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韓米FTA4次交渉阻止闘争              かけはし2006.11.27号

FTAは市場開放にとどまらず社会全体の構造再編に直結


 10月23日から5日間、韓米FTA4次交渉が済州島で進められた。7月に行われた2次交渉において民衆の闘争によってノ・ムヒョン政権に対する一定部分の圧迫を加えると、交渉の場所を済州島へと移したのだ。
 これに対して労働者、農民、学生らは済州遠征隊を組織し、4次交渉を阻止するために済州島に向かった。だが4次交渉阻止闘争は交渉に実質的打撃を加えるには不充分だった。

打撃を与えられなかった闘い


 韓米FTAは市場開放だけではなく、労働組合や労使関係までもが関わっている。したがって韓米FTAは社会全体に対する構造再編をねらっている。これは新自由主義の世界化を具現することによって労働者・民衆の生存権を脅やかす。間違いなく韓米FTA阻止闘争は労働者・民衆の生存権に対する帝国主義と資本の攻勢を阻止する闘争であり、ノ・ムヒョン政権に対する闘争だ。
 7月の2次交渉の際には、韓米FTA阻止汎国民運動本部(以下、汎国本)の内部では闘争の基調や戦術をめぐって争点が形成された。当時、汎国本は「反新自由主義」の基調には同意したものの、「ノ・ムヒョン政権退陣」に関しては異なる意見が存在したし、戦術をめぐっても「11月全国民衆総決起の組織」には合意したものの「交渉の場への打撃闘争」は合意がならなかった。
 結局、2次交渉の阻止闘争では「ノ・ムヒョン政権退陣」や「交渉に対する打撃闘争」の代わりに青瓦台(大統領府)への進撃闘争を進めた。2次交渉阻止闘争は交渉自体にはさしたる影響を与えられなかったものの、FTA反対の世論に力を与え一定部分、ノ・ムヒョン政権に圧迫を加える闘争を実現させた。
 2次交渉阻止闘争以後、ノ・ムヒョン政権はFTA反対の世論を静めるために言論報道を否定する一方「FTA交渉の年内妥結」という攻勢的態度を取り始めた。したがって4次交渉は攻勢的に韓米FTAを妥結させようとするノ・ムヒョン政権に対する「退陣」闘争を本格化する一方、実質的に交渉に圧迫を加えるために交渉に対する打撃闘争が展開されなければならなかった。

労働者隊伍の無気力な対応


 汎国本は韓米FTA4次交渉が始まった10月23日、7千余人が集結して汎国民大会が開かれた。大会が終わった後、交渉場進入闘争における汎国本の無気力な対応が、そのままさらけ出された。汎国本は闘争全体の状況を総括できず、実質的な闘争戦術も出せなかった。むしろ農民らが交渉場に進入するために海に飛び込み、24日の闘争でも交渉場への要所を阻んでいたコンテナを引きずり出すなど、自発的闘争を展開した。
 だが汎国本は集会隊伍の自発的闘争さえ妨害した。24日、天帝渕瀑布の前で物理的衝突が発生したとき、汎国本は慌てて集会を締めくくろうとした。これに対し集会隊伍から雨あられのような抗議があったにもかかわらず解散集会を始め、一方では闘いを、他方では解散集会を行うという笑うに笑えない状況までもが発生した。
 農民の隊伍は23、24日の闘争をはじめ、25日には警察の阻止線を破るなど物理力を動員した自発的闘争を展開したものの、結果的に見ればイベントを超えられなかった。
 労働者の隊伍は主体的計画や闘争意志が不在だった。民主労総チョ・ジュノ委員長は「名分をかけて韓米FTAを阻止する」と語ったけれども、済州遠征闘争において労働者の隊伍は、それこそ農民らの闘争の補助的役割を担うレベルを超えられなかった。23日、農民らが海に飛び込んだとき、労働者の隊伍は警察が挑発しないように農民の隊伍を援護するという計画だけだった。労働者の隊伍は挑発しない警察の前でキョトンとして立っていた後、何人かが自発的に農民と同じように海を渡った。次第に後を追って海を渡る人々が増え始めると、その時になって民主労総は、渡って行けとの指針を出した。労働者の隊伍の大方が向こう側に渡ったところ、民主労総はキャンドル文化祭をしなければならないとして、再び戻ってこいとの指針を出し、労働者たちの怒りを買った。
 また民主労総が計画していた済州遠征団の半分にも及ばない数だけが遠征団として組織されたのであり、闘争の過程でも以前の闘争で示された意志ほどには闘争を展開することができなかった。これは今なおFTAを労働者階級の問題として受けとめられなかったからだ。
 汎国本内で「ノ・ムヒョン政権退陣」と「交渉場圧迫闘争」を主張していた社会団体を中心とした左派の隊伍もまた闘争の戦術においては無気力だった。左派の隊伍は、その数が少なかったという限界の中で、汎国本や労働者の隊伍の無気力な闘争によって、一緒に無気力になった。交渉場である新羅ホテル前でゲリラ的デモを展開したことのほかには、いかなる独自戦術も駆使することができなかったのであり、さりとて彼らが主張してきていた基調について扇動することもできなかった。
 4次交渉阻止闘争は、汎国本の無気力や労働者の隊伍の主体的闘争計画の不在を確認する場だった。2次交渉阻止闘争の意味を生かし、交渉場圧迫闘争を展開するどころか、韓米FTA交渉にさしたる影響を与えられなかった。
 交渉場が済州島という地域的限界がありはしたものの、各地域別の闘争も力強く展開されて然るべきだった。だが汎国本はソウル集中闘争を計画するよりも地域闘争として決定した。地域別闘争は地域別に違いはあるものの、普通は100〜300人の隊伍のレベルで進められ、元気ある闘争というよりは形式的集会の水準を越えられなかった。

ノ・ムヒョンの政権退陣を!


 韓米FTA4次交渉では5次交渉のための基盤を作った。各分科別に相当の合意を実現した。このような合意を基盤として5次交渉ではサービス、知的財産権、繊維、農業など主要部門における合意が予想される。
 12月4日、米国で行われる5次交渉、そして来年1月に韓国で予想される6次交渉が残っている。また11月の非正規職改悪案の通過を前にしている状況で民主労総は11月15日のゼネストを宣言し、11月22日の民衆総決起を控えている。民主労総は11月12日の全国労働者大会を皮切りに本格的な闘争に突入する予定であり、汎国本は11月1日から籠城に入り、11月22日の民衆総決起を準備している。
 だが民主労総のゼネストをはじめとする下半期の闘争は、まだ階級大衆の主体化した闘争としては組織されてはいない。また民衆総決起もまた闘争の基調として「韓米FTAの中断、民主的労使関係法の争取、戦争―反核・米帝国主義反対、ノ・ムヒョン政権の審判」という4大課題を提出しているものの、ノ・ムヒョン政権退陣闘争へと踏み込んではいない。
 汎国本は、これまでの韓米FTA阻止闘争の過程で総資本としてのノ・ムヒョン政権に打撃を与える闘争ができなかった。FTA反対の世論によって下半期闘争の橋頭堡を確保することに一定の政治的成果を挙げた7月の2次交渉阻止闘争にもかかわらず、4次阻止闘争は下半期闘争を上昇させることができなかった。また11月民衆総決起の闘争基調も「退陣」ではなく「審判」にとどまっている。
 11月闘争は韓米FTA阻止闘争ばかりではなく、平澤米軍基地、労使関係ロードマップ―労働法改悪阻止闘争など全民衆的闘争戦線が結合・拡張されなければならない。このような単一戦線の中で実質的なゼネスト、民衆総決起を組織し、展開していかなければ、非正規改悪案―労使関係ロードマップ、平澤米軍基地、そして12月と1月に行われる韓米FTA交渉で再び同じ過ちを繰り返さざるをえない。今こそ階級大衆の力によって11月民衆総決起をノ・ムヒョン政権退陣、新自由主義世界化にケリをつける闘争として作っていかなければならない! (「労働者の力」第114号、06年11月10日付、パク・ミョンヨン/編集局長)


朝鮮半島日誌
国連の北朝鮮人権状況非難決議に韓国が賛成

10月25日 b「核実験に関連する放射性物質キセノンが検出された」(韓国の科学技術省が明らかにし、韓国政府は北朝鮮の核実験実施を正式に確認)。bスイス連邦政府が国連安保理決議に基づき、北朝鮮関連資産凍結などを柱とする経済制裁策を決定(有力金融機関が集中するスイスには以前から北朝鮮の口座開設が指摘されていた)。b「北朝鮮との関連があり、同政府の完全な同意と管理のもとで製造され分配されている」(米金融当局が偽造ドル札製造で北朝鮮関与と断定)。b日本の財務省は、北朝鮮の朝鮮国際化学合弁会社の日本における口座3件を新たに凍結。
10月26日 b国連での日本主導の核廃絶決議案が昨年を上回る169カ国の賛成で採択される。反対国は米、北朝鮮、インドの三カ国。b韓国政府が国連制裁決議への対応措置案概要(制裁対象に指定される北朝鮮の個人・団体の出入国・滞在禁止、北朝鮮への送金統制、コメ・肥料支援凍結措置延長、水害復旧支援品や南北連結鉄道・道路整備資材引き渡し留保、開城工業団地の追加分譲延期など)を明らかに。b韓国の国家情報院が、この日までに民主労働党の幹部ら5人を国家保安法違反容疑(今年3月に中国で北朝鮮工作員と接触・密会したとするもの)で拘束。
10月27日 b月末からの訪朝を予定していたドイツ連邦議会の訪問団が、同行メディアに対する北朝鮮当局の選別的対応(9社中4社にビザ発給拒否)を理由に訪朝中止を明らかに。b「北朝鮮が核実験を行った蓋然性が極めて高いものと判断するに至った」(日本政府が北朝鮮核実験実施を認定、独自調査では放射性物質が検出されていないため断定は回避)。
10月28日 b「北朝鮮の船は船齢が高いものが多いため、結果的に検査対象になる確率が高い」(北朝鮮船の相次ぐ出港禁止措置について香港当局者が説明)。
11月5日 b「慎重に判断し必要な部分だけ維持」(46%)「現状のまま維持」(42%)「中断」(12%)(北朝鮮核実験後の開城工業団地開発事業の継続について大韓商工会議所が国内企業二百社を対象に実施した調査結果を韓国メディアが伝える)。
11月6日 b「国連安全保障理事会の精神と趣旨に符合する方向で金剛山観光と開城工業団地事業を継続する」(韓国ノ大統領が国会演説で)。
11月7日 b北朝鮮の姜錫柱・第一外務次官が北京経由でモスクワ入りしたとロシアメディアが伝える。b日本政府の拉致問題本部が関係省庁対策会議の初会合を開き、「情報」「法執行」「広報」の3分科会設置を決める。
11月9日 bイランでの国際会議出席のため北朝鮮国会代表団がピョンヤンを出発したと北朝鮮が伝える。bドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)が国連安保理制裁決議に基づき北朝鮮に対する自動車販売を中止したことを明らかに。同社は北朝鮮への輸出を04年に始め2年間で5百台以上を販売しており、北朝鮮国内では4千〜5千台のメルセデスが走っているが部品交換や修理が容易でないため新車や中古車を次々と買い入れる必要があるという。
11月10日 b菅総務相がNHKに対して短波ラジオ国際放送の報道や解説で北朝鮮による日本人拉致問題を重点的に扱うよう命令。b日韓両政府がこの日までに戦時中に日本によって徴用され、戦地で死亡した朝鮮半島出身者慰霊のため韓国人遺族の追悼巡礼(フィリピン、パラオ、サイパンの3カ所)を12月中に実施することで合意、また朝鮮半島出身者遺骨処理に関する日韓当局者協議で日本の自治体や寺院から新たに51人分の遺骨情報が寄せられ、現時点で1270人分の遺骨所在が判明。b「万景峰号の入港禁止で親族訪問を断念させられ、朝鮮学校の修学旅行が飛行機に変更させられるなど制裁で在日朝鮮人の生活が圧迫されている」(朝鮮総連の徐忠彦国際局長が外国特派員協会記者会見で)。
11月13日 b韓国の政府機関「強制動員被害真相糾明委員会」が、BC級戦犯に問われた朝鮮半島出身の83人を被害者と認定し、遺族らを含めて名誉回復を図ると発表、軍属の捕虜監視員は強制動員の一つの形態だったと指摘。b「(南北経済協力事業は)民間企業の自立的な判断と責任で推進する」(韓国政府が国連安保理の対北朝鮮決議履行の計画書を発表し。米日とは距離を置き現行措置の補強で対応することに)。
11月14日 b日本政府が「ぜいたく品」24品目の北朝鮮向け輸出を禁止する外為法に基づく輸出貿易管理令の改正を決定、24品目の対北朝鮮向け輸出は総額11億円(05年)で同国向け輸出全体の16%。
11月15日 b北朝鮮が核実験に使用した原材料は、寧辺の黒鉛減速炉の使用済み核燃料を再処理して得たプルトニウムだった、との説明を北朝鮮の核施設責任者から受けたことを訪朝(10月31日〜11月4日)から帰国した米国の民間の安全保障・核兵器専門家らが明らかに。
11月16日 b「週初めに行内の上層部から送金再開の指示を受けた」(中国の銀行大手の中国建設銀行が、企業に限って北朝鮮への送金業務を再開したことを明らかに)。b「米国の核脅威と制裁が検証可能で信頼できる方法で終息すれば私たちにはただ1個の核兵器も必要なくなるだろう」(イランで開かれた「平和のためのアジア国会協会」総会に出席した北朝鮮代表が演説で)。
11月17日 b人権問題を協議する国連総会第3委員会で北朝鮮人権状況非難の決議案を採択(賛成91反対21棄権60)、同決議案に前回棄権した韓国は今回は賛成し、北朝鮮は「わが国の神聖な統治権をないがしろにする違法文書」と非難。


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