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 安倍政権の改憲・戦争国家づくりを阻止し国会包囲を  かけはし2006.11.06号

教基法改悪案を廃案へ

防衛庁の「省」昇格法案を通すな!


安倍と麻生、中
川、下村の分業

 安倍政権の成立から約一カ月が経過した。安倍政権が最初の海外訪問先として選んだ中国・韓国との首脳会談のタイミングを見計らったような十月九日の北朝鮮による核実験の強行は、安倍政権の求心力を高める作用を果たした。
 安倍首相は、小泉前首相の「靖国」参拝の強行によって自らもたらした東アジア外交関係の危機を、米国や日本の財界の強い要求によって「改善」する方向に一歩踏み出しながら、北朝鮮の核実験がもたらした「制裁」と「有事」の機運に支えられて、小泉政権に匹敵するような七〇%の支持率を得ている。十月二十二日の神奈川と大阪の衆院補選で自民党は民主党などの野党候補に勝利することができた。
 安倍首相は、一方で自らの極右国家主義の思想を当面後景に退け、自らが批判した軍隊「慰安婦」への河野官房長官(当時)の謝罪談話(一九九三年八月)や、一九九五年八月の侵略戦争と植民地支配に対する村山首相の「おわび」談話を継承する姿勢を示している。しかし同時に、下村博文官房副長官の「河野談話見直し」発言、中川昭一自民党政調会長や麻生太郎外相の「日本の核武装」について「論議」をすべきという発言を、「政治家個人の発言」として容認する態度を取っている。安倍は自らの「本音」を下村、中川昭一、麻生らに代弁させながら、自分自身は別の「公式」的スタンスを慎重に維持することで足場を固めようとしているのである。

治安対策を焦点
にする教育改革


 安倍内閣が、前国会からの継続審議法案の中で臨時国会の最大の焦点にしているのは、言うまでもなく教育基本法改悪案である。安倍がモデルにしているのはイギリスの「サッチャー改革」である。安倍はその著書『美しい国へ』の中で、サッチャーが「自虐的な偏向教育の是正」を行い、「教育水準の向上」のために「水準に達していないことがわかった学校は容赦なく廃校にし」、「そういう学校に教師を送り出している大学の教育学部までがつぶされた」ことを高く評価する。そしてブレア労働党政権も「問題を起こす児童・生徒に対する教員のしつけの権限を法制化」し、「地域に悪影響をおよぼすおそれのある問題家庭を二十四時間監視」して「犯罪の芽を初期の段階で摘む」ことに重点を置いている、と称賛する。
 すなわち安倍にとっては、まさしく「教育再生」とは何よりも治安問題である。こうした観点から安倍は「学校評価制度」によって競争主義を全面化させ、「ダメ教師」をクビにし、大学入学前に「ボランティア」を義務づけ、「ジェンダーフリー教育」を攻撃して「家族の価値」を押し出す。「教育の目的は志ある国民を育て、品格ある国家をつくること」という安倍の主張は、徹底した国家主義に貫かれている。安倍政権の「教育再生会議」に貫徹されている新自由主義と国家主義の価値観は、まさに新自由主義グローバル化の下での「弱肉強食」原理に勝ち抜く少数のエリートを選別し、それ以外の圧倒的多数の子どもたちに対しては「治安問題」として「規律」への従順さのみを要求する、という論理である。
 しかし安倍政権がモデルとするサッチャーやブレアの「教育改革」がいかに弊害に満ち満ちたものであり、今日その見直しが求められているものであるかについては例えば『世界』11月号に掲載された阿部奈穂子「安倍政権は、問題の多いイギリス『教育改革』に追随するのか」が指摘していることである。
 安倍が教育基本法改悪に突進するのは、まさに彼の「教育再生」路線の矛盾が全面的に露呈する前に、社会不安の原因を「戦後教育」の責任に集約させ、「治安」の観点から憲法改悪に向けた大きな突破口を開けるためである。この点では民主党の「対案」(日本国教育基本法案)もまた、「日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い」と国家主義と伝統主義の色彩を前面化させており、両案の「すり合わせ」は、まさに国家主義をより深化させる方向を持たざるをえない。
 教育基本法案の特別委員会での審議は十月三十日から本格化し、超スピードで十一月初旬には衆議院を通過し、参院にまわされて十一月中にも可決・成立させられるおそれがある。すでに国会前では教育労働者たちのリレー・ハンスト闘争などが展開されている。十一月八日には国会を包囲するヒューマン・チェーン(午後4時、衆院議員面会所集合)や十一月十二日には教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の全国集会が開催される。

悪法ラッシュ
にストップを


 臨時国会への闘いの最大の課題として教育基本法改悪を絶対に阻止するために、この十一月の闘いに総力を集中しよう。
 臨時国会における闘いのもう一つの焦点は、防衛庁の省昇格法案である。防衛庁の省昇格法案は、防衛庁設置法改悪案と自衛隊の海外派兵を「付随的任務」から「本来任務」に格上げする自衛隊法改悪案をふくんでいる。この法案が、米国の「対テロ」グローバル戦略に対応した自衛隊と米軍の実戦的一体化に対応したものであり、恒常的海外派兵法に道を開くものであることは言うまでもない。
 同法案の成立については民主党も容認しており、十月二十七日の衆院本会議で審議入りした。政府・与党は今国会での成立を意図しており、航空自衛隊のイラク派兵基本計画の延長反対の闘い、米軍再編反対の全国各地での運動と結び付けた反対の世論を広げていく必要がある。
 十月二十六日から審議が始まった改憲手続き法案、さらに今国会での成立を「断念した」と報じられている共謀罪法案についても、決して予断は許されない。
 北朝鮮の核実験強行がもたらした、「制裁」や「船舶検査」、「周辺有事」の認定、集団的自衛権の行使に関する政府統一見解の見直しの動きは、安倍政権の「予想外の柔軟さ」というメディアの宣伝に助けられながら、戦争国家づくりと改憲をめざす諸法案を着実に成立させる攻撃に集約されている。今こそ国会に向けた労働者・市民の闘いを作り上げよう。(10月29日 純)                           


 神奈川県警公安課によるA同志の令状逮捕・不当捜索に抗議する 
                                新時代社


 十月二十四日朝、われわれの同志Aは、自宅を出たところで「免状不実記載」の容疑で令状逮捕された。ほぼ同時刻にA同志の自宅とともに新時代社が神奈川県警公安3課による捜索を受けた。翌二十五日には関西新時代社も捜索を受けた。A同志の自宅の捜索はきわめて威嚇的なものであり、部屋の壁などの「指紋」採取をふくめ実に七時間もの長時間に及んだ。A同志は十月二十五日には十日間の勾留延長が付けられた。
 われわれはA同志の不当令状逮捕と新時代社への不当捜索に怒りをもって抗議する。A同志の「容疑」とされているものは、彼の運転免許証に記載されている住所が、彼が長年にわたって住んでいた実家のものであり、現在の住所ではないということに過ぎない。神奈川県警公安課は、それをもって刑法百五十七条の「公正証書原本不実記載等」の「公務員に対し虚偽の申し立てをし、免状、鑑札、又は旅券に不実の記載をさせた者は一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」という項を不当に適用したのである。
 この間、左翼の政治組織や労働運動、市民運動などの活動家に対する、通常では考えられないような「微罪」での逮捕が頻発している。反戦運動や憲法改悪反対の闘い、さらに三里塚空港反対闘争や静岡空港反対運動に積極的に関わってきた同志Aのねらい撃ち的逮捕は、たんに同志Aやわが同盟に対する弾圧ではなく、すべての社会運動、市民運動に対する威嚇にほかならない。彼の逮捕に対しては、多くの人びとから「あまりにもあからさまな弾圧だ」という抗議の声が多数寄せられている。アジア連帯講座の呼びかけで「Aさんの逮捕に抗議する」共同声明運動も始まっている。
 小泉―安倍政権の下で、憲法改悪・戦争国家体制作りの動きに拍車がかかっている。その中で、政府に反対する言論の自由や労働者・市民の正当な権利の行使を「テロ」と結びついた「犯罪」と見なし、急速に拡大する「格差社会」への批判の高まりを抑え込むために治安監視体制が強化されている。政府与党が強い反対を押し切って強行しようとしている「共謀罪」法案は、その現れである。
 左翼組織と運動、少数派の言論を社会的に排除しようとする機運も拡大している。立川自衛隊監視テント村の反戦ビラ入れへやマンションなどへの政党ビラ入れに対する「住民の安寧を脅かす」という名目での逮捕・起訴・長期勾留はその典型である。「捜査令状」の交付を無条件に認める裁判所もこうした治安国家体制に向けた警察の弾圧を追認している。
 われわれは言論の自由と民主主義的権利の行使を妨害する権力の不法な弾圧をはねかえし、A同志の即時釈放を求めるとともに、すべての労働者・市民とともに憲法破壊や権利と自由の剥奪を絶対に許さない闘いをひるむことなく作りだしていくことを決意している。     (10月28日)


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