艦長が遺族を訪れるなどして事態の収拾に躍起になった。米軍と捜査関係者は起訴前に何とか身柄引き渡しにこぎつけたことを吹聴した。しかし殺人犯が協議の上で逮捕されるという特例を是認するわけにはいかない。起訴前の引き渡しは、原子力空母母港化を円滑に進めるための「配慮」に過ぎないことは確かである。
 この事件の直後、七日には沖縄・キャンプ瑞慶覧で米兵によると思われるタクシー強盗事件が発生し、十二日にも沖縄市内で退役したばかりの米軍人によるタクシー強盗事件が起きた。佐世保でも七日、強襲揚陸艦「エセックス」水兵によるひき逃げ事故が発覚している。去年十二月には厚木基地所属の米軍水兵が八王子でひき逃げ事件を起こし、小学校児童に重傷を負わせながら、公務の途中であることを理由に身柄引き渡しが拒否されている。軍事基地の存在がこれらの犯罪を引き起こしていることは明らかなのに、自治体首長はなぜ基地撤去を言わないのか。
 松沢神奈川県知事、蒲谷横須賀市長はそろって「真相究明、綱紀粛正」などを求めるコメントを出した。だが大和市長のように厚木基地で空母艦載機の爆音に悩まされる立場から「蒲谷市長は原子力空母はやめてほしい、通常型空母にしてほしいというが、今回の事件を起こしたキティーホークは通常型空母の水兵だ。空母そのものをなぜ否定しないのか」と批判する自治体首長も出てきている。本土で、沖縄で、事件が頻発する背景には日米地位協定が犯人を温存するシステムがある。
 非核市民運動宣言ヨコスカなどの呼びかけで抗議行動が取り組まれている。今回の事件も水兵の人格の問題に押しとどめられてはならない。
 江畑謙介氏はたとえば原子力空母の場合、要員の選定基準は厳格だと説明している。軍隊が育てた暴力性、貧困、被抑圧性こそが、空母が寄港する地域の住民に危害をくわえている。
 原子力空母が配備されれば放射能漏れの危険は横須賀、神奈川だけの問題ではない。そして原子炉の出力が早く、燃料交換も少なくてすむことは、原子力空母においては戦闘行為の長期化が進むことであり、空母で生活する要員の抑圧は全体として高まる傾向にあるだろう。
 キティーホークはイラク侵略において艦載機が五千回発着し、三百九十トンもの爆弾を投下するほどフル回転してきた空母だ。米軍空母は通常型も、原子力もいらない。米軍再編「中間報告」が出たが、事実上米国の最後通牒に近い案である。再編による機能強化の実態と、住民被害の可能性を明らかにし、戦争国家化に歯止めをかけよう。基地移転先である地方への交付金を盛り込んだ米軍再編推進法の成立を阻んでいこう。   (海田)


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