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今度こそ共謀罪法案を廃案へ               かけはし2006.10.9号

あばき出される政府のウソ治安弾圧・監視社会にNO!



新法相が成立
強行を公言!

 安倍政権発足にあたって長勢甚遠法相は、第一六五臨時国会で共謀罪新設法案を「与党とよく相談しながら早期の成立に全力を挙げたい」と述べ、小泉政権のグローバル派兵大国化作りとセットである戦時治安弾圧体制強化路線を継承し、なんとしてでも法案を成立させることを宣言した。
 われわれは、長瀬発言を糾弾し、政府与党の法案強行成立にむけた一切の策動を許さず、法案に反対する国会議員、共謀罪新設法案の廃案をめざして共謀罪法案反対NGO・NPO共同アピール、共謀罪の新設に反対する市民と表現者の集い実行委員会、共謀罪に反対するネットワークなどの反対運動勢力とともに強行成立阻止・廃案にむけて全力で闘っていく。第一六四通常国会で法案の強行成立を阻止しぬいた成果を確認し、臨時国会においても数倍上回る陣形を作り出し、成立絶対阻止の闘いを強化していこう。地域・職場・学園から反対の烽火を上げ、国会を包囲していこう。

根本性格は変
わっていない

 法案は、第一六四通常国会で国会内外の反対運動の力によって継続審議に追い込まれてしまった。ところが与党は、なんとしてでも法案の成立にこぎつけるために通常国会の最終日、衆院法務委員会(六月十六日)で議事録に与党修正試案を参照とすることを記録する決議を採択してしまった。つまり与党は、臨時国会の衆院法務委員会において、再び政府原案から審議を再開してしまっては、またしても全国的な反対の声に包囲されてしまうという危機感から修正試案で審議を開始させるという作戦を強行したのだ。
 与党修正試案は、@「組織的な犯罪の共謀罪」の対象犯罪については、従来通り「長期四年」とするが、「過失犯」「陰謀・共謀罪」など二十八を除外することにするA「共謀」の定義をさらに明確にするために「具体的な謀議を行い共謀した者」と改める。「目配せ」だけでは、条文上も共謀にあたらないことを明確にするB「組織的な犯罪の共謀罪」の処罰条件として「実行に必要な準備、その他の行為」を加えて、この行為がない限り「逮捕・拘留」が出来なくなるようにしたC自首減免について、「共謀を行った者が実行着手の前に自首した場合に刑を必要的に軽減又は免除する」を削除し、「情状により刑を免除する」と規定を改めるD「組織的な犯罪の共謀罪」を犯した者が、その犯罪を実行した場合には、実行犯罪によって処罰され、二重処罰にはならないことを明確にするE「懲役・禁固五年以下」の犯罪については「当分の間、特に慎重適用されなければならない」と付則に明記する││という骨子だ。
 このような小細工をしてでも法案の「未遂を罰する」という根本性格はなんら変わっていない。国家権力の恣意的判断によって適用が可能なのである「話し合うだけで罪になる」共謀罪は廃案しかないのだ。

法務省の白々
しい言いわけ

 なお法務省のホームページ(六月二十二日)は、法案へのマスコミも含めた全国的な反対、危惧の高まりに対して、「『組織的な犯罪の共謀罪』に対する御懸念について」というページを設定している。そこでは「漠然と相談したとしても、法案の共謀罪は成立しません」「国民の一般的な社会生活上の行為が法案の共謀罪に当たることはありませんし、また、国民同士が警戒し合い、表現・言論の自由が制約されたり、『警察国家』や『監視社会』を招くということもありません」などと書いているが、よくも白々しくウソを並べたてたものだ。
 法案には、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀したもの」と規定し、この「団体」には二人以上のグループ、株式会社、市民団体、労働組合、サークルなどもふくまれ、それらを弾圧対象にしていることは明らかではないか。さらに法案には、実行前に自首した場合は刑を減免する制度を盛り込んでいる。この制度によって団体にスパイが入り込み、権力に密告するという事態が拡大する。また、盗聴行為の拡大が必至だ。「『警察国家』や『監視社会』を招くということもありません」だと! 公安政治警察による一連のビラ配布弾圧による表現・言論圧殺行為をなんと説明するんだ。盗聴・盗撮のやり放題の不当捜査手法を否定できるのか。

国際的義務な
どはなかった


 ウソは、これだけではない。外務省のホームページ(六月十六日)では、「『国際組織犯罪防止条約』の『立法ガイド』における記述について」を掲載している。
 これまで政府・与党は、越境的組織犯罪条約を批准するためにも国内法の整備が必要だという理由から共謀罪新設法の制定を主張してきた。だが、法律の解釈・運用の指針となる国連立法ガイドや条約の「第五 目的」において共謀罪の創設を求めているわけではない。日弁連の調査によれば、条約の第五条を留保したうえで批准した国もあることが判明した。米国自身が条約を批准しているが、なんと州内で行われる行為についてまで犯罪化の義務を負わないとして第五条を留保していたのだ。
 委員会審議で外務省は、「よく分からない」などと答弁していたが、保坂展人衆院議員など反対派議員の評価によれば、「法務省、外務省官僚たちは、このことを知っていたはずだ。法案を通すために、わざと隠蔽していた」と厳しく批判している。
 さらに外務省は、国連立法ガイドに条約の意味と精神をいかし、その国の法的伝統を生かしていけばいいと明記されているにもかかわらず、共謀罪を作らなければならないと「意図的?」に誤訳してきたことも判明している。このように官僚らの治安弾圧体制構築にむけた操作に対しても厳しく監視、批判していかなければならない。
 さらに確認しておかなければならないのは、共謀罪新設法案とセットでコンピュータ監視法案を制定しようとしている。法案は、インターネット接続業者などに通信履歴(電気通信の送信元、送信先、通信日時など)の保全を要請できることを可能とし、また、コンピュータに対する差押許可状を出させ、電気通信回路で接続されているすべてのコンピュータに保存されたデータをコピーすることもねらっている。この法案も明らかに憲法二十一条二項の「通信の秘密」の侵害だ。思想・信条・表現の自由、集会・結社の自由への弾圧法だ。現代版治安維持法はいらない。廃案に追い込んでいこう。  (遠山裕樹)


共謀罪新設に反対する
臨時国会冒頭に市民たちの院内集会


 九月二十六日、参議院議員会館で「9・26共謀罪の新設に反対する市民と表現者の院内集会 」が行われ、百五十人が参加した。集会は、共謀罪新設法案の廃案をめざして共謀罪法案反対NGO・NPO共同アピール、共謀罪の新設に反対する市民と表現者の集い実行委員会、共謀罪に反対するネットワークの共催で行われた。
  司会は、寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長)。集会は、森原秀樹さん(反差別国際運動日本委員会事務局長)の主催者あいさつで始まり、「第一六四通常国会で法案の強行採決を阻止した仲間たちが、再会し、臨時国会の冒頭から反対集会を持つことができた。この力で廃案に追い込んでいこう」と発言した。
 続いて、保坂展人議員(社民党衆議院法務委員)、仁比聡平議員(共産党参議院法務委員)、松岡徹議員(民主党参議院法務委員)、福島瑞穂社民党党首から臨時国会での闘う決意表明。
 山下幸夫弁護士(日弁連共謀罪等立法対策ワーキンググループ委員)は、「越境組織犯罪条約は必ず共謀罪の創設を求めているわけではない│日弁連の条約批准国の検討結果報告│」というテーマで提起。
 山下さんは、国連越境組織犯罪防止条約の批准にあたり、共謀罪も参加罪も創設すること(条約五条)を留保している国が存在していることや米国も留保していることを明らかにした。そして、日弁連が「共謀罪の規定は、刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と対立を引き起こすおそれが高い。さらに、導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも、この導入は不可欠とは言い得ない」とする意見書をまとめたことを紹介し、廃案にされなければならないと結論づけた。
 つづいて、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、 斎藤義房弁護士(日弁連少年法「改正」問題緊急対策チーム座長)、 足立昌勝さん(関東学院大学教授)、小倉利丸さん(富山大学教員)、寺澤有さん(ジャーナリスト、「共謀罪MOVIE」制作)、星川淳さん(グリーンピース・ジャパン事務局長)から廃案にむけた力強いアピールが行われた。   (Y)

パンフレット紹介

 「共謀罪 話し合うことが罪になる part3 こんな法律、誰が欲しい?」(編集・発行 フォーラム平和・人権・環境、盗聴法(組対法)に反対する市民連絡会/200円)
 目次
b改めて共謀罪を問う 足立昌勝(関東学院大教授)
b共謀罪と一体となったコンピュータ監視法案 小倉利丸(ネットワーク反監視プロジェクト)
b共謀罪審議をめぐる与党のドタバタ劇
b本当に共謀罪は国際的な要請や必要性があるのか?
b修正しても解消しない共謀罪の危険な本質〜衆議院法務委員会の審議から〜
b共謀罪に関する各界からのコメント
b資料


5・3集会実が院内集会
国会内外の運動の連携で憲法破壊の暴走政治とめよう

 九月二十六日、第一六五臨時国会が始まり、冒頭の首班指名で安倍晋三自民党新総裁が内閣総理大臣に選出された。憲法と教育基本法の改悪を前面に掲げ、極右人脈をブレーンに配し、「戦争国家」づくりをめざす最悪の反動政権の誕生である。
 この日、「5・3憲法集会」実行委員会は「憲法破壊の暴走政治を許さない!院内集会」を午後二時半から衆院第2議員会館で開催し、百五十人以上が参加した。
 主催者を代表してあいさつした高田健さんは「安倍は、集団的自衛権の行使を容認すると語ってきた。それが現憲法の下では認められないとする歴代の政府解釈の変更であると指摘されると、今度は『集団的自衛権と言われているものの中にも、個別的自衛権の行使に該当するものもあるのではないか。その点を研究する必要がある』という主張で、実質上、現憲法と政府解釈には形式的には手をつけずに集団的自衛権を行使する方向に踏み出そうとしている」と安倍政権のねらいを厳しく批判した。
 そして「十二月十五日までの今国会の会期中に、安倍首相は教育基本法の改悪案と共謀罪法案、そしてテロ特措法の延長を最重点課題として通すとしている。さらに自衛隊法を改悪し、海外派兵恒久法をもたくらんでいる。平和・人権・民主主義を踏みにじる暴挙に対して、共謀罪、憲法改悪、教基法改悪に反対する三つの運動団体が、今日、それぞれに院内や国会前で集会を開催する。この三団体の連携を強化して闘いを発展させよう」と訴えた。
 次に、十一月の沖縄県知事選に野党統一候補として立候補する糸数慶子参院議員が大きな拍手に包まれて発言した。「安倍首相はまず何よりもキャンプ・シュワブの新しい基地建設を進めると述べている。知事選は平和の沖縄県政を作り、沖縄から日本を変えることができるか否かをかけた闘いだ。戦争につらなるすべてのものを拒否する決意をこめて立候補を決意した」と訴えた。さらに集会に駆けつけた各党の代表が連帯のあいさつ。
 民主党の平岡秀夫衆院議員(民主党「次の内閣」法相)は、「共謀罪」法案を何としても成立させないこと、「集団的自衛権」の行使には民主党内でもいろいろの意見があるが、私ははっきりと反対の立場を表明している、と語った。社民党の福島みずほ党首・参院議員は「安倍首相は、日本国憲法の下でも核武装ができるとか、人の生命は大事だが国のために生命をなげうつ覚悟も大事だ、と述べ、『戦後レジームからの脱却』を強調している。この戦争協力・改憲内閣、愛国心強要内閣と対決しよう」と呼びかけた。
 日本共産党の志位和夫委員長は「本音を隠して改憲の地ならしをするのが小泉政権だったとしたら、安倍首相は海外での戦争のための憲法改悪という本音をむき出しにしている。九月二十一日の東京地裁判決は、『日の丸・君が代』の強制が、憲法にも教育基本法にも違反することを鮮明にした画期的なものだった。安倍の教育論とは、競争主義と国家統制の『反教育論』とでも言うべきものだ」と述べた。
 教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の八尋麻子さんは「教育基本法の改悪は、愛国心の強要であるとともに格差社会の現実をさらに拡大するもの」と批判した。共謀罪に反対する市民ネットワークの小倉利丸さんは「共謀罪が通ってしまったなら、改憲反対運動も監視・封殺・逮捕の対象となるだろう。自民党は改憲ではなく『新しい憲法をつくる』と打ち出している。新しい憲法を実現できるのは、主権者民衆の代表による憲法制定議会だけであり、一政党が行う正統性はどこにもない。これは政党が国家を乗っ取るクーデターにほかならない」と自民党の野望を暴きだした。
 さらに会場からは、都教組、新日本婦人の会、宗教者平和ネット、キリスト者平和ネットから、安倍政権が打ち出した憲法改悪に反対する広範な闘いを作りだす決意が語られた。  (K)                      


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