もどる

裏取り引きと背信に終止符を!              かけはし2006.10.9号

労使政委解体、韓国労総解体、強力なゼネスト闘争の組織化を


予告されていた裏取り引き

  イ・ヨンドゥクを初めとする韓国労総が難しい決断(?)を下した。専従者の賃金3年分を補填するために、労働者の団結権を制約する複数労組の受け入れを3年間、猶予させ、公共部門のスト権を無力化させ、労働の柔軟性を拡大させる労働悪法に肩を持った韓国労総! 紛うことなく韓国労総は御用集団の象徴として、資本と政権の下手人として、自らの役割を忠実に履行したのだ。
 韓国労総の官僚集団は、それがまさに自らの「アイデンティティー」だったのだ。むしろそのような韓国労総との「共助」を云々しつつ、ロードマップ粉砕・民主的労使関係の8大課題争取を主張してきた民主労総が自己批判をしなければならない問題だ。
 韓国労総は労使政代表者会議の交渉でも一貫して専従者問題を核心とし、他の問題に接してきた。9・11の裏取り引きがなされるはるか以前から韓国労総は「専従者問題」に命運をかけ、これを争点化させてきた。段階的許容から「猶予説」まで取りざたされていたこの予告された「裏取り引き」を、民主労総をはじめとする民主労組運動陣営は承知の上ではまる形となり、またもやお伴の役割を演じるという恥辱を甘受しなければならなかった。

労使政交渉活用論の破産

 2004年、ノ・ムヒョン政権の「社会統合的労使関係の構築」という労働政策の基調発表以降、本格化した社会的合意の攻勢は労働(組合)運動陣営内部に論争をもたらした。
 民主労総指導部は「交渉と闘争を併行しなければならない」と主張しつつ労使政交渉の活用論を提起し、結局のところ「社会的交渉」へと言い方を変えてその通過を強行しようとし続けてきた。
 これに対してノ・ムヒョン政権の社会的合意攻勢の本質が暴露され社会的交渉に対する強い反発が相次いだ。「民主主義の棄損」なのか「民主労組運動のアイデンティティ」なのかをめぐって何度も混乱を繰り返し、民主労総の指導部は結局、職権によって労使政代表者会議に参加した。
 続いて2000年6月、ロードマップ粉砕および民主的労使関係争取のために労使政代表者会議への参加を再び決定した。だが結果は9・11の裏取り引きによって終わりとなり、3カ月はムダとなった。この間、現場の組織化は留保され、各単位事業場の規模や条件によってロードマップについての集中点はバラバラに理解され、ロードマップ粉砕の闘争基調は霧散霧消してしまった。
 この10余年の間に、民主労総は「労使政交渉の活用論」から抜け出せないまま、戦線を明確にできず、また実践的誤りを繰り返してきた。9・11の裏取り引きもまた同じことで、指導部の強固な意志で参加した労使政代表者会議の結末がこうなるとともに、労使政交渉構造の大衆的破産はもちろんのこと、これによる大衆的不信は一層、深刻なものになるだろう。
 9・11労使政での裏取り引きは、民主労組運動陣営内部の協調主義・改良主義勢力が資本や政権に物乞いしていた「社会的合意」の構図が現実において破綻したということをハッキリ示したものだ。また本質的に労使政代表者会議は「柔軟化、労働組合運動の無力化のための労働者巻き込み機構」にすぎず、「労使政活用論」はもはや可能でないばかりか労働者たちを欺く反労働者主張だということが現実に証明された。
 そして民主労組運動内部の一部勢力が主張している「対等な社会的合意」はそれ自体(路線的側面)でも問題だが、政権や資本によって棄却されたことを確認しなければならない。したがって民主労総をはじめとするすべての民主労組運動陣営は「労使政委解体」を主張して闘わなければならない。そして社会的合意主義の破産宣告を下さなければならない。

裏取り引きと労組の無力化

 9・11労使政合意として発表された内容はイ・サンス労働部長官の言葉通り「柔軟性の拡大」として表現できるだろう。「不当解雇による刑事処罰条項も削除され、経営上の解雇も自由にしたため解雇の自由、柔軟化拡大の画期的前進」だとする政権の評価は、政権の意図が何であるかを明確に示している部分だ。まさに政権はロードマップを通じて「柔軟化の拡大」を目標としていたのだ。これは資本の利害と正確に一致し、これ以降も、資本の全面的攻勢が予定される問題でもある。
 職権仲裁の廃止を対価として許容した必需(注)業務の維持と代替勤労は公共部門の労働者たちのスト権を事実上、封鎖するものにほかならない。ある者は職権仲裁が廃止されたのだからストによる拘束、解雇、損賠が減るのではないのかという話をしたりもする。これは必需業務維持制度と代替勤労の許容がもたらす影響を全く理解できていない主張だ。
 公共部門の労働者たちは職権仲裁によってスト権を実質的に保障されず、不法ストを甘受しつつ闘ってきた。職権仲裁という悪法を拘束、手配、解雇、損賠という犠牲を甘受しつつ「悪法中の悪法」として争点化させ、不法ストによって突破してきたのだ。この過程で公共部門の労働者たちは「ストライキ」の威力を確認し、階級的意識を整えつつ公共部門の労働組合運動を発展させてきた。
 ところで職権仲裁を廃止する代わりに必需業務を維持し代替勤労を許容するとすれば、スト権は初めから封鎖されるのだ。ストを行っても現場は回るのでストは形式的なストとなるだろうし、政権や資本に打撃とならないストよりも上層中心の交渉がはびこることになるだろう。これはストの性格を変える問題となるものであり、公共部門の労働者たちの闘争の性格や組合運動の方向を変える問題として現象化する。
 ストが本当に武器になろうとするならば代替勤労を阻止するか、必需業務を維持しないストをしなければならないが、そうなれば「不法」となることは同じであるため、職権仲裁の廃止は現時点においてはいかなる効果も発揮できない。
 これに加え必需公益事業場の対象範囲まで拡大したのだから公共部門の労働者たちのスト権はないも同然の形となる。そしてこれが全事業場へと拡大するのは間違いなく資本が持続的にねらっている問題であるがゆえに、資本の主導力が一層強化された労使関係となりわれわれは再び後退せざるをえない可能性も存在する。また不当解雇に対する罰則規定の削除や金銭補償制の実施は、現在まで闘争している解雇者たちを一挙にわずかばかりのビタ銭で整理するとしている資本の意図が現実化されることを意味する。
 複数労組の3年間の猶予は絶対多数の労働者たちの団結権を制約するものだ。ノ・ムヒョン政権はロードマップにおいて複数労組を許容する代わりに交渉の窓口を単一化するという排他的交渉制度を押しつけてきたのである。これに対して労働界は自律交渉制を主張し、同時に産別交渉体制についての法制度的保障を要求案として提出した。だが政権や資本は交渉費用を最小化するとの基調の下、複数労組問題にアプローチし、これに沿って少数労組などの交渉権やスト権を封鎖する複数労組許容方案を提出したのだ。だが、これを理由とする複数労組の猶予を黙認することはできない。むしろ複数労組は許容の本旨である「すべての労働者に実質的な労働三権」が付与されるものとして複数労組を制度化しなければならない。だが労使の裏取り引きは労働者らの自主的団結権を、またもや封鎖する方案を維持することによって、絶対多数の労働者たちの権利をはく奪する合意をしたのだ。

労使政合意事項の核心内容

1 労働組合ならびに労働関係調整法の改悪
―企業単位の複数労組の許容ならびに労組専従者への給与支援の3年間の猶予。
―労使政はb企業単位の複数労組の許容時に混乱を最小化できる方案b労働組合自らが専従者の給与を負担できる財政自立の方案の集中論議。
―職権仲裁の廃止。現行の必需公益事業に血液供給、航空、廃・下水処理、蒸気・温水供給業を追加し、必需維持業務制度の導入ならびに代替勤労の許容。

2 柔軟性確保のための勤労基準法の改悪
―不当解雇時の金銭補償制導入。不当解雇罰則規定の削除ならびに履行強制金の賦課および不履行時の刑事処罰または過怠料の賦課
―経営上の理由による解雇時は現行60日から30日に事前通報期間の短縮。

労使政委解体、非正規―ロードマップ・ゼネストを組織しよう

 韓国労総は労働者たちの生存権や労働三権を「譲歩」という名によって資本に売り渡し、政府は「先進労使関係」という名のもとに労働組合運動を無力化させる法制度を完成させていっている。資本は、わずか何回かの「対話」によって柔軟化の拡大や使用者の対抗権強化という利得を手にした。民主労組陣営はキチンと闘いを組織できないまま、またもや「裏取り引き」を糾弾するにとどまっている。
 この6月以降、続けられてきた労使政の交渉期間中、われわれはハ・チュングン烈士と永遠の別れをしなければならなかった。全国の至る所で非正規職労働者たちの闘いが相次ぎ、公務員労働者たちへの労働弾圧は次第に拡大している。だが労働(組合)運動は政権や資本の労働分割攻勢を突き破ることができておらず、全国的闘争戦線を構築できないまま孤立分散的闘争を続けている状況だ。一部では複数労組・専従者問題の3年間猶予決定に安堵の胸をなでおろし、あるいは今やすべてが終わったと締めたりもしている。
 しかし、闘いは今からだ。民主労総をはじめとする民主労組運動陣営は直ちに闘いを宣言し、全国的闘争戦線を構築して踏み込まなければならない。9月17日の全国労働者大会は、まさに闘争を宣言する場とならなければならない。そして全力を傾けて現場、地域から闘いを組織しなければならない。
 ここで「闘争エネルギー不在論」に惑わされてはならない。むしろ今まさに重要なのは民主労総の指導部をはじめとする各連盟・地域・単位労組の幹部の隊伍と活動家たちの意志だ。立法予告の時期に合わせたゼネストを組織しぬき、10月の韓米FTA第4次交渉とも相まってノ・ムヒョン政権、資本に立ち向かう全国闘争戦線を構築しぬかなければならない。闘争の時期を前倒しし、国会の日程に振り回されない闘争日程を労働者たちに提示し、組織しなければならない。
 だが、これだけでは沈滞している現場を呼び覚ますことはできない。無力に陥っている活動家の隊伍が立ちあがらなければならない。1996年の全国ゼネストを再び作り出すとの覚悟で、この闘争を組織しなければならない。地域別の活動家たちの共同闘争の秩序を構築し、現場・地域で闘争の雰囲気を高めることのできる宣伝扇動と実践を展開しなければならない。これを土台にして10月末、全民衆的闘争と結合し、その闘争戦線の先頭に立たなければならない。
 政治運動を行っている活動家の隊伍もまた闘争の組織化に合流しなければならない。階級大衆に向けた「扇動」を超えて実践部隊として自らを立たしめなければならない。下半期のロードマップ・非正規悪法をはじめとする韓米FTA、平澤強制撤去などに対する大衆的怒りを「ノ・ムヒョン政権退陣」と「悪法撤廃」、「新自由主義の世界化反対」闘争を旗じるしとして単一の闘争戦線に結集しなければならない。これを通じて全民衆的闘争を現実化させることが重要だ。(「労働者の力」第110号、06年9月15日付、ソン・ジヒョン/労働・教育委員長)
(注)9月11日に開かれた労使政代表者会議では民主労総を除く労使政の代表者が集まり「先進労使関係ロードマップ」の核心的事案について合意した。この9・11の裏取り引きによって労働者は自主的団結権、スト権を再びはく奪され、じゅうりんされた。一方、資本家は一層強化された使用者の対抗権や解雇権を手にした。(「労働者の力」第110号、「ヒム・イヤギ」)
(注)必需公益事業 公益事業で、その業務の停止または廃止が公衆の日常生活を著しく脅かしたり、国民経済を明らかに阻害し、かつその業務の対処が容易ではない事業。現行法での適用対象は、鉄道(都市鉄道を含む)、水道・電気・ガス・石油精製および石油供給事業、病院事業、銀行事業、通信事業。

「平澤の強制住宅撤去」糾弾

全国でノ・ムヒョン政権退陣闘争に乗り出そう!

 ノ・ムヒョン政権は駐韓米軍の拡張移転予定地である平澤・大秋里、棹頭里の「強制住宅撤去」を9月13日に断行した。5月4日の大規模軍事作戦に続く凶暴な「国家暴力」がまたもや平和の大地・平澤でほしいままになされたのだ。
 「来年初めに敷地造成工事に突入するために空き家の撤去が早晩、なされなければならない」とする駐韓米軍基地移転事業団パク・キョンソ団長の、11日に行われた国防部ブリーフィングでの発言からも確認できるように、ノ・ムヒョン政権は平澤米軍基地拡張事業を既定事実化した。したがつて表向きは「対話」を通じた「平和的解決」を語ったものの、事業のつまずきを念頭において強制撤去を断行したのだ。
 ノ・ムヒョン政権は5月4日のときと同様に、言論を通じて9月13日は強制撤去の予定日ではないと発表していたにもかかわらず、未明4時を起点として2万余の兵力を動員してマウル(村)への進入路を完全封鎖したまま強制撤去という暴挙を振るったのだ。
 5月4日以降、大秋里、棹頭里の住民たちは幾重にも設置された鉄条網に包囲され息を殺さなければならなかったし、マウルの至る所に設置された監視カメラによって日常を統制されなければならなかった。そればかりか自分の農地に入るのに身分証をしめさなければならないという状況にさえ耐えなければならなかった。
 それにもかかわらず、非人間的、非人権的仕打ちにうちかつことができたのは、自らの「土地」を守り、「平和」を守り、「暮らし」を守り抜こうとする住民たちの思いだった。
 空き家撤去を名分として断行された強制撤去を通じて、移転敷地の予定地域の3分の2が破壊された。これは明らかにマウル共同体の破壊行為であり、結局のところ大秋里、棹頭里住民らの「暮らし」を暴力によってズタズタにしたのだ。またこの地から戦争の脅威を断ち切ろうとし、平和を守ろうとしている多くの民衆の願いを踏みにじったのだ。
 「5月4日のようには、されないぞ!」とする大秋里、棹頭里へ住民たちや平澤チキミ(守ること)の同志たちの強固な意志や抵抗にもかかわらず、2万余の公権力の前ではどうすることもできず空き家の撤去が強行されていった。だがノ・ムヒョン政権は、住民らの命にも等しいこの暮らしの大地に杭を打ち込み、鉄条網を張りめぐらし、大秋小学校を強制によって破壊してしまった時、むしろ抵抗の意志がさらに燃え上がったということを忘れてはならないだろう。
 米国の東北アジア軍事再編戦略である「戦略的柔軟性」に応じて、平澤の米軍基地拡張移転を滞ることなく推進しようとするノ・ムヒョン政権に対決し、9月24日の平和大行進を起点としてわれわれは一層、大きな闘いを作り出すだろう。また昨今の事態に対する一切の責任はノ・ムヒョン政権にあることを明確にし、ノ・ムヒョン政権退陣闘争に乗り出すであろう。
 2006年9月14日
 労働者の力


もどる

Back